問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
それでは、本編をどうそ!
「ほんときっいな!」
俺とレティシアもどきとの戦いは完全に俺の防戦一方になっていた。十六夜が攻撃できる隙を作るためにほとんどの攻撃を俺に引き付けなければいけないのでそれをさばいていると反撃する余裕がない。レティシアもどきたちは相手が複数いる場合は基本的に城に近づく相手の処理を優先し、少し近い相手は影の槍で牽制、もしくは落とそうとしてくる。そして、相手がある程度城からの距離を取ると攻撃をやめる。
「……専守防衛とか、ほんとやりづれえな」
相手の行動に城の防衛以外の選択肢があればそれを利用して隙を作ることはできなくはないが、俺が城から離れても追ってこないせいで隙を作るためにはどうしても俺から近づかざるをえない。
そうなると城に近づくことになり、当然相手からの攻撃も激しくなってしまうというわけだ。
「十六夜、あれの隙を作るならどうするのが確実だと思う?」
「ダメージを与えるしかねえだろうな。目の前で爆発なりさせるだけで驚いて硬直してくれるんなら俺にこんなことは聞かねえだろ?」
「……だよなぁ。つっても、あれにダメージ与えようにも与えれる気がしねえよ」
さばくのがきつくなってきたら離れて仕切り直しができるだけまだいいが、有効打が見つからなければジリジリと俺が消耗していくだけだ。それを解決しようと一度下がって十六夜に意見を求めたが、どうやら俺と同じ結論に行き着いていたらしい。
俺は数で押したり罠などでダメージを何度も与える、大技で一気に、この二つが基本的なダメージの与え方だが、今回はそのどちらも上手くいきそうにない。
「…………あれしかないか」
「手があんのか?」
「なくはない。ただし、通用しても一回だけだろうな。失敗して学習されでもしたら終わりだ。きっちり仕留めろよ?」
「誰に向かって言ってやがる。そういうのはちゃんと隙を作ってから言いやがれ」
「......わかったよ。そこまで言うんだからしくじんなよ!」
俺は数を撃ってくるほうのレティシアもどきに接近し、両手の剣で攻撃しながら相手の攻撃を武器を作り出しながら撃ち落とす。万全の状況なら話は違ったかもしれないが、今の俺の状態では被弾数を減らすのが精一杯だ。そんな状態を維持しながら俺は自分の位置を少しずつ城に近づけていく。ある程度城に近づくと、十六夜を牽制していたほうのレティシアもどきからの攻撃も飛んでくるようになる。
そのままなんとかして更に城に近づくと両方のレティシアもどきが俺を集中的に狙ってくるようになる。
「ここだっ!」
俺を貫こうとする槍が放たれるのと同時に自分の位置を少しだけずらしてから目の前にいるレティシアもどきの動きを止めることに全力を注ぐ。
その結果、それは俺を貫こうとしていた槍がレティシアもどきを貫く。
「十六夜っ!!」
「おらあっ!」
十六夜の投げた槍は寸分違わず貫かれたことで動きが止まったレティシアもどきを貫く。しかし、そのレティシアもどきがまだ体を動かそうとするので十六夜が更に何本も投げ止めを刺そうとする。それに貫かれたレティシアもどきは動きを止め、そのことに安心するがすぐさま異変が起こる。
「……冗談きついぞこれは」
槍に貫かれたレティシアもどきがその形を失い、残っている方のレティシアもどきに吸収されていく。数的には二対一になったが、相手から発せられる圧力はさっきまでのものよりも強くなっている。
「吹雪、俺があれを引きつける。お前は上へ行け。それぐらいならできんだろ?」
「お前、何を言って」
「お前、それだけボロボロでさっきまでと同じように動けんのか?」
十六夜の問いに俺は動けると答えることができない。隙を作るときに自分に当たる攻撃をかなり無視したせいで俺は身体中にダメージを負ってしまっている。今の俺の状態では十六夜の足を引っ張ってしまうことになってしまうだろう。
「俺たちが二人とも足止めされてるんじゃここまで来た意味がねえ。行けるうちにどっちかが行くべきだろ」
「それなら、なおさらお前が行くべきだろ」
「お前があれを足止めできる状態ならそうしてたかもな。それに、お嬢様と約束したんだろ?春日部を助けるって」
ここまで言われたら俺が反論する理由もなくなってしまう。
「……わかったよ。あれは任せる」
「そんなに心配すんじゃねえよ。月光のほうもある程度貯まってるから問題ねえ。そういうわけだ。付き合わせて悪いな」
『問題ない。この戦いでお前の足となると伝えてあっただろう』
「そうだったな。改めてよろしく頼むぜ」
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龍角を持つ鷲獅子連盟は城の探索から戻ってきたサラの指揮を受けながら陽炎とペストを筆頭に巨人たちを倒し、全軍で南東の平野にある敵陣の最奥に乗り込んでいた。そこへ後衛で味方の回復を行っていた楓を連れて陽炎がやってくる。
「さあて、お前をぶっ飛ばせば終わりか」
「ええ。そいつは巨人たちと同じ人類の幻獣。通称魔法使いと呼ばれる種族よ」
「ペストちゃん。そういうことは先に教えて欲しかったかな」
「あなたたち誰も聞いてこなかったじゃない。あんたに関しては私を着せ替え人形にしてたでしょ」
「ペストちゃん途中で逃げたでしょ。終わったら続きするからね!」
そのときのことを思い出してペストは玲華をにらみつけるが、そのことを玲華に思い出させることとなりかえって逆効果になってしまう。
「そういうのはそこの年増を倒してから言いなさい」
「......ペスト、貴女はなぜ巨人族が黒死病に弱いのか知っている?」
ペストは玲華の話から逃げるためにアウラのほうに全員の意識を向けさせる。そのアウラは自分のほうを向いている全員を一度見まわし、呟いた。
「え?」
「それはある巨人族がとある方法を用いて他の巨人族を支配していたことに起因するわ。----その方法こそが黒死病よ。黒死病を操って他の巨人族を支配していた巨人族がいた。この意味がわかるかしら?」
「............操っていたんだから、当然黒死病を治すことも可能。そういうことね」
「正解よ、お嬢さん」
「子供扱いしないでよ!オバサン!!」
「オ、オバ……まあいいわ」
子供扱いされたことを察した玲華が文句を言ってくるのをかろうじて無視し、アウラは儀式場に安置されているバロールの死眼を手に取り、それを掲げる。
「全軍を不用意にここまで進めたことを後悔しなさい!」
死眼から強い黒い光が放たれ、その光を受け何が起こったのかと連盟の幻獣たちが周囲を見渡す。その答えは自分達の周囲から雄叫びが聞こえてくるという形で返ってきた。
「「「「ウオオオオオオォォォォォォォォォッ!!!」」」」
「……どういうこと」
巨人たちが黒死病から解放され龍角を持つ鷲獅子連盟を取り囲むが、その数が自らの想定していた数よりも明らかに少ないことにアウラは困惑する。
「足潰しといてよかったわね。それにしても、囲まれたときって吹雪のありがたみがよくわかるわよね」
「だよな。俺がやると殲滅だし、なにより加減するのがめんどくせえ」
「そうだね~。私もあんまりやりたくはないかな~」
黒死病から解放された巨人たちに囲まれているにも関わらず、玲華、陽炎、楓の三人は全く同様動揺する様子を見せない。その様子に敵であるアウラを含めその場にいる全員が困惑していた。
「サラちゃん、あたしたちって
「あ、ああ」
サラはこんな状況に陥ってるのにわざわざそのことを確認する玲華の意図を理解することができないが、なんとか質問に答える。
「それなら問題ないね。楓、陽炎、やっちゃうよ」
「は~い」
「そうは言ってもお前はやらねえだろ」
「できなくはないけど。あんたもいるし、あれ使ってまでやることじゃないし」
三人の会話を聞き飛鳥だけは何をやろうとしているのかを理解するが、ペストとサラ、連盟の幻獣たちはそれを理解できない。
「それはいいけれど、黒ウサギのことはどうするのかしら?」
「あ、ウサちゃん忘れてた……陽炎、楓、一気に全体じゃなくて数で断続的にやっちゃって。隙間があれば避けれるでしょ」
「了解。んじゃあ楓、いくか」
「は~い」
「な、何をするつもり!?」
玲華の言動にいやな予感がしたアウラは慌てながらも玲華を問いただす。
「全軍囲まれてるなら、
「そういうことだ。相性が悪かったと思って諦めろ」
「いっくよ~」
楓のその言葉の直後、連盟の周囲を囲んでいた巨人たちのいるところに何度も雷と隕石が降り注ぐ。まるで天変地異とでもいうべき光景にその場にいるほとんどが呆然と立ち尽くす。雷に撃たれて動けなくなった巨人たちの上に隕石が降り注ぐという光景が何度も繰り返され、それが終わった頃には周囲を囲んでいた巨人たちがほとんどいなくなる。
「............これほんとに黒ウサギは大丈夫よね?」
「ほら、サラちゃん。残ってるの倒してきて」
「あ、ああ。全軍、残りの巨人たちを叩くぞ!」
飛鳥の呟きに気づくことなく玲華はサラに残りの巨人を倒すために軍を進める。そして、その場に残った玲華たちはアウラと改めて対峙する。
「......許さない。あなたたち全員ここで殺してあげるわ!」
アウラは黒い光に包まれながら玲華たちを怒りの形相で見つめる。
「あれはやばくねーか?」
「.......ほんとにね。どうしよっかな」
陽炎たちの顔からもさっきまでの余裕の表情が消え、焦りが生じ始める。そんな様子を見たペストは少し愉快そうな表情をしながら口を開く。
「ねえ、ギャンブルならあるけれど。誰か乗らない?」
「ペスト、なんであなた少し楽しそうなのかしら。それで、その内容は?」
「簡単な話よ。貴女のディーンが道を作ってそこを抜けた私が死眼を乗っ取る。それだけよ」
「あそこに行って大丈夫なの~?」
「ええ。簡単に言えばあれは死の恩恵の塊のようなものよ。命を持たないその鉄人形なら問題ないわ」
楓の質問に対する答えを聞いた玲華は下を向いて考え込み、少しして顔を上げると陽炎の方を向く。
「陽炎、あんたも行きなさい」
「……は?俺に死ねと?」
「そうは言ってないわよ。命のないあそこまでの足があればいいんでしょ?」
そう言うと玲華は飛鳥の連れている狼たちに目を向け、全員が玲華の言いたいことをを理解する。
「だがよ、この大きさじゃ意味ないぞ?」
「その辺も大丈夫よ。見てなさい」
玲華が声をかけると狼たちが集まり、その姿が一瞬だけ消えてなくなりその直後にその場に巨大な狼が現れる。その大きさは陽炎を乗せて呪いの中を突き進むのには十分なほどある。
「ね?」
「……わかったわかった。ここまでお膳立てされたら行くしかねえよ」
「決まりね」
方針が決まり、飛鳥、陽炎、ペストの三人はアウラに向かって動き出す。アウラがそれを黙って見ているわけもなく、黄金の竪琴を使って妨害するがディーンは雷を受けてもものともせずに進み、陽炎は機動力を活かして雷を避けながら進む。
雷による妨害をものともしない状況に苛立ちを覚えたアウラはその妨害方法を変える。
「こうなったら一人ずつ始末させてもらうわ!」
「させるかよっ!」
アウラの手のひらに呪いが収束し始め、その意図を察した陽炎は狼に指示を出してその速度を上げ、アウラの行動を阻止しようとする。
「無駄よ!」
「飛鳥、隠れて!」
しかし、陽炎がアウラのところに到達する前にアウラの手のひらに収束された黒い光が飛鳥に向かって放たれる。焦ったペストが声をあげるが、飛鳥は右手を掲げることしかできない。
「飛鳥ちゃん!!」
誰もが飛鳥が黒い光を受ける、そうイメージするがそれは裏切られることになる。
「…………何、コレ………」
アウラから放たれた光が飛鳥の掲げた右手から放たれた炎によって燃やされているのだ。そのことが意味する規格外さを理解した者はほとんどが驚き、あるいは動揺によって一瞬動きを止める。
「やりやがったな!」
その隙に呪いを抜け、狼の背を離れた陽炎は一瞬でアウラに接近し、ボディーブローをきめて体を浮かせる。そしてそのままそこに踵落としをくらわせて全力で地面に叩きつける。そのひょうしに手に持っていたバロールの死眼がアウラの手を離れる。アウラは再びそれを手にしようとするが、体がいうことを聞かず手を延ばした少し先にある死眼にわずかに手が届かない。
そこへ呪いの渦を抜けたペストが現れ、バロールの死眼を手にしようと手を延ばす。
「終わりよ、アウラ。今度は貴女がバロールの死眼に撃ち抜かれなさい!」
「…………殿下、お許しください。ここまでのようです」
アウラはほとんど動かせない体をなんとか動かし、懐から槍の穂先を取り出す。
「アウラ……それは!」
「……そうよ。これは太古にバロールの死眼を撃ち抜いた
ペストが死眼に触れるのと同時にアウラは手を延ばし、辛うじて死眼に穂先を突き立てる。すると瞳は二つに割けて分かれる。
その直後、死眼が二つに割れ辺りに死の呪いが無差別に撒き散らされる。
その光景を見ていたペストは突如自分の手が誰かに掴まれ、そのことに戸惑う。
「離すなよ!」
その犯人である陽炎はそのままその場を離れ、玲華と楓のいる場所まで一瞬で戻る。その場ではいつのまにか来ていた黒ウサギが玲華にクレームをつけていたが、当の本人は全く相手にせずサラッと聞き流している。
「……これはほんとにヤバイかな」
黒ウサギを無視してそう呟く玲華の視線の先にはその巨大な顎を開き、絶叫と共に大地へと向かう巨龍の姿があった。
アウラがボコボコにされてますが、これでも初期案よりましだったりします(笑)。友人と話していてこうなりましたが、初期案ではボコられた上に死眼を割れないとかいう散々な目にあってます。
今回だけは珍しく次回予告(ネタ)をしてみようかと思います……一文だけですが。
次回、「グライア死す」。デュエルスタンバイ!
今回も読んでいただきありがとうございました。