三下とテラの日常   作:45口径

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三下と独奏

「くそッ、出遅れたか」

 

情報収集を自力で行いベッローネファミリーの庇護下にあったウォルシーニの建設部長カラチについて調べていた。

 

今回のキーパーソンとなりえる人物の行動パターンを観察し時期を見て介入をする算段だったが後手に回り過ぎていた。

カラチは目の前で爆殺されてしまい事態が急変していた。

 

どうやらこの都市で今起きていることは単純なことではないらしい。

車に積んでいたボディアーマー等の装備を着込み、それをトレンチコートで覆う。

帽子と布で顔を隠し道中彼が度々使う伝手、キャノット商会で手に入れた拳銃と自動装填型の中型クロスボウなどの武装を手早く確認して飛び出る。

かつて殺しの仕事をしていた経験則を活かし隠れて観察し起爆を確認できる場所を紙の地図で概略を絞り急行した。

 

見つけた、運はまだ彼を見離していない。

入り込んだ路地に物々しく撤収する者たちに向けてボウガンで射抜く。

 

「ぎゃあ!?」

 

「敵だ!」

 

「やつは誰だ!?」

 

「なんでもかまわん、目撃者は殺せ!」

 

殺し屋と思しき集団と会敵し応戦する

遠距離武器を用いる構成員を優先的に排除し接近して来た者にボウガンの矢を放ち倒す。

 

最後の一人のロッドによる攻撃でボウガンを弾かれ手から離れてしまうがホルスターに収めた拳銃で肩と膝を撃ち抜いた

 

「ぐあああぁ!!」

 

銃創を抉り数発殴りつけてクロスボウを回収した。

気絶させた男を引き摺り連れ出そうとした。

 

「待てッ!」

 

聞き覚えのある声、テキサスの静止させる声をを耳にし一瞬度肝を抜かれるが今正体を露見させるわけにはいかない。

フラッシュバンを顔面に向かって投げつけると防御するように剣を盾にした。

2回の爆発が起きただけで被害は聴覚に響く程度のものだった。

 

彼女は一瞬目を離した、それこそ瞬きをした程度だった。

彼女からすれば一瞬で怪しい男が消えたように見えた。

今もこの場から動いていない、アーツによる認識阻害だ。

しかし状況が悪すぎる、飛び散る水飛沫や血まで隠しきれていない。

素早くその場を離れて車の位置まで戻り男を車に押し込みエンジンをかけた瞬間殺気を感じた。

 

車から飛び降出すと幾つもの剣が乗っていた車へと降り注いだ。

飛び出なければ脚を貫かれただろう。

クロスボウと拳銃を使いこなし牽制で撃ち込みながらその場を離れていった。

 

牽制射撃から身を隠し追いかけるも姿を完全に見失ってしまい残されたテキサスは一通り車を調べるが書類の数枚と気絶しているおそらく実行犯の一人の殺し屋を一瞥しその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

レオントゥッツオは迫る殺し屋に応戦しながらルビオを護衛していた

実力者であるガンビーノとカポネに加えて手下を率いてやってきたため非常に劣勢だ

テキサスも加わるも戦況を覆すのは難しいだろう

 

ヒューストンはテキサスから逃れたあと爆発現場に少し遅れながら到着した

クロスボウに特製の爆発矢を装填し距離を稼ぐため傾斜をつけて打ち込む。

直接敵部隊に撃ち込まず僅かに離れた位置に撃ち込み爆発を起こし注意を引いた

 

その隙をテキサスは見逃さず一気に切り込みそれにベッローネの構成員が続く。

通常の矢に変更して後方にいる遠距離武器を用いている狙撃手を集中して狙う。

 

相手からも反撃を受け、身を隠していた建物に矢が刺さり完全に押さえ込まれていたが一発の爆発音で状況は急変した。

襲撃者たちが撤収を始め場は収まる爆発の余波を喰らい負傷者の治療を行なっているところへ数台の車両、裁判所に所属する車列だった。

彼もそろそろ撤収すべきだがまだやることがあった。

裁判所とベッローネファミリーの関係を確かめることで、得られるかもしれない手がかりを探していたのだ。

 

ヒューストンは遠目ながらもスコープでラヴィニアの顔を確認した、ベッローネのリーダー格とも何か関係がありそうな様子だ。

今後の重要な手掛かりとして、彼女に接近する必要がある。

テキサスが拘束されて連れて行かれるのは心苦しいが手を出すわけには行かない。

その場を離れようと判断した時、スコープ越しにテキサスと目があった気がした

 

 

 

 

 

 

「…どうかしましたか?」

 

「これを」

 

レオントゥッツオに折り畳まれた書類を手渡す

それはこの都市に入る際の通行許可証と、来訪目的が書かれていた各種書類の数枚だ。

 

「これは?」

 

「調べてくれ、遭遇した怪しい人物の手がかりだ」

 

「俺たち以外に勢力がいたと?」

 

「少なくとも敵ではなさそうだ。さっきの援護もそいつだろう」

 

「…わかった。調べておく」

 

「…その人物についてもお話を聞かせていただきます」

 

車に乗り込み勾留所に向かい走り出した。

中から先ほどの現場、特に援護射撃があったであろう建物の影を見た。

壁には矢と弾痕が残っていて、そこにはもうすでに誰もいない。

 

彼女はラップランドの言葉を信じかけていた、「奇跡が起きている」という言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

「ほらね、奇跡が起きてるんだよ」

 

遠目で傍観をしていたラップランドがそう呟いた。

顔を隠していたが戦い方や行動パターンがかつてシラクーザに居た彼と酷似している。

龍門でも稀に同じようなやり方、前には出過ぎず遠距離や隠密、支援で前線を支えるそのやり方はラップランドが気に入らない所の一つだ。

一度どころか何度も遊び程度だが肉弾戦で渡り合える技術と肉体を持っているくせに前に出てこない、そんな臆病者のやり方が気に入らなかった。

 

「せっかくだし、ボクもひと目会っておこうかな」

 

ラップランドはその場を立ち去り、彼の跡を追い始めた。

ある程度の計画はカポネたちには伝えてあるため、少し寄り道をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらかじめ確保しておいたセーフハウスの一つに入り、壁に貼り付けた地図に先ほどの状況を書き込む。

 

カラチの死、テキサスたちのこと、あの裁判官のこと、かつて龍門でみたガンビーノとその相方カポネ。

 

現状情報が足りなさすぎた。

単に抗争とあればシンプルで分かりやすいのだがそんなものではない。

 

あの時は捕まえた殺し屋を尋問して雇い主を吐かせようと考えていたが無駄だろう。

 

ベッローネ、ひいてはザーロについて調べたいが悠長にやっている場合ではない。

最悪な状況を避けるには障害を見つけ出しその芽を摘む必要がある

 

最終目的はザーロを始末しテキサスを龍門に帰すことだ。

 

地図に点は増えるが線が繋がらない、現状できそうなのは…

 

思考を巡らせるが確固たる根拠も、手がかりも見つからない

心を落ち着かせようと煙草に火をつけた。

 

すると、ドアをノックする音が響く。

客人など来るわけがない、来るとするなら殺し屋以外いないだろう。

逆を言うならこの件に関する者以外な訳がない、しかし顔も隠し身分も偽装したものだ。

追跡を逃れるためアーツで姿を変えて遠回り気味に帰ってきたのだ、追跡できるわけがない。

 

「ヒューストン、いるんでしょ。ボクだよ」

 

完全に予想の範疇を超えた人物が訪れてきた。

窓から飛び出して逃げようかとも思ったが何が原因で何のためにここにきたか知る必要がある。

潔く扉を開けて招かれざる客人を迎えるとにんまりと笑うラップランドが部屋へと入ってきた。

 

「お邪魔するよ」

 

中にズカズカと入りベッドに座り込むと壁に貼り付けた地図とその書き込みを見つめる

 

「ふーん、遅れてきたにしては追いついてきてるってワケだね。それにしても線が繋がってないねえ」

 

「なぜ俺がいると?」

 

「偶然だよ。見慣れない車と、タバコの匂いさ」

 

トントンと灰皿を置いている机を指で小気味よく突く

 

「で、何しにきたんだ?わざわざ会いにきてくれたとか?」

 

「そんなところだよ」

 

「…らしいといえばらしい、な」

 

「でも、そうだな…君にもちょっと働いてもらおうかな」

 

ラップランドは情報を伝える、ベッローネファミリーの若頭レオントゥッツオのこと、その関係者ラヴィニアのこと、テキサスのこと、ガンビーノとカポネに指示したことを共有する

 

「…なるほどな」

 

彼の行動の指針としてはラヴィニアを守ることとベッローネファミリーについて調べることにした。

ラヴィニアという人間が死亡するとおそらく今後不都合なことになると判断した。

 

ベッローネはザーロについては随時調査し介入する。

テキサスを解放するにはベッローネ俺が作った借りをチャラにすることで終わりだが、彼は名も知らぬ人外のザーロを引き摺り下ろすと言う目的もある。

 

若頭はともかくドン・ベルナルドの思惑がわからない以上下手に介入するのは下作だ。

 

考えをまとめているとラップランドが話しかけてきた

 

「懐かしいよねぇ、テキサスが修行でうちに暮らしてる時もキミは鬱陶しくそこにいたんだから」

 

「記憶違いだ、俺はその時はお嬢のそばにいなかった」

 

「わかってないね、キミは彼女の心に常にいたんだよ?」

 

「それは十数年越しの、嬉しいお知らせだな」

 

「人は彼女をシラクーザ人らしいってよく言うけど笑っちゃうよね。キミはシラクーザ人としてはどうだい?」

 

「彼女はただのチェリーニア・テキサス。俺はただの、くたばり損ないだ」

 

クロスボウの弦の状態をチェックし拳銃もスライドを引いて中を確かめたあとドライファイアをして動作チェックをする。

少なくなった残弾のマガジンに弾を込め直す。

 

「キミはこの地も、もはやテキサスもどうでもいいの?」

 

「忘れるな、俺は彼女の親でも親族でも、ましてや恋人などでもない」

 

「キミって、わかってないよね…ここはシラクーザで、血族のつながりやファミリーの掟、この地の泥沼からは誰もがそう簡単には逃れられないってこと…シラクーザにいてテキサスのそばにも居たのにそんなことも知らないと言うのかい?」

 

「血の掟など、知ったことじゃない。俺がわかるのはチェリーニアという人間が幸せになるべきだということだけだ」

 

「自分のせいで、幸せじゃないかもしれないのに?」

 

拳銃にマガジンを挿入しスライドを引いて弾を送り込む。

 

「君のせいなんだよ。あの子が変わってしまったのは」

 

「否定はしない。俺が連れ出したことで彼女を変えてしまったのは事実かもしれない。しかしこれからを決めるのは紛れもなく彼女だ」

 

「君は…もしかして期待してるのかい?最後のテキサスがまたファミリーを立ち上げシラクーザで繁栄を掴むのを」

 

「まさか。お前は?」

 

「僕はね、知りたいだけなんだ。キミは?」

 

「いい加減死にたいもんだが、そうもいかなくてね」

 

隠蔽に特化したホルスターに拳銃を納めクロスボウをスリングで吊るしトレンチコートを着込む

 

「俺はラヴィニア裁判官の方に行く。あんたは、お嬢の方へ行くんだろ」

 

「…意外だねえ、キミが行くもんだと思ってたけど」

 

「お嬢にことを今頼めるのはあんたしかいない。やるだろ?」

 

「もちろん。これ、貰うよ」

 

机の置いていたチョコレート菓子を手に取りしまう。

壁に掛けていた地図や写真を外して回収した。

部屋には煙草の吸い殻の入った灰皿と、少し湿っているマットレスがあるだけだ。

 

「じゃあ、またね」

 

「あぁ、また」

 

走り去る彼を見送りながら呟いた

 

「もしかしたらキミは、ボクらと同じく自由になりたいのかい…?」

 

答えは帰ってくるはずもない。

彼女は勾留されたテキサスを脱獄させるべくウォルシーニ監獄へ向かう。

 




たくさんのUA、お気に入り、感想などありがとうございます
難航しつつありますが、書き切れるよう尽力します故よろしくお願いします…
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