三下とテラの日常   作:45口径

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三下と喧騒の掟の外側 その3

大地の果てにたどり着くとバイソンの歓迎パーティをひと足先に始めていた

 

「テキサス、それにヒューストンも。…お帰りなさい!」

 

「全く、どこ行ってやがったんだ。働いてねぇ分キッチリタダ働きしてもらうぜ」

 

「ヒューズはん、ほんまに久しぶりや!」

 

「テキサス凄かったんだよ、もう!」

 

「…悪かったっすよ、お嬢さん方」

 

入るやいなやどつかれたり酒を渡された。

バシバシと背中を殴られたりちょっとした嫌味を言われるがいつも通りの彼女たちだった

 

「みんな…さっきはすまなかった。本当にどうかしていた」

 

「本当にどうなるかとおもったよ…これも全部ヒューズのせいだかんね〜?」

 

「そうやで、これはもうヒューズはんになんかしてもらわんとあきまへんなぁ?」

 

「何させるつもりですか…」

 

悪どいことを考えた時の顔をしている

それをエクシアが察知するのは容易かった

 

「そういえばここに来る時ずいぶん遅かったやないか?」

 

「そぉ〜うだよねぇ〜? ね、ソラ?」

 

「そうだよ! テキサスさんと、まさか…!?」

 

「…残念だが、考えてるようことは━━━」

 

テキサスも同じく察したのだろう

彼の首に腕を回して軽く飛んで身を投げた。

軽い体当たりを食らったヒューズは思わず宙に浮いたお脚をキャッチすると、俗にいうお姫様抱っこになった

 

「ヒューッ!!」「お熱いなあお二人さん」「わ、わぁ…!」と様々な反応をしていた

 

そんな様子をエンペラーとバイソンが何やら優しい目で見つめているような気がする

エンペラーはどちらかというと面白いもんが見れたというものだろうが

 

なんと言い訳しようか迷っているとテキサスが「私の為に、生きてくれるんだろう?」と爆弾を投下して女性陣たちは黄色い声援を上げ始めヒートアップし始めた

出てきた言い訳は「ご想像にお任せします」と

正直満更でもなさそうな気持ちだった

 

いつか、本当に彼女を幸せにしてくれる人との出会いを願って

 

なんだかんだと騒いでいたが楽しい時間は長く続かない

 

「奴さん、来たぜ」

 

テキサスを降ろそうとするがなんだかんだなかなか離れようとしないのでそのままバーカウンターに隠れるとやってきたマフィアの銃撃が大地の果てを滅茶苦茶にし始めた

 

隠れた時に偶然お隣になったバイソンに声をかけた

 

「そういや挨拶してなかったですね。ペンギン急便の三下ヒューストンです、よろしく」

 

「言ってる場合ですか!?」

 

「就労規則その1、知らねえ奴は撃て」

 

「もしかして1番このメンバーの中で1番何か大事なもの無くなってたりします!?」

 

飛んでくる銃弾から身を隠し偶然落ちてきた酒瓶をキャッチした

数十万はくだらない酒を見事無駄にせずに済んだ

 

「おおっと、あぶねえあぶねえ…お嬢?」

 

いつまでも離れないテキサスを呼ぶが反応はない

 

「…テキサス?」

 

少し躊躇い呼んでみるが違うと言わんばかりに頭をぐりぐりと押し付けてくる

あぁ、なるほどと呼び直すことにした

 

「チェリーニア、久しぶりにかっこいいとこ見せたいから、離れて欲しいんだがね」

 

「…まぁ良いだろう」

 

本当は子供の頃からの愛称、チェニーで呼んで欲しかったがそうも言ってられなくなったので渋々と離れていった

 

残酷なことに、彼はその呼び名を忘れてしまっているため呼ぶことができなくなっていたのだ

 

銃撃が収まり中に入ってきたのはガンビーノとその一見だった

どうやらガンビーノは切り落とされた腕を回復系のアーツが使える部下に重ねがけをさせどうにかくっついている状態のようだった

 

「よう、シラクーザの負け犬ども。俺はまだ生きてんぞ」

 

「流石はエンペラーだ、あれだけぶち込んだっていうのにまだグラス持って余裕こいてやがるとは運のいい奴だ」

 

「…なんだ、また来たのか。気にならないようにもう片方の腕も切り落として欲しいらしいな」

 

「ほざけ、テキサス。てめえは必ず」

 

「おっとっと、待った待った」

 

カウンターを飛び越えヒューストンが姿を現した

 

「ほう? こいつは驚いたな、逃げた三下が帰ってきたとは、おもしれえなあ!」

 

ヒューストンが拳銃を抜き一発のゴム弾を撃ち込むとガンビーノはそれを容易く弾いた

 

「就労規則その1、知らねえ奴は撃て。だ」

 

「挨拶もなしにぶっ放してくるたあたまげたな!教育が足りてねえんじゃねえのかテキサスよぉ!」

 

「就労規則その2、生意気な奴はタマを四角く切り取ってサイコロにして、出た目の数だけぶん殴れ」

 

「お前だけ就労規則滅茶苦茶すぎじゃねえか?」

 

エンペラーの身に覚えのない就労規則にツッコミを入れるが本人は構わず銃をカウンターに置き先ほどの酒瓶を持って近づく

 

ガンビーノの相対し酒瓶を掲げるように見せる

 

「お近づきの印にどうだい?」

 

「ハッ、テメェ━━━」

 

突如彼の頭に衝撃が走りガラスの音が割れた音が響くとガンビーノの頭から血と年代物の酒が滴り落ちる。

当然アーツを使った攻撃だ、故に不意打ちが成功していた

 

「遠慮するなよ。奢りだぜ」

 

割れたボトルを投げ捨て笑みを浮かべるとガンビーノの理性の糸が切れる

元々切れやすい線だが、ヒューストンにとってはどうでも良かった

 

「三下がぁあああああああッ!!!!」

 

「ごちゃごちゃ言ってねえでとっとと殴ってこいよチンピラァ!!」

 

ヒューストンとガンビーノの拳が同時に炸裂した

ヒューストンは避けようともせずガンビーノの拳を受けた

同じ徒手格闘の相手に対する挑発、『貴様の拳など避ける必要もない』という意味だった

 

「やろぉおおおおおおおおおッ!!!」

 

「オラァアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

殴り合いを始めている最中、乱闘は始まっていた

各々が酒瓶を持ちマフィアたちの頭に美酒を咲かせていた。物理的に。

 

圧倒的な人数差なのにどんどんと倒していくとついに殴り合いの決着がつく

 

「く、クソがッ、三下の分際でッ!」

 

脇で抱えるように首を抑え空いている手を使い渾身の仕方で殴り続ける

 

「愛人のカポネとかいう奴に、てめえの情けねえ悲鳴を聞かせてやりたかったぜ、オラァア!」

 

最後の一撃、は先から解放し全体重を乗せた右アッパーが炸裂し見事に吹っ飛ぶ

完全勝利し最後に一言だけでも煽ってやろうと思っていた

 

ふと、視界が揺れ始める、最悪のタイミングで薬の効果が切れかけていた

 

吐き気を催し五感が麻痺し始めてきた

靄に包まれるように、全ての認識が歪み始める

 

「うあ、うぁあああぁああ…!」

 

「ヒューズ!」

 

爆弾が投げ込まれ「伏せろ!」という声を聞き逃してしまい、爆風をもろにくらい吹き飛ばされた

 

しかし本人は何も感じない、何もかもを認識をしていないのだからわからないのだ

 

マフィアがそれを機に撤退し攻撃が止むとテキサスは急いで駆け寄り注射器を刺そうとする

 

しかしヒューストンが暴れ始め力で勝てるはずもなく、テキサスは逆に床へと押さえつけられた

この症状を知っていたエクシアたちは急いで引き剥がそうとするがこの剛腕には敵わない

 

「注射器を打て!」

 

バイソンがヒューストンの腰に見えた注射器を奪い首に差し込み薬液を流し込むとテキサスから手を離し暴れ始めた

その隙を見逃さず、テキサスが持っていた注射器を差し込むと、次第に力が弱まり、荒い呼吸は鎮まり始める

 

「ヒューズ…」

 

ヒューストンは返事をしない、次第に「…お嬢」と呻くように発した

 

「申し訳…ありません…」

 

「良いんだ、言っただろう」

 

「えぇ…早く、連中を…」

 

「しかし、お前が」

 

「いいから、行ってください。すぐ追いつきます…!」

 

「…来る時必ず連絡しろ」

 

ヒューストンの自身の端末を持たせテキサスは立ち上がった

幸い怪我は大したことはなく、彼の症状が問題だった為、こればかりは回復を待つしかなかった

 

「ヒューズ、絶対に無理しちゃダメだからね!?」

 

「早く追いついてきてな、頼むで!!」

 

「えぇ…エクシアの、姉御」

 

「ん?」

 

声を出しづらく近寄るように手招きで寄せると肩を掴み目を彼女を見据えた

 

「お嬢を、頼みます」

 

「…次会う時、さっきみたいに気安く喋るって約束で!」

 

バシバシと肩を叩きグッドサインを残して彼女たちはマフィアを追いかけて行った…

 

「…本当に、優しすぎだよ。あんたらは」

 

言うことをを聞いてくれなくなった体を動かし立ち上がる

 

「決着つけようぜ、クソッタレどもよ」


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