三下とテラの日常   作:45口径

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三下と喧騒の掟の外側と夜明け

やってきた殺し屋たちを叩きのめし変わり果てた大地の果てにやってきたが誰もおらず、残っていたのは落としていったであろう抑制剤だった

 

「ヒューズ…!」

 

落ちていた抑制剤を拾い、力強く握り締めしまう。

待っていろ、必ず連れ戻してたっぷりと怒ってやる

 

大地の果てを一瞥し、彼女は駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

ヒューストンは呆気なく捕まってしまった

囲まれて殴りつけられ麻袋を被され連れてこられたのだ

 

「久しぶりね、三下」

 

「…会ったことが?」

 

ハイヒールの靴裏で蹴り付け頭を踏みつけるもヒューストンは悲鳴も呻き声も上げない

彼からすれば因縁の相手だがどうやら靄がかかり思い出せない、初対面のような気持ちだった

 

「ふふふ、さっさと殺したくなるけどまだよ」

 

この女はかつてテキサスに仕えていた参謀であり、謀反を翻した張本人である

テキサスの父の暗殺を指示、支援を行い後継の娘をも屠ろうとするもヒューストンの逃亡支援により取り逃がし、自身が指揮していた暗殺チームの壊滅を期に失脚に失脚を重ね現在は暗殺チームを率い生存が確認されたこの龍門でチェリーニアとヒューストンを今度こそ始末し、返り咲こうとしていた

 

「アナタはあの娘の前で痛ぶってあげるわ。脚から段々上を切り落として見せにしめてあげる。そしたらまだ殺さないでアナタの大好きなお嬢を目の前でアナタと同じことをして、犯される様を見て、死になさい」

 

「ははは、無駄なこと考えちゃって。どうせ無駄になるんだ、先に俺を殺したほうがいいと思うがね」

 

「あら、じゃあアナタの大事な大事なお嬢から先にしてあげる。貴女を人質に取ったら股を開いて死ぬのか楽しみねえ!」

 

「いい趣味してらっしゃる。だからこそ服と下着の趣味もいいモノであって欲しかった」

 

「…アナタの面の皮が剥がすのが

楽しみねえ? ついでにペンギン急便のバカ女たちも同じこと試してあげるわ」

 

ヒューストンに頭を踵で踏み躙るが思っていた反応と乖離しており気に入らなかった

昔から何かと邪魔をするこの男が特に気に入らず彼女の考えが通らない時は必ず彼が根幹にあった

彼の発言権は実質無いに等しかったがテキサスからすれば彼がイエスといえば通り、ノーといえば却下される

事実上この男が組織を支配していたのでは無いかというほどに影響があった

 

暗殺に計画が長引きすぎたのもこの男が原因で本来の予定戦力を大幅に削られた状態でのスタートにされ挙げ句の果てに顔に泥を塗られたのだ

彼女はなんとしてでもこの男に屈辱を与え殺すつもりだ

 

 

 

 

 

 

『テキサスさん』

 

「イース、見つけたか!?」

 

『はい、その先の3場地区の廃工業へ連れて行かれたのを確認しました』

 

待ち伏せだ、ヒューストンを餌に私を誘き寄せてまとめて始末するつもりだろう

 

『皆様をお連れしなくては危険です、ここは━━━』

 

「大丈夫だイース、お前はエクシアたちの支援をしてくれ」

 

『お気をつけて、テキサスさん』

 

路地に入ると仲間たちとシラクーザマフィアが再び遭遇していた

状況はわからないがそんなことはどうでもいい、一瞬エクシアと視線が交わり小さく頷いた

 

本当に、頼りになる相棒だ

 

隙間という隙間を縫うように駆け抜ける

急げ、テキサス。今度こそ置いていくなんてしないために

 

「テキサス、テメェまちやがれ!」

 

「おぉーっと! 相手は私たち、ペンギン急便だよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念、時間切れだ」

 

「…は?」

 

突然の物言いに素っ頓狂な声をあげる参謀

何を言うのかと思えば時間切れ、彼女からすればおかしなことだった

時間の猶予はどちらかと言えばこちらが握っている

テキサスにとって最高の人質も用意しこちらは準備に準備を重ねた状態で、何を言っているのかとおかしくて笑い始めた

 

「アッハハハハハハハッ!!アナタおかしな人だとは思ってたけど本当におかしいのね、とても愉快よ!!」

 

狂ったように声を上げながら笑い始める

 

「貴様にはお嬢にお目通りする資格などない、貴様が好きそうなもので殺してやろう」

 

「そう、まぁ、どうでもいいけど。話したければ話してればいいんじゃない?」

 

見下す物言いをしクスクスと嘲笑いながら彼を見下ろすが、彼は転調を変えない

 

「…人間爆弾って奴だ」

 

「…はぁ?」

 

「あんたが誰なのかもうわからないが、心配すんな…あんたも同じになるよ」

 

当然捕まえた時、所持品は取り上げた以上爆発物などありもしない

するとヒューストンは次第に苦悶の表情を浮かべる

 

お嬢、すみません…約束を守れず

 

彼の理性はここで途切れた

狂ったように声を上げて喚き始めるとそれがおかしいのか同じように狂ったように笑い始めた

それもつかぬ間の出来事だった

 

「ぉぉぉぉおおおおおおああああああああ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」

 

「アッハハハハハハハっ!!! なに?今更辛くなったの?なったの?なったのナった、のなッタナッタ、なったなったなったナッタ、なッたナッタなったナッタなったナッタ━━━━」

 

彼女も、周りにいた配下も、狂った

双眸はギョロギョロと剥き出し言葉にならない鳴き声のようなものを繰り返し続ける

 

立つ姿勢を保てなくなり倒れるもの、苦悶の表情で呻き倒れるもの、叫びながら暴れ次第に動かなくなるもの

 

参謀の女も膝から崩れ落ち失禁しながら永遠に鳴き声を発している

 

「ナッタナッタ…ナッたなッ…タなっ…」

 

涙と涎を垂らし汚物を撒き散らしながら何も理解することなく、狂って事切れたのかもう鳴き声はしない

 

「ァ゛ァ゛ああああアアアああアッ!!!」

 

頭をガンガンと打ち付け身体におけるリミッターに歯止めが効かなくなるほどの強烈な刺激を受けて手錠を引きちぎった

頭を掻きむしり、何もかも靄がかかり全てを忘れ去られてゆく、ただ一つのもを残して

 

 

 

 

離れた位置にいたペンギン急便のメンバーたちはもちろん、シラクーザマフィアや最後の余興と言わんばかりに鼠王が現れ今にも乱闘どころではない騒ぎが起きようとしていたが、彼のアーツの余波が響く

 

「なにっ、これ、頭が…」

 

「ぅぁああ…」

 

「頭がッ…ワレる…!」

 

「アッ、アアアアゥアァ…」

 

エクシアのたちが頭を抑え頭の中にできた靄に苦しみ始める

シラクーザのマフィアたちも、鼠王も頭を押さえ苦しみのた打ちまわる

 

「こレ程とは、そウ像以上、だ…」

 

モスティマも彼の余波を受け戦慄していた

こうなればやることは決まっていた、しかしまだ間に合う

急いで彼の元へと向かい始めた

 

早く彼をどうにかしなければ龍門中に広まり彼は最後には鉱石と一体になり、この世から消えてしまうだろう

しかしそれをできるものは今、この場にいない

ただ1人、彼女を除いては

 

 

 

 

到着した時、現場は地獄と化している

その渦中に彼がいる

近づくたびに苦しくなるが構わず進み続ける

 

「ヒューズ、ヒューストン、もういいんだ、帰ろう…ッ!!」

 

頭が割れそうになるほどの激痛を耐え、体が言うことを聞かなくなり始め這いつくばりながらも彼の元へと行く

近づくにつれて頭の中の全てに靄がかかったように、苦痛を強くする

 

だんだんと自分がわからなくなり何もかも認識ができなくなってしまう

このままでは彼は全てを壊してしまう

全てを認識を歪め、壊してゆく、当然彼自身も壊れてしまう

 

させない、そんなことにはさせない

生きて帰って、またあの幸せだった日常を取り戻すために彼女は進み続ける

 

彼はもうすぐそこだ、しかし、それは更なる苦痛を伴う

頭は割れそうなほど痛み、心臓の鼓動があまりにも早くなる、目の前の全てが曲線で描かれて歪み、頭の中の靄はより深くなる

 

これは彼自身が身に帯びている狂気なのだろうか

きっとこのままでは彼のように狂う

いっそ、同じように狂えるのであればそれで良いのかもしれないと諦めかけてしまう

 

なぜ自分がこんなことをしているのか、なぜこうなっているのか、自分のすべきことすら靄がかかり始め自分という存在ですら理解できなくなってゆく

 

ただ彼女は進み続けた

たったひとつの明確で歪まぬもの、愛する彼の元へ辿り着くことだけが彼女を動かしついに辿り着いた、掴まえた、もう失ったりしない。

大切な、最後の家族を

 

もう彼女には何も理解できなくなっていた

ただこの苦しみの中で幸せな瞬間を得ていた

あぁ、どうしてこんなにもこの痛みと苦しみが暖かいのだろう

目を閉じて全て滅びを受け入れてしまいそうだったとき、ふと聞こえたのだ

それは言葉だったのか狂気の産物が生み出した幻聴なのかわからない。

 

ただ一言だけ透き通る声がそよ風のように聞こえた

 

 

━━━チェリーニア

 

 

記憶の中の全てが鮮明にフラッシュバックした

幼き日に出会っと時から、ここに至る全てを。

 

再び襲いかかる苦しみを耐え、滅びの願望を捨て、彼を抱きしめ大事に持ってきた注射器を取り刺した

薬剤が注入され注射器は空になる

 

あとはもうただ祈るだけだ

愛しい彼の名を呼んで、彼女は繋ぎ止めていた

次第に伴っていた痛みと苦痛、幻想の誘惑と狂気を打ち滅ぼし彼女は手にした、本物の温もりを

 

安魂夜の夜は明ける。その頃には、喧騒はなくなりまた日常に戻るだろう

 

朝日に照らされ、太陽を眺めた

彼を強く抱きしめながら

 

「帰ろう、ヒューストン」




喧騒の掟はとりあえず終わりでやす…
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