三下とテラの日常   作:45口径

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生存報告がてらなんか書いてたやつを投稿するので初投稿です


三下と赤い影

ロドス艦内の休憩所にて、大男のループスことヒューストンは寛いでいた。

今日は休みであるが故特にやることもなく、愉快なペンギン仲間やロドスでの交友関係の深いものとも休みが被らず、珍しく孤独な時間を享受していた。

 

クロージャに頼んでいた手巻き煙草の材料の要であるシャグを受け取り巻いてすぐ吸う為に一番近い休憩所で数本巻いておこうと煙草を巻いていた。

 

彼にとっては煙草を巻く行為は吸うために必要な過程であり、精神を落ち着かせる方法の一つだった。

集中して巻いていると無心になり心が自然と落ち着くためこうして時間や周りを気にせず日々の忙しさから解放されつつ静かに巻けることが数少ない彼個人の楽しみなのだ。

 

気づけば10本以上巻いた頃だろうか、変わった気配を感じた。

後ろから何やら見られているような気配、殺気とは違う、こちらを伺うような独特な気配だった。

 

気配のする方を見るもその正体は姿を見せない。

誰もいない休憩所の風景とそれに合わない気配、ここロドスの艦内でほぼ間違いなく敵などいない。

彼自身、恨みを多く買ってきた過去があるがロドスの艦内ではそんなことはありえない、怪訝になりながらも煙草を巻く作業に戻るも気配は消えるどころかだんだん近くなってきた。

 

ちらりとその正体を探るように視線を向けると、一瞬赤い影が見えたような気がした。

あぁ、噂のオオカミだと彼は思った。

 

噂がある、赤いオオカミに気をつけろ。

 

同僚のループスの言葉が頭をよぎる。

このロドス内で、ループスの種族間で震え上がるほど恐怖を放つ人物がいる。

この組織のトップ3の1人、医療部門最高責任者であるケルシー女医の直属の部下であるオペレーター、レッド。

 

S.W.E.E.Pという秘密裏の作戦を主とした特殊部隊に属しているという噂やオオカミ狩り、暗殺者、ロドスの黒い面などを担っているなどあまりいい噂を聞かない。

 

どの企業や組織も私兵や傭兵などで固めるのが当たり前のような世界だがロドスにでもこういった汚れ役を担うような組織があるということがあることに改めてこの世界のクソったれぶりを改めて感じざるを得なかったのを覚えている。

彼女の噂、同族を狙っているということは彼自身の情報網で粗方知っていた。

 

しかしヒューストンからすればあまり興味のない話題であった。

マフィアや傭兵として生きてきた彼にとってそういったものは当たり前のように存在していて今でこそあまり関わりのない事柄であった。

そういったものは関わらないに越したことはないし必要もない。

ましてや自分が仕えるテキサスも関わらないほうがいいと口にしている以上自ら関わって自分たちに不利益を生む可能性をわざわざ取る必要もない。

そう考えつつも向こうから関わって来そうな状況に置かれていた。

 

そんな彼女から視線を浴びせられ居心地が悪い気がした。

同じループスの職員からは避けられラップランドすら恐怖を感じている彼女に興味を持たれるのは同じループスだからなのだろうか。

 

まぁ彼からすればことあるごとに絡んでくるラップランドも面倒ごとを起こしてきそうなレッドもどっこいどっこいなので正直潰し合いでもして欲しい所存である。

 

物言わず離れた位置から視線だけを向け続けるそれは殺意などとは違う、個人の興味という表現が正しいのだろう。

 

それはそれでどう対処すればいいのかが困ってしまう。

前者なら今まで嫌というほど経験し退けてきたが今回の場合はどうすればいいのか悩ませられる。

 

長年の経験からじわりじわりと近づいてくるのを感じ取れた。

水を吸い取った布のように水分が乾いた場所を侵食するようにゆっくりとだった。

 

武器は通常ロドスの指定された武器庫に保管する決まりだが実はこっそりと小型のナイフを仕込んでいる。

いざとなったら応戦できるが正直不安だ。

相手もナイフ使いで接近戦に特化したタイプ。

 

ヒューストンもパワー型といえばそうだが仲間たちにように器用な戦い方はせず、むしろ正面から戦うタイプではなかった。

実力者と純粋なぶつかり合いになればひとたまりもないだろう。

 

そんなことを考えていたがこれはいかんという考えもあった。

仮にも相手はロドスの一員、彼自身も胸を張れるような経歴ではないがそれはロドスにある程度の不利益を被らない程度のこと、つまり襲われる理由は言うほどないしわざわざそんなに知りもしない相手に好戦的に捉えて相手を見る必要などないのだ。

 

近づいてくる赤い影を尻目に考え事をしつつ煙草を巻き続ける。

数十本近くなった頃には頭を動かす必要がないほどに、視界の隅に彼女が現れた。

座っているソファーに沿うようにやってきたこの奇怪な女に内心微妙に動揺していた。

 

何しに来た、それがそもそもわからない。

目的のわからない攻撃は心を乱しやすく、不気味だ。

そもそも攻撃などされていないが本当に居心地が悪い、お嬢でも一声かけて隣に座るぐらいするぞ。

 

………なるほど、正直これは確かにビビるな。変な圧がある。

噂で聞いていたループスは恐怖を感じると言うもの。

プロヴァンスが彼女のことを話す時やたら怯えていたがこう言うことか。

 

事実、彼は恐怖を感じている。

しかしそれなりに長い人生を過ごしてきた彼を竦ませるほどの畏怖などではない。

まだ様子を見ていようとした時に気づいた。

 

こちらを凝視している、正確にはソファーに這わせている尻尾に。

 

試しに尻尾を反対側へ移すと追いかけるように彼女が反対側へと移動した。

 

さっきまで俺を凝視してたじゃん、俺自身は尻尾以下なのかよ……まぁいいや、それはそれで。

 

ついに手を伸ばし始めた彼女から逃れるように、尻尾を掴ませないと言わんばかりに右へ左へと揺らしつつ煙草を巻き切り道具を片付け立ち上がる。

 

振り向いて顔でも見てやろうと振り返るがそこにはもう誰もいなかった。

「なんだったんだ」と独りごちるも答えは返ってこない、気にする必要もないなと巻いた煙草を吸うべく喫煙所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

「はい」

 

「……何をしたんだ、ヒューズ」

 

「困ったことに身に覚えがない、としか」

 

ロドスの一角、数少ない狭い喫煙所のスペースでテキサスとヒューストンは困惑していた。

ガラスと扉で隔たれ中の空気を排出する換気扇の音が響くこの空間を、赤い影がちらついていた。

明らかにこちらを伺うように顔を覗かせては引っ込めるを繰り返している。

 

色々デカいな。

言動が幼い子供のようだとも聞いたが目の前に現れたのはどちらかと言うと成人した女性だったので正直驚いた。

比較対象としてテキサスと比べるとわずかにレッドの方が大きい気がする。色々と。

 

「なにか言いたそうだな?」

 

「言ってないのでセーフです」

 

テキサスのローキックが尻に軽く炸裂し「キャイン!」と情けない声をあげて態勢を少し崩した。

 

「あなた達本当に仲良しよね〜、羨ましいわ」

 

そんな2人に茶々を入れるのは同じ喫煙者仲間のフランカだ。

微笑ましいものを見せつけられた彼女は羨ましそうに一口吸い、紫煙を吐き出す。

 

「……それほどでもない」

 

「フランカさんも仲良しの相棒さんがいるでしょうに」

 

「あの子にも可愛げがあればいいんだけどね〜?それにしても、変わってるわよね」

 

「相棒さんが?」

 

「違うわよ、そこの赤い狼ちゃんよ」

 

フランカが指差す、ガラス張りの向こうにいる赤い影に目を向けると姿を隠した。

 

「……お嬢、お相手してあげてはいかがで?」

 

「いや、お前に譲ろう。子守は得意だろう」

 

「いえいえ、お嬢。ああいう手合いを流すのはお得意でしょう、お願いしますよ」

 

「謙遜するな、お前は多くの修羅場を越えてきたんだ。見せてくれ、お前の力を」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいや」

 

「「いやいやいやいややいや」」

 

「お互い結構本気で押し付けあってるの見てて面白いわね…あのオオカミちゃん、尻尾触りたいんじゃないかしら?」

 

「なんですかそれ。急に可愛い話題じゃないですか」

 

言動が幼い噂の一つだろう。

彼女が同族を追いかける理由の一つらしい。

 

「あの子同族に避けられてて触れないから、アタシがドーベルマンに頼まれて触らせてあげたことあるのよね」

 

「なるほど…ところで、この喫煙所は出口が一つしかない…」

 

「……恐ろしいことを言うな」

 

ふと煙草の火を消して灰皿に吸い殻を捨てるとおもむろに外へと出た。

そして扉の前で振り返りガラス張りの扉の外から笑顔を浮かべて中のテキサスへと言い放った。

 

「お嬢……これであなたは間違いなくここを出る際にモフられるでしょう。逃げ場はない…騙して悪いが、面白そうなんでな。モフられてもらおう」

 

「なっ…!?」

 

「へっ、能天気なバカ女がよぉ!! お嬢がモフられる姿を拝めないのが残念ですが、精々玩具のように尻尾をモフっ……あっ、あれっ、ちょっ、えっ…?」

 

尻尾を触られる感覚。赤い影、レッドがとても目を輝かせて尻尾を触る。

尻尾ハンターのレッドがそこにいた。

 

「あーっ、俺の方に来るか…」

 

「……あなたって、普通にバカなのね」

 

「私のモフられる姿が…なんだって、バカ従者? …ククッ」

 

「えぇ…アレーっ??」

 

「あっははははは!そりゃそうよ、自分からっ、尻尾っ、晒しに行けばっ…モフられるに…っ、決まってるじゃない!」

 

「俺の方に来るとは思わないじゃん…」

 

「ヒューズ……今っ、どんな気持ちだ??」

 

「…ち、ちくしょう……!」

 

「くさいけど…ふわふわ…!」

 

ガラス越しにゲラゲラと大笑いするフランカと笑いを隠せないテキサス。

 

隅っこで何してるんだコイツらと言わんばかりの表情のサリア。

 

面白いもんが見れたと笑みを浮かべるホシグマ。

 

わざわざ野郎の尻尾なんて触りにこないだろうとたかを括っていたヒューストン。

 

珍しく逃げられず、あまつさえ向こうから尻尾を触らせに来てくれたことに感動しながら一心不乱に尻尾を触るレッドはとても嬉しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒューストン」

 

「来たか。ほらよ」

 

あれから幾日が過ぎた、今ではレッドがヒューストンの元へ訪れては尻尾と戯れているのが散見されるほど日課と化していた。

 

ここ最近では出払う仕事もなく艦内での勤務が多いためこうして彼女から訪れて尻尾を触っていくと言うことが増えていた。

 

その間もぼちぼちイベントがあった。

最近遠くから威嚇してくるラップランドこととテキサスが若干避けてくるようになったこと、ケルシー自らレッドの面倒をいる間でいいから見てくれと頼まれたこと、ループスの職員から伝説などと言う風に囃し立てられているなどだ。

 

━━━伝説って?

 

━━━あぁ

 

今日も彼は尻尾をモフられている。

 

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