三下とテラの日常   作:45口径

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三下とお嬢と過去の話

「ヒューズって、テキサスのトコにいた時どんなやつだったの?」

 

とある昼下がり、メンバーの一行は今日は珍しく何もない日である

昼間から酒をあおり怠惰を享受するその姿は普段ヒーローショーのように躍動感のある活躍とはかけ離れたものだ

 

「なぜだ?」

 

「いや、あいつってアタシ達と話す時なんか違うじゃん、特にテキサスの時」

 

「うーん、うちは別にええねんけど…なんかなぁ、キャラ掴めんわ」

 

「正直この会社に別に上下ってあんまり関係ないよね」

 

「ソラは先輩呼び正直嬉しいでしょ」

 

「エクシアだって姉御じゃん!」

 

「ウチは呼び方定まってないねんで!」

 

今日もペンギン急便は騒がしい

わいのわいのと騒ぎつつ酒と話が進む

 

「…なんていうかさ、平等に接して欲しいんだよね」

 

「まぁそうやな、もっと肩の力抜いて気安くしてほしいぐらいや」

 

「たしかにちょっと堅すぎるよね」

 

彼女らの考えはおおよそ一緒だった、立場は同じなのだからもっと気安くてもいいという気持ちもあるがどうにも自分を隠しているような気がしてならないのだ

 

テキサスにしても過去を話さないが彼の場合は意図して避けようとしたり、誤魔化すことが多いのだ

 

「それで、どんなカンジだったの?」

 

「あいつは…今とあまり変わらない、今の方がうるさいぐらいだ」

 

チョコレート菓子を取り出して、咥える

そして彼と共に過ごした過去を思い返す

 

 

 

 

 

 

 

 

「身の程を知れ、このボケがッ!」

 

ヒューストンは来客である他組織の使いの腹部に渾身の力を込めた拳を打ち込んだ

 

どうやら言葉の選び方が悪かったらしくお目通もできず哀れにもこの男に絡まれているようだった

 

「てめぇコラ、おい。何考えてドン・テキサスが下みてえな態度で来やがったんだアホが、あ?」

 

「ひっ、うごぉ…」

 

「アポも無しに来た挙句バカやりやがってぶん殴るぞ!」

 

どうやら組織として話があり外出中に見かけ挨拶のついでに要件を言おうとしたらしいがお付きであるヒューストンに通されることなく、今の現状に至る

 

「おい」

 

「お嬢のお目通りだ、礼儀正しくしろ」

 

「うごぇっ、えっ…?」

 

先ほどまで理不尽なまでに暴力を振るっていた巨漢の男が下がり彼のボスであるテキサスが前に出て来た

 

「いつまでも寝てんじゃねえ、お嬢を見下ろすように立つんじゃねえ! 跪け無礼モンがよ!」

 

「ひぃっ、すみません、すみません!!」

 

立ち上がらせたと思えば立つなといい炎国の礼法よろしく正座のような姿勢にさせられた

 

「要件は?」

 

「は、はいぃ! 此度はテキサスファミリーと共同関係ををっ、むっ、結びたく申し立てをっ!!」

 

前からも後ろからも殺気のような圧をかけられて動揺してしまう男は哀れな男だった

最も理不尽なのはヒューストンだが

 

「それだけか?」

 

「えっ、はっ、はいぃ!! つきましては後日にお伺いをさせていただきますぅ!!!」

 

「いいだろう、話を纏めてから来い」

 

テキサスが顎で合図を出すと男を立ち上がらせ何かメモを書き込み手渡した

 

「それに連絡しろ。次ナメた真似しやがったら俺がおめえの組にお邪魔することになるからな。心して本件に取り組め」

 

「行け」と解放すると逃げるようにその場を立ち去った

 

「ん」

 

「はい」

 

煙草を要求する合図をし煙草を差し出した

綺麗に巻かれた1本は当然高級な葉をヒューストンが巻いたものだ

それを咥え吸い込んで火を付け紫煙を吐き出す

 

「…どう思う」

 

そばにいた参謀の女に訊くと纏めた物を話し始めた

 

「おそらく、向こうも苦しいのでしょう。共同体制を結び停滞する現状の打破のため共存の道をとると言ったところでしょう」

 

「ふむ」

 

「それにしてもヒューストン、その素行の悪いチンピラのような態度をやめなさい。交渉に支障が出るでしょうが」

 

「失礼しました。しかしお言葉ですが━━━」

 

「立場を弁えなさい三下風情が。お嬢のご好意で生かされてるお前に、組織のことを口にする権利はなくてよ?」

 

「はい。申し訳ございません」

 

それ以上口にすることなく黙り下がった

ヒューストンとしては口を挟まずにはいられないだろう、さっきの男のことではない

 

なぜ貴様が得意げに、お嬢の許可なく事を決めようとしているのだと

 

「考えておく」

 

彼はテキサスが煙草が吸い終わる事を見越し携帯灰皿の蓋を開けるとその中に吸い殻を放った

 

テキサスが車に向うと先んじて車に近寄り仕掛けがないかを確認しエンジンをかけ異常がないと判断してドアを開けた

乗り込むのを確認して扉を静かに閉め運転席に乗り込んだ

 

車内は静かにクラシックが流れて静かな時が流れる

 

屋敷に到着しドアを開けてテキサスが降り玄関を抜けるのを見守った

それに続く参謀の女がヒューストンを一瞥しテキサスに続いた

 

ヒューストンは車庫に車を戻す前に車内の清掃を済まし車を磨き上げ戻す

 

彼はかつてのことが原因で屋敷の敷居を跨ぐ事を禁じられている

以降はテキサスの訴えもあり除名も処分もされずお付きとして生きている

 

かつては幹部最有力候補と謳われていたが今で他の幹部からも他のメンバーからも扱いは組織の三下よりも悪い

ついたあだ名は三下、灰皿、使いっ走り

 

それでも構わなかった、お嬢の役に立てるのならそれでよかった

 

車の整備を終え屋敷の門を抜け自分の家へと向かう

少し外れにある倉庫群の中にある一つのコンテナが彼の生活スペースだった

 

帰る前に自分の生活必要な買い物、入浴を済ませ帰る

 

伝手で手に入れたベッドと食事や作業をする机があるだけの空間

ただそれだけのはずがこのコンテナの中では酷く窮屈だった

 

こうして1日を終え、眠りにつく

 

 

 

 

 

 

 

ふと、コンテナの扉がゴンゴンと音を鳴らす

周りに騒音を鳴らす住人はいないはずだし、訪れる人間などいない

しかし確かに、ノックがあった

 

鎖の鍵を開けて少し錆た鉄の扉が音を立てて開かれた

そこにはテキサスがいた

 

「…こんな時間にすまない」

 

「お嬢!? 何故此処へ?」

 

「入るぞ」

 

驚く彼を他所に中へ入り椅子へと座った

訳も分からぬまま招き入れることになった

 

「…昼間の件、どう思う」

 

「話は纏っていないので?」

 

「保留にしている。お前の意見を聞きたい」

 

「私の意見など━━━」

 

「ヒューズ、話せ」

 

どうしたもんかと思うがわざわざ来られたのだ

彼には答えるしかなかった

 

「反対です。確かに今の現状を変えるには行動が必要ですが…伝手で調査を進めてますが恐らく黒でしょう」

 

「そうか」

 

机に置いていたケースから煙草とり吸い始め、一本を投げて来た

それを受け取り、彼女が火を着けたあとでライターを受け取り火を付けた

 

「…本当にすまない。こんな生活を送らせて」

 

「…お嬢、私はあの時自分の意思選びました。それに後悔はありません」

 

「…そうか」

 

「屋敷までお送りします」

 

「…頼む」

 

彼女には憂いがあった

それを後悔してももう戻ることはないだろう

かつて何より親しんだ彼との関係は戻らないと

 

彼には想いがあった

ドン・テキサスに付き従い彼女が想うまま生き、己が死ぬその瞬間までを彼女のためにあらゆる全てを捧げ、幼少の頃から見守り続けた彼女が幸せになってほしいと願うばかりである

 

「お嬢、それでは失礼します」

 

「あぁ、また頼む」




全然続きます
描いてる間アンケート取りますので何卒…

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