推しの子 その瞳に映るのは   作:ノックスさん

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第二十六話

 テレビ番組で奏君と一緒に出演できると知った時、僕は嬉しかったよ。

劇団ララライに居た頃に出会った年の近い男の子。いつもと同じように人に受けやすいような演技をして施設の案内を行った。 

 話している中で彼は他の人とは違う特別な価値ある人物だということがわかる。

僕の心の内を見透かしたような質問をしてきたときには取り繕うのに苦労したよ。きっと僕の心は誰にも理解されないし、されても賛同されることはないはずだから。

 

「テレビの番組に出るとは珍しいね。役者一筋だと思ってたけど――」

 

「こういう経験も積んでおくべきだと言われてね。でも、出演依頼を了承してよかったよ、奏君が居るとは思わなかったからね」

 

 奏君が言うように僕は基本的には役者の仕事しか請け負っていない。

こういったテレビの依頼は断るし、自分から出演したいということはほとんどしない。今回は新規の芸能プロダクションを立ち上げるなら経験を積んでおくべきだと言われたから出演したに過ぎないんだ。

 

「経験を積むこと自体は損じゃないと思う。僕も色々な現場や番組に出させてもらって経験を積ませてもらってるから」

 

「君がそういうならきっと無駄にはならないんだろうね」

 

 若手の芸能人の中で最も勢いがあり、多分野で活躍する人物と言われたら真っ先に名前は上がるのが奏君だ。

まだまだこれからも活躍することが予見され、まだ底を見せていない。まだ一番の輝きを放たず、頂点へと昇っていく途中。

 君の命はいったい何人の分と等価になるんだろう?

君の輝きは今なお、僕を焼き切るほど眩しく照らし続けている。強すぎる光は多くの影を作り出してしまう事も知っているのかい?

 

「カミキ君、久しぶり! 劇団ララライで会って以来かな?」

 

「やぁ、アイさん。お久しぶりです」

 

 そしてB小町のアイ、今やファンを魅了してやまない一番星を目指すアイドル。

奏君と同じく命に価値を見出したアイドルだ。劇団ララライが開催したイベントで見た時、この子はきっとスターに成れる素質を持っているとすぐにわかった。

 僕と同じ、感性が壊れているような感じがしたけど奏君との出会いがそれを変えていた。

もし、彼女が奏君ではなく僕と先に出会っていれば、違った未来の景色が見れたかもしれない。

 

 これはあくまでIFの可能性の話でしかない。

でも、もし価値ある命である事には変わりない。彼女は今や国民的スターと言っても過言ではない立ち位置になりつつある。

 そんな彼女の僕の手で命を散らすような事態になってしまえば、僕は彼女の命の重みを背負わなければならない。

 

あぁ、想像するだけで溜まらないよ。

それがどんなに素晴らしいことなんだろうか。きっと最高の気分になれる事だろうね、本当に。

 

「聞いたよ? 近いうちに事務所を立ち上げるんでしょ? すごいねー」

 

「誰に聞いたんですか? まだほとんどの人は知らないはずなんですが……」

 

「んー、内緒かな」

 

 僕が事務所を立ち上げる話をどうして彼女が知っているんだ?

この話はほとんどの人間には話していないから知らないはずだけど、なぜアイさんが知っている? 探ろうにも彼女は嘘と真実を織り交ぜて真意に辿り着くことが出来ないようにしている。

 ある時期から彼女は嘘だけではなくなった。

そこから一気にアイドルとしての魅力が高まり、多くのファンを魅了し始めたんだった。だから彼女の本心を探るのは僕でも難しい。

 

 そもそも妙にガードが堅くて情報を引き出せない。

聞きたい情報ものらりくらりと交わされてしまって、本質へと辿り着けない。劇団ララライであった時もそうだった。

 

 

 それでも一つだけわかっている事がある。

アイさんは奏君の事をおそらく好きだ、いやあの感じからして愛しているという感情に近いものを持っている。

 何せ二人の情報はかなり厳重に守られていて情報を手に入れることが極めて難しい。特に奏君の場合は国の最重要データバンクにアクセスした事があるハッカーでも情報を抜き出すことが出来ないほど、厳重に情報が守られている。

 ただアイさんの方は一瞬だけデータを引き抜くことが出来たらしい。

その人の話によれば、彼女は誰かの子供を出産したという情報が確認できたらしいけど、真相を確認する事が出来なかった。

 

どうしてか? それはその話を聞いた数日後に原因不明の死を遂げた。

 

 

 そしてこんな事をずっと言い続けていたらしい。

"黄金色の瞳がずっと俺を見ている。目を瞑っても耳を塞いでも聞こえて来るんだ"と。

 

最後には自分の耳に尖ったものを突き刺して死んでいたらしいんだ。らしいというのは警察関係者から流れてきた話を耳にしたからだよ。

 

「内緒か、それなら仕方ないですね。そうだ、奏君もアイさんも今度講演会をするんですが、見に来ませんか?」

 

「講演会ですか?」

 

「えぇ、役者に興味のある子供達に素晴らしさを伝えるために講演会を行う予定なんです」

 

「日程次第ですね」

 

「私も社長に確認してもらわないと駄目かも」

 

 講演会に誘ったのは2人との接触機会を増やすための口実だ。

それぞれが違う分野で活躍するから接点を多く持つことが出来ない。だから、それを補う意味でも勉強になるという意味も兼ねて誘った。

 最近は奏君もアイさんもドラマや映画の撮影にも出始めているからね。特にアイさんはそういった意識を持てばさらに命の価値を高めることもできるだろうから。

 

 

 しかし、僕以外に彼らの命を狙っている人物が居るのかな?

宮崎総合病院の医師がアイさんの出産日と思わしき日に死亡しているという話もあった。アイドルは偶像だ、だからファンの真理からすれば子供が居るなんてことは許されない。

 狂信的なファンを使って犯行に及ばせた?

少なくとも僕以外の誰かが行ったのは確かだ。ただの一般人が極秘出産する予定の病院を知る手段があるわけないからね。

 

 

あぁ、早く一番星の輝きを手に入れてほしいよ。

そして僕に命の重みを感じさせておくれ、奏君、アイさん。

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