問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
何とか一月空くのは回避しました。夏期講習の合間に書いてると時間が…
これからもこれぐらいの投稿頻度になると思います。
それでは、本編をどうぞ!
祭りに向けて
南の収穫祭を一週間後に控えた日、俺はネージュグラースで仕事に追われていた。俺がリーダーになってから最初の大きなイベントなので、色々なコミュニティに挨拶などをしなければならない。
今日はノーネームでの会議があるのだが、正直出る余裕もなかったので事前に話す予定の内容は聞いてある。収穫祭への招待状が来たらしい。
「ええっと次は……これか」
今やっているのは相手のコミュニティに関して纏められた書類を読むことだ。挨拶をする相手のことを知らないのは流石に問題があるからな。
「吹雪ーっ! 来たよー!」
「こんにちわ~」
「ちょっと待ってろ! すぐ迎えにいくから」
訪問者がやって来たので俺は読むのを止めて書類を机の上に置いて迎えにいく。
玄関にいたのは玲華と楓。今日は前に話していたコミュニティ間の連絡などに関することを話すために集まることになっていた。
「はい、お土産のお菓子」
「お、ありがとな。で、仕事は終わったのか?」
「一応目処はついたよ。吹雪に会いに行く前からある程度はやっといたから」
「私はほとんど終わったよ~」
「で、吹雪はどうなの?」
「祭りまでには終わる。ノーネームには一週間帰れないけどな。……さてと、着いたぞ」
やって来たのは俺の部屋。一応応接室のような場所はあるがそこまで厳格な話し合いでもないので気楽な場所を選んだ。
「何か荷物も少ないね」
「そりゃな。ほとんどはノーネームに置いてあるし」
「私達とは立場が違うからね~」
「まあいい。とっとと終わらせるぞ」
「そうね。連絡用のギフトとコミュニティどうしを繋ぐ境界門のようなものだったわね」
「同盟の話はどうするの~?」
「どうせ陽炎も混ぜるんだから後でいいだろ。後でもう一回調整するのはメンドイ。そういや肝心の陽炎は?」
「祭りの時には戻るって連絡があったみたい」
「……流石に自分のところの祭りは行くよな」
「場所関係なく祭りなら行きそうだけどね~」
最近わかったことだが、ネージュグラースがあるのは北側。どうやら創始者が関わっている季節と方角が対応しているらしい。玲華は春なので東、楓が秋なので西、ここにいない陽炎は夏なので南だ。
「さて、話を戻すか」
「確か、連絡用のギフトはもうあるって聞いたよ~」
「移動用の方も調整したら使えるみたい」
「じゃあ、後の細かいのは陽炎捕まえてからだな」
「そうね。それで、祭りの時の主催者への挨拶はどうする?」
「俺は一回ノーネームに帰ってそのまま行くからな……前夜祭の日に合流できればその日、できなかったら次の日の九時ぐらいに受付があるだろうからそこで合流。こんな感じでどうだ?」
「了解ですぅ」
「それじゃあ後はゆっくりしていってくれ。俺は仕事があるから戻ってやってくる」
「わかった」
「ガンバってね~」
それから数日が経ち、俺はネージュグラースにジャックを招いた。
「ヤホホホホ、今日はお招き頂きありがとうございます」
「気にするなって。仕事がなかったらこっちから行こうと思ってたし、呼び出す形になって悪いな」
「いえいえ、お構い無く。それにしても、驚きましたよ。北側五桁最上位のネージュグラースから手紙が来たときは」
「まあな、俺も同じ立場なら驚く。でも、そっちのリーダーは現北側六桁最強だろ?」
「ヤホホ、実力はそうかもしれませんが性格が戦闘に向いていないもので」
「そうなのか。まあ、話も済んだし本題に入るか」
「そうですね」
話題を変えるとジャックの表情が真剣なものになる。この辺の切り換えが早いのは主催者を経験し、コミュニティ商業の方も取り仕切っているのもあるのだろう。
「今回はジャックのウィル・オ・ウィスプとうちのヒルンヴィウムで業務提携がしたい」
「具体的には何を?」
「そこまで大きなことはしない。共同で作品を作ったり、お互いの商品をお互いの店で売ったり、後は広告ぐらいだな」
「ありがたいお話ですが、なぜ我々に? ここのコミュニティなら他の大きな所にも話を持ち掛けることができるはず」
「あ~、それはな……」
その理由を聞かれるとは思っていたが、そこには商業的な理由と個人的な理由があり、正直なところ個人的な方はかなり恥ずかしい。
「一つはジャック達の名前もかなり広まっていてブランドとしての価値があるから。もう一つはかなり個人的だが……俺の目標みたいなもので、リーダーをやるからには先代を越えるようにしたい。できればそれを俺の持つ人との繋がりでやりたいってことだ」
「ヤホホ、それでしたら喜んで引き受けさせて頂きます」
「ありがとな。で、共同の作品はどうする?」
「次にある大きなイベントは南の収穫祭ですね…………今からだと微妙ですね。この後工房かどこかをお借りして試作させていただいてもよろしいですか? 上手くいけば収穫祭で試しに売ってみましょう」
「それでいくか。売るとなった場合、更に商品を作るかは売れ具合を見て現地でヘルさんと相談してもらっていいか? 」
「わかりました。ノーネームと言えば……戻ったら飛鳥嬢と春日部嬢によろしくお伝えください」
「ん? 何かあったのか?」
「実はですね―――」
俺はジャックからウィル・オ・ウィスプが定例で開催しているゲームで起こった出来事を聞く。
「へぇ、そんなことが」
「よろしければ次のゲームはご招待しましょうか?」
「いや、どうせならゲームの製作段階が知りたい。別に口を出そうって訳じゃない。この桁でやっていくなら主催者もできないといけないからな」
「ヤホホ、わかりました。それでは、次のゲームを作るときは声をかけましょう。それと、口を挟んでもらって構いませんよ。参加者の立場からの意見も重要なので」
「了解。それじゃあ工房に行くか」
俺とジャックは席を立ち、工房へと向かう。
「共同の作品と言ったものの、どんなのにするか……」
「……そうですね。今からだとあまり凝ったものも出来ませんし。どちらかが元になる物を作って、もう片方が装飾をする。こんなところでしょうか」
「それが妥当なところだな。もっと凝ったのは収穫祭が終わってからでいいだろ」
「それでいきましょうか」
そうして工房に着くとヘルさんが待っていた。
「ヤホホ、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、評判は聞いているよ」
「ジャック、後は任せていいか? 」
「お任せください。先程話していたのを基本でよろしいですね?」
「ああ」
それから俺はなんとか仕事を片付け、出発予定の日の前日にノーネームに戻ることができた。しかし、戻ってみると耀達はおらず、リリに話を聞いてサウザンドアイズに向かっている。
「何か久しぶりだな。まあ、一週間籠ってれば仕方ないか」
サウザンドアイズに着くと、いつものように店員さんが店の前を掃除していた。
「あなたですか……どうぞお入りください。今日は白夜叉様から用件を伺っております」
「そりゃどうも。あ、これからは個人的に用事ができるかもだからよろしく」
「どういうことですか」
「こういうことだ」
俺はネージュグラースの方のギフトカードを見せる。それを見た店員さんの表情が驚いたものになる。
「この旗印は! どういうことですか!」
「別に、色々あってここに所属することになっただけだ。あ、メインはノーネームだから。それじゃあ俺は中に…………今何か凄い音と叫び声のようなものが聞こえたような」
「…………何も言わないでください」
俺達は揃って轟音の原因を察する。……この人も苦労してるんだな。その間にも叫び声は段々と近づいてくる。
「蹴り返していい?」
「あの人の自業自得なので、どうぞ」
「それじゃあ遠慮なく」
俺は雪で壁を作り飛んでくる白夜叉を受け止める。
「お、おんしか。助かっ」
「たと思った? 残念、助かってないから」
俺は白夜叉を氷で作ったクリスタルに閉じ込めて回転させながら空中に浮かべる。後はついでに演出用に周りに雪を降らせておく。
「お、おんし何をする気じゃ!」
「別に、サッカーボールになってもらうだけだし? それじゃあいくぜ。吹き荒れろ! エ○ーナルブリ○ード!!」
俺は某超次元サッカーの技を真似て白夜叉を飛んできた方向へと蹴り返す。箱庭にくる前からやりたいとは思っていたが、やると問題になることは間違いなかったので自重していたのだ。それを実現できて満足だ。
~~~~~
その頃、部屋の中では。
「ハァハァ、これで白夜叉様も少しは懲りれば……」
「「「ないな(ないわね)(ないね)」」」
疲れている黒ウサギの抱くかなり可能性の低い願望を問題児三人が潰していた。
「それで、これからどうするのかしら? 白夜叉がいないと話が進まない気がするのだけれど」
「このアホウサギのせい」
「いや、問題ないぜ」
そう言って部屋の入り口に立っていた十六夜が
どき、そこから氷塊が飛んでくる。
「フギャッ!」
それは見事に黒ウサギに直撃して砕ける。中から出てきたのは白夜叉だった。
「一つ確認したいのだけれど、これの犯人って」
「うん。吹雪だと思うよ」
飛鳥と耀が話している隣では白夜叉が黒ウサギに抱きついていた。
「あの小僧め……ん? 何だか柔らかいの……これは黒ウサギではないか! 丁度よい、さっきは出来なかったことを今ここで!」
「いい加減にしなさいと言っているでしょうが! この駄神様ッ!!」
結局懲りていなかった白夜叉にキレた黒ウサギは白夜叉を引き剥がし部屋の外に向かって思いっきり蹴飛ばした。
「「「じーっ」」」
話が進まないと言っていたにも関わらずもう一度白夜叉を部屋から追い出した黒ウサギに問題児三人の視線が突き刺さる。
「す、すいません。つい」
「これだからアホウサギは」
「だからいつまでたってもアホウサギなのよ」
「そういうわけだ、明日から俺達は遊ぶから」
「私も」
「私も」
「うぅ~っ、仕方ないのですよそれでは明日からは…………と言うわけないでしょうが! このお馬鹿様方! 何をどさくさに紛れて全員祭りに行こうとしているのですか!それと、アホウサギじゃありませんっ!」
「それじゃあ、箱庭の貴族(馬)だな」
「馬ですか!?」
「十六夜、箱庭の貴族(鹿)もだよ」
「鹿もですか!?」
「気づかないなんて……流石バカウサギね」
「飛鳥さん! 黒ウサギはバカじゃありません!」
「じゃあ黒ウサギ、馬と鹿を並べて読んだら?」
「えっと……それは……って、バカじゃないですか!!」
~~~~~
「中に行かないのですか? 」
「一つ質問。白夜叉が飛んでいった先に黒ウサギがいたりしたらどうなると思う? 」
「それは……何かをやらかして…………そういうことですか」
俺は蹴り返した先に黒ウサギがいた場合、白夜叉が何かやらかしてもう一回こっちに飛ばされると予想する。だからそれをもう一回蹴り返す為に店の前に留まっている。何かやらかすのをすぐに部下に予想される白夜叉ってほんとにまともじゃないと思う……
「さて、来るならそろそろだと思うけど……お、来た来た」
少し待つとまた白夜叉の叫び声が聞こえてくる。……予想してたけど、ほんとに飛ばされてくるのかよ。
「お、おんし! 今度こそ助け」
「る訳がないだろ。てことで、もう一回な」
俺はさっきと同じことをして白夜叉を閉じ込める。ただし、今回は違う技をやるので回転してはいない。
「震え上がるがいい、凍てつく闇の冷たさに!ノー○ンイン○クト!!」
俺は白夜叉に対して回し蹴りを決めてもう一回部屋の中へ蹴り返す。
「色々やれて満足したし、そろそろ中行くか」
「……白夜叉様もこれで懲りるといいのですが」
「……あんたも苦労してんだな」
俺は店員さんを労い店の中に入る。流石にないと思うが、もう一回白夜叉が飛んでくるのを警戒しながら店の中を進んでいく。
結局白夜叉が飛んでくることはなく、無事に白夜叉の私室にたどり着く。そこには十六夜達と二人で気絶している黒ウサギと白夜叉の姿があった。
「これは二人がぶつかってのびてるのか?」
「ああ。と言うか主犯が何言ってやがる」
「いや、飛んできたのを蹴り返しただけだから」
「それが喚いてた黒ウサギに直撃したのよ」
それを聞いただけでこの三人が黒ウサギを弄っていたのが容易に想像できる。
「ねえ、白夜叉起こさない? 話か進まないよ。黒ウサギは放っといていいけど」
「それなら俺に任せとけ。確実に起こせるぞ」
俺は白夜叉に近づき、確実に起きること間違いないワードを呟く。
「…………すぐそこにびしょ濡れのまま動かない黒ウサギが」
「どこじゃ! びしょ濡れの黒ウサギはどこにおる!!」
「……うわー、ないわー」
起きると思って言ったのだが実際に起きたのを見るとかなり引いてしまう。それは俺だけではなかったようで、全員が冷ややかな目で白夜叉を見ていた。
「それで、今日は何でサウザンドアイズに集まってるんだ?」
「説明するよりも渡した方が早かろう。ほれ」
白夜叉が手を叩くと紙が現れて、それに白夜叉がサインをする。……普段からこういう態度なら威厳があるのに。
「ほら御チビ、お前が取りに行ってこい」
「え、僕ですか?」
紙を受け取ったジン君はそのまま固まる。それを不思議に思った黒ウサギが近寄って覗き込み一緒に固まる。
「おい十六夜、あの紙何だ?」
「外門の利権証っていえば分かるか?」
「OK、把握。でも、よくあんなのもらえたな」
「そりゃ、水源施設の用意を白夜叉と進めたからな。その報酬だ」
話していると十六夜に黒ウサギが飛び付いてくる。俺はそれを放っておいて近くにいたレティシアの所へ行く。
「ん? どうした主殿」
「いや、俺がいなかった間にあったことを聞いておこうと思ったからさ」
「そうか。しかし、ここは騒がしいな。帰ってお茶を飲みながらにしないか?」
「了解」
俺は帰ってからレティシアに話を聞き、それによって生じた疑問を解消するために飛鳥を探していた。
「ここにもいないし、どこに…………てか、普通に考えたら部屋か」
俺は色々と歩き回ってからそのことに気がつく。何で最初に行かなかったんだ……
そんなことを考えているうちに飛鳥の部屋に着き、俺はドアをノックする。
「飛鳥、ちょっといいか?」
「いいわよ。開いてるから入っていいわよ」
部屋に入ると、飛鳥は本を読んでいた。
「珍しいわね。吹雪君から訪ねてくるなんて」
「まあな。レティシアに今週あったことを聞いたら気になることがあったからな」
「気になること?」
「ああ。飛鳥、何で耀に戦果を譲ったんだ?」
飛鳥の表情が一瞬驚いたものになるがすぐに平静を装う。
「話せない内容なら別にいいんだ。ただ、そうする理由があって、それのせいで何か起こって手遅れになるのは嫌だから心配しただけだ」
「……何で私が戦果を譲ってると思ったのかしら?」
「俺は今週ジャックに会ってる。その時にゲームのことを聞いた。ただ、その内容だと飛鳥もそれなりの戦果を得ていてもいいはずなんだよ」
「そう。………………そこまで知っているなら隠せないわね。このことレティシア達には?」
「話してない。あのゲーム内容なのに戦果を譲ってるんだから相当な理由があると思ったしな」
「……そう。ただ、このことは私の口から話していい内容じゃないから春日部さんに聞いてもらえるかしら」
「わかった。耀は部屋か?」
「たぶんね。一応私も一緒に行くわ」
「それじゃあ行くか」
俺と飛鳥は部屋を出て耀の部屋に向かう。
部屋に着くと扉が僅かに開いていた。
「……どうする?」
「普通にしましょう」
そう言い飛鳥は音を立てないようにドアを閉めてからノックする。
「春日部さん、起きてるかしら?」
「あ、俺もいるから」
少し待つと耀が出てきてドアを開ける。
「珍しいね。二人が来るなんて」
耀はいつも通りに振る舞っているつもりだが、声や様子から無理をしているのがわかる。
「春日部さん。私達が来たのはあのことについてなのよ」
「……俺は今週ジャックに会ってる」
「………………そっか。じゃあゲーム内容を知ってるんだね」
「別に、話したくないなら話さなくていいぞ。無理強いはしない」
耀は少しの間黙り込む。話すかどうか考えているのだろう。俺と飛鳥は耀が決めるのをじっと待つ。
「…………話すよ。…………私ね、何でもいいからノーネームに貢献したかったんだ。……吹雪は金銭的に支えて……十六夜が水を引いて……飛鳥が農園の土を耕して……私がそこに苗とかを用意すれば……皆で支えてる気がして。だから一日でも多く参加したかったんだ」
「それで私が譲ったのよ」
「…………そうか。……俺、何もわかってなかったんだな」
耀の独白を聞き、俺は少し自己嫌悪に陥る。耀が周りとの差を気にしていることは前に何度か聞いていた。俺はその度に慰めたり元気付けたりしていたが、それだけでは問題が解決していなかったことに今更気がつく。必要だったのは耀自身が問題を解決できる機会を作ることだった。
「……なあ、参加する人数を絞る理由って本拠の防衛だったよな?」
「ええ」
「つまり、そこさえ何とかなれば全員参加できるよな?」
「たぶん。いけると思う」
「それじゃあ、俺がなんとかする。明日の朝からってわけにはいかないけど、早かったら夕方ぐらいからは行けるはず」
俺の言葉を聞いた耀の顔が明るくなる。よっぽど今回の祭りにかける思いが強いのだろう。
「……いいの?」
「ああ。ヘルさんは祭りの物販任せてるから無理だとして……最悪ボレアスに頼むか」
「……今凄い名前が聞こえたような気がするのだけれど」
「気のせい気のせい。ただし、早かったらの話だから都合によってはもっと遅くなるかもしれない」
「大丈夫。チャンスがもらえただけで十分だから。ありがとね」
「それじゃあこれから黒ウサギ達の所行って説明してくる。さっきまでの話は伏せとく」
「それじゃあ、私も帰るわね」
「吹雪、ありがとね」
久しぶりに白夜叉を出したらいつの間にかギャグ要因に……反省も後悔もしてません(キリッ
最近レティシアとかジンが空気だなぁとか思うようになってたりします。出番つくれるかな……
今回も読んで頂きありがとうごさいました。感想、評価よろしくお願いします。