問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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珍しく有言実行。11月中に投稿できました。
筆が乗ったこともありますが、せっかくなので今日上げたいと思って完成させました。

それでは、本編をどうぞ!


ずっと隣で

 ゲームクリアから一夜明け、俺はアンダーウッドを離れ、ネージュグラースへとやって来ていた。サラから祭りをやり直すための支援をしてもらえないか?という打診が俺たち四人にあり、そのためにそれぞれが一時的にコミュニティに戻ってきていた。

 

「とりあえずはこんなもんでいいですかね?」

 

「ああ。これだけあればしばらくの生活分は足りるだろう」

 

 山のように積まれた調理器具などを一緒に戻ってきたヘルさんと眺める。俺たち四人のコミュニティにはそれぞれ特色がある。俺のところは工作系、陽炎のところは戦闘系、玲華のところが商業系、楓のところが作物などの生産を行っている。今回の支援として俺と楓が生活用の物資、陽炎が瓦礫の撤去などのための人員、玲華がそれらの流通などの管理となっている。

 

「傷のこともあるんだ。私に任せてくれてもよかったんだぞ?」

 

「リーダーとして受けた話ですし、これぐらいやっとかないと。それに、前の試練後で何も自分でできなかったのに比べれば普通に生活できてる分マシです」

 

「それはそうだな。あのときの君たちは見ていていてとても微笑ましかったぞ」

 

「……この話はやめましょうか。これ運んだらゆっくり過ごしますよ。今日は宴をやるとかいう話も聞いてますし」

 

 アンダーウッドではもう一度収穫祭を開くために瓦礫の撤去などが始まっているが、あのゲームと巨人族による被害は大きくその全貌が把握できていない。そこで今日一日を現状の把握と再建案の構築に充て、夕方頃からはゲームのクリアと休養を兼ねた宴を開くことにしたらしい。宴会というよりも軽い祭りのようなものになるらしいが。

 

「そういえば、ラティとレトはどうしてます?」

 

「まだ寝てるんじゃないか?遅くまでこれの準備をしていたからな。何か用か?」

 

「頑張って準備してくれたご褒美に今日ぐらいは向こうに連れてやってもいいかなって思って。巨人のせいで行ってすぐ戻ってこなきゃ行けなかったんですよね?」

 

 ラティとレトは火龍誕生祭のゲームで知り合った子供で、俺と耀にゲームのことを教えてくれたのがレト、ゲームの受付をしていたのがラティだ。こっちに来る度に面倒を見ているので、俺と耀にすっかりなついてしまった。

 

「ああ。本人たちは収穫祭が再開されるならそれまで待つと言っていたが、そこは確認してみたらいいんじゃないか?起きていればの話だが」

 

「それもそうですね。とりあえずに様子見に行かせます」

 

 ギフトカードから狼を二匹出し、二人が寝ている部屋へ向かわせる。起きていたら二人をその背に乗せて帰ってくるだろう。

 

「おに……吹雪さん、何か用ですか?」

 

 そうして待っていると数分で狼の背に乗って二人がやってきた。

 

「仕事の話じゃないからいつも通りでいいぞ。準備を頑張ってくれたご褒美に今日の宴会に連れていってやってもいいかなって思ってな。来るか?」

 

「やった!!」

 

「もちろん!!すぐに準備してくるから待っててね!」

 

 ゆっくり準備して丁度いいくらいということを伝える前に二人は自分の部屋に戻っていってしまい、その様子を見てヘルさんと顔を見合わせる。

 

「まったく、人の話は聞けとあれほど」

 

「まあまあ。楽しみにしてたんでそこはおおめに見てやってくださいよ」

 

「しかたない。それじゃあ任せてもいいかな?」

 

「もちろんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

「助かったよ。これで早く収穫祭が再開できそうだ」

 

「それならいいんだ、俺個人としても収穫祭は楽しみだからな。他の支援はもう届いてるのか?」

 

「ああ。君が最後だな。アンダーウッドを救ってもらった上にここまでしてもらってなんと礼をすればいいか……」

 

「それなら俺たちがここまでやって良かったと思える収穫祭にしてくれ。それでどうだ?」

 

「わかった。私たちにできる最高の収穫祭にしてみせよう」

 

 指定されていた場所に物資を運び、サラにその報告を済ませる。俺がヘルさんと話したりしている間に三人はこっちに戻ってきたのだろう。

 そのまま部屋を出て、外で待っていたレトとラティを連れて歩く。二人は玲華特製のお菓子を頬張りながら狼の背に乗っている。

 

「さて、誰か残ってるか?」

 

「「お、ね、え、ちゃーーーん!!」」

 

 ノーネームの皆が泊まっているところまでやって来て、誰かいるか確認しようとすると耀が出てきた。

 耀の姿を見つけた二人は狼から降りて一目散に走りだし、その背中に抱きつく。二人になつかれすぎて普段は耀がおねえちゃん、俺がおにーちゃんと呼ばれている。さすがに仕事のときは真面目な呼び方にしてもらってるが。

 

「うわっ! ……あれ?二人ともどうしてここに?」

 

「おにーちゃんが連れてきてくれたの!頑張ったご褒美だって!」

 

「おねえちゃんも一緒に行こうよ!!」

 

「二人とも落ち着けって。祭りは逃げたりしないからな」

 

「「はーい!」」

 

「耀、今って誰が残ってるんだ?」

 

「私だけだよ。飛鳥は陽炎の押しの強さに負けて一緒に出掛けたし、玲華と楓はここに来たときに出掛ける直前の十六夜と会ったから一緒に行っちゃった」

 

 元気な二人を制しながら誰かいるのか聞いてみると少し予想外な組み合わせも聞けたが、とにかく今残っているのは耀だけらしい。

 

「今から出掛けるところだったのか?」

 

「ううん、ちょっと気分転換に外に出てみただけ。吹雪が帰ってくるのを待ってたから」

 

「わざわざ待っててくれたのか。ありがとな。……それじゃあ一緒に行くか?」

 

「うん!」

 

 もともと耀と一緒にでかけるつもりでここに寄っているので待っていてくれたのはありがたい。耀の笑顔の返事を見ればそうしたかいもあるというものだ。

 

「やった!おねえちゃんも一緒だ!!」

 

「皆で手繋いで行こうよ!!」

 

 二人に言われるがままに手を繋いで四人並んで歩く。並びは俺と耀の間に二人がいる形になっている。

 

「なんか、あれだな。子供を連れてどこか出かける親ってこんな感じなのか」

 

「……ふ、吹雪?それって私と吹雪がけ、結婚」

 

「待ってくれ!そういうつもりで言ったわけじゃないからな」

 

「そ、そうだよね。びっくりさせないでよ………………私はそれでもいいけど」

 

 何気なくつぶやいた言葉を耀に拾われて恥ずかしさで気まずい雰囲気になってしまう。

 

「おねえちゃん?行かないの?」

 

「なんでもないよ。行こっか」

 

 早く祭りに行きたくてしかたないレトのおかげでそんな雰囲気もうやむやになる。それに感謝しながら歩き始めた耀とレトに引っ張られるように俺とラティも歩きだす。

 

「二人は今日は何がしたいんだ?」

 

「おいしいもの食べたい!」

 

「ここでしか食べられないやつがいい!!」

 

「耀、なにかおすすめは?」

 

「……吹雪?なんですぐに私に聞いたの?」

 

「…………特に深い意味は………………すいません。耀なら食べ物は確実にチェックしてるだろうと思って聞きました」

 

 目を逸らして耀からの追及を逃れようとするが、無言の圧力に負けて本当のことを話す。食べるのが好きだからきっとチェックしてるだろうと思ってたかつい言ってしまったんだ。

 

「知ってるけど…………そうだ、今日一日吹雪の奢りなら教えてあげる」

 

「……………わかったよ。その条件を飲もう」

 

「二人とも、今日は吹雪の奢りだから好きなだけ食べていいよ」

 

「やった!ありがとう、おにーちゃん!!」

 

「おねえちゃん、お勧めは何?」

 

「それはお楽しみ」

 

 耀に奢るとどんなことになるかは身をもって知っているが、今回は完全に俺の自業自得なので諦める。それに、目の前で目を輝かせてるラティとレトを前にして無理だと言えるわけがない。

 普段の生活に支障が出ないように祈っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも寝ちゃったね」

 

「あれだけはしゃぎっぱなしなら当然じゃないか?」

 

「そうだね」

 

 時間は夜になり、一日中はしゃいでいたラティとレトが疲れ果てて眠ってしまったので騒がしい宴会会場を離れその様子が一望できる丘へとやってきた。ラティとレトは狼の背に乗って仲良く眠り、その隣で俺と耀が並んで座っている。

 

「時間的にはいいぐらいだな。ここなら大丈夫だろ」

 

「吹雪、何かあるの?」

 

「見てのお楽しみってことで。予定通りならもうすぐ上がるはずだし」

 

「……上がる?」

 

「お、始まったな」

 

 俺の声の直後に聞こえてきた音と地上から空へと伸びるいくつもの光の方を耀が向く。ちょうどそのタイミングで夜空にいくつもの大輪の花が咲く。

 

「花火?」

 

「そう。せっかくの祝勝会なんだから派手にいこうって誰かが言い出したらしい」

 

「そっか。花火、綺麗だね」

 

「ああ」

 

 しばらく無言の時間が続き、花火の音だけが俺と耀の間を流れる。そんな時間も嫌な感じはしない。何も言ってこないので耀も同じだろう。

 そんなときにふと隣で花火を見ている耀のことが気になりそっちを向いてみると同じことを考えたのか目が合ってしまう。お互いにそのことがわかってしまい、花火に視線を戻すこともできず気まずい時間になってしまう。

 

「……ねえ、吹雪」

 

「ん?」

 

 そんな気まずい沈黙を破ったのは耀の方からだった。

 

「覚えてる?前に二人で花火を見たときのとこと」

 

「もちろん。約束しただろ?また二人で見ようって」

 

「今回はちょっと違うけどね」

 

 耀は微笑みながら眠っているラティとレトの頭を撫でる。

 

「あれから色々あったよね」

 

「……そうだな」

 

 あの夏祭りの前はペルセウスとの戦い。その後は火龍誕生祭とペストの襲来、先代からの試練、玲華と楓と再会して今回の巨龍のゲーム。箱庭に来てからそこまで時間は経っていないが、この間にあったことはどれも忘れられない。

 

「魔王との戦いもあったし、楽しいことだけじゃなかったけどどれも私の大切な思い出だよ。それも全部吹雪のおかげだよ」

 

「……俺の?」

 

「うん。可能性の話をするなら、吹雪のいない箱庭で暮らして、色んなことを経験していくこともあったかもしれない。きっと箱庭に来る前の私ならその状況でも楽しめたと思うよ。でも、今の私はそれには耐えられないと思う。箱庭に来て飛鳥や十六夜、黒ウサギ、皆と色んな思い出を作ってきたけど、私の一番は吹雪との思い出なんだよ?」

 

「俺との思い出が一番、か。俺はどうなんだろうな」

 

 箱庭に来て今日までに色々なことをしてきたけれど、俺にとって誰との思い出が一番か。事あるごとに心配させて、そのせいで泣かせてしまったり、色んなことを相談されたり、ゲームがないときは一緒に出掛けたり、改めて考えてみるとそれはすぐにわかった。

 

「……俺も、耀との思い出が一番だな。何があったかを思い出してみると耀との思い出が一番に浮かんでくる」

 

「そっか…………そうなんだ」

 

 耀は俺の答えにとても嬉しそうに呟く。気がつくと話し始めた頃にはまだ聞こえていた花火の音も聞こえなくなり、そこには満天の星空だけが広がっていた。

 

「改めて思い出してみると、こっちに来て大きなゲームをやる度にこうして耀と星空を見てる気がするな」

 

「……そうだね」

 

 そう呟いて星空を見上げる耀の姿に見惚れてしまう。遊びにいくときやゲームをしているときとは違う普段は見れないその姿を魅力的に思うし、もっと見ていたいと思ってしまう。

 

「はぁ…………やっぱりか。そうだよな」

 

「……吹雪?」

 

 玲華に色々と言われてそうかもしれないと思ってはいたけど、その通りだった。それさえわかってしまえば今回のゲーム攻略のときに焦っていたことにも納得がいく。

 

 

 俺は、耀のことが好きなんだ。

 

 

 

「言わないわけにはいかないよな……」

 

 耀のことを好きな理由はいくつも思い付くが、考えてるだけでは仕方がないのでまとめて言ってしまおう。

 想いを告げることを決め、一度大きく息を吸って吐き出しあらためて耀のほうを向く。

 

「耀、話がある」

 

「……わかった」

 

 俺の態度を見て耀も真剣な面持ちで俺のほうを向く。

 

「俺は…………耀のことが好きだ。俺が無茶したときはいつでも心配してくれるぐらい優しくて、動物だったり楽しいことだったり、自分が好きなことに対してまっすぐで、楽しいときは楽しいって年相応に可愛くはしゃいで、それでも周りとの差を気にしたり、そんな色んなところを見せてくれる耀のことがいつのまにか好きになってた。改めて言うぞ。俺、白銀吹雪は春日部耀のことが好きです。俺と付き合ってください!」

 

 言いたいことを言ったらかなり長くなってしまったが、今の俺が耀に伝えたいことは全部伝えられたはずだ。

 

「…………ぐすっ、私も吹雪のことが大好きです。私が困ってるときはいつも助けてくれて、誰かのためならどんな無茶でもするぐらい優しくて、ゲーム中はすごく頼りになって、でも、普段はノリもよくて一緒にいると楽しくて、私の箱庭生活を楽しくしてくれたのは間違いなく吹雪のおかげで、そんな吹雪と一緒にいるうちに離れたくないって、ずっと一緒にいたいって思うようになってた。私、春日部耀はそれぐらい白銀吹雪のことが大好きです!私でよかったらよろしくお願いします」

 

 耀は涙ぐみながら俺の告白に答えを返してくれる。それを聞く限りそれは嬉し涙だろう。

 お互いの気持ちが同じことがわかった俺たちはどちらからともなく抱き締め合う。

 

「耀、前に俺は勝手にいなくなったりしないって約束したよな?勝手だけど、あれはちょっとだけ変えさせてほしい。俺はずっと耀の隣にいる。だから、耀も俺の隣にいてくれないか?」

 

「うんっ!これからもずっとよろしくね!」

 

 返事と共に耀が唇を俺の唇に重ねてくる。今まで体感したことがなかった幸せな時間にずっとこの時間が続けばいいのにと思ってしまう。どれだけそうしていたのがわからないが、息が苦しくなりお互いに離れる。

 さっきまでの時間が名残惜しいが、それよりもやることがあるので、そちらを優先する。

 

「さて、と。約束の証に…………よっ、これでいいだろ」

 

 その場で氷を使ってネックレスを作る。チェーンの先には雪の結晶と鳥の羽が付けてある。前にお揃いで買ったブレスレットと同じ柄だが、俺たち二人にはぴったりの柄だ。

 

「…………ありがとう。ずっと大事にするね。大好きだよ、吹雪」

 

「俺もだ。耀、大好きだ」




 というわけで今回は告白回となりました。初めの予定では他二組の様子も書く予定でしたが、気がついたら今回の主役二人だけの話になってました。

 告白シーンの流れは決めていましたが、セリフは完全にキャラが動くのに任せた形になりました。今日11月22日はいい夫婦の日ということでせっかくならと今日中に上げることにしました。小説を書き始めた頃はキャラに愛着が沸いてこんなこと考えて投稿するなんて思っていもいませんでしたね。


 ある意味では区切りの回ということでいつもより長く話してしまいましたが、今回で4巻は終了、次回からは5巻に入っていく予定です。5巻は主人公交代?というわけではないですが、あるキャラがメインとなる予定です。


それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。
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