推しの子 その瞳に映るのは   作:ノックスさん

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画戯丸様、誤字報告ありがとうございます。

恋愛描写は難しいですね、やっぱり。


第十八話

 無事に生放送の歌番組を終えた僕達はマンションへと帰宅した。

僕達が居ない間にアクア達の面倒を見てくれたミヤコさんにお礼を言って斎藤さんと一緒に帰っていった。社長の方はすごく疲れた表情をしていたが、どうしたんだろう?

 夜も遅いからベビーベッドにはアクア達が寝息を立てて眠っている。

ソファーに座り、今日の事を振り返っていると僕の両腿へと跨るようにアイが座ってきた。ふわりと彼女の良い香りがした。

 

「奏、私のために歌ってくれたんだよね?」

 

 必然的にソファーの背もたれに押し付けられているような体勢になった。

アイの口からは甘い吐息が漏れ、その瞳は潤んでいるのが見てとれる。いつにも増して妖艶さが醸し出されている状態だ。

 それはやはり先ほど終えた歌番組で僕が歌った曲のことが影響しているのか。

アイなら当然、歌われた歌詞の内容が何を指し示しているのかに気付く。

 

「そうですね。一般的に見れば、あの曲は誰かに対して歌われている曲だと気付きます。好きな人に対して歌いたい曲と言うテーマで作られている」

 

「あの歌詞は私達の出会い、人を好きなる気持ちがわからない苦悩、最後に互いのすべてを捧げますっていう告白だって私は気付いちゃった」

 

 だからアイはスタジオの席でほんのりと頬を赤くして僅かに俯いていたんだ。

向けられているカメラとかは把握してるからバレてないけど、斎藤さんとしては心臓に悪かったんじゃないかなぁ。 

 あ、だからさっきあんな疲れた顔をしてたのか。

 

 僕の両頬に彼女の両手が添えられて、おでこが触れるほど顔が近くなる。

視界には彼女の美しい星のような瞳しか見えない。その瞳に魅入られてしまいそうだ。同時に彼女もまた僕の瞳しか見えていない状態だろうか。 

 それほどまでに距離が近くなっている。

既に体は密着してアイの体温を直に感じられた。触れ合った肌はいつもよりも体温が高く、頬も赤くなっているのかな?

 

「私ね、本当に奏が居なかったら生きられない体にされちゃった」

 

「僕も同じですよ。アイの今日のパフォーマンスはいつもよりもキレてた。あれは僕に魅せたかったんでしょう?」

 

「ふふっ、やっぱりなんでもお見通しなんだね」

 

 彼女は僕が居なかったら生きられないと言うように僕もまたアイが居なければ生きられない体にされてしまったのかもしれない。

 目を瞑ったアイが顔を少し前に持ってきたことで僕達は口付けを交わす。

触れるだけの口付け、その度に僕の体は蕩けそうな感覚に襲われる。きっと今の顔は他の人には見せられない表情をしているだろう。

 

「好き、好き、大好き」

 

「僕も大好きです」

 

 互いが互いを求めるようなキスへと変わった。

堪らなく愛おしくて彼女の事を手放したくないという気持ちがさらに強くなっていく。駄目だ、本当に僕は彼女無しでは生きられなくなってしまうかもしれない。

 静かな空間で僕達の舌が絡み合い、厭らしい水音と子供達の寝息だけが耳に入って来る。

もし、アクア達が目を覚ましても何をしているかは理解できないと思うけど見られるかもしれないという背徳感はあった。

 

「ぷはぁ……」

 

「……」

 

 僕とアイの唇が離れると唾液で出来た銀色の橋が伸びてプツリと切れる。

呼吸も忘れるほどのキスに僕は大きく深呼吸して肺へと酸素を取り込んだ。だけど、逆に彼女の良い匂いを更に感じることになってしまう。

 視界が真っ暗になると同時に顔が温かい何かに包まれているような感覚がある。

ずっと包まれていたくなる感触とドクンドクンと感じる鼓動。そう、僕はアイに胸元へと頭ごと抱きしめられていた。

 

「こうしていると奏が私だけのものだって感じる。私って独占欲が意外と強かったのかな?」

 

 僕もアイの背中に手を回して抱きしめるように自身の方へと引き寄せる。

ただでさえ密着しているのに更に距離が縮まったことでより彼女を感じることが出来た。それはアイも同じようで伝わってくる鼓動が強くなっている。

 彼女は愛を知った今でも愛に飢えているのはわかっていた。

幼少期の経験とはそう簡単に取り除けるものではないし、それがより辛い過去なら上書きする意味でも幸せを意識せずとも求めているんだ。

 

「それは僕も同じだよ。独占欲が強くないと君の全てを手に入れるって言葉は使わないよ」

 

「嬉しいな。でも私の全てはもう奏のものなんだよ?」

 

「僕もアイの虜ですよ。そうじゃないと生放送であの歌は歌いませんから」

 

 僕も彼女が言っているように独占欲は強いと思う。

アイが僕の虜と言うように僕もアイの虜になっている。お互いがお互いの虜になっていて、今なお幸せを感じた。

 人を好きになるってやっぱり素晴らしいことなんだなと改めて思ったな。

アクア、ルビーもまだまだ小さいけど、僕達と同じように幸せをその手に掴んでほしい。

 

「奏、もう一回しよ」

 

「はい」

 

 そして僕とアイは再び大人のキスをする。

こうやって求められても嫌だという気持ちにならないってことは僕も本当に彼女の事が好きなんだと再認識した。

 ふと耳を澄まして僕らのキスの音しか聞こえず、先ほど聞こえていた音が聞こえてなくなったことに気付いた。

 

 そう、子供たちの寝息の音が聞こえなくなったのだ。

チラリと視線をベビーベッドの方へと向けるとアクアとルビーが目を覚ましている。目を覚ましても泣くこともないし、こちらをじっと見ているような気がする。

 

赤ん坊にしては瞳に理性が宿っている。

普通に考えて早熟すぎる気もするが、アイに言えばきっと私達の子供だから天才なんだよと言いそうな気もするな。

その理知的な瞳に何か感じるものがあるけど、今はあえて知らないふりをしておこう。それがきっとアクアとルビーのためになると信じて――。

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