問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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2週に1話ぐらい投稿とか言っておきながら1ヶ月もあけてしまいすいませんでした!(全力の謝罪)
途中で切ると中途半端なのでまとめたら9000越えました……
もうちょっとシンプルにまとめられるようになりたいと思う今日この頃。

それでは、本編をどうぞ!


2度目の襲撃

 樹の根から出る前にジャックとアーシャと合流した俺達が見たのは半ば壊滅している戦線だった。急に巨人達が目の前に現れてそれから鐘をならしたと言われても驚かないぐらいに戦況はひどい。

 

「とりあえず戦況を確認……っと」

 

 状況を確認しようとすると俺達の隣にグリフォンが降りてくる。その様子から今まで戦っていたことがわかる。

 

『耀、丁度いい。今すぐ仲間を連れて逃げろ!!』

 

「え?一体何が」

 

『奴らの中に化け物がいる!先日の奴らとは比べ物にならん!!早く東へ行き白夜叉殿に救援を』

 

 耀が話を聞いている最中にどこからか琴線を弾く音が何度か聞こえる。それを聞くたびに前線で戦っている者が次々と倒れていき、俺以外の皆がふらつく。

 

「……この音が原因か?」

 

「吹雪、大丈夫なの?」

 

「まあな。やっぱり俺はギフトの無効化ができるらしい。どれくらいまで有効かはわからないが。耀、今から戦闘に必要になる情報を聞いてきてくれ。俺は気休め程度だろうがやれることをやる」

 

「わかった」

 

「さてと、とりあえず出せるだけ出すか」

 

 俺はギフトカードから今いる限りの狼を出し、戦線へと送り出す。数百はいるはずだが、相手の大きさを考えるとそれでもかなり心許ないので、この後の戦闘に支障をきたさないギリギリのラインまでギフトを使い狼を作り出していく。完全な乱戦になっていなければ武器をぶっぱなしていけばいいのだが、今の状況では味方を巻き込んでしまう。

 

「ふぅ……後は作戦考えて潰すだけか」

 

 作業を終えて耀たちと合流する。いつの間にかジャックとアーシャがいなくなっていたので、理由を聞くと最前線の味方を手伝いにいったらしい。続いて耀と黒ウサギから今の具体的な状況を聞く。

 

「相手は800。となると、やることとしては竪琴の奪取と巨人潰しか……」

 

「悪ぃ、遅くなった!作戦とかあるか?」

 

「今から考えるところだったんだけどな。……お前が来たなら殲滅して奪う方向でもいいか」

 

 作戦を考えている途中で陽炎達がやって来たので頭の中で一つの作戦が思い浮かぶ。と言っても、ほとんど力技みたいなものだが。

 

「吹雪、作戦はどうするのよ?」

 

「俺の考えとしては、抑えて引いてブッパでいこうと思う」

 

「吹雪、俺は締めとどっちだ?」

 

「あたしは?」

 

「私は回復でいいの~?」

 

「陽炎は抑え、玲華は引くほうで。楓はそれで」

 

「「「了解(は~い)」」」

 

「吹雪、玲華達三人しか理解できてないから」

 

「吹雪さん、僕からも提案があるのですが。いいですか?」

 

 耀とジン君の言葉に俺はついつい前の調子で進めていたことに気がつく。玲華達には付き合いが長いこともあり、状況を把握していればざっくりとした言葉でも俺の考えていることが伝わるので簡潔に言ったが、よく考えてみれば今ここにいる人のほとんどには伝わっていない。

 

「それじゃあジン君、君の話を聞かせてもらっても?」

 

「はい。敵の巨人族がケルトの末裔なら僕が新しく授かったギフトで戦線を瞬間的に混乱させることが出来るはずです。それに、吹雪さん達もいてくれるのである程度なら戦況をこちらに傾かせることができるはず。そうなれば相手はまた竪琴を使ってくるはずです。そこを耀さんに奪ってもおうと思います」

 

「えっ!?私が?」

 

「はい。霧の中でも貴女ならできるはずです。視覚や聴覚に頼らないで相手を見つけることが」

 

「……わかった。何とかやってみる」

 

「それで、吹雪さんの作戦というのは?」

 

「俺としては俺と陽炎で最前線を抑えて他の種族と話が出来る耀と黒ウサギに全体を撤退させてもらって、後は思いっきり吹っ飛ばそうかと。こうすれば体勢の建て直しもできるしな」

 

「その場合僕達は何をすれば?後、霧が出てきた場合はどうするつもりですか?」

 

「味方が下がるのを援護してもらおうかと。霧が出始めたら一番前線に近い味方のところまで下がってそこからブッパなす。自分より前に味方がいないとわかってれば見えなくても問題ないからな」

 

「それでは、どっちでいきましょう?」

 

「両方やればいいんじゃない?耀ちゃんの負担が大きくなりそうなのが気がかりだけど」

 

 俺とジン君が作戦について話し合っていると、そこに玲華が加わってくる。

 

「で、具体的には?」

 

「基本的な動きは吹雪の案。理想は陽炎がやったあとに相手が動けばそれを耀ちゃんに見つけてもらって奪うことかな。相手が倒れてるなら皆で探せばいいんじゃない?」

 

 普段の行動からあまり想像できないかもしれないが、玲華は俺の作戦の補完担当だったりする。そのせいか交渉などでは俺と同じような手段をとることもある。

 

「それでいくか。耀、いけそうか?」

 

「……なんとか頑張ってみる」

 

「後は……玲華、俺達が下がる位置を知らせるのは任せる」

 

「その位置から合図でいいでしょ?」

 

「ああ。細かいところの調整は任せた。陽炎、そろそろ戦線もやばそうだしとっとと行くぞ。あっと、その前に。楓、バフよろしく」

 

「は~い。天よりの祝福(シエルブレッシング)ぅ」

 

 楓が杖を取り出しギフトを使うと、俺の体がさっきよりも軽くなり力が沸いてくるような感じがする。

 

「やっとかよ。待ちくたびれたぜ」

 

「あんたたち、久々に二人で暴れるからって暴走するのはやめなさいよ?味方に被害が出たら楓のやることが増えるんだからね」

 

「二人ともほどほどにね~」

 

「善処はする」

 

「あ、吹雪。狼何匹か貸して。連絡することあったら使うから」

 

 俺は玲華に言われた通り狼を十数匹作り、そのまま預ける。

 

「んじゃ、行きますか。陽炎、お前は先行ってジャック達に連絡してこい」

 

「はいはい」

 

 そう言うと陽炎は雷を纏い、俺達の前から一瞬でいなくなる。陽炎は脳筋と言ったが、攻撃が遅く威力が高いというわけではなく、スピードは俺達の中では一番だ。

 

「うし、じゃあ俺も行ってくる」

 

 俺は狼に乗り既に陽炎がいるであろう最前線に向かう。あいつが戦い始めれば確実に派手なことになるのでどこにいるのかがわからないという事態にはならない。

 

「あれだな。あいつ落としまくってるけど、周り大丈夫なんだろうな」

 

 陽炎を探し始めてすぐに雷が何度も落ちている場所を見つける。流石に味方が近くにいるのにやるほどバカではないと思っているが、普段の行動からやらないと言い切ることも出来ない。

 とりあえず、今のままでは巨人目掛けて落とした雷に巻き込まれることも十分にありえるので俺が来たことを知らせる為に巨大な槍を五本ほど用意する。

 

氷星の軌跡 ―氷槍―(アイスミーティアー モデル・グングニル)!」

 

 俺の放った槍は狙い通りに巨人を仕留める。もし近くに味方がいても陽炎がどうにかしていると思うので気にはしない。

 どうやら陽炎は俺が来たことに気がついたようで、雷が落ちるのが止まる。

 

「それじゃあ今のうちに行くか」

 

 狼の速度を更に上げ、俺の攻撃で巨人達が怯んでいる間に陽炎と合流する。

 

「おい吹雪!いきなり何すんだ!危ねえだろ!」

 

「爆発物が急に放り込まれるよりましだろ。というか、流石に近くに味方はいないんだろうな?」

 

「たりめーだ。近くにいたのは全員下がらせた」

 

「つまり暴れてもいいんだな?」

 

「おう」

 

 俺の言葉に陽炎がニヤッと笑う。どうやら考えていることは俺と同じようで、久しぶりに二人で暴れられることが楽しみらしい。

 

「いつも通りお前が突っ込んで俺が援護……いや、二人で突っ込むか」

 

「吹雪、このサイズ相手に突っ込めんのか?」

 

「出来ないなら言わねえよ。というかさっきやっただろ。後は手榴弾もあるし」

 

「おま、爆弾は俺も巻き込まれるじゃねーか」

 

「知るか。気合いで避けろ」

 

「……わかったわかった。それでいいぜ」

 

「それじゃあ行くぜ?陽炎(相棒)

 

「おうよ」

 

 俺が巨大な剣や槍を作っている間に陽炎は巨人に一瞬で近づくと、そのまま蹴り飛ばした(・・・・・・・・・・)

 

「相変わらずスピードが取り柄の癖に火力おかしいよな、あいつ」

 

 陽炎は十六夜のように元々の力が強いわけではなく、ギフトを使うことでそれだけの力を発揮している。その方法とは自分の体に電流を流し、それを使って脳からの電気信号が伝わるよりも早く神経に命令を与えて超人的な速度で動くというものだ。

 単純な話、同じものがぶつかってもぶつかる前の速度が速いほうがぶつかる対象に加わる衝撃が大きいので、陽炎はそれを利用して巨人を吹き飛ばしている。

 まあ、俺個人としてはその速度を不意打ちなどに使えと言いたいのだが。

 

「俺も負けてらんねえか」

 

 俺は作った槍をまとめて放ち、一本につき何体もの巨人を貫いて仕留める。それと同時に、隙ありと言わんばかりに降り下ろされた巨人の剣を自分の剣で受け止め、横からハンマーで殴って巨人を吹き飛ばす。

 

「やっぱでかくなると操作むずいな。もっと精度上げないとダメだな」

 

「おい、吹雪。どっちが多く倒せるか勝負しようぜ」

 

 武器を操作しながら巨人を抑え、それと並列して新しい武器を作っていると隣に陽炎が降りてくる。

 

「いいぜ。期限は?」

 

「合図があるまでで」

 

「乗った。それじゃあ……スタートだ!」

 

 俺は陽炎に合図をするのと同時に用意していた槍を放つ。開始早々まとめて巨人を倒すことでリードしようと考えていたのは読まれていて、俺の合図のタイミングを予想していた陽炎は高速で動き周りながら巨人を倒している。

 

「こうなるから開幕リードしときたかったんだけどな……」

 

 俺は武器を操作して倒しながら槍を放つことで撃破数を稼いでいるが、常に動きながら攻撃している陽炎に比べるとどうしても速度の点で劣ってしまう。

 

「となると……横取りするか」

 

 まともに点を取り合っていては勝つことができないのはわかっているので、出来るだけ陽炎に点を取らせないように方針転換する。具体的な手としては陽炎が次に狙いそうな巨人を予想してそれを槍で貫いていく。

 時々陽炎に当たりかけてクレーム(仕返しの雷)が飛んでくる。当たらないことはわかっているが正直迷惑だ。

 

「これじゃあそこまで差が詰まらねえし埒があかないか……やっぱまとめて吹っ飛ばすか」

 

 ちまちま差を詰めていくのが面倒になり、足場を作って巨人よりも高い位置に行き大量の手榴弾を用意する。

 

「味方が巻き込まれないことを祈りつつ……吹っ飛べ!!!」

 

 俺は下の様子を確認することなく上から手榴弾をばらまいて爆撃していく。これなら一気にリードできるかと思ったが、俺が爆撃をしている位置を把握し、移動していないことを理解した陽炎が雷を落とし始めたのでそこまで差がつかない。

 

「ん?何だ?」

 

 

~~~~~

 

 吹雪と陽炎がいなくなった後、玲華達は作戦の細かい部分を詰めていた。

 

「それじゃあ、あたしが一番前にいるから他の皆はそこより後ろをお願いしていい?」

 

「それはよろしいのですが、黒ウサギと耀さん、それにグリーさんだけでは味方への指示が追いつかないと思うのですよ」

 

「あたし達も声をかけるからましにはなると思うよ。もしもコミュニケーションが必要な場合はお願いするね。たぶんあれを聞いても下がらないのはいないとは思うけど」

 

「あれって何なのかしら?」

 

「さっきの戦いで巨人をたくさん倒したのをくらいたくなかったら全力で下がれって言うつもりだよ」

 

「なんだか、吹雪みたい」

 

 耀の言葉を聞いて玲華は苦笑いをする。

 

「まあ、ずっと一緒にいたからね。こういう方面はあたしが一番影響を受けてるんじゃないかな?」

 

「そうじゃないかな~」

 

「楓はあんまり受けてなさそうだね」

 

「えっとね~、私は戦闘面かな~」

 

「楓はギフトでできることの選択肢が多いからね。誘導したり隙をついたりできるから結構影響受けてるね。それじゃあ、そろそろ行こっか」

 

「そうだね~」

 

 玲華の言葉を聞き、飛鳥、ジン、黒ウサギはグリーの背中に乗る。そして、玲華は本をギフトカードから取り出す。

 

「お二人は飛べるのでごさいますか?」

 

「楓は飛べるよ。あたしは乗せてもらうだけなんだけどね。よろしくね、フーちゃん!」

 

 玲華の声に応えフェニックスが現れる。玲華のギフトを知っている耀と飛鳥は驚かないが、知らなかった黒ウサギ達はフェニックスが突然現れたことに驚く。

 

「玲華さんのギフトは召喚系のギフトなのでございますか?」

 

「そうだよ!基本的にはね。ほら、早く行くよ!」

 

 フェニックスが飛び立ったのに続き、楓と耀が、更にそれに遅れて黒ウサギ達が飛び立つ。

 

「耀ちゃん、大丈夫そう?」

 

「……うん。私に出来るのか不安だけどやってみる」

 

「えっとね……それじゃあ、合図したら出来るだけあたしの近くの上空まで行ってね。後、護衛用に狼何匹か連れていっといて、それと、合図をしてからもギフトカードに戻しちゃだめだからね」

 

「…………?うん。わかった」

 

 話の流れから少し逸れたことを話す玲華に戸惑いながらも耀は吹雪の残していった狼を受け取りギフトカードに入れる。

 

「後はこれをこうして……よろしくね!」

 

 玲華はメモに何かを書き、それを狼にくわえさせる。そして狼は走り出しいなくなってしまう。

 

「……玲華?」

 

「何でもないよ。ちょっと伝え忘れを思い出したから連絡しただけ」

 

「そうなんだ。そろそろ降りてもいいんじゃないかな?」

 

「そうだね。フーちゃん、あの辺のでかいのまとめてやっちゃって!流石に味方を巻き込まないようにするとフーちゃんだけじゃ厳しいし……あの子にもでてきてもらおっかな。よろしくね、ケベくん!」

 

 巨人の上を飛んで移動していた一同は玲華の指示によって動いたフェニックスによって一瞬だけできたスペースに降り、そこで玲華は本を開き何かの名前を呼ぶ。すると、三つの首を持つ大きな犬、つまりケルベロスが現れる。

 

「巨人一杯倒したらご褒美にお菓子あげるからね!」

 

 呼び出されてすぐは少しやる気がなさそうだったケルベロスだったが、それを聞くと大きな声で吠え、周囲の巨人を物凄い勢いで倒していく。

 

「ほらほら、あたしはこの辺にいるから皆も動いて」

 

 玲華の発言で急にやる気になったケルベロスに対して楓を除いた一同が唖然としているのを玲華が元に戻し、既に動いていた楓に続いて耀が自分の役割を果たすために動き出す。

 

「そ、そうでございますね。ジン坊っちゃん!巨人族は黒ウサギが一匹たりとも近づけさせません!今こそジン坊っちゃんのギフトーーーー精霊使役者(ジーニアー)を使うときです!」

 

 それに続くようにグリーの背から飛び出した黒ウサギは疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)を使い周囲の巨人を焼き払いながらジンに向かって叫ぶ。

 ジンはそれに応えるように指輪を嵌めている右手を掲げる。

 

「隷属の契りに従い、再び顕現せよーーーー黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)ッ!!」

 

「何処に逃げたの、白夜叉あああああああッぁぁぁぁ!!」

 

 今この場にいない駄神の名前を叫びながら現れたペストは黒い風を無差別に放ち巨人を薙ぎ倒していく。

 

「ちょ、ちょっと!新しいギフトって黒死斑の魔王なの!?」

 

「あの子可愛い!後でギュッてさせて!お願い!」

 

 何が起こったのかを理解した飛鳥が叫ぶ。玲華に関しては完全に自分の欲を言っているだけだが。

 

「YES!ハーメルンの魔導書から切り離されているので神霊では無くなっていますが、それでも大戦力にはかわりないのです!」

 

「まだ白夜叉に怨みを持ってそうだけど本当に大丈……あれは怨まれても仕方ないわね。私が同じ立場ならああなるのもわかるわ」

 

 召喚された時にペストが口走った言葉が気になった飛鳥だったが、ペストの格好を見た瞬間に何があったのかを察しペストに同情する。

 

「ほらほらウサちゃんも行ってきて。あ、できればさっきの子にあたしよりも前には行かないように言ってきてほしいかな」

 

「了解したのですよ。それでは、ジン坊っちゃんと飛鳥さんのことをよろしくお願いします」

 

「まったく、過保護ね黒ウサギは。私にだって戦う力はあるのよ。来なさい、ディーンッ!」

 

 黒ウサギがいなくなるのと同時に、飛鳥はギフトカードを掲げてディーンを召喚する。

 

「飛鳥ちゃん、あんまりここから離れて戦わないように気をつけてね。ケベくんに敵だと間違われるかもしれないし」

 

「わかったわ」

 

「後は…………そろそろ動き始めてもらわないと危ないかな。陽炎は余裕だろうけど、耀ちゃんと吹雪が間に合わないとダメだしね。フーちゃん!でっかい花火よろしくね!」

 

 玲華の指示を受け、フェニックスは空に向かって巨大な火の玉を放つ。それは一定の高さまで上昇すると弾け、戦場の多くの場所から見えるであろう大きさの花火を作り出しながら辺りに爆音を轟かせる。

 

「やっぱりやってくるよね……二人とも頑張ってね」

 

 少しすると、ペストの活躍で戦況に変化が表れていたところに玲華の合図があったせいなのか、戦場一帯に琴線を弾く音が鳴り霧が立ち込め始める。

 

「流石に見えない状態で出しとくのは危ないよね……戻っておいで、ケベくん!」

 

 辺りが完全に霧に包まれた後で事故が起こることを心配した玲華はケルベロスを戻す。

 

「距離によるけど陽炎はもうすぐかな」

 

「ん?呼んだか?」

 

「あんたは相変わらずね。吹雪は?」

 

「合図より前に動き出してたしちゃんと下がれてるんじゃね?というか何か指示したのか?」

 

「まあね。というか聞いてないの?」

 

「先に下がるから後は任せるってだけだ。後はちゃんと味方がいないか確認しながら戻れとは言われたけどな」

 

「はぁ……必要なことはあたし任せってことね。吹雪から何か合図があるはずだからそれがあるまでやっちゃダメだからね」

 

「了解。んで、なに伝えたんだ?」

 

「ちょっとした保険よ。ほら、向きがわからなくなる前に敵の方向いときなさい」

 

 二人が話しているうちに戦場が完全に霧に包まれる。陽炎は力を溜めいつでも戦場に雷を落とすことができるように準備する。

 それから少しの間そんな状況が続いた後、事態が動きを見せる。今まで巨人によって発生していたであろう揺らめきと金属が打ち合う音をはるかに上回る爆音と揺らめきが連続で発生したのだ。

 

「こいつが合図ってことでよさそうだな。、久々の吹雪の作戦(これ)だ、全力でやってやるか。くらえ!雷帝の一撃(トニトルス・インパクト)!!」

 

 陽炎は右腕を掲げ、それを勢いよく振り下ろす。それに合わせるように陽炎よりも前の戦場一帯に雷が落ちる。その音の大きさは前の戦闘で巨人に対して落としたものとは比べ物にならないくらい大きい。

 

「……やっぱこんだけの範囲はキツいな。後は任せたぜ」

 

 今の一撃に体力を消耗した陽炎はその場に座り込み、後を耀に任せた。

 

 

 

 

~~~~~~

 

「ったく、玲華のやつは何でこんな指示を……」

 

 俺が陽炎と巨人の撃破数を競っている最中に俺のところにやってきた狼は玲華からの指示が書かれた紙をくわえていた。そこには、『耀ちゃんと合流して。狼を目印にしとくからそこへ行ってね。準備ができたら何でもいいから合図を』そう書かれていた。

 霧が出始めてから下がって間に合わないとなると問題なので、俺は陽炎に最低限の伝言をして動き始めていた。

 

「後は合図を待って…………あれか」

 

 ある程度下がり、後は合図を見てから狼を探そうと思った矢先、少し離れたところで打ち上げ花火のように尾を引きながら火の玉が上っていく。それはある高さまで上がると弾け、巨大な花火を作り出す。

 

「さて、耀はどのへんにいるか……」

 

 耀の場所を把握するために今の位置を中心にして近くにいる狼を探ってみると、下から何匹かが上がってきていることに気がつく。それと合流するように動き、一緒にいる耀を見つける。

 

「吹雪?何でここに?」

 

「玲華から指示があったから来たけど、耀は何か聞いてないか?」

 

「ずっと狼を出したまま移動してって言われたけど。他は何も」

 

「特になしか……俺の仕事は合図だけっぽいな」

 

「合図?」

 

「準備ができたら合図をって言われてるんだけどな……この場合の準備ってたぶん耀のことだな」

 

「つまり作戦の開始は私次第ってこと?」

 

「たぶんな」

 

「……そっか」

 

 そう言う耀の表情はかなり不安そうで、緊張しきっているのがわかる。恐らく作戦の開始のタイミングが自分次第かもしれないと知ったことでプレッシャーがかかりそれのせいでマイナスなイメージをしてしまっているのだろう。

 

「……ねえ、吹雪は何で普通に作戦を実行に移したりできるの?」

 

「耀、最初に一つ言っとくとな、俺はいつも何にも気に止めないで平然と作戦を実行してるわけじゃないし、作戦通りに全部いくなんて考えてない。実行する直前に失敗する可能性をいくつも考えることだってあるし、それの為に作戦を変えようと思うことだってある。だから、そうやって延々と悩んでる間に事態が最悪になるってことを考えて無理矢理思考を打ち切ったりしてる。後は俺は一人じゃない、頼れる仲間がいるって考えるだけでもけっこうましになる」

 

「……一人じゃない、か。ねえ吹雪、もし上手くいかなかったとしたら私のこと助けてくれる?」

 

「もちろん。俺以外の皆も助けてくれるに決まってる」

 

「ありがと。それじゃあ合図お願いしていい?」

 

 話している間に俺達のいるところもすっかり霧に包まれてしまっていて耀の表情まではわからないが、その声から不安に打ち勝ったことがわかる。

 

「手榴弾でいいか。じゃあ適当に……え?」

 

「……お願い、動かなきゃいけなくなるまでだけでいいからこうさせて」

 

「わかった。合図はしてもいいんだな?」

 

「うん」

 

(玲華は私のこと心配してくれたんだね……だからあの質問の後にあんな指示をして。後でお礼言わないと)

 

 陽炎への合図のために手榴弾を用意しようとすると急に耀が俺の手を握ってきたので驚くが、耀はギリギリまで不安にならないようにこうしているのが想像できるので、俺が動揺していては意味がないと思いなんとか平静を装う。今までの俺ならそこまで気にしなかったような状況だが、少し前に玲華とあんな話をしたせいで耀に握られている手のことを意識してしまう。……恨むぞチビロリめ。

 

「うし、爆撃したしあいつも気づくだろ。後はでかいの落ちて……やっべ。耀、早く耳塞げ!」 

 

「……どういうこと?」

 

「広範囲に思いっきり落とすんだから確実に音がでかい」

 

「あ、そうだね」

 

 合図をした直後にこの後起こることを予想した俺は耀に指示を出す。すると、俺の手にあった感触がなくなったので、俺も耳を塞ぐ。

 その直後、耳を塞いでいてもうるさいと感じるほどの音が聞こえた。

 

「これで殲滅は出来ただろ。耀、いけるか?」

 

「たぶん大丈夫…………………見つけた。それじゃあ行ってくるね」

 

「おう」

 

 耀がいなくなって少し経つと、周囲の霧が晴れ始める。どうやら上手くいったようだ。




ちょっとした宣伝ですが、もしも最初に呼ばれたのが玲華と楓だったら?という内容の小説を投稿しました。タイトルは『ロリっ子とマイペースも異世界から来るそうですよ?』です。

今回も読んでいただきありがとうございました。
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