推しの子 その瞳に映るのは   作:ノックスさん

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第三十四話

 アクアが吾郎先生の転生した姿と知って私はより積極的になった。

一緒に居る時は常に傍に寄り添うように、さすがにお風呂は先生だってわかってからは別々に入る様になっていった。

 ママもパパも相思相愛で人を好きになる気持ちがわからなくて似た者同士だったみたい。

だから今も二人は休日や家で過ごしているときはイチャイチャしてる。もちろん、私達をほったらかしにしているんじゃなくて構っている上でそういうことをしてるから嫌悪感もない。

 

私にとってはご褒美だし、アクアは……死んだような顔をしているから前も言ったようにあまり受け入れたくないって感じかな。

 

「パパ、パパ、少し聞いても良い?」

 

「何ですか、ルビー?」

 

 ママが仕事でパパがオフの日。

ソファーで寛いで本を読んでいるパパによじ登って膝の上に座りながら尋ねたんだ。読んでいる本の表紙には"サイコパスの思考回路とは"っていう何とも言えないことが書かれている。

 

「パパはルビーの恋を応援してくれる?」

 

「人の恋路を邪魔するつもりはないよ。でも、兄妹で結婚と言うのは少しだけ考えてしまうね」

 

「お兄ちゃんの味方をするってこと?」

 

「う~ん、味方とかではなくて結婚となると法律によって禁止されていることが多い。健康面、周りの人達からの評価とか色々と困ることが多いかもね。結婚せずにずっと一緒に暮らすだけなら兄妹の仲がとても良いんだと思われるだけです」

 

「大人って難しいんだね。私はお兄ちゃんとずっと一緒に居られるだけでも満足なんだ。大きくなったら自分の気持ちにどういった変化があるのかわからないけど、一つだけ言えるのは好きって気持ちは絶対に変わらないってこと!」

 

 やっぱり兄妹同士の結婚とかはかなり厳しいんだ。

パパが言っていた健康面って言葉には前世の自分が重い病気で命を落としたから敏感になっちゃう。結婚をしなければ、ずっと一緒に居ても違和感はないんだ。

 

「兄妹の仲が良いのは素晴らしいことです。僕としても二人の仲がずっと続くことは親としても思っていますよ」

 

「大丈夫! 私はお兄ちゃんを嫌いにならないから。そうだ、パパとママはどっちが先に好きになったの?」

 

「どっちが先に好きになったか――」

 

 パパとママが仲良しだってことは見ていたらわかるんだ。

だけど私もアクアもどちらが先に告白して好きになっていたのかは知らない。2人の始まりがどういったものかは聞いたことがなかった。

 私の見立てだとママの方が最初にパパを好きになったと思うんだよね。パパって自分からあんまりそういった事を積極的にするように見えなかったもん。

 

「たぶん、アイかな。彼女に告白されて初めてずっと抱いていた気持ちが人を好きになる気持ちなんだって教えてもらいました。そう、人から向けられる感情には敏感でも自分の気持ちにはずっと疎かったんだ」

 

「運命の出会いってやつなの?」

 

「そうかもしれませんね。僕とアイが出会わなかった世界、ルビー達が僕達の子供ではなかった世界もあり得たかもしれない。そう意味では僕達の出会いは運命だったんだと思います」

 

 運命の出会いかぁ。

もしが許されるなら、私の病気が治って吾郎先生と恋人になる世界もあったのかもしれないってことだよね? 

 でもパパ達の子供に産まれて、アクアの前世が私の好きな吾郎先生。

これこそ、本当に運命ってやつじゃないのかな! 死してなお、生まれ変わり出会うめぐり合わせ。きっと他の人に言っても信じてもらえないかもしれないけど、それでもこの事実は消えない。

 

「IFの世界かぁ。そうだ! パパって占いが出来るんだよね? ママからタロット占いが出来るって聞いたんだけど……?」

 

「できますよ。何か占ってほしいことでもあるんですか?」

 

「うん! 私を占ってほしいんだ」

 

「漠然としたものですけど、やりましょうか」

 

 パパがそう言うと私をソファーに座らせて、棚に置いてあるケースに入れられたタロットカードを手に取った。

 私の対面のソファーに座ったパパはカードをシャッフルしてカードを3枚置いた。

 

「これはあくまでも占いですから当たるとは限りません。そのことを頭の片隅に置いてくださいね」

 

「うん! この裏向きの3枚のカードの位置には意味があるの?」

 

「一応、過去・現在・未来という区分でそれぞれに意味があります。では過去の場所に置いたカードを捲りましょう」

 

 どんな結果になってもあまり信用し過ぎないようにと注意され、私は頷いた。

そして過去に位置するカードをパパがゆっくりと捲って表に向ける。そのカードはパパから見ると反対を向いていて、"THE FOOL"って文字が書かれていた。

 

「愚者の逆位置か……」

 

「どういう意味なの?」

 

「色んな意味がありますけど、今のルビーの境遇からするとこの意味が一番合うんじゃないかな。――終わりからの再生」

 

 終わりからの再生?

それって前世で死んだ私がパパ達の子供として転生した事を意味しているの? それじゃあ、これは当たってるってことなのかな。

 

「次は現在に位置するカードを捲りますよ?」

 

「う、うん」

 

 そして次は現在に位置するカードを捲っていく。

ゆっくりと表に向けられたカードには"THE LOVERS"と書かれていて、パパから見ると正位置でいいのかな?

 

「恋人の正位置ですね」

 

「それって良い意味だよね?」

 

「まぁ、そうですね。恋愛での成功とか、そういった意味があります」

 

 それってアクアとの恋が成就するってことだよね!?

いや、冷静になろうよ。パパも言ってたじゃん、これはあくまでも占いだから信用し過ぎるなって。でも、たとえ占いでも恋が叶うって意味なら嬉しいな。

 そして最後のカードは未来に位置するカード。

 

「最後ですね。それでは未来に位置するカードを捲りましょう」

 

「お願いします」

 

 ただの占いなのに心臓がドキドキしてきちゃった。

一枚目のカードが当たっていたから余計に緊張してしちゃう。ゆっくりと捲られるカードに意識を集中させる。

 表に返して置かれたカードに描かれているのは――。

 

"THE WORLD"という文字。それがパパから見て正位置に置かれる。

 

「お、世界ですか」

 

「せ、世界?」

 

「このタロットカードにおける最も強く、最も良い意味を持つカードですね。それの正位置――」

 

「も、もちろん良い意味なんだよね!?」

 

 今の言い方からしたらこのカードは一番良い意味を持つ。

それが正位置になっているってことは絶対に悪い意味じゃないよね!? そうなんだよね、パパ!?

 

「目的の達成、念願の成就、成功とかそういった意味を持っています」

 

「じゃあ、私の恋も実るってことなんだよね!!」

 

「まぁ、占いではそうですね。ルビー、何度も言いますけど、これはあくまで占いですから信じすぎないようにね」

 

「わ、わかってる。あくまで占いだもんね?」

 

 口ではこう言っているけど、顔がにやけるのを抑えられない。

そっか、そっかぁ。私の恋の願いは成就するってことはやっぱり、私と吾郎先生は結ばれてもおかしくないってことなんだもんね。

 えへへ、なんだか心が弾んでる気がする。

 

「え、嘘だろって? いや、占いですからね。僕は必ず当たる占い師でもないので、何とも言えませんよ。後で俺も占ってほしい? それは構いませんけど――」

 

 パパとアクアが何か喋ってるけど、私の耳には聞こえてこなかった。

今は明るい未来が待っているんだという気持ちに酔っておこうと目を瞑る。きっと大きくなったら願いが成就しますように――。

 

 

 

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