問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
配役の一覧を後書きに載せておきますので答え合わせにどうぞ。
それでは、七夕の皮を被った何かをどうぞ!
七夕(笑)
昔々、あるところに彦星という青年がいました。周りから見た彦星は与えられた仕事をきちんとこなす真面目な人でした。
そんな評判を聞き、天の神の遣いの二人が彦星を探しにやってきました。
「はぁ、なんで私がこんなことしなくちゃならないのかしら」
「仕方ないよ。神様がそうしろって言うんだから」
「だからって過保護すぎるでしょ。あの駄神め」
部下にこんなことを言われる理由は基本的な仕事はできるのに余計なところでドジを踏む、大事なところでやらかすなど、かなりの確率で迷惑をかけるせいでした。その結果一部からはこっそりと「動くと余計なことしかしない駄神」と呼ばれてしまっています。
「ちょっと!外なのにそんなこと言ってたら」
「どうせ誰も聞いてないわよ」
「聞いてるんだよな、これが」
遣いの二人が振り返るとそこにはいいネタを手に入れたと言わんばかりの表情でニヤッとしている青年がいました。
「……このネタは後で使うとして、見たところ天の神の遣いみたいだが、俺の家に何の用だ?」
「俺の家……ということはあなたが彦星ですか?」
遣いは最初に呟かれた不穏なワードに気づくことなく青年の正体を口にしました。
「ああ」
「実は」
遣いの一人は今自分達がこの場所にいる理由を語り始めました。
天の神には織姫という名前の娘がいました。織姫は自分の身なりを気にすることなく、いつも熱心に機織りをしていました。
そんな様子を見た天の神が「私の娘は可愛いのですよ!頑張ってるご褒美にお婿さんを探してあげるのですよ!」という勝手なお節介をはたらき、織姫に似合う婿を探してくるようにと遣いの二人に命令を出しました。
遣いは婿を探すために色々な場所を巡り、大変な目に遭ってきました。
あるところでは「ヤハハ!そいつは面白そうだな!俺を選びやがれ!」という自称快楽主義者に物理的に脅迫されて逃げ出したり、またあるところでは「へぇ。なら俺を選んでくれよ。天の神の住んでるところとか面白そうじゃねえか」という何も考えていなさそうな能天気なオレンジ髪に出会ったりしました。
そんな目に会いながらも二人は婿を探し、まともな人を求めていたときに彦星の噂を聞いたのでした。
「で、俺のところに来たわけか。天の神に対して悪口を言いながら」
「そうよ。もう少し人員割きなさいよあの駄神」
彦星はニヤッと笑い、それがバレないように何事もないかのように話を進めます。
「で、俺は合格なのか?」
「はい。今までの人とは違うようですので」
「それは良かった。まあ、そっちに拒否権はなかったんだけどな」
色々とずれた婿候補に何人も会ってきた二人はこの一言で直感しました。こいつはこいつで関わるとヤバイ、と。しかしこのときすでに二人の命運は彦星に握られてしまっていました。
「それはどういう……?」
「こういうことだよ」
彦星が懐から取り出したのはボイスレコーダーでした。そこからは遣いの天の神に対する悪口が録音されていました。
「いやー、助かった。二回目も何も考えずに言ってくれて。ついでにさっきの合格のときのも録音させてもらったけどな」
「まさかあのときに……!」
「そういうことだ。わかったら連れてってもらおうか」
「わかったわ。その代わり、一つだけ聞かせなさい。あなた噂とずいぶんと性格が違うけどどういうことかしら?」
「こっちが素ってだけだな。普段真面目にしとけば色々得だし、そのほうが人との接点が増えて色んなネタが手に入るだろ?あ、そうそう。お前らの話に出てきた二人知り合いだわ」
なんと、彦星は性格が悪かったのです。しかも普段は見せないようにしている分余計にたちが悪い。そして遣いの二人が出会った婿候補とも知り合いなのでした。類は友を呼ぶとはまさにこのことでしょう。
遣いの二人に連れられ、彦星は織姫のところへやって来ました。彦星はここへ来る前に天の神様に挨拶をしに行きました。そこでは表向きの真面目な青年として挨拶したので気に入られ、織姫の良いところを延々と3時間に渡って聞かされました。すでに彦星の頭の中では天の神にどんな嫌がらせをするのかの脳内会議が始まっています。
「着いたわよ」
「……………………あ、着いたのか」
「……気づいてなかったのね」
「どんな嫌がらせをして仕返しするかずっと考えてたからな」
このときの彦星の表情を見て遣いの二人は心に決めました。絶対にこいつの機嫌を損ねるようなことはしないようにしよう、と。
「にしても、こんな一軒家で仕事してるとは思わなかったな」
天の神から今の時間(長話を始める前の段階)なら仕事場にいるだろうと言われてどこかの部屋にでもいるのだろうと考えていた彦星でしたが、連れてこられた先は仕事場とするには十分すぎる一軒家がありました。
「なんでも、織姫が直接言ったらしいですよ。どこかの部屋じゃなくて、誰のことも気にしなくていい私だけの家があったらもっと仕事が捗るのにって」
「それを聞いて一日で建てさせたらしいわ」
「よし、織姫と仲良くなって嫌がらせに協力してもらおう」
そんな話をしている間に家の中から水色の髪の少女が出てきました。
「えっと……あんた、誰?」
「俺は彦星、織姫の婿候補だ。お前が織姫か?」
「あー、そういえばそんな話あったわね。あたしはただの世話係よ」
「織姫は?」
「中にいるわよ。今は……婿候補になるならいいわよね。着いてきて」
一瞬悩んだ素振りを見せた少女に連れられ、彦星は織姫がいる部屋にやってきました。少女がその部屋の障子を開くとそこには大量のお菓子とそのゴミ、そして畳に寝そべりお菓子を食べる織姫と思われる茶色の髪の少女がいました。
「………………は?」
彦星は天の神から延々と聞かされた織姫の像からは想像できない姿に言葉を失いました。
「……えっと、誰?」
「織姫、あんたの婿候補らしいわよ」
「……そういえばそんなこと聞いた覚えが」
「これがこの娘本来……って言うとまだ語弊があるけどよく皆に言われてるのは勝手に広まって尾ひれのついた表向きの姿よ。本当は仕事は最低限しかやらないし、着飾るものに回すお金は全部食べ物になってるだけよ…………まあ、自分のお金はほとんど使ってないんだけどね」
「食べ物ばっかり食べてるようには見えないけどな。色々とせいちょ」
「それ以上喋ると命はない。いいね?」
「アッハイ」
彦星はある体の部分を見て思ったことを口にしようとしますが、別人になったかのような織姫からの圧力に口をつぐみます。
そして、遣いのうちの一人が言っていたことの本当の意味を察しました。『どこかの部屋じゃなくて、誰のことも気にしなくていい(自由にサボれる)私だけの家があったらもっと仕事が捗る(するとは言っていない)』これが正解だと。
「さてと織姫、結婚する気ってあるのか?」
「最低限今の生活が維持できる、それか面白いことがたくさんあるなら別にしてもいい」
「実は俺も別にどっちでもいいんだよな……ここに来たのだって興味本意で遣いを脅迫しただけだし」
「……それ、ほんと?」
興味本意で脅迫、なぜかこの一言に織姫が目を輝かせながら反応します。
「ほら、これが証拠だ」
彦星はボイスレコーダーを取り出して音声を再生します。
「あなたとは仲良くなれそう」
そう言いながら織姫が取り出したのは一冊のノートでした。
「これは?」
「
そこには人の名前とその人の他人に知られたくないことが記してありました。
「確かにこれは仲良くできそうだな」
「これからよろしく…………えっと、名前は?」
「そういや名乗ってなかったな、彦星だ」
「改めて、よろしくね。彦星」
「ああ」
「それじゃあ、そこ座って」
彦星は織姫に言われて畳の空いている場所に座りました。
「今日はもう遅いからゆっくり話そう?色々食べながら」
「一応聞くけど、食べるのメインじゃないよな?」
「………………そんなことない」
「それじゃああたしはご飯作ってくるね。あの子ももうすぐ帰ってくるだろうし」
「……あの子?」
「あたしの妹よ。今は買い物に行ってるのよ」
「ただいま~」
そんな話をしていると部屋の障子が開き、そこには床に置かれた食材やお菓子と緑色の髪の少女がいました。しかし、この少女を見て彦星は一つだけ納得いかないことがありました。
「……妹?」
「あたしがお姉ちゃんよ!見た目で判断するのはやめなさいよ!!」
彦星が納得いかないこととは姉妹の見た目がどう見ても姉と妹が逆なことでした。
「え?私にとっては妹みたいなものだよ?」
「ちょっと織姫!今のタイミングで言うことじゃないでしょ!」
「お姉ちゃん楽しそうだね~」
「そういや自己紹介しないとな。彦星だ。織姫の婿候補だからこれからちょくちょく来ると思う」
かなりマイペースそうな妹だと認識しながら彦星はもう一人の世話係の少女に自己紹介する。
「よろしくですぅ」
「で、ご飯作ってくるんじゃなかったのか?」
「誰のせいよ!」
世話係の二人が部屋から出ていき、部屋には彦星と織姫の二人だけが残されました。
「随分と仲がいいんだな。普通の世話係とかとの関係とはちょっと違うみたいだし」
「ずっと一緒に暮らしてるからほとんど家族みたいなもの。お菓子をお駄賃にしたら仲良くなってた」
「……そうか。さてと、明日はどうするんだ?」
「……明日?」
「せっかくなんだから遊びに行こうぜ」
「それなら……いい場所がある。面白いネタを教えてあげる」
「それなら期待させてもらおうかな」
それから二人は料理を作りに行った二人が戻ってくるまで他愛のない話を続け、
翌日、彦星が織姫に連れてこられた場所はとても繁盛している料理店でした。
「ここか?」
「うん。中に入ればわかる」
織姫に手を引かれて店の中に入り、少し待って席に案内されました。
「あれ見て」
織姫が指さした先には美しい金色の髪を持った少女が忙しくも楽しそうに注文に料理の配膳にと動き回っています。
「あの子がどうかしたのか?」
「あんな見た目だけど、天の神に仕える召使いの筆頭。年齢と見た目は一致してない。私たちよりかなり上」
「……は?何でこんなところで働いてるんだ?」
「制服が気に入ったから休みの日だけ働いてるんだって。普段から周りにはそんなのに興味ないような素振りを見せてるから、ここにいるのは私しか知らない」
この店の制服はいわゆるメイド服でその服を着てノリノリで働いているのに、普段は周りにはそのことを悟らせない言動。こんなネタに彦星が食いつかないはずがありません。
「それは最高のネタだな」
「でしょ?それじゃあ注文を」
織姫はわざわざその少女を狙って注文しようとします。
「ご注文をお伺い……織姫様!?」
「注文。いつも通りにメニューのここからここまで……今日は彦星もいるし、お金使っていいって確認取ってきたし、やっぱり全部で」
「それは時間が」
「ばらされたくなかったらできる限り急いで」
「……かしこまりました」
少女が厨房に行くのを確認した織姫は彦星を少し誇らしそうな表情をしながら見ます。
「こんな感じに使えばいい」
「なるほど。それはそうとメニュー全部ってほんとに食べられるのか?」
「余裕。今日は彦星とデートって言ったら『それなら私のポケットマネーから出すからお金を気にせず楽しんでくるのですよ!』とか言ってたから自重せずに頼む。そんなにポケットマネーがないことも知らないでのんき」
織姫がまるで天の神のポケットマネーの金額を把握しているかのように話すことに疑問を感じた彦星がそのことを尋ねると織姫はなぜか自慢げにその問いに答えます。
「普段の食費とかお菓子代もそこから勝手に出してるから残額は把握してる」
「よくそれでバレないな」
「財務担当に少し上質な機をあげてその上で
実は織姫はほとんど自分で稼いだお金を使わずにこっそりと天の神のお金を使っていたのでした。それによって天の神のポケットマネーがなくなりかけ、自分の食費が危うくなるとほんの少しだけ頑張って仕事をして問題ないラインに戻すといつも通りの生活に戻るというの繰り返していました。
このとき彦星の頭には織姫が本気出したら国乗っ取れるんじゃね?という考えが浮かんでいました。
それから数分後には料理が運ばれ始め、織姫は黙々……もぐもぐと食べ進めます。彦星はそれなにりに食べたところでペースが落ちましましたが、織姫の食べるペースは全く落ちません.。
「……ほんとよくそんなに食べられるな」
「これぐらいなら余裕」
その言葉は本当で、最後のデザートを食べ終わるまで一切織姫が食べるペースは落ちませんでした。
「それじゃあ次はどの店行く?」
「待て待て待て!まだ行くのか?」
「もちろん」
「明日にしよう。もう一軒は俺がもたない」
「……わかった。その代わりに買い物行こう」
一つの店のメニューを全制覇したというのにまだ他の店に行こうとする織姫を彦星は思いとどまらせようとし、織姫は渋々それに従います。
そのまま会計を済ませた二人は織姫が家で食べる分の食料を買いに行きました。金額を気にする必要がないので織姫は一切自重せず、それを運ばされた彦星は織姫の家についた頃にはヘトヘトになってバテていました。
「お疲れさま~」
「すごい量ね……織姫、今日いくら使ったの?」
「えっと……残ってた分の半分以上?楽しくなってついつい買いすぎちゃった。反省も後悔もしてないけど」
「明日も出掛けるんでしょ?明日はちょっとは」
「明日はおいしいお菓子でも買ってこようかと思ってたんだけど」
「訂正、自重しなくていいからいっぱい買ってきて!おねがい!」
なんという手のひら返しでしょう。お菓子の一言が出たとたんに言っていることが180度逆になったしまいました。
「もちろん。私のお金じゃないから自重なんてしないよ」
その言葉通り、次の日は大量のお菓子を持って彦星が織姫の家に帰ってきました。
次の日も、その次の日も織姫と彦星は出掛けてては地方の特産品など、なにかしらの食べ物を大量に持って帰ってきました。財務担当者や天の神の胃がキリキリなっていますがそんなことは知ったこっちゃないと一切自重しませんでした。
しばらくそんな生活を続けていると、天の神が『二人は最近遊びすぎなのですよ!もう少し生活の中の仕事のウエイトを増やすべきなのですよ!!』と言い出し、二人が会うことを禁じてしまいました。二人が会わずに仕事をしているか見張りをつける徹底ぶりです。
しかし、これがすっからかんになってしまった自分のポケットマネーをどうにかするための建前だとすぐに見破った二人はせめて手紙くらいは書かせて欲しいと言い、天の神は何も考えずにそれをOKしてしまいます------この行動が全ての間違いであり、二人が何か企んでいると気づかずに。
それからしばらくして、そこには一緒に食事をとる織姫と彦星の姿がありました。
「やっぱ天の神の警戒ってザルだよな」
「あれは身内に内通者がいるなんて微塵も思ってない」
天の神のあの発言のあと、織姫はすぐに自分がこれまでに集めたネタを使って二人の見張りに着く人のリストとその順番、それと可能な限りその人の弱味を入手しました。このとき、一番働かされたのは召し使い筆頭の少女なのは言うまでもありません。
あとは入手した弱味を使って弱味を持っていない人の弱味を入手することを繰り返すだけでした。それがある程度終わると織姫はそれを手紙に書いて彦星に送りました。その手紙を運ぶ役目は最初に彦星を織姫のところへ案内した二人がやらされています。
「遊んで帰ったらほとんど仕事が終わってるのはほんとに楽でいいな」
「私たちは遊ぶだけでいい」
二人は最初の頃は見張りへの
「今日はどこにいくんだ?」
「大丈夫。もう決めてあるから」
織姫と彦星はそれからも仲睦まじく天の神の胃と財布にダメージを与え続けましたとさ。めでたしめでたし。
キャラ一覧
彦星 吹雪
織姫 耀
天の神 黒ウサギ
遣い ペスト、ジン
召し使い レティシア
世話係 玲華、楓
婿候補 陽炎、十六夜
えー、色々とふざけた自信のある今回の話ですがまず謝罪を。飛鳥ファンの皆様すいません!(全力の土下座)。飛鳥がでてないことに気がついたのがほぼ完成したときだったんです(言い訳)
そして七夕なのに天の川っていうワードが一度も出てこない
わけのわからないものになりました。七夕ってなんでしたっけ?
今日はこの話とは別に本編の七夕短編をあげれたらなーと思ってます。