問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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 今回の話はこの小説を書き始めた頃から一番書きたかった話です。その頃の構想とは少し違うものになりましたが、やりたかったことはできました。

それでは、本編をどうぞ!


私の出会い。私の力

 ゲームクリアの目処が立った矢先、突如現れたグライアと名乗る黒い鷲獅子を引き付ける為に玉座の間を離れた耀。

 離れた直後こそ空中で応戦しようとしていたが、飛行技能の差と龍角の焔、その二つによって苦戦を強いられていた。

 状況を打開しようにもグリフォンのギフトによる風を使った攻撃は相殺され、身体能力を活かした攻撃は龍角の焔によって近づくことができないため通じない。

 

「せめて、もう一つ攻撃できるギフトがあれば……」

 

 せめてグライアのようにグリフォンのギフトと炎が操れれば、耀がそう考えた瞬間、その手のひらに少しだけ炎が出現する。

 

「なんで……」

 

急に炎が使えるようになったことでそのことに一瞬だけ集中してしまい、耀はグライアから目を離してしまう。

 

『戦いの最中に気を抜くなど、随分と余裕だな!』

 

 その一瞬の間に、グライアは耀に向かって突進する。耀はそれを紙一重で回避するが、グライアが横を通ったときの風にあおられ、バランスを崩してしまう。耀が体勢を立て直すよりも早く体の向きを変えたグライアが両の鉤爪を振るう。

 

「……っ!」

 

 鉤爪は耀の右腕と左足に深い傷をつけ、そこからは鮮血が流れる。

 

(私がやることは皆が欠片を見つけるまでこいつを引き付けること。……でも、どうやったら)

 

 耀は激しく痛む身体を無理矢理動かし、なんとかグライアから距離を取ろうとしながら自分がどうしたらいいのかを考える。

 

『俺の場合はまず行動の指針を決めて、それに沿って自分の勝率が上がるようにするな。まあ、俺は相手の勝率を下げて相対的に上がるようにすることが多いな』

 

「私がやるのは、あいつの足止め。私に勝率を上げるだけの余力はない。それなら……」

 

 耀は前に吹雪に言われた言葉を思いだし、それに従って方針を決め眼下にある市街地に降り立つ。

 

『こざかしい。物陰に隠れる程度で時間を稼げると思っているのか!』

 

 市街地へと降りる耀を見ながら吼えたグライアの全身から骨肉が軋む音が響き、その姿が大きく変貌し始める。その身体から翼と嘴がなくなり、その代わりに首筋から二つの頭と顎が生える。軋む音が聞こえなくなり、そこに存在したのは三つの頭を持つ猛犬だった。

 犬の姿になったグライアが地面に降り立ち耀を探そうとした瞬間、離れた物陰から透明な槍が飛来する。三つある頭のうち一つは虚を突かれた応を見せるが、他の頭が槍を対処する。

 

『不意打ちか。この程度の小細工が通用すると思ったか!』

 

「……思ってないよ。でも、次の動きは予想通り。……ケガのわりに投げられたけど、なんでだろ?」

 

 グライアが同じ手を使わせまいと龍角の焔を使って周囲の廃屋や瓦礫を吹き飛ばそうとした、その瞬間----グライアを中心にが爆炎に包まれた。

 

「今のうちに……っ!?」

 

 耀はグライアが炎に包まれ、周囲の状況が確認できなくなっている間に距離を取ろうとするが、傷を負った左足が思ったように動かず瓦礫に躓いて転んでしまう。すぐに立ち上がり後ろを振り返るとすでに炎を抜けて、耀目掛けて駆けるグライアの姿があった。

 

「これでっ!」

 

 耀は咄嗟に足元にあった瓦礫をいくつか蹴飛ばして牽制代わりにすると同時に空中へ逃げる。

 

『愚か者がっ!!我ら鷲獅子の一族は翼が無くとも飛翔できることを忘れたか!!』

 

 グライアは瓦礫が当たるよりも早く空へと飛び上がり、そのまま耀へと襲いかかる。耀はそれをかわしきるのは無理だと判断し、グライアの頭のうちの一つを蹴り上げるのと同時にその反動で無理矢理地上へと逃れる。

 グライアは満身創痍のまま地上へと叩きつけられた耀に追撃をすることなくもとの鷲獅子の姿に戻る。

 

『……解せんな。何故生命の目録を使って変幻しない?そのギフトを使えば小細工をせずとももう少しは戦えるだろう』

 

「……変……幻……?」

 

『小娘。貴様まさかそのギフトが何なのか知らぬのか?その生命の目録は生態兵器を製造するギフト(・・・・・・・・・・・・)。使用者は例外なく合成獣(キメラ)となり、他種族との接触でサンプリングを開始する。…………よもや、しらぬまま使っていたのか?』

 

 自分の言っていることを理解できていない耀の様子から自分と相手のギフトに対する認識に差があることを予想したグライアはそのままその推論を口にする。

 

「接触して……サンプリング……?」

 

 耀はグライアの口から語られた自らのギフトに関する自分の知らない事実に戸惑う。

 

『そうだ。先ほどお前が私を蹴り上げた時に発した剛力。あれは巨人族の物だ。数日前にアンダーウッドを襲ったときに戦ったはずだ』

 

 耀はグライアの言葉に驚くのと同時に一瞬だが突然炎を操れるようになったこと、槍を投げたときに傷を負っている腕で投げたのに思った以上の威力になったことの理由に予想をつける。

 

(玲華たちのギフトを教えてもらった、あの時に……?それならほんとうに……)

 

 接触によってサンプリングを行う。これが巨人と接触した一瞬ですら実行されていたのなら、玲華の呼び出したフェニックスにさわったときは確実に行われていたのだろうと耀は考えるが、結果としてそのことが一瞬触れただけでもサンプリングが行われることを突きつける証拠となってしまう。

 

「…………これは心を通わせた証じゃ……」

 

『……ふん。いっそ哀れだな、小娘。よもや己も知らぬ間に父の手で怪物と』

 

「不意打ちしようと黙って聞いてりゃ随分と言いたい放題いってくれるな」

 

 グライアの声を遮り耀の耳に届いた声は今この城にはいないと思っていた相手であり、心の底では会いたいと願っていた相手のものだった。

 

「……吹雪っ!大丈夫なの!?」

 

「……なんとかな。迎えに……そんなのんきなこと言ってる場合じゃねえよな」

 

 姿を見せた吹雪は身体中に傷を負っていて、立っているのがやっとだというのが見てわかる。

 

『何者だ?……まあいい。今さら死に損ないが一人増えたところで何も変わらん』

 

 吹雪のことを気にもとめず、グライアは龍角から炎が放出し、それで全身を包むとその中でグライアは体を変幻させる。たちまち鷲獅子の面影は消えてなくなり、炎が消えるのと同時に姿を現したのは巨大な四肢を持つ黒龍だった。

 

『これが貴様の父が造り出した業の片鱗。生命の目録の真の力だ!この力で二人まとめて死ぬがいい!!』

 

「……は?何言ってんだお前」

 

 グライアは口内に炎を蓄積し、熱線を放とうとする。しかし、炎が放たれるその瞬間に大きく開かれた口が勢いよく閉じられる。その結果炎がグライアの口内を暴れ回る。

 

『ぐあぁぁぁっ!貴様!』

 

「そんなざま見せといてよく言うな。何が二人まとめて死ぬがいい、だ。その程度かよ」

 

 呆れたように吹雪がグライアの言葉に反応し、その上で煽りを入れて返す。

 

『死に損ないの分際で!』

 

「仲間に手出されてこっちもだいぶイラついてんだ。くたばれ!」

 

 先ほどの失敗を踏まえ、炎を溜め殴られても問題ないよう顎に力を加えてもう一度熱線が放たれようとするが、吹雪はそんなことを気にせずグライアの顔---正確には目を狙って破片型の手榴弾を大量に爆発させる。

 グライアはたまらず顔を背けながら目をつむる。その結果、地面に向かって放たれようとしていた熱線は空に向かって延びていく。

 目の前で相手が視線を自分から外すという大きな隙を吹雪が見逃すはずもなく、一瞬でグライアの周囲を大量の武器が取り囲む。

 

「くらいやがれ!」

 

 グライアを取り囲んでいた武器が一斉に放たれ、さらにだめ押しの破片型手榴弾がまたも目を狙って爆発する。その攻撃が炸裂し始めると今どういう状況に置かれているのかを理解したグライアが迎撃の為に自分の周囲に一斉に焔を放ち簡易的に壁を作る。

 

「そうくるなら……氷星の軌跡(アイスミーティアー)!ついでにこいつでどうだ!」

 

 物量で押せないなら質量でと攻撃方法が切り替わり、焔の壁を突き破った氷塊がグライアを襲う。それによって動きが止まったグライアにさらなる追い打ちが行われる。手のひらと肘がハンマーで同時に殴られ、その結果両腕の肘から先がありえない方向に曲がってしまう。

 

「後はひたすら数で押せばどうにかなるだろ。……なあ耀、その生命の目録ってあいつが言ってるような物だと思うか?」 

 

「そんなこと!…………ない……と思う」

 

 耀は吹雪の言葉を強く否定しようとするが、軽く触っただけの巨人族やフェニックスの力を使えるようになったこと、目の前でグライアが生命の目録を使って変幻したことが頭を離れず言い切ることができない。

 

「耀。俺もあいつも親父さんが生命の目録を渡したときにその場にいたわけじゃない。だから、そのときの親父さんの想いを一番よくわかってるのは耀だろ?」

 

「……うん」

 

「だから、耀は自分の想いに従えばいいんじゃないか?それに、もしあいつが言ってることが本当だとしても関係ない。合成獣(キメラ)だとなんだろうと、俺がずっと傍にいる」

 

「……ありがとう、吹雪。少しだけグライア(あれ)お願いしてもいい?」

 

「おう。任せとけ」

 

 グライアの蹂躙(足止め)をそのまま吹雪に任せ耀はいまだに混乱している自分の思考をまとめようとする。

 

(……私には生命の目録(これ)がどんなものなかわからないし、グライア(あいつ)が言ってることが完全に嘘だって言う根拠なんてない。……でも、父さんは私のために、私が自分の足で外の世界を見て、色んなことができるようにって渡してくれた。…………私は、それを信じる。……合成獣(キメラ)になるとかよくわからないけど、大切な人(吹雪)が傍にいてくれるって言ってくれた、今はそれだけで大丈夫。それに、父さんとの約束もある。友人は大切にするって。十六夜、飛鳥、黒ウサギ、レティシア、玲華、楓、陽炎。吹雪とは友人じゃなくてもう一歩進んだ関係に……って、こんなときにこんなこと考えてる場合じゃないから!)

 

 耀は顔を紅くしながらブンブンと頭を振ってずれてしまった考えを戻す。幸いにもその様子を吹雪に気づかれることはなかった。

 

(ノーネームの皆だけじゃない。箱庭に来る前、来てからもたくさんの出会いが私にはあった。これは全部私の財産で、今の私の霊格(わたし)を作るものなんだ。だから、それを生命の目録(ここ)に込める!あいつに見せてやるんだ、父さんが私にくれたのは素敵な贈り物だって!)

 

 耀の決意に応えるように生命の目録は形を変え、刃の両面にそれぞれ一頭ずつ狼が彫り込まれた大鎌になる。それを両手でしっかりと持ち、今もグライアに質量と数に任せた攻撃を続けている吹雪に声をかける。

 

「吹雪、ありがとう」

 

「もういいのか?」

 

「うん。吹雪は大丈夫なの?」

 

「ああ。身体を動かさなくてすんでるからな」

 

 耀が思考の海に沈んでいる間グライアは何もできずただ蹂躙されるだけとなっていた。両腕が使い物にならなくなり、別の幻獣に変幻して吹雪に対抗しようと考えたが、ただでさえ押さえ込まれている上に突然行われる目への不意打ちに変幻する隙が作れずにいた。

 

「吹雪、後は私に任せてほしい」

 

「……わかった。ただし、あいつが動けないように援護はするからな。それ以上無茶はさせられない」

 

 吹雪は満身創痍の耀を止めようとするが、その目に宿る決意を見てそれを諦め、自分ができる限りサポートすることに決める。

 

「吹雪に無茶に関して言われたくないかな……でも、ありがとう」

 

「耀、頑張れよ」

 

「うん!それじゃあ行ってくるね」

 

 耀が空中へと飛び出すのと同時に吹雪は攻撃をグライア倒そうとするのではなく行動を止めるように変える。そのせいでグライアは何もできず、耀の接近を許してしまう。

 

「これがっ!!」

 

 耀は両手で鎌を振るい、グライアの両翼を切り裂く。

 

「私の父さんのくれた力!お前の言うようなものなんかじゃないっ!!」

 

 更に振るわれた鎌はグライアの胸を切り裂き、すでにほとんど身体が動かなくなっていたグライアは城の外の地上へと落下していった。




 耀の使う武器が原作と違うものになってますが、あれは誰への想いがよくこもっているか考えた結果となってます。なんで鎌なのか?これは考えた頃の自分に聞きたいですね。

今回も読んでいただきありがとうございました。
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