推しの子 その瞳に映るのは 作:ノックスさん
今回は少し短いです
恋は人を変えるって言葉を聞いたことがある。
まさか、自分がその当事者になるとは思わなかった。アイへの気持ちを自覚して、愛してると嘘偽りない気持ちを伝えた。
本当に嬉しそうに笑う彼女に僕も自然と笑みがこぼれた。
両思いになって本当の意味で恋人に成れたんじゃないかな。ここじゃ、落ち着いて話せないからもっといい場所があるんだと言われて連れてこられた場所。
「え……?」
何で部屋にアロマの匂いが漂ってるの?
冷静に考えて、ここってあれじゃないのかな。いや、絶対にそうだと僕の勘が言っている。
ラブホテルだよね、ここ。
色んな情報が入って来るからこの手の場所の話も知らない訳じゃなかった。内装とその作り、ベッドとかそういった類のものとかも聞いた記憶と一致する。
「落ち着け、僕。何でここに来るまでに気付かなかった? 恋は盲目ってやつなのか?」
自問自答を繰り返していると小さな衝撃と共に後ろから優しく抱きしめられた。
肩に僅かな重さを感じ、少しだけ顔を横に向けるとアイの顔が視界に入る。相変わらず、瞳の星は輝いているようだ。
「奏、聞いてる?」
サラサラの髪がうなじに当てって擽ったい感覚と背中に当たっている感触。
加えてほのかに香るいつもアイが愛用している香水の香りと耳元で囁くような彼女の声にまた自身の体温が高くなってくるのを感じた。
「どうして、ここへ?」
「ここなら誰にも邪魔されないでしょ?」
確かにここなら誰も来ないだろう。
気密性があるっていう意味ではこの場所も間違ってはいないけど、わかって連れて来たのか。それとも、偶然ここを知って……。
いや、それは絶対にない。
ここがどういう場所か、知らないで来るなんて普通に考えたらあり得ない。
「男と女の二人がこの場所に来た意味、言わなくてもわかるでしょ?」
ドクンっと心臓が高鳴るのを感じた。
間違いない、彼女は確信犯だ。
「私と奏は本当の意味で自分の気持ちを自覚して両思いになったよね?」
「そうだね」
「でもね、まだ心の何処かで不安を感じる私がいるんだ」
「不安ですか……」
僕を後ろから抱きしめている状態で僅かに声を震わせて不安だという言葉を呟いた。
「これは私が望んだ夢なんじゃないかって。本当は幸せな夢を見ているだけで、いつか覚めてしまうんじゃないかって」
「……」
「だからね、これは夢じゃないっていう証が欲しいんだ」
物事が上手く推移すると誰もが一度は夢じゃないよねと不安に思う時がある。
今までずっと悩んでいた事が解決したり、物事が一気に良い方向へと傾くんだからそういう不安を覚える人は少なくない。
密着しているアイの体が震えていた。
きっと今、言ったことの意味をわかっているから。
僕がそれを嫌だと拒絶しようものならおそらく彼女は壊れてしまうかもしれない。
一度彼女の腕から抜け出して、後ろに振り返る。不安そうな表情で僕を見上げる彼女を視界に収めた。
「自分が何を口にしているのか、わかっていますよね?」
「うん、わかってる。わかった上で奏に言ってるんだよ」
「僕も男です。愛する女性が不安げな顔で、そんな事を口にしたら止まれませんよ?」
可愛くてスタイルも良くて、僕を求めてくれるアイ。
今の表情を見て、それに加えて不安そうに瞳を潤ませる姿に誰が冷静な判断を下せるだろうか。それに嘘ではなく本心からなる言葉だったならなおさらだ。
「ううん、私はそれを望んでるよ。それにもし嫌われたって一人ででも育てるつもりだから」
「あなたを一人にはさせません」
アイがベットに背中から倒れ、こちらに両手を伸ばしながら言葉を紡いだ。
「……私に奏のものだっていう証をちょうだい?」
その言葉がスイッチとなって僕はアイに口付けを交わし、僕達は体を重ねた。
詳しくは語るまい、ただ言えるのは彼女は本当に幸せそうな表情をしていたってことだけだ。
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