推しの子 その瞳に映るのは 作:ノックスさん
仕事が忙しくなってきましたので更新速度は落ちます。
ルビー以外には転生したことを教えずに墓場まで持っていくつもりだった。
でも、父さんが俺達を宮崎へと連れて行ったことで事態が急変。ルビーの前世はさりなちゃんだという事が判明し、俺もその時の担当医だった雨宮吾郎だという事がバレた。
もともと父さんには俺達が早熟すぎている事、言動が年相応じゃないことなどでそうじゃないかとは疑っていたと言われた時はびっくりしたな。
「ルビー、くっ付き過ぎじゃないか?」
「そんなことないもん。これが普通だもん」
そして俺の前世がルビーにバレてしまってからというもの。
常にこの子が俺の横に居て今も腕を抱きしめるようにされ、身動きが取れない状態になっていた。肉体に精神が引っ張られて今のところは大丈夫だけど、ルビーが女性らしくなっていき同じような事を続けられると色んな意味で危ないかもしれない。
俺の体が――。
「奏、今度の映画撮影のことなんだけど――」
「ん? あぁ、その事ですね。それならこの台本のこの部分を……」
ルビーとそんな状態になっている俺はさておき、父さん達は映画の台本の読み合わせを行っている。
少し前に俺が出演する事を条件にアイが映画に出演した。それをきっかけにメディア露出も今まで以上に増えて、父さんと一緒に映画でW主演を行う事になっている。
しかも両方の芸能事務所がキスシーンのOKを出したため、映画内でそういうシーンが何度か撮影されるらしい。
もちろん、奏とアイの二人で行うシーンでだ。
「今でも複雑だなぁ」
「何が複雑なの?」
「今度の映画で二人がキスシーンを撮影することだよ」
「なんで? 推しと推しが目の前でキスするんだよ? 目の保養にもなるし、ご褒美でしょ」
あぁ、そうだった。こいつはそういう感性だもんな。
赤ん坊の時も二人が大人のキスをしているときも顔を赤くしながらもずっと見ていたし、ルビーにとっては最高のご褒美なんだった。
「それにさ、ママが最初に出たドラマの事を覚えてる?」
「あぁ、覚えてる。あんなにたくさん撮ったのに一瞬しか映らなかったやつだろ?」
「そうそれ。あの時はママと他の女優さんが並ぶと絶対にママの方に目が惹かれる。ただでさえ、人を惹きつけちゃう魅力があるのに同格じゃないと相手が霞んじゃう」
「だからカットされたんだろ。事務所の規模の差ってのもあったけどな」
「そう。でも相手がパパだったら? 同じ画面にカリスマ性を持った二人が映れば、きっとみんなは光に焼かれてしまう」
それはそうだろう。だってアイに人に魅せるやり方を教えたのは父さんだ。
アイ以上にその手の事に関しては詳しいんだぞ。そんな二人が揃ってしまえば、ファンでなくとも強すぎる光に脳を焼かれてしまう。
だから今回の映画はきっと二人の仕上がり次第で大きく評価を変えると思う。
まぁ、仕事を完璧にやり遂げ続ける父さんがそんなヘマをするとは思えない。問題は2人がキスシーンを行う上で抑えが効くかどうか。
わかってる、わかってるんだけどどうしても想像しちゃうんだ。
普段の様子と演技では当然、雰囲気も違うし、その人物に成りきる必要がある。どのように魅せれば、より良く見えるのか。
登場人物の心情を理解し、役に成りきる。
一種の自己暗示とも言える方法で自分自身を登場人物本人として演技をするんだという話を聞いたことがあった。
その答えが目の前の光景なんだけど――。
「どうしても行くの?」
「はい。僕が行けばすべて解決します」
「でも、あの場所は……っ」
「それ以上は言わないで」
無実を証明するために危険を顧みずにある場所へと向かうという場面。
アイが言葉を続けようとすると父さんがその唇に人差し指を立てて言わないでと告げて踵を返す。微笑んで何も言わずに歩く奏にアイが行っちゃ駄目と後ろから抱き着いて止める。
このシーンは行かせたら後悔するという表現に力を入れるとメモ書きがされていて、それを視聴者が見てもわかるように演じなければならない。
「わかってる。皆を守るために行くんでしょ?」
「……」
「でも、その中に君は居るの? 君が居ない世界なんて私は――」
練習とはいえ、ここまで本気で演じるんだ。
アイの瞳から涙が流れて、父さんの服を濡らしていく。立ち止まった父さんは振り返ってアイの瞳をジッと見つめる。
必然的に潤んだ目で上目遣いをしているアイになぜかこっちが顔を赤くしてしまう。
アイを抱きしめて耳元で小さく呟いた奏が優しく彼女の唇に口付けを交わした。触れるだけのキスだけど、次第にアイの目がトロンとし始める。
「はぁ、はぁ……」
何で俺の耳元で荒い呼吸音が聞こえるんだ?
そっちへと目を向けるとルビーが目をキラキラさせながら二人の演技を見ている。それだけならいいんだけど、明らかに興奮しているんだよなぁ。
なんで、俺の方を見るんだ?
いや、変な期待をするんじゃない。その瞬間、急に体のバランスが崩れて俺はソファーに倒れてしまう。ルビーが力の入れ方を変えたことで重心がズレたんだ。
「は、早まるなルビー!」
「はぁ、はぁ、お兄ちゃん。やっぱり我慢は体に良くないと思うんだ」
俺の体の上に跨り、腕を足で挟み込むようにして拘束された。
み、身動きが取れない! や、やばい。これは非常にまずい体勢だ。徐々に近づいてくるルビーの顔は獲物を捕まえた肉食獣のような雰囲気をしていた。
父さんに助けを求めようと口を開こうとした瞬間に口を手で塞がれる。
ルビーに行動を先読みされて、声を出すことが出来ない。出来てもくぐもった声であちらにはきっと聞こえない。
「駄目だよ、お兄ちゃん? 今なら初めてのキスは私のもの――」
「んぅ! んぅぅ!!」
「あは! 擽ったいなぁ」
冷静に考えておかしいだろ!
前世から合わせて精神年齢が倍以上違うんだぞ。やっぱり俺の正体がバレた事で歯止めが利かなくなったのか!?
考えろ、考えるんだ! きっと最善の方法があるはずだ。
考えたところでどうやって止めるんだ? 今の状況で言葉で止まるのか、それでもやるしかない!
「よっと」
「パパ!?」
行動に移そうとした瞬間、俺の体が拘束から解放された。
父さんがルビーの脇に手を入れて抱え上げて自分の腕の中へと抱えている。気配もなく近づいていきなり抱えられたからルビーもびっくりしているみたいだ。
俺はというと安堵の息を吐いた。
肉食獣に捕食される草食獣ってこういう気持ちなのかと不意に思ってしまった。あのまま父さんが来てくれなかったら俺はキスされていたんだろうな。
「まだ演技の練習をしてたんじゃないの?」
「もう終わりましたよ。アイも要領よくて一回で問題ありませんでしたから」
「もちろん! 私だってやるときはやるんだよ!……本当はもっと奏とキスしたかったから失敗しようか悩んだのは秘密だけど
最後に小声で言ったこと聞こえてるぞ、アイ!
く、目の前で演技練習とはいえイチャイチャを見せつけられるのも辛い。だけど、さっきのような状況で居るのも辛い。
どうしての精神年齢を加算した年齢で考えてしまうから厳しい。
今でも一番の推しはアイだ、これは変わることはないはずだ。
「うー、パパも邪魔してくるなんて」
「ルビーにはまだ早いです。初めてのキスと言うのは本当に好きな人のために取っておきなさい。大きくなって気持ちが変わらないなら――」
ルビーに何かを言っているけど、今はとにかく助かった。
俺を好きでいてくれることは嬉しいけど、このままだと本当に喰われる。何とかしてルビーに俺以外で好きな人を見つけてもらわないと。
「わかった。今はそれで納得する!」
「ありがとう、ルビー」
「へ……?!」
父さんの説得で何とか納得したルビーだったけど、不意に頬にキスされたことでキョトンとしていた。
すぐに自分が何をされたのか、わかってボンっていう音が聞こえそうなくらいに一気に顔が赤くなる。それを見たアイが私もというかのように反対側の頬にキスをした。
「あれ? ルビー?」
「気を失っちゃいましたね。ベッドに寝かせましょうか」
「そうだね、アクアもおいで」
「わ、わかった」
推し二人からのキスはルビーには破壊力が高すぎて脳が処理できずにショートしてしまったみたいだ。
俺もアイからあんな事をされたら同じような状態になってしまうかもしれない。いや、でもそれはそれで嬉しいよな?
とにかく今日の危機は乗り越えられたんだ!!
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