問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
次の話で出だしから巨人族をボコろうとしたら凄い長さに……
説明的な回なのに8000字オーバーしました。
もう少し簡潔に纏められるようになりたいです……
それでは、本編をどうぞ!
「わりと気まぐれなのは知ってたけど……これはないわ」
蹴飛ばしたことで一旦落ち着き、改めて陽炎のことをバカだと認識する。
「しょうがないでしょ。陽炎なんだし」
「というかそもそもの話、初対面な気がするんだけどな」
「そうだよね~」
「とりあえずだ、飛鳥の頭がショートしっぱなしだし、落ち着ける意味でもお前ら紹介するか」
「は~い。私は黄咲楓って言いますぅ。よろしくですぅ」
「で、あたしが黄咲玲華。よろしくね」
「……そう、私は久遠飛鳥、よろしくお願いするわ。二人は姉妹なのかしら?妹はこちら?」
「「あ……」」
まだ完全に回復したわけじゃなさそうだが、飛鳥は同じ名字だったことから玲華と楓が姉妹だと判断した。ただし、その後の一言と共に玲華を指したことで俺と耀はこの後に起こる出来事を察してしまう。
「ちがうもん!!あたしがお姉ちゃんだもん!!」
「私が妹だよ~」
予想通り玲華は地団駄を踏む。最初の自己紹介の段階で自分が姉だと言わない玲華が悪い気がするのは俺だけだろうか。
「あ、ごめんなさい。二人のコミュニティはどちら?」
「あたしはフェアケラソスで」
「私はアルセヴェントだよ~」
「……その名前どこかで」
「飛鳥、サラのところに挨拶しにいった時に聞いたよ」
「それじゃああなたたちが上層からのコミュニティ?言われてみればさっき陽炎君が言った名前もそう……あ、私……」
どうやら飛鳥は陽炎のコミュニティの名前を思い出しそこも聞いたことがあることを思い出したようだが、それと同時に陽炎の爆弾発言を思い出したようで、再び顔を真っ赤にする。
「これなら俺も言っといたほうがいいのか?」
「というか吹雪、あんた言ってなかったの?」
「どこから広まるかわからないし、出来るだけ隠しとくつもりだったんだよ」
「で、本音はどうなんだよ?」
「お前はまた急に……本音は一番面白い反応を聞けるタイミングを伺ってた」
相変わらず気がついたらいる陽炎のことは放置することにする。
「いや、お前が気がついてないだけだから。それに、お前の考えることぐらいわかるからな」
俺の考えていることを読んだ上で次に俺が考えることを予想して答えを言ってくるのにはそこまで驚きはしない。というのも、俺も同じことができるからだ。
「あら、何か隠し事があるのかしら?」
「まあな、サラの言ってたコミュニティのあと一個、あれのリーダー俺だから」
「…………え?」
俺達が話している間に立ち直った飛鳥だったが、俺の話のせいでもう一度頭がフリーズしてしまう。
「耀から何か聞きたいこととかあるか?」
「えっとね、玲華達のギフトってどんなの?」
「誰からいく?」
「それじゃああたしから。あたしのギフトは春の体現者。メインは仲良くなった子を召喚する能力だよ。とりあえず呼んでみよっか。フーちゃん!」
「凄い!触ってみてもいい?」
「いいよ!それじゃあ一緒にあたしも!」
玲華の呼び掛けに応えフェニックスが現れる。それを見た耀は珍しく興奮していて俺が今まで見たことがないくらい目がキラキラしている。何をしていたのかをすっかり忘れている耀は玲華と一緒になってフェニックスを触っている。
「おーい、後にしてくれ。先に紹介終わらせるから」
俺の声を聞いて若干渋々といった様子で帰ってくる二人。
「次は私だね~。私のギフトは秋の体現者で~、回復と支援がメインだよ~」
「補足しておくと、支援は身体能力の向上だったり情報処理能力だったりけっこう色んなことができるし、サブとして魔法が使えるぞ」
「俺らの中では一番やれることの選択肢は多いよな?」
「そうだね~」
「で、最後が俺か。俺のギフトは夏の体現者。基本的には雷を操ってる」
「それじゃあさっき落ちた大きな雷は陽炎が?」
「おう。流石に一体ずつタゲるのは無理だから楓に集めてもらったけどな」
「「流石脳筋」」
陽炎の言葉に反応した俺と玲華の言ったことが被る。俺の戦闘などでの行動指針がいかに相手に嫌がらせをしたり相手を潰すかなのに対し、陽炎はいかに相手を吹っ飛したりするかという脳筋なのだ。
「よし、それじゃあ本題だ。お前は何をやってんだ、そもそも初対面じゃないのか?」
「一目惚れってやつ?」
「で、何で会ってすぐに告白するのよ。相手のコミュニティの場所のこととか考えなかったの?」
「いやー、別に東西南北どこでも行けるしいいかなーと」
陽炎の言いたいことはネージュグラースなど4つのコミュニティを繋ぐ移動用のギフトを使えば問題ないだろ?ということだろう。そんな用途に使っていいのか、とか考えたが俺がノーネームにいるときは陽炎と楓はそれを使って来るのでそこまで問題じゃないことに気がつく。
「何て言ったの~?」
「え?一目見て好きになりました。俺と付き合ってくださいって全力で言ったけど」
「なんというかお前らしいな。飛鳥は……そっとしといてやろう。思い出して頭回ってなさそうだし」
話に入ってこない飛鳥の様子を見てみると顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。陽炎が楓に説明するために改めて言ったことがおいうち、というかトドメになったみたいだ。
「さてと、とりあえず俺らはサラのところ行くぞ。四人揃ってる間に行っときたいからな。耀、飛鳥のこと任せていいか?運ぶために狼は貸すし」
「それは大丈夫だけど、私も話聞きに行かなくちゃいけないんじゃなかった?」
「俺が聞いてくるし大丈夫だろ。最悪黒ウサギに全部覚えさせればいい」
「それじゃあよろしくね。飛鳥のことは任せて」
それから俺達四人は耀と別れ、サラに話を聞きに行く。と言っても俺以外は場所を知らないので自然と俺が先導する形になる。ないとは思うが勝手にフラフラ動かれても困るので全員が俺の出した狼に乗っている。
「にしても吹雪、お前耀ちゃんとかなり仲良さそうだな」
「こっちに来て一緒に色々やってきたんだから当たり前だろ?」
「で、付き合ったりとかは?」
「してねえよ。してると思うのか?」
「まさか、あの鈍感が付き合ってるとか思ってるわけないじゃん」
「よし、ぶっ飛ばしてやるからそこにじっとしてろ。後そこのロリ、何言ってんだこいつみたいな目でみるんじゃねえ!」
「誰がロリよ!!」
陽炎から聞き捨てならない言葉が聞こえたのでそれに対して俺が物理的な制裁を加えようとすると、玲華が自覚ないのかこいつ的な意味を含んだ視線を俺に向けているのに気がついたのでとりあえずNGワードを言っておく。
「いつも通りだね~」
楓の言うとおり、前まではこんなやり取りが俺達の日常だった。……俺が弄られることはこんなにはなかったが。
「さてと、そろそろ着くぞ。お前ら、初めて四人のリーダーが揃う場なんだからしっかりしろよ?」
「わーってるよ」
「当たり前でしょ?」
「は~い」
「特に心配なのは
「今失礼なこと言われた気がするんだけど」
「気のせい気のせい」
こんなことをしている内に目的場所に着く。楓と玲華が狼から降りたのを確認してギフトカードに戻し、陽炎に関しては確認もせずに戻す。
「おい、いきなりやるなよ。危ねーだろ」
「落とすためにやってんだよ」
くそ、さっきの恨みを晴らそうとしたのに。
「うし、行きますか」
部屋に入ると、そこにはサラ、ジャック、アーシャ、ジン君、苦労詐欺……間違えた、黒ウサギがいた。
「というわけで連れてきたぞ。全員揃うとはおもってなかったけど」
「それで全員なのか?三人しかいないようだが」
「まあ、そりゃそう見えるか。揃ってるぞ、四人目は俺だから。改めて自己紹介しとくか。俺がネージュグラースのリーダー白銀吹雪で、こっちのロリが」
「誰がロリよ。あたしがフェアケラソスのリーダー黄咲玲華よ。隣にいるのが」
「アルセヴェントのリーダーで黄咲楓って言いますぅ。よろしくお願いしますぅ」
「で、最後に俺がラウトグロームのリーダーで蒼海陽炎だ」
俺達は証明も兼ねてギフトカードを見せながら自己紹介をしていく。それが終わって一番に口を開いたのは黒ウサギだった。
「吹雪さん!何でそんな重要なことを隠してるんですか!!」
「いや、流石にホイホイ広めていい情報じゃないし。このことが切っ掛けでノーネームに何かあったら困るだろ?」
「……それはそうでございますが」
「別にノーネームを抜けたりするわけじゃないから気にすんなって。形としては俺の傘下ってことになってるから」
「このことを知っているのは他に誰が?」
「耀は知ってたし、飛鳥にもさっき言ったし、後はジャックか。あそこの店員さんにもいったから白夜叉も知ってそうではあるけどな」
俺の言葉によってみんなの視線がジャックに集まる。
「ヤホホホ、仕事の都合で知ることとなりました。私から話せる内容ではないのでさっきは黙っておりました」
「吹雪さん、これが終わったら全て話してくださいね」
「了解」
ジン君の言葉でこの話は終わりとなり、話が本題に移る。俺達が来る前に話していた内容であるバロールの死眼についてざっくりと説明を受け、その上で街を守ることを手伝って欲しいと言われる。
「ヤホホ……そう言われましても我々は戦闘が主体ではありませんし」
「ジャック達の分は俺達でカバーする。これでも今は上層から来てる立場だしこれぐらいやらないとな」
「よろしいのですか?」
「あのことを黙っといてくれた礼だと思ってくれればいいから」
「ふむ、そうなるとあれをどうするか」
「サラ様、あれとは一体何なのでございますか?」
「タダでこのような依頼をするのもあれな話だと思ってな。ノーネームかウィル・オ・ウィスプ、あるいは上層から来るコミュニティに死眼を譲ろうかと思っていたのだ」
「ジャック達に譲っていいんじゃないか?俺達四人は誰も使えないし、ノーネームにも使えるやついないし」
今言った通り、俺達四人は誰も死眼に対する適正を持っていない。強いて言えば楓が死の類いの魔法を使えるようになれば使える可能性があるかもしれないが、恐らくそれはありえない。ノーネームに関しても主力は誰も適正を持っていないはずなので自然とジャック達しかいないのだ。
「ノーネームに関しては大丈夫だ。白夜叉様からギフトを預かっている。それがあればそこの問題は解決されるだろう。黒死斑の魔王のゲームを全ての勝利条件を満たした報酬だと聞いている。話が終わり次第持ってこさせる」
「そういえば、何で協力を依頼するのがノーネームとウィル・オ・ウィスプなんだ?ノーネームは魔王と戦うって公言してるからまだわかるとしても、階層支配者とかって選択肢もあるはずじゃないか?」
白夜叉のことを聞いて階層支配者の存在を思い出した俺はサラに率直に尋ねてみる。いらないことしかしない駄神がこんなところで役に立つなんて……
「残念だが……今の南側に階層支配者は存在しない。黒死斑の魔王が現れたのと同時期に魔王に討たれた」
サラの言葉に俺達は全員が絶句する。
「それで、そのことはどうなるの?階層支配者がいないままっていうのは問題なんじゃないの?」
「実は白夜叉様から話を持ち掛けられていてな。龍角を持つ鷲獅子の五桁昇格と階層支配者就任を同時に行うというものだ」
「つまり、その為にも収穫祭を成功させたいから手伝ってほしい。そういうことでいいんだな?」
「ああ。南側の安寧の為にも絶対に成功させなければならない。私から改めてお願いしたい」
そう言い、サラは頭を下げる。
「吹雪、俺はやるぜ?」
「言われなくてもわかってる。俺もそのつもりだしな」
「あたしも。お菓子の為にも成功させないとね」
「私も手伝うよ~」
「サラ様、僕達ノーネームも手伝わせていただきます」
「ヤホホ、それでは我々も出来る限りで協力させていただきます」
「すまない。協力感謝する」
全員が答えると、サラが頭を上げ礼を言う。そして、白夜叉からの恩恵を受けとるためにジン君と黒ウサギが部屋に残り、俺達は解散となった。
ジャックとも別れ、俺は一人で宿舎のあった所に帰ってきた。陽炎達は一旦自分の泊まる予定だった所に荷物を取りに行っている。
「とりあえず耀と飛鳥にも事情を説明しといた方がいいか……と言っても、どこにいるか探す所から始めないといけないのか」
宿舎が残っているなら各々の部屋を訪ねればその問題は解決するのだが、今の状況ではそれが出来ない。
「こういうときは人海戦術が一番か。人じゃないけど。狼出して……そういや耀に貸したな。あいつを目印にして探してみるか」
俺は耀に貸した狼の居場所を探り始める。自分で作り出した狼なので出来る芸当だが、あまりにも離れすぎていたり大量に出しているときはどこにいるのかが大雑把にしかわからなくなってしまうのが難点だ。
「どこだ…………見つけた。ここから少し離れてるな」
俺は見つけた地点を目指して狼を走らせる。そこが見えてくると大きな木が何本も目に入る。どうやらこの辺りは巨人族による被害が少なかったようだ。
「さてと、ここからは歩くか」
俺は狼をギフトカードに戻し、歩いて耀を探す。残っている木はどれも背が高く、本数が多いわけでもないのですぐに見つかるはずだ。
歩き始めて数分後、俺は一本の木の下にいる耀を見つけた。その近くには踞っている狼達がいて、飛鳥はその上に乗っている。様子を見る限り眠っているらしい。しかし、少し離れているのでよくわからないが耀の様子がおかしい。膝を抱えて俯いているのだ。
「……何かあったのか?」
耀のことが心配になった俺は急いで耀の所へ向かう。しかし、近くにいっても耀は俺に気がつく気配を見せない。明らかに様子がおかしいので俺はしゃがんで耀の肩を掴んで揺すりながら声をかける。
「……耀、どうかしたのか?」
「…………吹雪?……うわぁぁぁん!」
近くに来たのが誰だかわかったとたんに耀に泣きながら抱きつかれ、俺の頭が混乱する。一瞬しか見えなかったが、顔を上げた耀の表情は不安でいっぱいだった。俺のいなかった間に何があったのかはわからないが、今は耀が落ち着くのを待つことにして優しく抱き締めながら背中をさする。
「何があったのかはわからないけど、俺はここにいるからな」
「……ぐすっ…………うん」
そのまましばらくそうしていると徐々に耀が落ち着き始め、少しすると完全に泣き止んだ。
「……吹雪、もう大丈夫」
「そうか。で、何かあったのか?」
「……実はね、これ」
俺から離れ、耀が恐る恐る取り出したのは壊れた十六夜のヘッドホンだった。
「どうしてこれを?」
「……わからないの。吹雪が玲華達を探しに行った後色々見て回って部屋に帰って鞄を開けたら中に……それですぐに巨人が襲ってきて……さっき帰ってきたら……盗んだのは私じゃないけど皆に、吹雪に疑われたらどうしようって思って……それで、気がついたら吹雪がいて…」
俺に打ち明ける耀の顔は不安でいっぱいで、またすぐにでも泣き出してしまいそうだ。どうやら俺が来るまでの間耀はずっとその不安に襲われていたようで、俺を認識したことによって緊張の糸が切れ、泣いてしまったのだろう。
「大丈夫だって、十六夜が風呂に入ってる間は俺と飛鳥が一緒にいただろ?だから誰も疑ったりしないって」
「……ありがと。あれ?なんだか眠く……」
耀は俺の言葉に安心したようで、俺の方へ倒れ込むように眠ってしまう。それを受け止め、膝枕をする。なぜ膝枕なのかと言うと、今いる位置は微妙に木から離れていて、そこへ連れていくために起こしてしまうのはかわいそうだからだ。
「さてと……もうこっち来てもいいんじゃないか?起きてるのはバレてるぞ」
「あら、バレてたのね」
俺は狼の上で寝たふりをしていた飛鳥に声をかける。
「いつから気づいてたのかしら?」
「起きたときだよ。耀が泣いてる間に一瞬動いただろ?下のそいつらが反応したからな」
「それにしても寝心地良かったわ。譲ってもらえないかしら?」
「祭りが終わって覚えてたら考えてやるよ。で、聞いてたんだろ?」
どうやら落ち着いて話が出来るまでには回復したらしい。さっきまでの様子なら話すらできなさそうだったからな。
「ええ。これからどうするつもりなのかしら?」
「とりあえず黒ウサギ達に説明じゃないか?そこからどうするかは相談して決めた方がいいだろ」
「そうね。それじゃあ春日部さんが起きたら起こしてもらおうかしら。私はもう少しここで寝させてもらうわ」
「その前に一つだけ。あれどうする気だ?」
「あれって何かしら?」
「そりゃもちろん告白に決まってるだろ」
「……っ!!どうしてそれを思い出させるのかしら!」
「もちろん面し……気になるからな」
「今絶対に面白そうって言おうとしたわよね?……どうするかはわからないわ。彼がどんな人かわからないもの。どうせなら吹雪君から彼がどんな人か聞こうかしら」
明らかに言うのが恥ずかしくなるような内容だが、自分から話を振っておいて逃げるわけにもいかないので答えることにする。
「どんな人か……気分任せの脳筋野郎っていうのが正しいだろうな」
「……それだとまともな人にきこえないのだけれと」
「今回みたいなことをやらかすことはあるとしても、まともなのは保証するぞ。これでも一番信頼してるからな」
「そう。このことはまた考えるわ」
「……んっ……あれ……私、寝ちゃってた?」
飛鳥が話を切り上げたところで耀が目を覚ます。話し声で起こしてしまったのだろう。
「まあな、もう大丈夫か?」
「うん…………もう大丈夫」
返事をする耀の顔がみるみる赤くなっていく。どうやら今自分がどういう状況なのかを把握したらしい。その事を認識した俺の顔も赤くなっていく。
「お二人さん、私のこと忘れてないわよね?」
「さっきまで喋ってた相手を忘れるほど老化してるつもりはないぞ?」
「飛鳥、もう大丈夫なの?」
「ええ」
「そっか。……飛鳥、実は」
「ちょっと待った。どうせ話すならまとめて黒ウサギ達にも話した方がいい。何回も話すのは辛いだろ?」
「……ありがと」
俺は耀が飛鳥に話をしようとするのを遮り、それと同時に飛鳥に目配せをして耀の話を知らないように振る舞うように頼む。その理由は飛鳥が知っていたことを知った耀が変な思い込みをしないようにするためだ。
「それじゃあ黒ウサギ達を探して、とりあえず宿舎に戻ってみるか」
「そうね」
空を飛べない俺と飛鳥は狼に乗り、耀は自分で空を飛んでいく……そう思っていたのだが。
「……何でこうなった」
現在耀は俺の後ろに乗っている。それだけならいいのだが、なぜか抱きつかれている。朝来たときは別に少し動揺するぐらいだったが、玲華とあんな話をして以来、今まであまり気にしなかったことに今まで以上に動揺してしまうのだ。
「……耀?どうかしたのか?」
「お願い、着くまでこうさせて」
「……わかったよ」
(……こうしてると凄く落ち着く。さっきまで不安だったのが嘘みたい。これって吹雪だからかな?これが十六夜だったらどうだったんだろ……)
状況が状況なだけに俺と耀が話すこともなく、これを見て楽しんでいる飛鳥が話すわけもない。そういうわけで、俺達は無言で宿舎跡を目指す。
宿舎跡に着くとそこには黒ウサギとジン君、そしてジン君に抱えられた三毛猫がいた。
「耀さんっ!!どうして相談してくださらなかったのですか!!三毛猫さんから聞きましたよ!収穫祭の滞在日数で悩んでおられたことも!」
狼から降りるやいなや、駆け寄ってきた黒ウサギが耀の肩を掴みブンブン揺さぶる。
「ちょっとは落ち着けこの駄ウサギ。これじゃあ話しもできないだろ」
俺は小さなハンマーを作り、黒ウサギの頭を叩く。
「で、ですが!」
「落ち着けって言ってんだろ。こういう内容こそ落ち着いて話すべきだろが」
「……はい、すいません」
「で、何の話を聞いたんだ?」
「はい。耀さんが収穫祭の参加日数のことで悩んでおられたこと。その為に戦果を誤魔化し、そのことで罪悪感を感じておられたこと。それから、ヘッドホンを盗んだのが三毛猫さんだということも」
黒ウサギの最後の言葉に反応して俺、飛鳥、耀は一斉に三毛猫の方を見る。すると、三毛猫は耀に対して申し訳なさそうな態度をとる。
「耀、三毛猫と話してこい。ヘッドホンのことは俺から話しておく。一つずつけりをつけていった方がいい」
「そうね。私からも話せる範囲で話しておくから」
「二人とも、ありがと」
耀はジン君から三毛猫を受け取り、少し離れたところで話し始める。それと入れ替わるようにジン君が俺たちの方へやって来る。
「あ、あのね黒ウサギ。話を持ち掛けたのは私なのよ。悩んでいる春日部さんを見ていたらどうしても行かせてあげたいって思って、それで」
「飛鳥さんのお気持ちはわかります。ですが、それなら黒ウサギ達にも相談してください。そうすれば融通を利かせることも可能です」
「そうね、ちゃんと反省してこれからはそうするわ」
「吹雪さん、ヘッドホンは?」
「壊れてた。俺も色んなところに頼んで出来る限り直そうとはしてみるが、正直厳しいと思う」
俺の言葉に三人は顔を暗くする。
「……そうですか。直る見込みが低いのなら仕方ありません。僕に代案があります。耀さんが戻ってきたらお話しします」
そして、耀が戻ってきてジン君が話を切り出そうとするのと同時に鐘が鳴り響き、樹霊の少女が巨人族の襲来を告げた。
次回は少し作戦会議をして巨人の蹂躙が始まります(予定)。そこからどこまでいくかはキャラの暴走次第となります。
今回も読んでいただきありがとうございました。