推しの子 その瞳に映るのは   作:ノックスさん

19 / 35
アクア視点と少しだけルビー視点


第十九話

 赤ん坊の体は常に睡魔との戦いだ。

お腹が満腹になったりしたらすぐに眠くなってしまう。それに加えてアイの復帰番組のNステを見ていたから眠りにつくのも早かった。

 まさか妹のルビーも前世の記憶があると知って驚いたな。

俺と同じく前世からアイの事を推している大ファンだと自負していた。それに父親が奏だと知って更に喜んでいたのは記憶に新しい。

 

どうやら二人はどちらも推していたアイドルだった。

昼間はテレビを見て騒いでいた俺達だけど、体質には勝つことが出来ずにぐっすりと眠りについていた。

 

アイと奏の二人が帰宅して甘やかされてルビーと同じベビーベッドで眠っていたんだけど……。

 

「……」

 

 何かの音で俺は目を覚ました。

耳に聞こえて来る水気のある音はなんだろう? 隣に目を見やるとルビーが顔を真っ赤にして何かをジッと見つめている。 

 俺もそっちを見ると顔が赤くなっていく。

父さんと母さんがソファーの上でキスをしていた、それも舌を絡ませる大人のキスだ。

 

 座っている奏の上に跨る様に座ったアイが相手を抱きしめながら口付けをしていたんだ。

推しのアイドルが前世の俺よりも若い奏とあんなに厭らしいキスをしている。今、いったい何時だと思ってるんだ!?

 

そもそも自分達の子供の前で何やってるんだよ?!

 

「……パパ、ママすごい

 

「……おい、いつから見てるんだよ?

 

 顔を赤くしながらも二人がキスしている光景を指の隙間から見ているルビーに俺は問いかけた。

俺よりも先に起きてたってことはファンからしたら絶望級の光景を見続けていたことだよな。前世の俺が見たら血の涙を流してるかもしれない。 

 

いや、今でも目から血の涙が出そうだ! まぁ、出ないけど。

 

「……10分くらい前

 

「……10分!? 10分もこんな感じでイチャついてるのか!?

 

静かにしてよ、ママ達が不審に思うでしょ

 

 ルビーの中ではある方式が成立しているんだな。

前にこんな事を言っていたのを覚えている。推し×推し=尊いとかいう謎の方程式を呟いていたけど、その答えが目の前でイチャついてる2人だって言うのか?

 赤ん坊は喋ることが出来ないけど、俺達は前世がある影響なのかわからないけど既に今の時点で喋ることが出来る。

もちろん、喋るようなへまはしないけどルビーと二人だけの時は普通に喋ったりしていた。

 

 こうして話している間もルビーはアイ達から視線を外さない。

というよりもガン見していると言った方が正しい。心なしか吐き出す息が荒くなっていないか?

 

お、おい。もう寝るぞ、このままじゃ色んな意味で良くない

 

もう少し、もう少しだけ――

 

 ルビーの腕を引っ張って俺も含めて精神的に良くないと寝ることを提案する。

しかし、もう少しだけ見ていたいと視線はずっと二人の方を見続けていた。どれだけ二人のことが好きなんだ!?

 その時だった。

不意にアイとイチャついている奏の瞳がこちらへと向けられた。

 

「っ……」

 

 俺達が見ていたことに気付いたんだ。

瞳と瞳が合っている。前世の時にも感じた本質を見通されるような感覚、奏の前では偽りを許されないような感覚に襲われた。

 でも、すぐに視線が外されてアイを抱きしめて耳元で何かを小声で話している。

すると彼女も俺達の方に視線を向けた。

 

「あ、本当だ。アクア達が起きる」

 

「少し煩かったかな?」

 

 ソファーから立ち上がった二人が俺達の居るベッドに歩いて来た。

いつもはぐっすり眠っている時間に起きているから少し驚いているみたいだな。俺達は夜泣きもしないし、知識とは当てはまらない部分があるし。

 腕を伸ばして赤子らしく演じているルビーをアイが抱え、俺は奏に抱えられた。

駄目だ、この体に加えて父さんにあやされると一気に睡魔が襲ってくる。相変わらず、どうすればいいかを理解しているとしか言えない。

 

「そのままお休み、アクア。赤子は眠ることが仕事だよ?」

 

「ばぶっ」

 

 はっ! 無意識にバブって言葉が……!?

しかも今の声は聞いているだけで落ち着くような声色で話しているのか。声の質の使い分けってやつか、歌の特性によって使い分けてる奏の代名詞とも言える技術。

 瞼が重くなって、これ以上は目を開けてられない。

まだ目を開けていたいという俺の意思とは反対にどんどんと睡魔が強くなる。ベッドにゆっくりと寝かされ、隣には既にルビーが寝息を立て始めていた。

 

「はぁ、私達の子供はやっぱりかわいいね」

 

「当然でしょう? だって僕達の子供ですよ。可愛くないはずがないですよ」

 

「将来が楽しみだね。私達と同じアイドル? それとも――」

 

 また惚気だしているがもう意識が限界だ。

瞼がゆっくりと閉じられ、俺の意識は黒に塗りつぶされて睡魔に抗う事は出来なかった。

 

 

 昨日の夜、水の音みたいな音が聞こえて目を覚ました私はソファーにママとパパが居るのを見つけた。

ママは前世で一番推していたアイ、パパも同じくらい推していた牧野奏。病気で死んだはずの私が二人の子供に生まれ変わったなんて夢のようだった。

 私も生きていれば、二人と同じ16歳。

ゴロー先生と一緒に二人の応援をしていたのは今でも思い出すことが出来る。16歳まで生きていられたら先生に……。

 

今はどうしてるのかな? 大きくなったらまた会いたいな、先生。

 

 

 話が逸れちゃった。

ママとパパがソファーに居て、き、キスしてたの!! 推し同士がくちづけを交わす光景に目を逸らすことが出来なくてずっと魅入るように見つめちゃってた。

 見てるだけでドキドキして私の息遣いが少しずつ荒くなっていくのを自覚した。

顔がどんどん熱くなって無意識に興奮しているんだってわかる。見てちゃダメなのに、目を離せなかったの。

 見ているだけでママが本当にパパの事を大好きなんだって伝わって来る。

顔を赤くして、パパを見つめる姿は恋する乙女だもん。好き、大好きって言葉だけじゃ言い表せないって気持ちが溢れだしてた。

 

 

 そ、それにあんな舌同士を絡めてっ!

思い出すだけでも恥ずかしくなっちゃうよ! あれが大人のキスってやつなの!? 私の知ってるキスは唇を触れさせるだけだった。

 それで耳に残る厭らしい音の正体はその大人のキス。

普段見るママと違ってその姿はとてもえっちな感じがして、同じ女の子なのに私までドキドキしたよ。

 

「おい、顔が真っ赤だぞ。また昨日のことを思い出してたのか?」

 

 昨日の光景を思い浮かべていると隣から声がかけられた。

私の双子の兄で私と同じ前世の記憶を持っているオタク。アイちゃん推しでその子供に生まれ変わることが出来て喜んでる姿を見て普通にキモかった。

 でも本当にアイちゃんが好きだっていうのは伝わってくる。

だからパパと幸せそうにイチャイチャしている光景を目の前で見せつけられると目が死んだようになっているのはいつものこと。

 

「そ、そんなわけないじゃん」

 

「動揺してるのがバレバレだぞ?」

 

「うるさいなぁ。昨日だってあんたが騒がなかったらもっと見れたのに」

 

 そうだよ。アクアが騒がなかったらもう少し見ていられた。

小言を言ってくるのを無視して私は文句の一つでも言ってやる。もっと見ていたかったというのは本当。だって二人の姿を私とゴロー先生の姿に置き換えて妄想してしまっていたから。

 今でも思うんだ。

もし、前世の私が病気で死なず、16歳になっていたら先生とああいう関係に成れたのかな?

 

 

先生、私が大きくなったら会いに行くからね――。

書き直しを検討中です

  • 書き直した方が良い?
  • そのままで進めてOK?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。