三下とテラの日常   作:45口径

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遅くなってすみません…初投稿です…


三下と群れ

劇場から脱出し路地を駆ける。

すると一人の老人が立ちはだかりロサッティの構成員に取り囲まれた。

 

「……なぜお前……いや、あなたがここに?」

 

「人間、老いると悠々自適に暮らせる場所を求めるものでね。あの一件以来彼女は今でも君たちのことを大層心配しているんだ」

 

「……道を譲る気はないようだな」

 

「私はというと、歳を取ってからは若い人の世話を焼くのが何よりの楽しみでね。この年寄りとここでお喋りでもしていきなさい」

 

「……またの機会にさせてもらおう」

 

剣を抜き構成員たちの攻撃をいなし、倒す彼女に老人は銃を抜き照準を定め、引き金を引いた。

 

一発の銃声が響き、空薬莢が宙を舞った。

 

 

 

「待った!一人でええカッコさせへんで!」

 

その間に入り銃弾を防いだのは、仲間のクロワッサンだった。

 

「クロワッサン!?」

 

「あっれ〜、こんなところで一匹狼気取ってんのは誰かな〜?」

 

「…お前たち、何故ここに……」

 

「シラクーザのマフィアさんは社風として集団戦がお得意で、一方あたしたちの社風は━━」

 

「顧客に合わせた【おもてなし】ならお任せ、だろう?」

 

「大正解!ってことで…ねえおじいちゃん、マジメな話、同族のよしみで大目に見てもらえない?」

 

「アホ言うてる場合かっちゅうねん!」

 

「……ふむ、一理ある」

 

「えっ、ほんまに退いてくれるん?」

 

「やーりぃ!ありがと!」

 

「それに、君たちの迎えが来たようだ」

 

老人が数歩退くとエンジン音を鳴らしながら勢いよくバックで路地に入ってきた黒塗りの車が裏をとった数人を跳ね飛ばしながら乱入した。

運転席の窓から拳銃を使って迫り来る追っ手に撃ち込む男、ヒューストンが現れた。

 

「お迎えに上りましたよ、お嬢さん方!」

 

「「「ヒューズ!?」」」

 

「…っ! 乗るぞ!!」

 

「おじいちゃん!お喋りしたくなったらどこに行けばいい?」

 

「君が救済を求めるなら私にはなすすべがないが…秩序を求めるのならば、私はどこにでも在るだろう」

 

「わかった!じゃあまたね!」

 

「出せ!」

 

忙しなく駆け込むように乗り込み、アクセル全開でその場を後にした。

まるでその光景は、龍門での彼女達を彷彿とさせる一瞬だった。

 

「…若いとは、時に羨ましく感じるな」

 

慌ただしく去っていく彼らを、老人は見送っていた。

 

 

車内で彼女たちはワイワイと騒ぎ始めた。

昏睡状態でロドスに入院していたヒューストンが突然現れたことにより3人は大興奮していた。

 

「なになになに!?急にヒーローみたいに現れるなんてすごよ、ホントにサプライズだよ! 帰ったらパーティだよパーティ!!」

 

「いつからおったん!?奇跡やでこの瞬間!ていうか水臭いで、起きたんなら言ってやホンマに!!」

 

「ヒューズいつ起きたの!?それより、もしかしてテキサスさんの件でいるの!?もう言いたいこといっぱいあり過ぎてわけわかんないけど、とにかくおかえり!」

 

「あぁ、あぁ!わかった、わかりましたから!今運転に集中させてください!」

 

「あっ、そこ右ね!アタシ達のアジトがあるんだ!」

 

「了解」と指示通りハンドルを切ると華麗にドリフトを決め瞬く間にその場を後にした。

指示通りに運転をし彼女達が確保していたアジトへと到着した。

 

「俺は一度この車を処分してきます。また合流できたら合流するんで、お嬢をお願いします」

 

「えぇ〜!?…まぁしょうがないか、すぐに帰ってきてね!」

 

「美味しいピッツァ食べるさかい、遅れたらありつけんで!」

 

「ヒューズ!待ってるから!」

 

「それじゃ、また…彼女をよろしく」

 

走り去る彼を見送りアジトへと入るとテキサスは緊張が解けたように古びたソファーへと腰を下ろし大きく息を吐いた。

 

「テキサス」

 

「エクシア、助かった」

 

「ヒューズとケンカしたでしょ」

 

「…お前にも本当になんでもお見通しだな」

 

「とーぜんっ!ヒューズにも負けないくらい付き合い長いんだよ?」

 

「ヒューズはんいても全然喋らんし、ちょっかいかけへんなあ思ってたけど、やっぱなんかあったんやな」

 

「ヒューズも、なんだか前よりむすってしてたから…本当に何があったの?」

 

テキサスはここに至る経緯を簡潔に話した。

ここへきた理由、ベッローネとのこと、彼の目的と言い合いになったこと、ジョヴァンナのことを仲間たちに共有した。

 

「なるほどね…アイツも大概巻き込み体質あるよね」

 

「ホンマに…それにしても、かくれんぼで勝てるヤツはおらんちゃうか?」

 

「でも、よかった…ずっと起きなかったかもしれないって考えたら…」

 

「あいつは、自分のせいで私に幸せが遠のくと言ったんだ…でも、そんなはずはない。私は間違いなく、幸せだった」

 

「そうだよ、だってテキサスとアタシたちを巡り合わせたのは、間違いなくヒューズなんだから」

 

「ヒューズがおってくれたおかげで、ウチらより楽しくなってん、そんなことあるはずないで」

 

「ヒューズには敵わないけど、私だって負けないよ。テキサスさんヒューズも、私たちにも幸せを分けてくれたんだよ。不幸だなんて、そんなの違うって伝えないとね」

 

「あぁ…しっかり伝えてやらないとな」

 

「それに、仲直りもしっかりと付き合うから!」

 

「……頼りにしてる」

 

酒瓶を手渡され、全員の手に渡り乾杯をした。

机に置かれた1本の酒が開けられないのが彼女たちには名残惜しかったがまた後でと約束したのだ、すぐにみんなで開けられるだろう。

 

すると部屋に備え付けられた電話が鳴る。

部屋の番号など誰にも教えてない以上知り得ない筈だが、確かに鳴り続いている。

 

「はい、もしもし」

 

『ソラ君か。無事でよかった、安心したよ」

 

ソラが受話器を取ると相手はベルナルドだった。

部屋には少しの緊張が走り通話を進める。

無事であった事、テキサスのこと、メンバーの再会のことを簡潔に済ませる

 

「君から私に聞きたいこともいろいろあるだろうと思ってね……明日、劇場で待っているよ」

 

「わかりました」

 

窓には雨が滴り、落ちていく。

 

 

 

 

 

ヒューストンは車を処分し、身を潜める場所を探していた。

ふと、先日訪れた教会へと足を運び同じ場所へと座り込んでいると雨水を滴せる老人が現れた。

つい先程まで戦っていたラテラーノ人の老人、アグニルだ。

 

「ローグライト家の墓には訪れたかね?」

 

「……いいや、事が済んだら行くさ」

 

「そうか……そういえば、彼女たちは仲間なのだろう、共にいなくてもいいのかね?」

 

「共にいなくても彼女たちは自ら道を切り拓けるでしょう。これからもね」

 

「誰だってそうだ、人は本来一人であり、道を選び歩めるものなのだ。しかし共に歩む事で掴める事がある、それは人が人である故の必然なのだよ」

 

「……その掴むものが、望まぬ絶望だったとしても?」

 

「君が歩んで掴んだものは全てが望んでいたもので、希望に満ち溢れていただろうか?絶望や諦観、虚無などもある筈だ」

 

「共にいる仲間が俺のせいで掴む必要のないものを掴むかもしれないと怖気付いてね」

 

「必ずしも良い影響を与えられるなどとは思わない事だ。それは君や君の仲間たちにも言える事だろう、言うならばミズ•シチリアでさえね。間違いや傷つくことを恐れていては、前に進めぬよ」

 

「……」

 

「テキサスに会ってあげなさい。彼女は、彼女たちは君と共にあることを望んでいるのだから」

 

「……あんたは………いや、やめておこう」

 

立ち上がり老人を見据えた。

表情や仕草からは何を考えているのか読み取れない。

だが答えまでの道のりを示す助言を与えてくれるこの老人を疑うと同時に感謝していた。

 

「じゃあな、世話焼きのじいさんよ」

 

「また来るといい、若者よ」

 

「……もう会わないかもな」

 

アグニルに見送られながら教会の扉を開くと雨は降り続けている。

テキサスへの想い、ペンギン急便のみんなへの想い、この地で抗う者たちへの想い、この地にて置いてきた過去の想いを断ち切らねばならないことが、彼の目的となっていた。

 

ふと、一人の少女がいた。

このシラクーザではまず見ない格好と、携えている弓、まるで荒野を旅する狩人が迷い込んでいるようだった。

周りに倒れた男たちを見るに彼女がやったのだろう。

 

「お前、オオカミだな」

 

「……なるほど、お前は牙だな」

 

「お前もだろう」

 

「今だけさ……さて、通じるかわからんが人間らしく話し合いってやつをしないか?」

 

拳銃を抜き臨戦態勢に入る。

目の前の少女の存在など想像の範疇を超えたものだ。

口ぶりからもこの地の関係者ともファミリーの人間とも取れないが、狼主の牙ということだけで十分警戒に値する人物だった。

 

「……お前、言ってることとやってることがおかしいぞ」

 

抜いた拳銃を指差して少女は言う。

話し合いに武器など必要ない、当たり前のようだがそうは行かない。

人間は人間を信じることができない、相手に思うように行動させないために、身を守るために彼は暴力をもって話し合いをするのだ。

 

「そういう人間ってことで理解してくれ……俺は狼主ザーロを引き摺り下ろす、お前も牙ならその意味わかるよな?」

 

「……お前、ザーロに借りがあるってアンニェーゼが言ってた人間だな」

 

「借りだと?確かにな…決着をつける意味じゃそうかもな」

 

ルナカブ、アンニェーゼ。

察するに少女とその狼主の名だろう。

またわからない人物が出てきてしまった。

今の今まででしゃばらなかったのはファミリーとは関係ない人間のはずだ。

いや、牙を倒すという意味では敵という関係者ではあるのだろう。

 

「んで、牙である君は……俺に仇なす者か?」

 

「アンニェーゼの言ってたゲームのことか?ルナカブには関係ない。私は私だ」

 

私は私。

それが言えるこの少女をヒューストンは羨んだ。

自分とはなにで、どこへ向かうべきかを今探し求めているのだ。

今の自分を作り上げたヒューストンという名、過去に捨てざるを得なかったローグライトの名。

この二つの名は彼を苦しめていた。

本当のお前は誰なんだ?本当の名は?

当たり前のようにあるものが、彼にはなかった。

 

「お前は?ルナカブの敵か」

 

「……違う」

 

「そうか、私はもう行く」

 

彼のきた道を進みすれ違いざまに互いの視線が交わった。

 

「……まるで死に場所を求めているようだな」

 

「…そう見えるかい…そうかもな」

 

拳銃をホルスターに納め歩き始めた。

きっとこの件が片付く前にまた会うだろう。

敵か味方かは、その時にわかる。

通信機から連絡が入った、呼び出しはテキサスだった。

正直今は出たくなかったが、出るほかないだろう。

 

『……私だ、ヒューズ』

 

「…今はアジトで?」

 

『……そうだ…その…いつ、こっちに来れる?』

 

「行くつもりはない」と言うつもりだったが少し思いとどまった。

大人気ないと言えばそうだがそんなことではない。

ここで徹底して関係を切れば歯切れは非常に悪いが━━━

 

『ヒューズ出たの?ちょっと貸して!』

 

『あっ、おいエクシア!』

 

『ヒューズ〜!遅いってば、早く来なよ〜!』

 

『ほんまに遅いで、早う来てや!』

 

『テキサスさんが寂しがってるから早く早く!』

 

『おいソラ、変なことを言うな!』

 

……おそらく勝手に離れてもこの群れから離れることを彼女たちは見逃してはくれないだろう。

なら、顔を出すだけ出して諸々終わらせてから関係を切れば去ることに納得してくれるだろう。

しかし、まだ時ではない。

 

「……ちょいとやることがあるんでね…ですが、すぐに行きますよ。美味い飯にありつけなくてもね」

 

『わかった……待ってる』

 

「また後で」

 

『あぁ』

 

彼はアジトとは別方向へと歩き始める。

ロサッティの動向をジョヴァンナというよりはベルナルドとジョヴァンナの配下の動向を調べるため、動き始める。

 

今の彼には、まだ答えは出せない。




各キャラもう少し絡ませたいんですが、キャラの特性上絡ませるのが難しい…
アンケートの結果はもうちょいシラクザーノに集中してから書いていきます故おまちを…
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