推しの子 その瞳に映るのは 作:ノックスさん
アイさん、無意識ですか。イチャイチャ回?
あれから一年が経過した。
ヒカル君の講演会や様々なイベントに参加して忙しい日々を送っている僕達。アクア達も自分で歩いたり、喋ったりできるようになった。
変わったことと言えば、アイが今まで以上に僕に甘えるようになったことかな。
僕を甘やかしたりと逆パターンもあるけど、仲の良さは相変わらずだ。二宮さんからファッションの事も教えてもらったりして服装も流行に後れを取らなくなってきた。
けど、夜は僕の服を着たりすることがあるから何とも言えない気持ちになる。
「ん?」
ふと目が覚めると体が動かなかった。
自分の体の上に誰かが乗っているような感覚があって、これがもしかして金縛りってやつなのかと思ってしまった。
僕も寝起きだって事があって思考力が鈍っていたからそう判断をしたんだ。
でも、視界がはっきりとしてくるとどうしてそういう状況になっているのかがわかった。僕の体に覆い被さるようにアイが抱き着くように眠っている。
「アイ、起きて。もう朝ですよ」
「……」
熟睡しているようでアイが起きる様子はない。
しかもその恰好は男にとっては目に毒だ。春先で徐々に暖かくなってきたから最近では薄着で寝るようになってきていたので、彼女の寝間着も割と薄着だ。
胸に伝わる心地の良い感触とアイの良い匂いが香ってくる。
服の間から黒い下着も見えて、非常に眼福ではあるけどさっきも言ったように目には毒だ。それにたまに動くからいけない感覚になってしまいそうだ。
軽く揺すっても起きないし、どうするべきだろう。
別に仕事はないから急いで起きる必要もないからこのまま起きるまで待つのもありだけど……。意識してしまったら心臓の鼓動が早まっていくのを自覚する。
「かなでぇ……もっと――」
「っ」
いったいどんな夢を見ているんだ!
寝言で甘い声で呟かれた僕の名前に思わずドキッとしてしまった。もぞもぞと動くアイが更に体を密着させて僕の首に腕を回される。
抱き寄せるような形にされ、数cmもない距離に彼女の顔がある。
時折、唇が乾燥するのか舌で唇を舐めるような動きをしていた。近くにある顔、艶めかしい吐息、加えて甘い声で言われる寝言だ。
これは鋼の精神で耐えようにも意思が揺らいでしまいそうになる。
本当に寝ているんだよね?
「……」
間違いなく眠っているはず。
起きたいんだけどうまい具合に起点となる場所へと体重が掛けられて起き上がることができない。眠っているんだけど、無意識でそういうことを行っているのかな?
うん、そんな偶然があり得る?
でも違和感もないし、寝たふりをしているわけでもない。うむむ、考えても答えに辿り着けないな。
その刹那、僕の唇に柔らかい感触が訪れる。
「んぅ?!」
思考の海に意識を向けているとアイが僕に口付けをしていた。
何度も軽く唇が触れるだけのキスだったが、すぐ口の中に舌を入れられる。一瞬だけ思考が停止しかけたが、すぐに僕も応戦するように舌を絡ませていた。
静かな寝室に響き渡る水音。
互いが互いの貪るように舌を絡め、徐々に体温は高くなっていく。
「はぁ、はぁ、絶対起きて……ない!?」
「もっと、もっとちょうだい――」
「っ! まっ……ん!」
呼吸が苦しくなって強引に唇を離すと銀色の橋が伸びて、ぷつりと途切れた。
息苦しさと体に訪れる幸福感に冷静な判断が出来ず、とにかく肺へと空気を送り込む。呼吸を整えて、アイを観察するけど本当に起きていないんだ。
どんな夢を見ているのか、わからないけど夢での動きが現実にリンクしてる。
無意識の領域で行われる動作が僕に向けられているんだ。少し待ってと言おうにもすぐに僕の口は彼女の唇で塞がれる。
繰り返される大人の口付けに僕は抵抗する気力を徐々に失っていく。
僕の意思とは反対に体が本能のままに身をゆだねるんだと訴えてきているようだった。愛する女性から齎される快楽に体が悦んでいるのか。
それからどれくらい口付けをしていたのだろう?
正確な時間を把握するほどの余裕が僕にはなかった。体に力が入らず、僕とアイの唾液で口元が少し濡れている。
「お、終わったのかな?」
やっと満足したのか、唇が離れていく。
これで解放されるという安心感ともう少し味わっていたかったという気持ちがあった。しかし、次の瞬間には首元に強く吸いつかれるような感覚が襲い掛かって来る。
終わってなかったの!?
アイの頭の位置がやや下がって僕の首元に強く吸いついてキスマークを付けていた。僕は私のものだという証を刻み付けるようなマーキングだ。
僕もそれに応じてアイの首筋に唇を押し付けてキスマークを付ける。
もちろん、彼女ほど強くはしていない。肌の露出が大きいからあまり目立つようにはしていけないという最低限の配慮は行った。
「今度こそ、これで終わりだよね?」
「うぅん……」
体に加わる力が弱まっていき、今度こそ終わったんだと安堵する。
起き上がろうとして体に力を入れるんだけど、さっきよりも動かないのはなぜ? 恐る恐る目を開けるとそこには僕のお腹の上に跨る様な体勢へと変わっているアイの姿があった。
しかも、寝ぼけているのか未だに意識がはっきりとしていない。
あ、なんかデジャヴな感じが……。
「んむぅ!」
「かなでぇ」
僕の頭を胸へと抱えたアイによって僕は幸せな感覚に包まれる。
まだまだ成長期だという事を実感させられる胸部装甲、真正面から抱きしめられているため視界は何も見えない。
幸福感は間違いないが思いのほか、強く抱きしめているため呼吸が上手くできない。
腕を叩いたりして、何とか起きてくれと合図を送るけどまだ起きない。
は、早く起きてよ、アイ!
◆
とっても幸せな夢を見ていた気がする。
夢の中でずっと奏とイチャイチャして互いを甘やかし合って幸福感に満ち足りている夢。夢の中でも奏とそういうことをしたいって頭が考えちゃってるんだ。
私って本当にえっちな女の子に成っちゃったんだなって時間する。
目が覚めてゆっくりと目を開けると最初に視界に映ったのは奏の髪だった。
「え……?」
「あ、アイ……早くめざめて――」
弱々しく聞こえて来た奏の声で意識が覚醒する。
目を回して顔を赤くしている彼が私の胸の中に居た。え、どういう状況なのこれ? 奏の首筋にはキスマークが付けられてるし、口元は少し湿ってる。
「も、もしかして……私、またやっちゃったの!?」
「きゅぅ……」
「か、奏ー!?」
目を回していた奏から力が抜けて意識を失っちゃった!
前に奏から聞いたことがあった。夢を見ている状態で現実と動きがリンクするって話、それで私は時々そういう状態になることがあるって。
あの幸せの夢は現実でも奏にそういうことを行ってたってことなの!?
それで奏を為すがままにして抵抗させずに今の状態に至るってことなのかな。どうして、すぐに意識を覚醒させなかったんだと後悔。
「と、とにかく奏をゆっくり寝かせてあげないと」
私は奏をベッドに慎重に寝かせた。
今の無防備な状態の彼を見ると無意識に唇を舌なめずりしている私が居る。やっぱり私は無意識でも奏を求めてしまっているんだと自覚した。
そう、瑞樹ちゃんと知り合ってからその傾向が強くなって気がするんだ。
恋する乙女はいつまでも経っても恋する乙女なんだって言ってたし、やっぱりそうなんだよね?
「こ、これくらいは良いよね?」
「……」
寝息を立てている眠り始めた奏のおでこに触れるだけのキスをした。
私の愛おしい旦那様、これからもずっと皆で幸せでいることが出来ますようにという願いを込めて――。
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