三下とテラの日常   作:45口径

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お ま た せ

春の生配信視聴したので初投稿です


三下とやべーやつ

ペンギン急便に入社してから幾分か時が経った

あれよあれよと暴れ回り気がつけば周りからも立派なペンギン急便の一員として龍門を駆け回っていた

 

配達を終えついでにアジトに集まっているであろう仲間達に手土産で魚団子スープを買って冷めないうちに帰るべく裏道から帰ろうとしていた時であった

 

突如正面に女が立ちはだかり「やぁ」と一言だけ言い放った

一瞬だ、瞬きをした瞬間、目と鼻の先の距離まで距離を詰められ目にも止まらぬ速さで斬撃を繰り出された

 

持ち前の反射神経と筋力を使いナイフで最初の斬撃をパリィしもっていた魚団子スープの入った袋を投げた瞬間下がる

 

二撃目の斬撃は吸い込まれるように袋を切り裂いたが下がらなければ一緒に首を刎ねられていただろう

 

スープと具材が飛び散り一瞬だけど視界を奪う

 

すかさず拳銃を抜き照準せずファニングショット、目の高さまで拳銃を構えず腰の位置で2発撃ち込むが相手は超人的な速さで弾を弾く

 

オートマチック式の銃ではあまり意味はないが0.1秒でも早く抜いて撃つためこの方法をとった

 

弾いた音が路地裏で響く

ぬらりと、笑みを浮かべた女の顔を見る

鉱石病特有の体表に現れた鉱石、分度器をあしらったであろう剣、「ハハハッ」と狂ったように笑い出す声、完全に知り合いだ

 

「アッハハハハハハハッ!! やっぱやれば出来るじゃないか君は!!」

 

「あはははは、ラップランドさんご機嫌麗しゅう…」

 

銃を構えたまま後退りを始めた

 

「久しぶりの再会だっていうのに、どこへいくんだい?」

 

「いやぁ〜お家に帰ろうと思ってたんですがねまさかまさかさこんなところでラップランドさんに再開するなんてびっくりだなーいやてっきり俺死んでるとかっていう噂信じてびっくりなされたんじゃないかと自分心配っすよ!あ、KARATEのケイコあるんでこれにて」

 

捲し立てるように言葉を放ち逃げようとするがアーツを乗せた斬撃が足元に着弾する

その意味は「逃がさない、追いかけて殺す」だ

 

「キミが死んだなんていうウワサ、鉱石病が治るっていう話より信じられないなぁ?」

 

「左様で…」

 

「キミは今テキサスの下で働いてるんだって? 聞かせてよ、お話をさ」

 

「えーと、ハチャメチャやべえって感じで…どうですかねえ…?」

 

にこりと笑い一瞬間ができた、刹那、ラップランドが一瞬だけ指をピクリと動いたのとヒューストンがピンを抜いていたフラッシュバンを投げたのは同時だった

 

後ろに倒れ込むように投げたせいでフラッシュバンは真横に投げられたがこれでいい

なぜならただ投擲した程度では彼女に有効な効果を与えられない

 

彼女は一気に距離を再び斬撃の距離まで詰めた瞬間

真横に投げ狭い路地裏の壁に跳ね返ったフラッシュバンがほぼ彼女の真横で炸裂した

 

空中で9回鳴り響く爆音にエーシェンツであるラップランドには非常に強力な効果をもたらす

 

何度も鳴り響く爆発音に聴力を奪われるが関係ない、倒れ込んだ男の心臓に刃を突き立てた

しかし、まるで手応えがない

一瞬だけ空間が揺れるような、間違えない、アーツの気配だ

 

剣を振り風を起こした

彼女ほどの技能があればフラッシュバンの火薬の匂いを一振りである程度払えるのだ

 

そしてわずかに感じ取った匂いは自分の真後ろから感じ取った

匂いの主はちょうど路地から脱出したのを目撃した

 

「わああああああああっ!!お嬢、助けて!!

たす、たけて! ボスケテっ、ぱああああああああああああああああああああああああああ」

 

奇声を大声で上げながら走る様は情けないものだろう

大通りに出て在らん限りの声をあげて走り抜ける様はあのペンギン急便の一員とは思えない程情けなかった

 

その後ろをとんでもない速さで追いかけてくるラップランドは人の目にも留まらないだろう

もうひとつ持っていた最後のフラッシュバンのピンを抜きさらに叫ぶ

 

「爆弾だーー!!! 逃げろおおおお!!!」

 

空高く放たれたフラッシュバンは連続で音を鳴らしながら落下してくる

 

辺りは爆弾という発言と破裂音に驚き騒然とし始める

ここは龍門の中心部から遠くない位置にあり人の往来は非常に多い

あたりに居る臨時の露天や観光客は悲鳴を上げながら逃げ惑い、その隙を見て火事場泥場が出来ると逃げるふりをした者で通りの状況はめちゃくちゃだ

 

そんな人混みを追跡するのは困難だろう

彼女は一瞬立ち止まり、少し力むと電柱に飛び乗りあたりを見渡す

 

すると人混みから明らかに早く駆け抜け離れる影が見えた

にぃっと笑い電柱から概ね同じ高さの建築物に飛び移り大通りを抜けた

 

飲み屋街に突入してぜえぜえと息を上げながら走っていると一軒の居酒屋から彼を上回る巨体と龍の女が出てきた

 

あの顔は知っている、龍門近衛局の人間だ

 

おそらく非番で飲んでいたがあたりが騒がしくなり様子を見に出てきたのだろう

これは嬉しい誤算だ、お嬢と俺の命のために、お前の非番を犠牲にしろ━━━

 

「おい、止ま━━━」

 

「助けてくれ、イカれた女に殺されそうなんだ!! いきなり切りかかってきて爆弾かなんかを通りで爆発させて辺りはパニックだ!!!」

 

「わ、わかりましたから落ち着いてください!」

 

龍の女の肩を掴み捲し立てるように大体の説明をすると双方ともこの巨体の男の慌てように引きつつも巨体の鬼の女が引き剥がす

 

「ヒューストぉ〜〜ン!!!」

 

「うわぁあ来たあ!!!!」

 

流れるように巨体後ろに周り込むとどうやらそこまで迫っていたラップランドが止まった

 

「何をしている、ラップランド」

 

「あれぇ、龍門のお偉いさんが2人もいるなんて奇遇だねえ?」

 

「通りでの騒ぎはお前の仕業らしいじゃないか、話してもらうぞ」

 

「うーん、それは誤解だよ。 僕はそこの情けない男に用があってさぁ」

 

「騙されるな! この女は人を躊躇いなく切り付けれる女だ、実際やられたし!!」

 

ラップランドにキッっと一瞬睨まれるが「コワイコワイコワイ…」と下がっていった

 

「暴れることはお勧めしません。ここは大人しくして頂けませんか?」

 

「そうだ! 暴力反対!! 話し合いサイコー!! 帰れこのイカれ女!!!!」

 

「ん?」

 

「コワイコワイコワイ…」

 

巨体の女は丁寧な言葉を使い説得を試みている

体感にして数分だろうか、ため息をついて帰るようだ

 

「じゃあね、ヒューストン。また会いにいくから」

 

「おい、待て!」

 

「誰が会うもんか!! アッチイケアッチイケ、シッシッシッ!!!」

 

「黙っていろ」

 

「すいません…」

 

一瞬のうちに姿を消したラップランドを捉えることは不可能に近いだろう、しかし問題はまだある

 

「…いってしまいましたね」

 

「奴め、次は必ず捕まえるぞ」

 

近衛局としては屈辱だろう、それもトップに当たる人物が2人揃って容疑者を目の前にしてみすみす取り逃すなど、非番の最中だったが彼女達には屈辱的だろう

 

「…それで、お前は一体何をしたんだ」

 

「魚団子スープを買って帰る途中襲われました」

 

「あなたはもしかして、ペンギン急便の新入りの方ですか?」

 

「なに?」

 

今度はヒューストンが容疑者として挙げられたようだ

 

「龍門近衛局、特別督察隊隊長のチェンだ。 先ほどの騒ぎについて話を聞こうか」

 

「初めまして、副隊長のホシグマと言います」

 

「あぁこれはどうも、ヒューストンです…」

 

思わず名乗ってしまったがまぁ問題ないだろう

ここは抵抗も濁す真似もせず潔く連行され釈放される流れに沿うべきだ

 

逃げてしまうほうが後々不利益につながってしまうことを恐れた判断だ

 

彼個人としては現行犯逮捕ではなく任意同行、事情聴取といった形での連行になるハズと踏み大人しく連れられた

 

数時間にも渡る聴取と現場では大した情報も得られずラップランドに因縁があり襲われたという形で済み翌日まで勾留のようだ

 

「聴取はここまでとする。 だがいいか、お前たちペンギン急便はいつも問題を起こす! くれぐれも騒ぎを起こすなよ!」

 

「はいはい、社長に伝えときますよ。 んじゃ、お世話になりました!」

 

チェンからのお小言を聞き流し颯爽と立ち去り近衛局から出ていく

ここはアジトから中々離れているおかげで帰るのは苦労しそうだ

 

ふと、見覚えのある車が停まっていた

車の外で待っていた人物はテキサスであった

 

「お疲れ」

 

「お嬢、何故此処に…?」

 

「捕まったと聞いてな、配送ついでで迎えに来たんだ」

 

車に乗り込みエンジンを始動すると駆動音が鳴る

整備をしたおかげで今回は異音はならない

 

「乗れ、今日は私を手伝ってもらう」

 

お嬢の助手席…

 

「お嬢、差し出がましいようですが運転は自分が…」

 

「いい。今日ぐらいはやらせろ」

 

「はい…」

 

覚悟を決めて助手席に乗り込んだ

この後本当の意味で情けない声をあげた

 

お嬢に教えてはならなかったことは煙草と運転、


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