三下とテラの日常   作:45口径

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まだ全然どうなるとか決まってない見切り発車の初投稿です
シラクザーノ改めボヘミアンラプソディ編、よろしくお願いします


シラクザーノ/ボヘミアンラプソディ編
三下と目覚め


 

「目覚めよ」

 

誰だ?

 

「目覚めよ、己を失いし者よ」

 

何を言っている?

 

「貴様はかつてザーロと契約をした」

 

狼主ザーロ、聞き覚えのある名前だ

かつて自身がシラクーザを脱出する時力を借りた、狼主ザーロだ

 

「しかし貴様は見捨てられ契約を反故にされたのだ、彼のザーロに」

 

話が飲み込めない

そもそもお前は一体なんだ、ザーロとの取引もなぜ知っている

 

「これは契約だ、貴様が我が僕となりやつを引きずり下ろすのだ」

 

断る、お前も同じ類のものなら二の舞だろうが

 

「良いのか? 貴様の主人は奴に利用されているのだぞ」

 

どういうことだ

 

「かつて、こう契約したな。力を貸せ、俺に何があってもチェリーニアが幸せになれるようにしろ、と」

 

「奴は最後のテキサスを利用しベッローネの駒にして、あまつさえ我々のゲームにも加担させようとしているのだ。貴様の目覚めと引き換えにな」

 

契約だ、俺を起こし、お嬢を幸せにする使命を果たせるようにしろ。

貴様らはチェリーニアを幸せにする約束を果たせない上に人間に頼る情けない連中と理解した。

もう貴様らの願いを叶えるという甘言など期待しない。

余計な真似さえしなければザーロを引きずり降ろして、生きたままやつの脊髄を引き抜いてやる。

 

「威勢がいいな、ただの力のない人間が」

 

ほざけ、その人間に助けを求める貴様の言えたことか。

俺が気に入らなければ他所を当たるがいい。

 

「いや、悪く無い。それぐらいの気概がなければ出来ぬこと、目覚めるがいい」

 

自分の中の靄が消え始める

これまでのこと、自分はなんのために生き何のために命を賭して尽くすのか、思い出す

そして自らの生命を縛っていたものから解放された気がする

 

「忘れるな、これは契約だ。果たされた時貴様が起きていられるかは貴様次第だ」

 

一つだけ聞きたい

 

「申せ」

 

今、俺はどれほど遅れている?

 

「今起きれば、事の始まりに間に合うだろう」

 

そりゃあどうも

 

「期待しているぞ、テキサスに仕える者よ」

 

 

 

 

━━━━もうそんなんじゃねえよ

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、そこは見慣れぬ病室だった

目を開けてから不快な装置を軋むような気がする体で外す。

 

どこだ、ここ

 

起き上がり見渡すがここがどこで、なぜ眠っていたかも皆目見当がつかない

身体は長い間眠っていたのか重く、慣れるにはしばらくかかるだろう。

自身のことを案じてここでおそらく治療をしていたのだろう、ここへ入院させてくれた者、受け入れてくれた医療機関と思しき所には悪いが一刻も早くここを発ち馳せ参じなければならない。

ガタガタと動こうとするとコータスの男、容姿では女性とも取れなくはないがおそらく男だろう。

その男が此方に気付き近づいて声をかけて来る

 

「ヒューストンさん、聞こえますか!?」

 

「なんだ、起きたのか?」

 

頭に響く声に少し迷惑さを感じながらうんうんと頷くとその人物は飛び出すようにどこかへと消えていった。

一緒にいた気の強そうな女はネームプレートを見るとガヴィルと書かれていた

 

「ついに目覚めたか、こりゃあテキサスのやつが喜ぶな」

 

「テ、キ、サ、ス…」

 

その名を口にして思い出す

かつて彼女が子供の頃から仕えていた人物ということ、あの日を越えて彷徨い再び命を救ってもらいペンギン急便という居場所をくれた慈悲深きお方

そして、そのあとが思い出せなかった

ペンギン急便にいた時の記憶がある程度わかる

テキサスにペンギン急便に連れられた日、ソラと初仕事をした時、クロワッサンと商会を立ち上げた事、エクシアと大暴れした記憶、その後の記憶が曖昧なのだ

 

担当医が来るまで軽く検査を受けながらここにきた経緯位をガヴィル医師に問うと書類上記載されていた情報ではあるが聞き出せた。

龍門での事件のあと搬送されてきたこと、自分の病は奇病で手の施しようはなかったこと、テキサスはほぼ欠かさず連絡を取り訪れるたびに彼女は欠かさず訪れていたこと

 

「お前が最後の家族って言ってたぜ」

 

「そうですか」と返事をする代わりに頷く

なんとも勿体無いお言葉だ。

状況は今ひとつわからないがやるべきことは変わらない、彼女が起きろと望むのなら起きて、再び仕え、幸せを見届け終えるまで生きる。

 

「そういえば、まだ連絡が来てなかったな」

 

水を受け取り声の調子がまだ戻っていないため声を発さず顔を向けた

 

「いつもうるさいぐらい連絡をよこしてくるんだが、昨日から来てないんだ。まっ、お宅の配達業は激務って聞くしな」

 

「…コトが、始まっ、てる」

 

ようやく声を取り戻した彼の言葉に「ん?」と疑問を持ったところで担当医の人物がやってきた。

ここロドスにおけるトップの一人、ケルシーだ。

 

「状態は?」

 

「この通りだ。起き上がってなんとか喋ってピンピンしてそうだぜ。脈拍も脳の異常も今のところ異常なさそうだ」

 

「わかった。あとは任せろ」

 

ガヴィルは席を立ち「じゃあな」と立ち去っていった。

 

「初めましてだな、私はロドス・アイランド医療部門を担うケルシーだ。よろしく頼む」

 

「オル、ブ、ライト…ヒュー、ストン、で、す」

 

抑揚のない声色で自己紹介を受け応えるように名前だけは返し段々とまともに喋れるようになってきた

 

「ここにきた流れはガヴィルから聞いたか?」

 

「えぇ、感謝、して、ます。しかし私は、時間が、無いんです」

 

「慌てる気持ちはわかるがまずは精密検査をして、リハビリに励むといい。君の症状は奇特で━━━」

 

「聞いて、くれ。シラクーザで、マズイことが起きる、人を探、す」

 

「しかし君は…」

 

「頼む、人類が面倒ごと、に巻き込まれてる。武力をかしてくれ、なんて頼まない。俺をシラクーザに連れて行くだけでいい。出来なきゃ、俺がここを抜け出して自分で、行くだけだ」

 

「…先程君の雇い主のエンペラーと連絡は取れた、オペレーターテキサスの失踪という彼の話と君はそれに関係のある話があるらしいな」

 

「…話が早、そう、で」

 

「此方はエンペラーの要請受け君をシラクーザへ届ける算段ができている。医者としては了承はしたくないが、こちらも強制は出来ない」

 

「なんでも、いい、ですよ…俺は、何、をすれ、ば?」

 

「リハビリだ、できる限り体を慣らしておけ。早速検査を受けてもらう」

 

「了、解。お嬢…テキサス、さんは、今どち、らへ?」

 

「オペレーターテキサスは昨日の夜からエンペラー達の元から消息を断ちこちらの捜査の結果シラクーザへ向け前進していることが確認されている。こちらも航路に問題がなければほぼ同時に到着できるだろう」

 

「十分、です、感謝、します」

 

「そして君はくれぐれもアーツは使いすぎるな。今度こそ起きることはおろか、こちらへ戻って来れるかもわからない」

 

「ご忠告、どうも」

 

チェリーニアお嬢様、今一度お待ちください。

必ずやこのヒューストン、お戻りいたします。

 

ロドス艦はシラクーザへ向け進み続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキサスは憂鬱な気持ちでいた。

あのシラクーザへ戻ることになり、かつてヒューストンが私を脱出させる時に世話になっていたという。

現れた狼主ザーロの話は眉唾だったがテキサスを動かしたもの、ヒューストンの目覚めが決定打であった。

 

ここ2年起きる気配のない彼を起こすのはもう、人外の力に頼るほかないと決断しシラクーザへと赴いていた。

 

「ヒューズ…」

 

手にはかつてペンギンのメンバーと一緒に撮影した写真だ。

ペンギン急便のメンバーはおろかボスからも半ば強引に抜け出してまで来たのだ。

後などない、進むだけだ

過去にに決着をつけ、今の幸せ、家族達を守るために

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後

 

数日の移動により少し疲弊していたが休んでいる場合でもなかった

ベッローネファミリーの屋敷を訪れ諸々の打ち合わせを終えてベッローネファミリーの代表格であり今回の仕事を共にするレオントゥッツオと共にウォルシーニ建設部長のカラチを護衛する任務へと当たっていた

 

「帰ってきた感想はどうだ、テキサスさん」

 

「いいとはいえないな」

 

「それもそうだな、俺だってたまったもんじゃないだろう」

 

降り続ける雨をうっとしそうに見上げる

ここシラクーザでは晴れている姿をあまり見た覚えがない。

龍門での生活が早くも恋しくなり始めてきていた

 

「そういえば、覚えているか。アンタの組織にいた、あの三下…たしかヒュース…」

 

「すまない、彼の話はやめてくれ。仕事に支障が出る」

 

「あ、あぁ、すまない。あんたも気にすることがあるんだな…」

 

「…そうだな」

 

テキサスは一瞬表情を険しくなるもいつもの無表情に近い、平時の状態に段々と戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目的地まで6分です』

 

数日のリハビリを経て万全とは言えないが準備を整えることができた

到着アナウンスの放送が流れロドス艦内の射出場に「6分!」と復唱を繰り返し最終段階の準備を済ませる

同じく復唱を繰り返し最後に装備品を確認して射出に合図を出す

 

数刻前のケルシーとの会話を思い出す

 

「リハビリ、症状の経過観察も良好、作戦可能と判断し承認する。…いいか、我々にできるのはここまでだ。我々はシラクーザでの活動権限がない、よって可能な限り接近して車両をカタパルトで射出し、その先は君の個人的な行動になる」

 

「ロドスは関与してない。あくまで一人の男による行動、だな」

 

「そうだ。本件に関してはロドスの関与を掴まれるわけにはいかない。できる限りの装備も渡しておきたいが…」

 

「十分だ。現地で装備品を残すわけにもいかない」

 

「ドローン等による支援や、地方事務所における連絡も不可能だ。単独で救援も支援もできない。それでも行くんだな?」

 

「今か今かと待っている」

 

「わかった…これを」

 

ケルシーは数本の注射器を渡す、彼専用に調剤された鉱石病の抑制剤だ

 

「これは君の体質に合わせた薬剤だ。君自身今は安定しているだろうがもしものために持っていけ」

 

「助かります」

 

「治験をしていないから効果は保証できない。最悪の事態をできる限り避ける時に使うといい」

 

『間も無く目的地周辺へ侵入します。搭乗員及び担当クルーは射出デッキまで集合願います」

 

「…本当に行くんだな。引き返すなら今だぞ」

 

「危ない橋一本も渡れない男に勝機が来るものか」

 

「君は死というものを今一度理解するべきだ。彼女のためにも」

 

「俺は死をも騙す男、生と死を掌り選びし者」

 

「…わかった、健闘を祈る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブレーキ装置解除よし、外部ロックよし、射出用意!!」

 

射出整備員が声を張りボディランゲージでサインを送り安全観察員のゴーサインを受け射出長がコンソールパネルを操作し傾斜をつけ圧力を貯め始める。

 

「圧力メーターよし、カタパルトレールよし、射角045よし!」

 

圧力が溜まり切りヒューストンと顔を合わせ車両のガラス越しに準備完了をハンドサインで射出整備員に出しその伝達を射出長に伝えスポッターによる着地点の異常無しの報告を受け安全員がゴーサインを出した。

射出員が片膝をつき片腕を前へ突き出し、全ては揃う。

 

「射出、射出、射出!」

 

赤いボタンを押すと轟音と共にヒューストンの乗る車両が発射される

 

「パラシュート、開きました!…着地を確認…グリーンサイン、離脱!」

 

「制御、こちらシューター。グリーンを確認、離脱」

 

『了解。離脱』

 

通信機でやり取りを終えるとロドスの航路がどんどんシラクーザから離れていく。

彼の使命がうまく行くことを願って。

 

 

物語が大団円で終わることを祈って

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