推しの子 その瞳に映るのは 作:ノックスさん
皆さん、ありがとうございます!
奏の様子がいつもと違った日から数日が経過した。
仕事がオフの日にお昼ごろに目が覚めて身支度を終えるとリビングで紅茶を飲んでいる奏の姿がある。いつもと変わらない姿に安心感を覚えた。
「おはよう、奏」
「おはよう、アイ。よく眠れましたか?」
「うん、ぐっすりだよ!」
おはようの挨拶をすると私に微笑んでくれた。
うん、やっぱり奏は笑っている顔が一番好き。真剣な表情、考え込んでいる表情、眠そうな表情、どれも好きだけど笑顔が一番!
「アイも紅茶は要りますか?」
「頂こうかな、ミルクも忘れないでね」
「わかってますよ」
ティーポッドから注がれる紅茶にミルクを入れて私の前に置いてくれた。
一口飲むと茶葉の風味がミルクと混ざって私好みの甘さになる。うん、やっぱり私はこれくらいの甘さがちょうどいいかな。
休みの日はこうやってゆっくりと過ごすのも良いなぁ。
アクアもルビーもまだ眠ってるし、昨日は遅くまで起きてたみたいだったから当分起きないかな?
「ねぇ、奏はミヤコさんに何をしたの?」
「特に何もしてませんよ。僕がしたのはあくまで同じことを繰り返さないでくださいという注意喚起です」
「でも、来た時さ……」
奏がしたのは注意をしただけだって言うけど、それだけであんな状態で来るものなの?
いつもと同じ時間に社長と一緒にやってきたミヤコさんだったけど、様子がおかしかった。大丈夫?って聞いても大丈夫よって言うだけ。
それは明らかに嘘だっていうのがわかる。
社長達には少し先に外で待ってもらって私とミヤコさんが二人きりになれる状態を作った。
そしたらびっくり、急に私の前で膝をついたんだ。
『アイさん、ごめんなさい。私は愚かでした、一時の感情で貴方達を!』
『急にどうしたの!?』
『週刊誌に子供達の存在を売ろうとして――』
ストレスで感情に任せて私達に子供が居ることを売ろうとした。
その言葉を聞いたときに、どうしてミヤコさんがこんな状態になっているのかをわかった。この精神的に弱りきった姿を私は知ってる。
奏は大切な人が傷つくことを嫌う。
だからミヤコさんがやろうとした行為は私達が傷つき、危険に晒されることを意味していた。それに加えて目の前で弱っている状態を見たら気付く。
奏、もしくは真莉愛さんが何かをしたってことに。
『そんなことをしようとしたの? 私達の幸せを壊すの?』
『もう二度としません! 牧野君に誓いました!』
きっと今の私は怖い顔をしてるんじゃないかな。
自分でもこんな冷たい声が出るなんて思わなかった。私ってこうやって怒りを露わに出来るようになったんだね。
ふと鏡に映った私の顔を見たら奏が好きだって言ってくれた瞳の中の星が白から黒へと変化していたの。
私の気持ちが暗い方向へと流れたから星の色が変化したのかな? たまに瞳に星を宿す人たちは基本は白色だけど、黒い星を宿す人を一人だけ私も知ってる。
劇団ララライに居たカミキヒカルっていう役者さん。
もし、私が奏と出会わなかったらこの人に色々相談をしていたかもしれない。そういった悩めることを相談できそうな雰囲気を醸し出してた。
『奏が許したなら私も許すよ。だからこれからもアクア達の事を頼んでもいい?』
『は、はい。私でよかったらアクア君たちのことをお世話させてもらいます』
『ふふ、じゃあお願いします』
感情の変化で瞳の星の色が変化するんじゃないかと奏は言っていた。
確かに昔、社長にスカウトされた時には私の瞳には黒い星が宿っていたのを今でも覚えている。あの時は確か、お母さんが迎えに来なかったと言って暗いことを話していたはずだったよね。
それで白から黒に変化を起こしていたと考えるなら感情が影響しているって考えるのは答えの一つになるんだと思うんだ。
話が逸れちゃったけど、それで私はミヤコさんの事は許したよ?
私が許す許さない以前の問題だと思っちゃったんだ。だって彼女は既に真莉愛さんに目を付けられちゃったみたいだし、私や奏が許してもお義母さんが許すかは別だもんね。
「自業自得なのかな?」
「未遂ですからこれで済んでいるんですよ? もし、本当にアクア達の事が週刊誌へと情報が流されていたら社会的にも精神的にも母さんに終わらせられていたかもしれませんよ」
「あー、真莉愛さんってそういうところは厳しそうだもんね」
未遂だからこれで済んでいるかぁ。
それでもミヤコさんが可哀想に思えてしまうのは仕方ないのかな? 許してほしいって懇願する姿に嘘はなかったし、本当に心の底から思って出た言葉だと思う。
それほどまでに真莉愛さんが行ったことは強烈なんだと思った。
奏から教えられた内容は本当に人の心の奥底まで影響を与える暗示みたいな事が出来るんだって感心するばかりだった。
「あ、ルビー達も起きたのかな」
「じゃあ、僕はアクアのミルクを作るよ」
私達がミヤコさんの事で話しているとルビーの泣く声が聞こえて来た。
そろそろ良い時間だし、お腹が空いて目が覚めたのかな。奏はすぐにアクア用のミルクの準備をしてくれてる。
アクアは私からの授乳が嫌なのかなぁ?
ルビーは今も喜んで飲んでくれてるし、そういうのが嫌いな子も居るって聞いたことあるけど飲んでくれないのはやっぱり寂しいな。
でも意地でも飲んでくれないし、やっぱり恥ずかしがってる?
「一杯飲んで大きくなろうね、ルビー」
「ばぶぅ」
今も奏からミルクを渡されて飲んでるけど、チラチラこっちを見てる。
体は求めてるけど、理性がそれを否定してる感じかな? 今の時期でそんなことってある? いくら何でも早すぎる気がするけど、もしかして天才!?
私と奏の子供だからその可能性は十分あり得るよね!
でも、私って頭はそんなに良くない方だからそっちは奏に似たのかな? 今からでもこの子達の将来の事を考えると楽しみ!
「アクア」
「ばぶ?」
「ルビー」
「んぶ?」
「奏」
「どうしました?」
私が1人ずつ、名前を呼ぶと皆がこっちを見てくれる。
私がずっと欲しかった家族。奏と私が愛し合って生まれた子供達。きっとこれからもずっとこの生活が続きますようにと私は願う。
だって私は幸せの意味を身をもって知ることが出来たから。
芸能界という世界は嘘に満ち溢れてる。それでも嘘を付けるのは武器になること、違和感のない嘘は虚もまた真実になる。
だから私は外では嘘を付く。
本当の私を知るのは奏達だけでも十分だから。
「大好き」
私は奏の前では嘘を付かない。
ううん、嘘を付きたくない。だからこの気持ちに偽りはないし、ずっとこれからも言い続けるよ。もちろん、アクア達も一緒だけどね?
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