大地の果てを出発し、エクシアがマフィアの1人をひっ捕まえて情報を吐かせテキサスに連絡し今後の方針を決め、テキサスは仲間たちに指示を飛ばし反撃に備えていた
ある程度指示を飛ばし終えて動く時に連絡しろと言ってから一向に連絡が来ないヒューストンに連絡をと取る為、呼び出しをしするが中々出てこない
その不安は大きくなり何かあったのかと思わせる
数コールした後、ようやく繋がった
「ヒューストン、今どこにいる? もう出発したのか、本当に大丈夫なのか?」
矢継ぎ早に言葉を放つが、帰ってきたのは何よりも最悪な答えだった
電話口に出たのはヒューストンではなく、エクシアだった
『テキサス…やられた』
「エクシア…なんで…?」
『あいつ、あたしのポケットに端末入れてた』
エクシアから聞かされた言葉一つで崩れ落ちそうになった
電話をしないならともかく、手元にないのではイースを使ってハッキングをかけて位置を特定できない
だが彼女ははそんなことで、その程度のことで混乱して取り乱すようなことにはならない
「エクシア、ヒューズのことは任せろ。自分の役割を果たせ」
『…うん、わかった』
そう返事をし通話を切った
そのままイースに連絡をとり指示を出した
「どんな手を使ってでもヒューストンを見つけろ」
テキサスは、しばらく見せていなかった純粋な怒りを露わにしていた
私との約束を破るなど、絶対に許さない
必ず後悔させて二度とそんなことができないようにしてやる
再三私の前から消えようなど、させるものか
テキサスは端末をしまい、後ろから近づいた影に後ろ蹴りを放った
その影には手応えがあり吹き飛ばさすと近づいてきていた男はその攻撃をガードしていたのか大したダメージを与えることはできなかった
「なるほど、ヒューズの言っていた連中か」
彼女を取り囲む男たちは確かにガンビーノの一味とは一味違うようだ
一人一人が違う気配を漂わせ襲いかかる
「安心しろ。死なない程度に切り尽くしてやる」
剣を構え駆け出した
「あぁぁぁぁ…」
頭をを押さえて壁にもたれかかる
動き出して数分なのにも関わらず頭が割れるように痛み始めた
実際のところ先ほどのガンビーノ一味の爆弾でそこそこのダメージが入っていたがアーツが暴走しかけているため本人からすれば痛みなどない
やはりどうにも破れるように痛い頭痛と襲いかかる靄が耐え難いようだ
「フーッ、フッーッ」と荒い呼吸を行い薬剤を取り出そうとするが手が震えて上手くいかない
そこへ近寄る者が現れる、それはバイソンであった
ヒューストンが心配になり自分だけ引き返して様子を見に来たがやはり良くない状態だった
バイソンが急いで彼に近寄りポーチから注射器を取り打ち込んだ
混濁としていた瞳に光が戻る、薬剤が効いたのかバイソンに顔を向けた
「すみません、助かりました」
「いえ…本当に大丈夫ですか…?」
そう問いかけると乾いた笑いを漏らした
「ダメみたいですもう」
「そんな…テキサスさんが、皆が待ってるんじゃないんですか!?」
「はははっ…そうですねえ」
路地裏から空を見上げると、夜にしては明るい
きっと安魂夜の祭りの明かりがまだ灯っている
きっと死ねるなら今日がうってつけなのだろう、最高の日だ
「…独り言、聞いてくれるかい?」
バイソンは返事をしない、しかし彼は続ける
「…きっともう死んじまってたんだ、俺は」
「何を…言ってるんです…?」
「お嬢が過去から今にかけて愛した男はもう死んじまってんだ、ここにいるのは抜け殻でそいつの代わりになろうとしてたんだ」
「…貴方は貴方です。それ以外、何者でもないんです。代わりなんて…」
「聞いてくれ、もう時間がない。全てを忘れちまう前に誰かに聞いて欲しかったんだ」
ヒューストンは立ち上がり始める
足は震え立つことすらままならない
「この役立たずの愚図は誰かに尽くさないと生きる意味が分からなかった、その尽くしてきた理由もわからなくなって、今はもうぼんやりと勤めを果たせとしかわからねえ」
よろよろと進み始めバイソンの肩に手を置いた
「今度こそ最後の勤めは、死ぬ前にあのクソッタレどもをぶっ壊して、死ぬってだけだ」
「そんなのって…あんまりじゃないですか!貴方は自分なんかに関係のないものの為に、死ぬために生きてきたって言ってるようなもんです!!」
「もう、なんだかわかんねえけど、きっとそれでいいだろ」
ヒューストンはさらに一本注射を打ち込む
からになった注射器を捨て先ほどよりマシな歩みになった
「君は若い。正しく生きろだなんて俺は言えない、君の求めるトランスポーターだの生き方だの、君自身がこうありたいと願って突き進め…なにもない俺にはできなかった、過ちを犯して、後悔して…生きて何かを掴み取れ、それでこそ、人間ってやつなんだから」
「じゃあ、テキサスさんはどうなるんです!? まさか置いていく気なんですか、大事な人をわからないとかなんとか言って!自分のことばかりじゃないか!」
「…こんな話、誰にもしたことがない…なんだか気分がいいよ」
歩みを止めて大きく息を吐いた
「…最後に…俺の名前は、なんて言うんだ?」
「ヒューストン…三下の、ヒューストンです…!」
「ありがとう…最後まで聞いてくれて」
バイソンは彼を追いかけなかった、彼の生き方など理解できなかったが自分の名前すらもうわからなくなっていた彼ははこうした方が幸せなのだと心のどこかで思っていたのだろう
ふと彼に生きろと声をかけようとしたが、もう彼はどこかへと消えていた
バイソンもまた、自分の役目を果たす為に駆け出す
「…本当によく会うね。やっぱり狙ってるんじゃあないかな」
「…かもですね。自分が自分で無くなる前に最後の願いを聞いて欲しいんです」
「…彼女に何を伝えるんだい?」
「どうか、俺のことなど忘れてくれと」
「…私の気分次第ってことでいいかな?」
「えぇ、十分です」
最後の一本の注射器を差し込み、消えた
「…落としたよ」
そこに残ったのは一本の、折れてヨレヨレになった一本の煙草だった
「私は嬉しいよ。君と同僚になれたんだから」