三下とテラの日常   作:45口径

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とりあえずの初投稿です


三下と間奏

「どうも、ドン・ベルナルド」

 

「…これは驚いたな」

 

「貴方も、私の死を信じましたか?」

 

「ザーロから聞いたことを鵜呑みにしてしまってね」

 

あれから翌日の早朝にレオントゥッツオが段取りを決めてテキサスが拘束される報道がされる数時間前に、この契約における話し合いの場を設けられ屋敷に通されベルナルドにお目通りした時彼は驚いていた。

 

この件は本来ならばヒューストンがザーロと契約し彼がその義務を果たす事になっていたがザーロの独断によりヒューストンは見放され、テキサスに白羽の矢が立ったそれを問いただすためにここへ足を運んだ。

言わばベッローネに対する牽制だった。

 

「私がここに来たという事で、話す内容を理解してないわけでもないでしょうが…話すべきでしょうか?」

 

「必要はない。把握しているつもりだ」

 

豪華な装飾が施されたソファーに座りお互いに相対した

 

「チェリーニアを解放しろ、というより本来借りを返す人物である私が引き継ぎましょう」

 

「…私は構わないが、ザーロはどうするつもりだ」

 

「それが本件です…ザーロは潰す。私との約束を反故にし、くだらないゲームのためにチェリーニアに手を出した。どうせ私の蘇生を引き延ばしてそのまま彼女をゲームに加担させるつもりだったのだろうがそうはさせん、生きたまま脊髄を引き摺りだしてやる」

 

「…なるほどな…そうか」

 

「邪魔をするようならあんたらにも容赦はしない」

 

「好きにするがいい。君というイレギュラーが入った程度では変わり映えはしないだろう」

 

ヒューストンは正直、意表を突かれた。

契約のことでごねるかザーロとのことについて何か言及されるかと思いきや、あっさり承諾というものだった。

 

「しかし、動くのならば今ではないのだろうな」

 

「…何か、お考えでも?」

 

「さぁな。君はこの舞台の台本にない。配役に則った怪人でもなければ、観客でもなさそうだとね。強いていうならば、名も無き脇役だろうか」

 

「脚本家とは存じませんでした。私はとてもその脚本が気になりますね」

 

「私は劇場の監督だ。脚本はとても書けたものではない」

 

「そんな事を言って。『テキサスの死』を書いたのが貴方でない事を祈りますよ」

 

「…私ではない。君もよく知っていると思うがね」

 

「どうでしょうか。はっきり言って疑っておりますよ、あなたはそういう人ですから」

 

用意された紅茶を飲み干す。

ヒューストンはこの男を疑っていた、こうなる事を見越して動いていたのではないかと。

何の根拠もない、一種の勘とこの男に対する認識がそうであった為だ。

するとノックの音が部屋に響く。

 

『ドン、お時間です』

 

どうやら予定があるらしく今日は時間切れのようだった。

 

「では本件は君に任せる。せいぜい物語に沿った役を演じるがいい」

 

「知らないのか。脇役でもストーリーを変えれるんだ」

 

「期待しているよ。また来たまえ」

 

入ってきた部下の男に連れられ屋敷を後にした。

調べるべきことは多くあるだろうが、今はカラチの一件を片付けるべきだろう。

ザーロの件についても、おそらくはまだ手を出すなという一種の警告とも取れる発言もあり保留にする他ないだろう。

 

「とにかく、お嬢の護衛に回るか」

 

現地調達した車に乗り込みラジオをつけるとテキサスがカラチの殺害容疑者として拘束された放送が流れ始めていた。

 

「始まったか」

 

監獄に向けて車を走らせる。

付近に到着し、宿を借りて監視をしていた。

監獄への入り口は一つでありそこを見張っておけば間違いなく怪しい奴が来るはずだ。

 

偵察用の双眼鏡で監獄周辺を探るが狙撃手や怪しい手合いは見つからず、監獄の入り口はマスコミがこぞって押し寄せていた。

 

数時間経った頃だろうか。

マスコミの取材陣が立ち去り始め通りは閑散とし始める。

まだ粘っている者もいるが数名ほどだった。

 

窓から離れず、監視を続けていると部屋にノック音が響く。

 

「彼は拳を以って身を守り、秩序を以って拳を戒めることができるのに、まだ足りないというのか?」

 

『ロマンに踊らされた物言いはよせ』

 

通信機を使い合言葉を確認して扉を開けるとラヴィニアが訪れてきた。

彼女も監視してテキサスを殺しに来るもの、または怪しい動きがないかを確認するためにここへ来た。

 

「予定より早いが問題でも?」

 

「いえ、問題はありません。首尾は?」

 

「何もない。残った報道陣は特に警戒する必要もないだろう」

 

「わかりました、交代しましょう」

 

「まだ必要ない。休むなり明日の準備を済ませろ」

 

「…いえ、大丈夫です」

 

「なら休め」

 

「それなら、お聞きしたいことが」

 

「可能な範囲で」

 

ラヴィニアはベッドに腰掛け持参した食事を置いた。

 

「テキサスさんとは、マフィアだった時期に一緒に?」

 

「そうだ」

 

「どれほどの付き合いが?」

 

「テキサスの死の脚本を見ればいい」

 

「それではなく、あなたから聞きたいんです」

 

ヒューストンは少し考え込むように少し唸った

 

「…特に説明することはない。主従関係が過去にあり、今は同僚というだけだ」

 

「運命とも思える、奇跡の巡り合わせですね」

 

「どうかな」

 

ふと、ラヴィニアが小さく笑う

 

「…ふふっ、寡黙なところは貴方に似たのでしょうか?」

 

「なぜだ、どれ程の付き合いか把握していないだろ。逆もまた然りだ」

 

「テキサスさんから聞きました。小さい頃から仕えてきた、信頼できる男だと」

 

「…話したのか」

 

「テキサスさんが貴方のことを話す時、なんだか生き生きしてた気がします」

 

「それはそれは。あんたは何故今も裁判官を?」

 

「私は…この手にした法典で救える命を、救いたいんです」

 

「たとえそれが希望なき者でも?」

 

「…それでも、私は法を以て救えると信じてやまないんです。あなたは…元マフィアで、この都市の人間であった者として、法とはどうお考えですか?」

 

「さあね。人間は初めての暴力をもって永遠に在り方を変えてしまったのかもしれない、故に暴力も法ととれる」

 

「…この地に救いはなく、現実は暴力で制し、法による秩序は夢の物語だと思いますか?」

 

「そもそも…これは現実なのか、それともただの夢なのか…俺にはわからない。そういう病でね」

 

「夢であってほしいと、願いますか?」

 

「現実であってほしいね。夢の中じゃ、煙でハイになれないから」

 

見える範囲の建物の窓奥を隈なくチェックするが怪しい動きはない。

 

「人と法。無い頭で考えてみたが、イマイチ俺にはわからん。ただ、無意味に苦しめられる連中は放っておけん」

 

「あなたは暴力を振るい人々を苦しめるマフィアとは違う。少なくとも、あなたは少し不健康そうな優しき者だと信じてます」

 

「よせ。人を、俺を信じるな。あと煙草はやめない」

 

「少し、禁煙をしてみてはどうでしょう?」

 

「断る」

 

雨の降るこの現在、未だ不審者は見当たらない。

冷めた食事を済ませ空の容器をまとめておく。

怪しい人物は現れない。

このまま現れなければ内部、ベッローネファミリーの誰かということになる。

 

「ヒューストンさん。そろそろ交代を」

 

「あぁ。3時間後にまた」

 

その後も何事もなく一夜を明かすが不審な人物も影もない。

これでベッローネの内部反抗だということがほぼ確定していた。

それに関してはレオントゥッツオが対処してくれるだろう

 

撤収を済ませて、裁判所に向かう。

ラヴィニアは当然裁判官として参加し、傍聴人に紛れ護衛としてヒューストンも中に入る。

 

怪しい動きを見せるものはいないがまだ予断を許さないだろう。

被告人台に立たされているテキサスを見守り続けた。

 

証言にいちいち噛みついてくるマフィアの陪審員にいらつきながらも判決を下されようとした時だった。

彼の耳は聞き逃さなかった、大きな車両のエンジン音が近づいていることに。

 

「何か来るぞ!逃げろ!!」

 

彼が警告したのも束の間。

裁判所の壁をぶち破り、大型のトラックが乱入してきた。

粉塵と悲鳴があがり、場は一気に混乱し始める。

 

そしてそんな中トラックから降りてきたのは、ラップランドだった。

 

 

 

 

 

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