問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
たぶん今回と次でオリジナルが終わって巨龍編に入ると思います。乙に関しては今の所未定です。
それでは、本編をどうぞ!
「十六夜、組み手やろうぜ」
ある日の朝、試練で負った傷も治り、いつも通り体が動くようになったので俺は十六夜に話を持ち掛ける。
「別にいいが、珍しいな。お前からそんなこと言ってくるのは」
「戦闘中のギフトの試運転がしたいからな。頑丈なお前ならある程度は自重しなくていいし」
「そういうことなら俺も確かめたいことがあるから丁度いいか」
「後は契約書類で被害を抑えればいいか」
『ギフトゲーム名 ”力試し”
・プレイヤー一覧 白銀 吹雪
逆廻 十六夜
・勝利条件 対戦相手の降参
・備考 ゲーム開始から終了までゲーム範囲の全ての状態は保護される
宣誓 上記を尊重し、白銀吹雪、逆廻十六夜はゲームに参加することを誓います』
「こんな感じでどうだ? 俺達の状態も含まれるから思いっきり攻撃しても大丈夫だろ。たぶん」
「大丈夫だろ。それじゃあとっとと始めようぜ」
俺と十六夜はある程度距離を取り向かい合う。
「それじゃあコインが落ちたらスタートで」
俺はコインを取り出し指で軽く弾く。
そして、それが地面に着いた瞬間、
「先手必勝! 」
十六夜の周囲を剣で囲み、それを一斉に飛ばす。
「オラァァッ!」
対する十六夜は拳を全力で振るってその拳圧でまとめて吹き飛ばす。
「流石規格外。あれをまとめて吹き飛ばすのかよ」
「開始直後あんなことしたやつが何言ってやがる」
「それもそうか。ま、一回で済むわけがないけどな! 」
俺は第二波、第三波と続けて放ち十六夜を襲わせる。しかし、十六夜はそれを容易く打ち落としていく。
俺はそれを見て作戦を変え、前にヴェーザーがやっていたように一撃で落とすことができないようなタイミングで絶えず攻撃することにする。
十六夜は迫ってきた剣を弾き、それを他のにぶつけることで次々と迎撃していく。
俺は徐々に数を増やし、パターンを変えて攻撃するが、十六夜は対処が遅れるどころか余裕が出てくるようになっていた。
「……どうなってんだお前。何で数を増してく方が余裕が出てくるんだよ」
「知るか、俺にだってよくわからねぇよ。これも確かめたいことの一つだったりするしな。ま、次はこっちから行かせてもらうぜ! 」
十六夜に出てくる余裕は留まるところを知らず、遂には最低限の動きでかわすようになり、俺の張っていた弾幕から抜けられてしまう。
抜け出した瞬間十六夜は一気に加速し、俺の目の前まで迫って踏み込むと、拳を振りかぶる。
俺はとっさに地面を凍らせバランスを崩させることでどうにかしのぐ。
「……あっぶねぇ。おい十六夜、今のかなりガチで殴りにきてただろ」
「ヤハハ、ケガしねえんだから気にすんな」
「言ったな。それじゃあこっちも自重なしだ。ちょっと新兵器の実験に付き合ってもらうぜ」
俺が取り出したのはいつもと同じ形の手榴弾。
違う点は氷の中に金属が入っているぐらいだ。
「そいつのどこが新兵器なんだ? 」
「火力が違うんだよ。いつも凍らせてばっかりだから溶かせないかな? とか思ってやってみた結果だ。十六夜、ナトリウムを水に触れさせると? 」
「確か発火したはずだ。だが、それだけじゃ火力は……」
「それじゃあ凍ったニトログリセリンが直接加熱されると? 」
「…………おいちょっと待て、それじゃあその氷は」
「その通り、ナトリウムの周りは水だが、他はニトログリセリンだ。というわけで、くらえ!」
俺は手榴弾を投げ、十六夜に到達する直前にナトリウムの周りの氷を溶かす。すると、今までとは比べ物にならないレベルの爆発が起こる。
「……これは改良したほうがいいか。味方巻き込みそうだな」
炎が収まると、少し後ろに飛ばされた十六夜がいた。
「十六夜、くらってみての感想は? 」
「制圧とかには向いてるな。まあ、俺みたいなやつにはあんまり効かないだろうけどな」
自分で聞いといてあれだが、あれをくらって冷静に分析してるこいつはおかしいと思う。
「ほんとだぜ、やったやつが何言ってやがる」
「……久しぶりだな、考えてることバレるの」
「それじゃあ次はこっちから行かせてもらうぜ! 」
さっきみたいに十六夜は加速し、気がつくと俺の目の前に来て蹴りを放とうとしていた。十六夜の攻撃を防御しても吹き飛ばされて追撃されるのが目に見えているので、それをかわす。
俺は剣を作って反撃するが、身体能力に差があるせいでほとんど防戦一方に近くなる。しかも、攻防を繰り返すごとに十六夜の攻撃が早くなって更に余裕がなくなっていく。
それから何度か打ち合い、俺が捌くのに精一杯になったとき突然十六夜が攻撃をやめる。
「おい吹雪。近接戦はもういいから、そろそろ最後にしようぜ。もちろん最大火力でだ」
「……いいぜ、その言葉後悔させてやるよ」
俺は上空で氷を作り始め、強度を限界レベルにして槍の形にし、その周囲に手榴弾を用意する。槍にした理由は、今回は面よりも点で攻撃した方が効果がありそうだからだ。十六夜の方を見てみると、視認できないがオーラのようなものが右手に集まっているのが感じられる。
「十六夜、こっちはOKだ」
「こっちもいけるぜ」
「それじゃあ、くらえ!
俺は槍を落下させ、ギフトと手榴弾の爆発による衝撃で加速させる。そしてそれを十六夜が殴って迎え撃つ。
「オラァァァァァァァッ!! 」
二つがぶつかった瞬間周囲に衝撃波が発生し、俺は軽く飛ばされる。状況を見てみると未だに拮抗していた。これは落下エネルギーの加わった槍を殴って止める十六夜が凄いのか、十六夜の全力を受けて壊れない槍が凄いのかわからない。
しかし、拮抗していたのも少しの間で、少しずつ槍にヒビが入り始める。
「これは俺の負けだろうな」
そしてヒビはそのまま広がっていき、あっという間に槍が砕ける。十六夜の方を見てみるとに仰向けになって倒れていた。
「一応引き分けってところか」
俺は降参を宣言してゲームを終わらせ十六夜の所へ向かい、隣に座る。
「ほらよ。これでも飲んどけ」
俺は氷で作ったグラスの中に飲み物を入れて十六夜に渡す。
十六夜は起き上がって受け取り、それを一気に飲み干す。
「こんなのもできるのか。便利だなお前のギフトは」
「まあな。けど、お前みたいに火力がないのが難点なんだよな……」
「それなら、俺もお前みたいな応用範囲の広さがないのが難点だ」
「ま、その辺はお互いにカバーしたらどうにかなるだろ。ごり押しの相手はお前に任せたりとかな」
「逆ならお前に任せたらいいか。それでだ、少し話を聞いてくれ。俺の新しいギフトのようなものについて意見が聞きたい」
そして十六夜は火龍誕生祭でヴェーザーと戦っていた時のことを話し出す。戦えば戦うほど余裕が出てくることや、意識した部分が強くなったりすること、そして白い空間のことを。
そのことを聞いて俺はいくつかの推論を立てる。
「 『月光』と『月影』、この二つについてのお前の考えを聞かせてくれ 」
「……そうだな、月光についてはそのままでいいと思う。月光は太陽など、他の光を受けて光っているのが見えているもの。つまり、何らかの形で戦闘中に受けたもの、例えばダメージとか、そういうのがお前の力に変換されてるんだと思う。それで、月影は光があるから影ができる。だから、月光で溜めた力を使って意識した部分を強化するこんなところじゃないか? イメージとしては戦う程オーラみたいなのが溜まって、それを使って自分を強化。こんなところだろ」
「俺もほとんど同じだな。となると、これを基本にして応用を考えていったほうがいいか」
「……誰だよ応用範囲が広くないとか言ってたやつは」
「あくまで俺の強化ってだけだろうが。それで、お前の方はどうだ? 」
「だいたいは掴めた。今までのスタイルに武器の精製を組み込んでいく感じになるだろうな。強度や精製速度も上がってるし……あんなクソゲークリアした甲斐はあったな」
「そこまでだったのか? 」
「まあな」
俺はある程度要点を絞って十六夜にゲーム内容を伝える。
「……うわ、それはえげつないな。俺みたいなタイプはましだろうけど、お前みたいな作って戦う奴にはかなり効くだろ」
「ほんとに効いた………」
「俺はこれからゲームをしに行くがお前はどうする? 」
「飯食ってから行くから今はいい」
それを聞いた十六夜は立ち上がり歩き出す。
「そういや、さっきの爆発とかに反応した誰かが来たら対応は任せた」
俺に厄介事を押し付けて。
「それにしても、ほんとに大変だったよな……試練も、その後も」
俺は試練をクリアしてからの一連の出来事を思い出す。
~~~~~
試練をクリアし、そのことを耀が伝えに行っている間に今の自分の状態を確認してみる。
身体中に切り傷がありそこからは血が流れていて、噛みつかれた両手は肘から先を動かすだけで激痛がはしる。体はボロボロだった。
「……よく生きてるな。とりあえず止血ぐらいしてみるか」
今までは出来なかったが、試練をクリアした今ならできるかもしれないと思い、血を凍らせてみる。それにはとりあえず成功し、血が流れ出るのは止まる。
「後はちゃんと治療してもらうか」
それから少し待つとボレアスとヘルさんが耀に連れられてやって来る。
「お疲れ様です。治療するので椅子に座ってください」
治療が終わると、俺の両腕は肘とそこから先が固定されていてほとんど曲げることができないようになっていた。
「流石にこれは生活できないんだが。もうちょっと緩くできないか? 」
「無理ですね。骨に折れたりしているところがあるので固定しておかないとダメです」
「それじゃあせめて固定する前に浴衣みたいな服に着替えさせてくれ。今の格好じゃ固定されたら着替えられない」
「わかりました。すぐに持ってこさせます」
「……あれ? もしかして俺自分で飯食べられないんじゃ……」
「その通りだが、問題ないだろう」
そう言うヘルさんの視線の先には耀がいた。
「……私? 」
その意図を考えてみるとある結論が浮かび上がる。
「「ちょっと待って! それって俺(私)が耀(吹雪)に食べさせてもらう(食べさせてあげる)ってこと!?」」
「その通りだ」
確認してみると案の定その通りだった。確かに、自力で食べることができないから仕方ないけど。
「そ、そんなこと……私が吹雪に……」
耀の様子を見てみると顔を真っ赤にして下を向いていた。恐らく想像して恥ずかしくなって頭がショートしたってところだろう。
「耀、悪いけど頼めるか? 流石に何も食べれないのは辛い」
「……………………うん」
「それじゃあ、今日は着替えたら寝るわ。明日は起きるまで放っといてくれていいから」
「わかった」
そして次の日、俺が目を覚ましたのは昼だった。
「とりあえず何か食いたいし、耀を探すか」
耀を探すとすぐに見つかった。耀は広間の机で昼御飯を食べていた。そのすぐ横に本が積んでるあるところを見ると、昼までは本を読んでいてそのままそこでご飯を食べているようだ。
「おはよう。……まあ、昼だけどな」
「おはよう。もういいの? 」
「ああ、疲れはとれたから後は傷を治すだけだ。それでさ、悪いけど……」
「……わかった。吹雪の分もらってくるよ」
耀が取りに行っている間に机の上の本を一冊手に取り中を読んでみると、それは世界中の色々な神話の中から幻獣を抜粋したものだった。
「耀も色々やってるみたいだし俺も負けてられないか」
「その前に吹雪は怪我を治さないとダメだけどね」
「悪いな、取り行ってもらって」
本を閉じると丁度料理を持った耀が帰ってきたところだった。運んできた料理はステーキとコーンスープだった。ゲーム内の時間で三日以上何も食べずに戦い続けていたので久しぶりの食べ物が凄く美味しそうに見える。
「お、旨そうだな」
「どっちからがいい? 」
「ステーキからで。とりあえず何か食べたくて仕方がない」
「ちょっと待ってね」
一見普通にしているように見えるだろうが、今の俺と耀の顔は真っ赤だ。
耀はナイフとフォークを使ってステーキを切ると、フォークに刺して俺の方に差し出してくる。
「………………はい、あーん」
「…………旨いな」
正直な話、耀みたいに可愛い女の子にこういうことをしてもらえれば嬉しいだろうな、とか箱庭に来る前は思っていたが実際にやってみると恥ずかしさが強すぎて嬉しいとか思う暇がない。
「治るまでこれか……少しは慣れるといいけど」
「……そうだね。慣れないと精神的に大変だしね」
何とか会話を繋ぎながらステーキを食べ終わり、後はコーンスープだけになる。
「これは熱いから少し冷ましたほうがいいかな 」
スープをスプーンですくった耀は、息を吹き掛け冷まそうとする。
気遣いは有り難いが、そこまでしてくれるのを見ていると恥ずかしくて仕方がない。
「……これ絶対に十六夜達にバレないようにしないとヤバイな。バレたら何言われるか…………」
「たぶん大丈夫かな。はい、吹雪。…………あーん」
俺は差し出されたスープを飲む。冷ましてもらったはずなのだが、なぜか体が暑くなってくる。理由は恥ずかしさだろう。
そして、精神的に強い負荷を受けながらどうにか昼食を食べ終わる。
「それじゃあギフトのテストでも……いや、その前にあの鍵を使ってみるか。耀、これから少し付き合ってくれるか? 」
「いいけど、何するの?」
「ゲームをクリアして扉の鍵を手に入れたんだけどな、今の状態じゃ使えないから手伝ってほしい」
俺はギフトカードから鍵を出し、それを机の上に置く。
「これを俺が試練に挑んだ扉に使ってほしい」
「わかった」
耀が鍵を持って扉の前に行き、それを鍵穴に刺す。試練の時と同じようにギフトに反応するタイプだったら後回しだな、とか思っていた俺の心配は杞憂に終わり、鍵を捻るとロックが外れる音がする。
扉を開けて中に入ると、そこは書斎のような場所だった。部屋には机と椅子、そして本棚に入っていたり床に置いてあったりと、大量の本が置かれていた。
「クリア後に鍵を渡すようにしたってことは、ここはイヴェールの書斎か? 」
「吹雪、机の上に手紙みたいなのが置いてあるよ。試練をクリアした者へって書いてある」
「耀、それを開けて机の上に置いてくれ」
耀が手紙を机の上に置き、それの内容を確認する。
『試練クリアおめでとう。これでお前はそのギフトの俺が封印した能力を使うことができる。だが、そのギフトはお前の思っている以上に強力なものだ。使い方を誤れば何が起こるかわからない。
さて、忠告はこれぐらいにして俺から一つ頼みがある。この手紙を読んでいるということは俺はコミュニティにはいないだろう。だから、このコミュニティをお前に任せたい。だが、無理にとは言わない。よく考えてくれ』
「何か色々と凄いことが書いてあるな……」
「吹雪、どうするの? 」
「出来るなら引き受けたい。上層とコネがあるっていうのも心強いし、何より俺が力になりたい。それじゃああの二人に相談したほうがいいか」
「その必要はありません」
部屋を出てボレアスとヘルさんを探しに行こうとすると、逆に二人が部屋に入ってくる。
「このことは今日の夜ぐらいに切り出そうと思っていたのだがな。君がそう言ってくれるのならありがたい」
「もしかして……門の前で言ってたリーダーになってくれって本気だったんですか?」
「冗談ではないかもしれないと言っていただろ」
「そう言えば、二つのコミュニティに同時に所属する事って出来るの? 」
「あ、そういやそうだ」
箱庭に来たとき、黒ウサギはどこかのコミュニティに所属しなければならないってことは言っていたが一つだけとは言っていない。しかし、普通に考えれば一つだけのはずだ。
「形としては今のままノーネームに所属してもらって、俺達が直属の傘下という形にすれば問題ないです」
「そうか。それじゃあギフトカードがあるならもらえるか? もしもの時の保険に欲しい」
「既に用意してあります」
手渡されたのは銀色のギフトカード。そこには名前とギフト名が書かれ、今までにはなかった旗印が描かれていた。
「旗印があるとこういう感じなのか。やっぱり早く取り戻したいな」
「そうだね」
「それで、引き受けたのはいいけど俺は何をしたらいいんだ?」
「基本的な運営は私達が行うから問題ない。君には対外的な、リーダーとしての名が必要となることを任せたい。それと、今まで通り作品を頼む」
「わかりました」
それでその場は解散となり、俺はコミュニティの色々なことを把握するために色々と歩き回った。色々な場所を見て回り、たくさんの人に会うと、皆が俺がリーダーをすることを歓迎しくれた。それによって更にやる気が高まる。
そして夜になり、俺が湯船に浸かっている時に事件が起こった。
「あぁ~、やっぱり風呂はいいな」
俺は何度目かわからないそんなことを呟く。久しぶりの風呂を十分に堪能したのでそろそろ上がろうかと思ったその時、風呂場と脱衣場を繋ぐ扉が開かれる。
「「……………え?」」
入ってきたのは耀だった。幸いにもお互いにタオルを巻いていたので大事故にはならなかった。しかし、俺達はそんなことを気にする余裕もないぐらいにテンパっていた。
「ご、ごめん!わ、私吹雪が入ってるって気づかなくて」
「い、いや何かわかる物でも置いとくべきだったし。と、とりあえず俺は上がるから」
「………………待って、背中だけでいいから流させて」
「い、いや。別に……」
「その手じゃ無理でしょ? 治るまで湯船に浸かるだけにする気? 」
「うっ、それは…………でも、ボレアスとかに頼めば」
「……私じゃダメなの?」
「……はぁ、その言い方は反則だろ。わかったよ。それじゃあ頼む」
最終的に俺が負け、耀に背中を流してもらうことになる。
耀は俺の後ろに立つと少しの間そのまま立ち尽くしていた。
「どうかしたか?」
「……吹雪の背中、傷だらけだなって思って」
「ほとんど今回のゲームのせいだけどな。ま、ここのお湯には傷を治す効果もあるみたいだからすぐになくなると思うけど」
「……そっか。それじゃあ背中流すから前向いてて」
前を向くと耀が背中を流し始める。
「……痛くない?」
「ああ。丁度いいくらいだ」
それからはお互い無言が続き、耀が背中を流し終わるまで何も会話はなかった。
「ありがとな。俺は上がるから後はごゆっくり」
「うん」
~~~~~
あれから俺は腕が動かせるようになるまで向こうに滞在し、帰ってきて数日が経って今に至るたいうわけだ。
「さてと、これからどうするかな。何か食べてから街にいくか、街に行ってから何か食べるか」
「良かったら一緒に食べる? 」
寝転んで悩んでいると、頭の上から耀が顔を覗かせた。
手にカゴを持っているところを見ると、今日の昼食は外でってことだな。
「それじゃあご一緒させてもらおうかな。どこで食べるんだ? 」
「あそこ」
耀が指差したのは大きな木の下だった。確かに天気のいい日にそういう所で何か食べるのもいつもと違っていいかもしれない。
そうして木の下に行き、耀がカゴを開けるとそこに入っていたのはサンドイッチだった。
「さっきリリと作ってたんだ。飛鳥を誘おうと思ったんだけど朝からゲームしに行ってるみたいだったから。吹雪は何してたの? 」
「十六夜と組み手して、色々あったよなって思って思い出してた」
「ねえ吹雪、何で組み手で爆発音が聞こえたの?」
「……途中から自重しなくなったから」
「……ふぅん。怪我と周りへの被害がないからいいけど」
「そ、そんなことより早く食べようぜ」
このままだと良くない流れになりそうな気がした俺は話の流れを変えて誤魔化す。
「いただきます。お、これ旨いな」
「そう? 良かった、それ私が作ったやつだから」
サンドイッチはどれも美味しく食べ終わるまで手が止まらなかった。結局、それなりの量があったはずのサンドイッチはすぐになくなってしまい、今は二人並んで木にもたれかかっている。
「なあ、何で耀は試練の後あそこまで俺の世話をしてくれたんだ? 」
「吹雪が困ってたから。っていうのもあるけど。……私、吹雪が帰ってきてくれて嬉しかった。でも、……試練をクリアして強くなった吹雪が私から遠い人になっちゃう気がして…………そんなことないって頭でわかってはいるけど、気持ちの面では……だから、少しでも吹雪に近づきたかったのかもしれない」
それを聞いた俺は少し強めに耀の頭を撫でる。
「……ったく、俺はどこにも行かないって言ってるだろ」
「……そうだね。ねぇ、吹雪……少しだけこのまま撫でててくれない? 私が納得できるまででいいから」
「了解」
そのまま撫でてていると急に肩に重みが加わる。見てみると耀が俺にもたれかかって寝ていた。起こすのもあれなのでそのままにしておくことにする。
「……耀、いつもありがとな」
感想、評価よろしくお願いします。
今回も読んでくださりありがとうございました。