単純に没案だけど勿体無いから投下させてもろて
龍門/PM 18:32
「よぉーし、ここが最後だね」
相棒のエクシアがカーゴ室の扉を開き荷物を下ろし始める。
寂れた雰囲気の居住区の一画、通称感染者住居区。
あまり整備された土地ではなく、今にも消えそうな街頭に照らされた吐息は呼吸をするたび白く現れ消えてゆく。
今は冬、雪が積もったこの端っこの居住区は住む人間の心情と同じように特に冷え込んでいる気がする。
雪を踏み締め足跡を残しながら住居の扉の前まで歩きドアを少し力を込めてノックした。
「こんちわー! ペンギン急便ですー!」
返事はなく彼女の大きな声が静寂の中で反響した。
彼女がテキサスを一瞥すると小さく頷き「いる」と合図した。
中の物音でゆっくりとだがこっちに来ているようだった。
「ダラスさーん!お届け物でーす!」
ふと、テキサスの鋭い嗅覚が匂いを感じ取った。
懐かしい匂いだ。
忘れもしない、あの匂いが、なぜ今ここに?
再び大きな声を上げ間も無く鍵が開けられ扉が小さく開かれた。
エクシアの前に出てきたのは痩せ細った大男のループスで今にも病で倒れてしまいそうだった。
「ご利用ありがとうございます〜!ここにサインちょーだい!」
「…」
テキサスはドアに遮られていて見えなかったが嗄れた声と強くなった匂いをもって確信めいたものがあった。
彼女は小さく開いていた扉を掴んで全開まで開けるとそこには懐かしくもあり、別れを経てもう会えないとばかり思っていた男だった。
「ちょ、テキサス!?」
「……っ!」
「っ、なん…だ…よ…」
目が合いまるで時が止まったようにお互い動けずにいた。
かつての姿とは随分と変わっているが見間違えることなどない。
「………お嬢…?」
「……ヒュース…トン?」
かつて彼女のお付きだったオルブライト•ヒューストンという男だった。
そして動いたのは同時だった。
男が扉を閉めようとしたのとテキサスが中に飛び込んでその男を押し倒す勢いで抱きついていた。
「テキサス!?」
相棒の異常な行動に長い付き合いのエクシアも困惑した。
確かにめちゃくちゃなことを普段からやっている面子だがテキサスがこのような突発的な行動に対応できずにいた。
「エクシア!押さえろッ!!」
「え、ええ!?」
「やめろ、クソっ!」
「暴れるなっ…エクシア、連れて行くぞ」
「んっ、ん〜〜〜〜??」
訳もわからずエクシアはテキサスと共にこの男を誘拐じみた行為を行い運び出し始める。
何も食べていないのか身体は軽く2人で引きずるように運べば問題はないだろう。
力が入っていないのか碌な抵抗もできなかった男は彼女たちのつけて来た足跡を消すように大きな引き摺った跡で上塗りしていく。
「やめろーーー!!はなせー!!!」
しゃがれた声で力なく暴れるも抵抗虚しくテキサスとエクシアに挟まれる形で運転席に詰め込まれた。
「……久しぶりだな、ヒューズ」
「な、な、な、なんのことでござざいましゅでしょうか??」
「誤魔化すな。さっきお嬢と言っただろ」
「やっべ」
「なになに、知り合いなの?」
「あぁ、私の半分だ」
「えぇ!?」
「おじょっ、言葉選び相変わらず下手くそですか…」
「何も違わない。ほら、飲め」
ぐいっとボトルの飲み口を突っ込むように彼に飲ませ口を離し飲み込むと間髪入れずチョコレートを突っ込んだ。
「おっ…おじょ、ちょっと…」
「これから仕事で回るところを覚えておけ。いいな?」
「はい?」
「お前も今日からペンギン急便だ。ウチの会社は忙しいぞ?」
「ちょ、待って、ください!俺は━━━」
「おい」
「はい」
嬉しそうに話していたのが一転、付き合いの長いエクシアも聞いたことがないほど低く威圧的な声を発していた。
ヒューストンという男は即答で返事をし何処からかメモ帳を取り出し始め学習姿勢を取っていた。
「えっ、えぇ…?」
いつも脳天気なエクシアですらこの状況は飲み込めきれず助手席で困惑していた。
「ヒューズ、もう離れないからな…?」
「ひえ」
この日、ペンギン急便に新たな仲間が加わった。
「いや、やってることは誘拐とか強制連行じゃない?」
「エクシア、ここは龍門だ」
「……それもそっか!よろしくね新人くん!」
「えぇ??」
この新人が働き始めるのは、もう少し先の話