推しの子 その瞳に映るのは 作:ノックスさん
皆様のおかげです。これからも頑張って執筆していきます。
少し独自解釈を含みます。
僕らを見ている一人の少女はアクアとルビーを見てクスリと笑った。
そしてアイと僕へと目を向けると一瞬だけピクッと何かに反応して見せる。
「せっかく、真なる母を得られずに散った二つの魂は死する運命にあった器へと導いてあげたのに――」
その言葉は母さんが言っていた言葉と同じ意味のもの。
目の前の少女はアクアとルビーを転生させた神様とでも言うのだろうか? いや、本当にそんなことがあり得るのかな。
確かに輪廻転生という現実ではあり得ない体験をした二人が居る。
だったらそれを行った神様と思わしき存在は居てもおかしくはない?
「君は誰かな?」
「さぁ、私は誰だろうね?」
「答えるつもりはないという事ですか。アクア達を転生させたのは貴女ですか?」
「私かもしれないし、私じゃない別の存在かもしれないよ?」
「そうですか。じゃあ、これだけは言わせて欲しい」
「なに?」
「ありがとう」
目の前の存在は僕からの質問に答えるつもりはないようだ。
日本には八百万の神々という概念があるし、少女が本当に神という可能性も無きにしも非ず。だけど、少なくともアクア達と無関係と言うことはあり得ないのは先ほど発した言葉からも明らかだ。
だから僕は素直に彼女にお礼を言った。
いきなりお礼を言われた事で何に対して言っているのだという表情でキョトンとしている。
「それは何に対してのお礼なの?」
「君はさっき言ったでしょう? 死する運命にあった器へと導いたと。その言葉が真であるなら認めたくないけど、僕達の子供は死産してこの世に生を受けることは叶わなかった」
「……」
「だからどんな形であれ、僕達の子供としてアクア達が産まれてきてくれたことには父親として感謝をするのは当然でしょう?」
「あは、そういう捉え方も出来るんだね。本当に君は面白いや」
「それに常識外の存在という事は今のアイ達を見れば、嫌でもわかるよ」
物理的にあり得ない現象が起きているのだから認めざるを得ない。
アイ達が止まっているんだよね。目の前で手を振っても反応しないし、呼吸すらしていない。時間という概念が仕事を放棄している。
こんな事を出来るのは人知を超えた力を持った存在でなければ不可能。
だから目の前の少女がそういった存在であると認めざるを得ないんだ。
「普通はこんなことが起こったら動揺するはずなのに、お兄さんは冷静だね?」
「動揺していますよ?」
「嘘ばっかり。私が何者なのかを考え続けてるくせに――」
「気になるに決まっているでしょう? こんなことを出来るあなたが何者なのかと気にならないはずがない」
「私は本来ならその二人にしか見えないはずなの。でもお兄さんは私を捉えているのはなぜかな?」
考えても少女の正体が推測の域を出ない。
それに気になることも口にしている。アクアとルビーを指さして本来なら二人にしか見えないというのは転生した存在にしか感知できないということだろうか?
「ノーコメントかな」
「そこの二人はもう少し大人にならないと私のことは見えないかもね。魂が肉体に馴染みきっていないし、未熟だもん」
「そこまで喋るならあなたの正体を教えてくれてもいいんですよ?」
「んふふ、内緒だよ。私もお兄さんの事が気になってきちゃった」
魂が馴染むとか聞きなれない言葉が飛び交っている。
常人の会話ではないよ、これは。健全な魂は健全な肉体に宿るとかいうやつなのかな? そう解釈すれば、アクア達はまだ魂が馴染んでいない不完全な状態になるのか?
それにいつの間にか少女が僕の前に立っているし、どうなってるんだろう。
さっきまで10mくらいは離れていたはずなのに……。少女の瞳と僕の瞳が交差する。
「っ……これ以上の深入りはやめておくね。お兄さんは随分と愛されているみたい、私も自ら危険地帯に足は踏み入れたくないから」
「?」
僕の中に何かを見たのか、一瞬だけ少女が怯んだ表情を見せた。
僕も少しだけ彼女の存在がどういったものかを理解できた気がする。あの子の瞳の中に見えたそれは確かに常識では測れないかもしれないね。
「覚えておいて、その子達の転生には本来なら意味がある。でも……何事にも例外は存在するの。一つのイレギュラーが原因で本来の運命から外れることもある」
「運命?」
「狂った歯車は元には戻せないんだよ? 戻そうと思ったら大きな犠牲を払わないとだめ。そんな危険を冒してまで元の歯車に戻そうとする意味はあるのかなってこと」
「狂った歯車、元に戻す、大きな犠牲?」
「もう時間みたい。私も本当はお兄さんに干渉するつもりはなかったんだけど、私を見つけることが出来たご褒美だよ。じゃあね、
そういった瞬間、世界に色が戻って時間が流れ始めた。
先ほどの少女は姿を消し、目の前にはアクアに抱き着いてキスしようとしているルビーの姿がある。僕は周りを見渡したけど、どこにも先ほどの女の子の姿もなく何匹も居た鴉も居なくなっていた。
「どうしたの、奏?」
「いえ、なんでもありません。ただの気のせいです」
「と、父さん! ルビーを何とかして!?」
「仕方ないですね。アイも手伝ってくれますか?」
「もちろん!」
アクアの助けを求める声にやれやれと首を振って立ち上がる。
アイに協力してもらい、二人を引き離した。息を荒くして僕の後ろに隠れるようにアクアはルビーの事を見ている。
色々と複雑なんだろうな。
前世では医師と患者、今では兄と妹だ。しかも妹は兄に恋をしているという状況。たぶん、好きではなく愛してる方だと思う。
親としてどうやって説明をしたらいいのかな。
血の繋がりがある二人を応援するべきか、それとも新たな恋を見つけなさいと言うべき?
「ママ、なんで止めるの!? 女には譲れない思いがあるんだよ!」
「う~ん、まだルビーには早いかな。もう少し大きくなってからね?」
「うぅ、ママはわかってないよ。アクアは大きくなったらきっとモテる。パパとママの子供だからそれは間違いないもん。しかも前世からの思い人なんだよ!? 今のうちに――」
「その気持ちは私もわかるよ? でも駄目なものは駄目だよ」
「わかった。今はそれで納得する」
どうやら無事にルビーを説得することが出来たみたいだ。
やっぱり、ああいったことは同姓じゃないとわからないことも多いからアイに対応してもらって正解だったね。
僕は僕でアクアを何とかしないと。
後ろに隠れるように見ているアクアを僕の正面へと移動させる。
「吾郎先生と呼ぶべきですか?」
「いいよ、俺は愛久愛海。2人の息子だから今までと同じでアクアでいい」
「そう。アクア……将来は安泰ですね」
「ちょっと待って!! 冷静に考えてよ、父さん。血が繋がった妹だよ? いくら好きで居てくれるからって――」
「ほら、よく言うじゃないですか。愛があれば問題ない、愛は全てを解決するとか?」
「冷静になろうよ!」
「アクアこそ、冷静になりましょう。前世から好きで居てくれて今世でも好きなんですよ。これは運命の赤い糸というやつですよ。たぶん、ルビーはそう考えてると思いますよ」
アクアも混乱しているな、これは。
しかし、同じ病院に居た者同士が僕達の子供として生まれて来るなんて何かの因果があるのかな? さっきの少女も言っていた運命とやらが関係しているのか、それとも別の――。
近親婚か、少しだけ調べておくか。がんばれ、アクア。
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