三下とテラの日常   作:45口径

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まだ続くショタ編です


【あったかも知れない日常】ペンギン急便と誰も知らざる三下

食事を終えワルファリン医師の検査の元テキサスが立ち会っていた。

触診や鉱石病の検査のため血液検査の際少し暴れたがテキサスが抱きしめ撫でることにより大分大人しくしていた

 

「そなた、手慣れているな…」

 

「まぁな」

 

「ぅぅ〜…」

 

「よく頑張った、偉いぞ」

 

「検査の結果は、また後日。今のところ問題ないだろうが、当時の健康状態がそのまま反映されているから、どこかで鉱石病の症状か当時の病状には十分注意してくれ」

 

「わかった、また来る。ほら、バイバイするんだ」

 

「…バイバイ」

 

未だ採血の恐怖から抜けきれないヒューストンの頭を撫で抱っこしながら立ち上がった。

今の所何か症状などの異常は確認されず健康そのものだった。

検査結果自体は数日を有するため今この場での判断は無理だろう。

懸念事項は成長によりその当時の健康状態で酷い物が出て来てしまうことだった。

 

「聞いてたけど、テキサスは母親向いてるんじゃない?」

 

「テキサスはんはもう立派なママやな!」

 

「ヒューズのことも心配だけどやっぱりテキサスさんの自然と出る母性が眩しかったです…」

 

「ほら、いいからいくぞ」

 

連絡通路に出て早速絡んできたメンバーたちに褒められているのか揶揄われているのかなんともいえない事を言われ逃れるように先を歩く。

胸に収まっているヒューストンがもじもじとし始めた。

 

「ん、どうしたんだ?」

 

「あ、あの、おります…」

 

先ほどまでの事と抱っこされている状態が気恥ずかしくなって来たの顔を赤くして下すように要求して来た。

 

「部屋まで送ろう。遠慮するな」

 

「じ、自分で歩けますっ」

 

「いいから」

 

微笑みながら抱き直しそのまま顔をより赤くしたヒューストンを運んでいた

 

「…やっぱテキサス、ママだ…子供に甘々なママだ…!」

 

後ろからそんな言葉が聞こえるが、気にしないことにした。

入浴は「一人で入れます!」と逃げられたためロドスのオペレーターに任せはしたが、あからさまにしょんぼりとしたテキサスママがいた。

 

 

 

 

 

 

 

就寝し今回もテキサスが一緒に寝てい様子を見ていた。

深夜、泣き声のようなものを聞き取り一瞬で目が覚め目を見開いた。

やはり体は成長しておりおそらく10代に入った頃だろう。

しかし今の彼とは想像もつかないほど痩せ細っていた。

 

「ぅぅぅ…ぅぁぁぁぁぁぁ…」

 

成長した彼はとてもか細い声で泣いていた。

彼女は察する、辛いことがあった時の涙だと。

ただ優しく頭を撫で、見守る他なかった。

すると落ち着いたのか涙を流しながら寝息を立て眠っていた。

 

日が昇り目を覚ますとまだ眠っているが表情は苦渋に満ちたものだった。

魘されているのか身を捩りながら声を上げ始め飛び起きた。

 

「母さんッ!!」

 

辺りを見回自分の置かれている状況が理解できていないのか困惑し始めた

 

「落ち着け。大丈夫だ」

 

「ここは…確か、路上で寝ていたはずなのに」

 

「…ロドス艦だ。キミは保護されてここにいる」

 

「…そうなんですね…ありがとうございます」

 

「キミはこれから検査を受けてもらう。そしたら食事を摂ろう」

 

「…はい」

 

彼はベッドに座ったまま黙り込む姿はどこか落ち着きがない。

痩けた表情と暗い瞳、まるで亡者のような形相を窺うにきっと壮絶な経験をした直後だったか、あるいは最中なのだろう。

 

「ここに来る前に、何かあったのか?」

 

「…」

 

「すまない、話したくないなら構わない。私はテキサス、チェリーニア・テキサスだ」

 

「…テキ、サス…?」

 

俯いていた彼が、その亡者にような顔をテキサスに向ける。

テキサスは得体の知れない、何かを感じ取った。

そして今にも折れてしまいそうなその身体でテキサスに飛びかかった

 

 

 

 

 

「今日は10歳ぐらいかな?」

 

「そうやなあ…こうやって子供の頃のヒューズはん見れるのは新鮮味があってええなあ」

 

「一体どんな子だったんだろうね!」

 

ヒューストンの病室にたどり着く直前のことだった。

病室から争うような騒音が響いて来た。

何事かと思い急いで扉を開くと、ヒューストンがテキサスに襲いかかっていた。

 

片腕を押さえているがもう片腕がテキサスの首にかかっている。

急いでエクシアとクロワッサンが引き離しすがそれでも尚暴れ続ける。

 

「くそっ。このやろぉおおお!! ふざけんな、ふざけんなふざけんな!!」

 

「なんや、どうしたんや!」

 

「落ち着いて、ヒューズ!」

 

「テキサスさん、大丈夫!?」

 

「…あぁ…大丈夫だ」

 

解放されたテキサスが咳き込みながら掴まれていた場所を触った。

相当な力が込められていたのか少し後が出来ていた。

 

「返せ!返せ返せ返せ!!母さんを返せこのやろう!!!」

 

「なんや、大人しくしや!!」

 

「どうしちゃったの、テキサスがキミを害するようなことなんて…!」

 

「返せ!お前らテキサスが母さんも、家も、全て奪ったじゃないか!!!」

 

衝撃的な言葉に皆唖然とした。

テキサスは特に目を見開き大きな動揺を見せる。

 

「返せ、返して…ください…なにも…なにもかも…ぜんぶ…かえして…」

 

次第に暴れるのをやめてボロボロと涙を零しながら沈むように気を失った。

 

「…ナースコール!」

 

「ベッドの側や!」

 

「ヒューストン、大丈夫!聞こえる!?」

 

ソラの言葉で場は動き始める。

ナースコールを呼び大声で呼びかけるが反応がない。

その中でテキサスだけは、呆然と彼から目が離せなかった。

 

 

 

 

 

搬送後ヒューストンは重度の栄養失調による意識の消失、ケガ、骨折、炎症などを診断され緊急入院という形で改めて入院し、暴れてテキサスを負傷させた経緯から拘束しロドス内から監視をつける形になった。

 

テキサスは自分の診察を断ったが無理矢理にでも治療を受けさせ3人は重い空気の中待っていた。

 

誰も口を開かない。

何があったのか、など彼の言葉を聞いていれば想像できる。

ここにいる皆が、それこそ一番理解してそうなのはテキサスだが彼女も当時は生まれたばかりかまだこの世に居ないほどだろう。

 

重い空気の中テキサスが診察室から出て来たが、その表情は暗く、ショックが抜けきれていないのが窺える。

跡はどうやら消えるらしいが、それ以上に彼に言われた言葉が尾を引いている。

 

テキサスを心配する声をかけるが誰もヒューストンについては触れなかった。

 

宿舎に行き大きなソファーに座り温かいココアを手渡すが彼女はそれを見つめるばかりで飲まず、何も語らない、だれも気休めな言葉をかけることもなく沈黙が流れていた。

 

そこへ、意外な来客が訪れる。

 

「どうかなさいましたか?」

 

静かに、落ち着きのある低い声はシュヴァルツだった。

かつて殺し屋でありシエスタの市長の下で働いていたが現在はロドスのオペレーターとして活動している1人だ。

 

ロドス内のバーで一度一緒に酒を飲んだがそれほど深い関わりがあったわけでもなく、まさか声をかけてくるなど意外であった。

 

「いえ、あの…」

 

「なんちゅーか…複雑な事情でなあ…」

 

「…彼のことでしょうか?」

 

一番触れて欲しくなかった内容に切り込んできた。

 

「昨日、薬品を服用して副作用か身体が小さくなったとお伺いしておりましたが…問題でも?」

 

「…そうなんです、ですが過去に大きく関わることなんです」

 

「…良ければお話を聞いてもよろしいでしょうか?…彼とは親交があったので微力ながらお力添えできればと」

 

真剣な面持ちのシュヴァルツを見てメンバーたちは顔を見合わせるとテキサスが口を開いた。

 

「…私が、私の一家が、彼から全てを奪ったというんだ」

 

テキサスは顔を上げず、先ほどの出来事を話した。

シュヴァルツは黙ってそれを聞いていた。

 

「彼は確かに今まで私に命をかけて尽くしてくれていた…だが私は何も知らずに…」

 

「確かに、貴女からすれば衝撃的なことでしょう。ですが、彼の年齢を照らし合わせれば貴女はまだ産まれて間もない頃かと思いますが」

 

「だが、私の一族が彼を不幸にしたのなら…私は…」

 

「…気休めかも知れませんが、貴女に対しては負の感情を抱いていることはないでしょう」

 

テキサスは顔を上げシュヴァルツの言葉を聞く

 

「彼と飲んでいるとき、貴女の話をするときはとても郎らかな様子でした…『立派なお方に育ってよかった』と」

 

「ヒューズ…」

 

「とても貴女を憎んでいることなどありはしないと思います。しかしこのまま何も知らずに事態が収束するのは貴女が良しとしないのは理解しています」

 

「…ああ」

 

「恐れていますか…知る事を」

 

「…いや、平気だ。ありがとう」

 

冷めたココアを飲み込み紙コップを潰した。

 

「世話になった。今度奢らせてくれ」

 

「お礼には及びませんがません…しかし、お酒の席でならいつでも」

 

「あぁ、また」

 

「では失礼します。彼によろしく」

 

シュヴァルツは少し微笑んで立ち去っていった。

 

「…なんや、意外にええ人やったな」

 

「ヒューズが知り合いだったこともびっくりだけど…もしかして最近お酒強くなって来たのってあの人のおかげ?」

 

「かも知れないね。テキサスさん、行くんですよね…?」

 

「あぁ、だが今の彼に聞いてもおそらく意味はない。明日から順に聞き出そう」

 

潰した紙コップを捨て宿舎を出た

今こそ、知られざる彼の全てを知るために明日を待つ




シラクザーノ編はもうちょっと待ってくだしあ…
ストーリーを読み直して随時描いておりますのでお待ちください…

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