テキサスとソラがベルナルドの元へ赴き話すべき事を話した。
ソラたちを巻き込んだ事、偶然だった事、本気で安全を気にかけたとは思えないことへの批判、約束のこと、契約は終わり自由の身だと。
「……以前、彼が此処にきたのは知っているな」
「……あぁ」
「彼は言っていた。脇役でもストーリーを変えれるとな………私は少し気になるのだよ………彼の、彼と言う役者の成す事をね……彼にもよろしく伝えてくれ」
「……あいつなら、こう言うだろう。『直ぐにでも変えてやるさ』とな」
「ははは、期待しているとも伝えてくれ」
テキサスたちが立ち去った後、ベルナルドはウォラックを招き対話、と言うより彼らロサッティのあり方を、ジョヴァンナを襲うように煽動していた。
ジョヴァンナはテキサスに大き過ぎる影響を与え、左右されすぎている事。
ジョヴァンナのやり方で、ウォラックが求めるものはそこにあるのかと言う問い。
ミズ・シチリアをグレイ・ホールから引き剥がす、今ある秩序を覆す絶好のチャンスだと。
ウォラックは通信機を取り出し、部下たちへと伝えた。
ペンギン急便の仲間を襲う事、今のロサッティは本当にこのままでいいかという疑問、事実上ドンであるジョヴァンナの追放だった。
部屋を出て部下を引き連れペンギン急便のアジトへと向かう事だった。
『ウォラックさん!ドンが、ドンがやられました!』
「あぁ!?どう言う事だ!!」
『暗殺です! 屋敷から出た瞬間銃声がして━━━』
ジョヴァンナはウォラックが彼女たちを襲う事を察知し自ら出向き、止めようとした。
屋敷を出て3発の銃声が鳴り響き、ジョヴァンナは胸に手を当てた。
衝撃が走った胸の辺りを触ると手にはべっとりと赤黒い液体が付着し、彼女は倒れ込んだ。
横たわるジョヴァンナは既に心臓は止まっていた。
その連絡を受けたウォラックは、複雑な心境だった。
確かに追放するつもりでいたが、こんなにも呆気なく、見ず知らずに死んだと思うと嘆かわしかった。
最後だけでも話しておきたかった、過去に囚われすぎだと言う事、デカい賭けに出た事、もし追放せずに済むのなら、取っておいた祝酒を注いでいたであろうと彼は考えていた。
「……病院に連れて行け。俺はこのまま連中を攫う」
しかしもう止められはしない。
ペンギン急便のアジトへと、車を走らせていた。
目を瞑ったジョヴァンナには冷たい雨が降り注いでいた。
着信が入り画面には非通知の表示が映し出されていた。
呼び出しに答えると聞き慣れた声、ヒューストンだった。
『…404、クロスレッド、J。これは現実か、アジトには戻るな、待ち伏せされてる』
通信による頭切れもなく鮮明に暗号が告げられた。
「ソラ、病院へ行くぞ」
「テキサスさん…?」
「ヒューズが何かしたようだ」
全力で走り病院へ到着し受付へと向かう。
受付の人間が2人に気付き声をかけた。
「こんにちは、ご用件をお伺いします」
「……友人の見舞いに来た。怪我をしたと聞いてな」
「面会ですね、部屋番号や患者さんのお名前はご存知でしょうか?」
「404号室、女だ」
「…………なるほど、これは現実ですか?」
「ただの夢かもな」
「担当をお呼びします」
これはかつて使っていた暗号だった。
404という言葉を切り口にとある歌詞を用いた合言葉である。
テキサスは龍門でもヒューズがこの合言葉を使っていたことを覚えていた。
この合言葉が通じたと言うことはこの受付の人物はヒューストンにとってこの地で過去の関係者である可能性が大きかった。
すぐに担当を名乗る男に連れられ、三階の奥の病室へと通されると静かにベッドで眠るジョヴァンナと側にヒューストンがいた。
「ヒューズ、一体…ジョヴァンナさん!?」
「……どう言う事だ……彼女は、生きてるのか!?」
「経緯を説明します」
ヒューストンはベルナルドを張り込みウォラックとの会合を監視していた。
ウォラックの通信を傍受することに成功し、ジョヴァンナはこのままでは殺されると判断した上でいち早く行動し、ジョヴァンナを撃った。
ヒューストンのアーツでジョヴァンナを仮死状態にしたのだ。
ロドスの職員に頼んで1本のマガジンだけ血糊を仕込んだペイント弾を使い出血を演出、心停止しているジョヴァンナを確認し嘘の死体が出来上がっていた。
これで念押しに止めでも刺されぬように認識を
誘導し病院に向かわせ、入院をさせた。
部屋もヒューストンの息のかかったものにより病室は移動され元いた部屋には逃げ出したと言う演出も用意されており敵の目を欺く準備を重ねていた
「…………私は死を騙す男であることをお忘れで?」
「……あぁ、なるほどな。そういうことか」
サーべイランスマシンが赤く光り警告音を発するほど能力を行使していたが現在は頭痛と少しの倦怠感で済んでいる。
頭痛薬を服用したがその程度では回復はあまり見込めない、少し休んでいるところに彼女たちが訪れて今に至る。
「……しばらくは目覚めないでしょう。それに、今出歩いてもらっちゃ困るんでね…しばらく死んだフリしてもらいますよ」
「…そうか……お前は、大丈夫なのか?」
「少し疲れたので、休んでおりました。出発します」
「待て。もう休め」
「…平気です。少しでも連中の動きを掴まねば」
「駄目だ。アーツの使いすぎで、それが良くないことを示しているぞ」
テキサスはあるものを見逃さず、立ち去ろうとする彼の手を取り袖を捲りった。
袖で隠していたサーべイランスマシンが黄色く灯っており、直ちに検査を受ける必要があることを示していた。
「アーツを使わなきゃ良いだけの話です」
「駄目だ。もうお前は戦えない、あとは私たちに任せろ」
「余計なお世話です。あんたは自分と、仲間の心配をして帰る準備をしろ」
「あぁ、そうしている。だからこうやって休めと言ってるんだ、言うことを聞け」
「断る」
「……良いだろう、なら力づくでジョヴァンナの隣のベッドで寝かせてやる」
「それはそれは、とてもとても怖いですな?……出来るものなら、やってみろ」
掴まれた手を振り払うとかつてないほど険悪な雰囲気になりお互い睨み合った。
互いに事が心配な筈なのにどちらも譲らぬ姿勢だ。
「二人とも、今はそんなことをしてる場合じゃないよ!」
「……ソラに免じて今は引き下がってやる」
「ほぉ、そうですか。ならその分、私は前に進ませてもらいますよ」
「ヒューズ!」
ソラの静止の声を受け流石に大人気ないと冷静になり引き下がった。
「テキサスさん、2人に連絡をお願いできますか?」
「わかった、呼んでくる。その間こいつを頼む」
ソラに微かに笑顔を向け一度病室を出たのを見計らいヒューストンに声をかけた。
「……ヒューズ…改めてだけど、久しぶり」
「えぇ、その節はどうもご迷惑を」
「堅すぎだって。2年前はもっとフランクだったのにな〜?」
「……この地に帰って、少し気が張っていましてね。昔の癖が出てるんです」
「…ヒューズ。私、曲がりなりにもアイドルやってるから嘘はすぐにわかるんだよ?」
「左様で」
「……もしかして、私たちのこと、避けてる?」
「そのようなことは御座いません。どうぞ、何かあれば遠慮なく」
「……じゃあ、テキサスさんにごめんなさいしよっか」
「……ご希望には添い兼ねます」
「…何があったのかはテキサスさんから聞いてる。テキサスさんにも、君にもいろいろあると思うけど…私は、さっきみたいな二人なんて見たくないんだ。だって、お互いを想いあってる筈なのに…こんなのあんまりだよ」
「……」
「……ジョヴァンナさんのこと、本当にありがとう」
「……礼には及びません」
「急に現れて私たちを助けたり、ジョヴァンナさんを窮地から助け出しちゃうなんて、本当にヒーローみたいだね!」
「……………程遠いさ」
ソラと久しぶりに談笑しているとテキサスが部屋に戻ってきた。
どうやら無事に連絡が取れこちらに向かっているそうだ。
「…………なんだ、まだ居たのか」
「居なくなって欲しければすぐにでも立ち去りますがね」
「……っ」
「テキサスさん」
ヒューストンの言葉にテキサスが少し眉間に皺を寄せるが小声でソラに制された。
「……すまなかった、お前のことだからとっくにいなくなってるものだと思ってな」
「龍門での前科もあるからね?」
「……ソラ先輩、その件は後ほどお伺いさせて頂きます。こちらも言い過ぎました、申し訳ございません」
平謝りのような態度に虫の居処が悪くなったのかテキサスは彼を少し睨み椅子に座った。
部屋に沈黙が流れ始める。
お互いに距離を取り黙っている姿はさながら冷戦と称するものだった。
なんだか居た堪れない状況でなんとか培ってきたトークスキルで話題を振るが2人とも生返事ばかりで会話が続かない。
助けを求めようにもどうしようもない、そんな時に救世主が現れた。
「ヤッホ〜!お待たせ、みんな!」
「騒がしくすなっ、ここ病院やねんから」
「二人とも、待ってたよ!」
エクシアとクロワッサンがついに到着した。
二人は眠るジョヴァンナに労りの言葉をかけると、今振るべきではない話題を振った。
「テキサス〜、ヒューズと仲直りできた〜?」
「あっ、ちょ、エクシアっ!」
「……難儀してる。思った以上にこの男は頑固で面倒でな」
「褒め言葉として受け取っておきましょう」
「……ありゃりゃ、失敗しちゃってたか」
失敗したと言わんばかりに言う彼女は言ったことに後悔はしていないようだった。
「……ヒューズはん、ちょいと素直になったらどうや?」
「テキサスも素直に言えば良いのに〜……あの後テキサスがヒューズのことすっごく心配してたんだよ?」
「お、おい、エクシア!」
「『またひとりでどうにかなったら…』なんて言って探しに行こうとしたり、『悪いことを言ってしまった…本当に酷い事を…』なんて言ってたり…」
「もういい、ちゃんと自分で言う!」
珍しく取り乱したテキサスはエクシアを遮りヒューストンへと向き直った。
「……本当に、すまない。お前を放っておけなくてやったことだが、結局お前を蔑ろにして酷い事を言ってしまった…」
「……………私も、出過ぎた事を申しました。お嬢の行いを無碍に誹り、気分を害した事をしました。本当に…申し訳ありません」
お互いなんだか少し気まずくなり顔を逸らすがエクシアとクロワッサンが目配せをし2人の背後に周りどんっ、と背中を軽く押した。
「ほらっ、仲直りのハ〜グ!」
「2年ぶりにふたりのハグ拝ませてもらうでっ」
お互いに抱き止めるとハグができていた。
ヒューストンはそこまで…と思い離れようとするがテキサスが腕を回し、強く抱きしめた。
それに応えるように彼の抱きしめた。
「……本当に、ごめんなさい…ヒューズ…ごめん…私は、何もわかってなかった…!」
「……チェニー、俺の方こそすまなかった…君を無視して、いつまでも子供扱いをしていた。キミは自分で道を切り拓けるのに、俺のエゴで傷つけていた…」
決意が揺らぎ始めていた。
距離を取りこの件を終えて彼女たちの元を離れようと決意していたが、それが揺らぎ始めていた。
このお節介で騒がしい仲間たちとまだ居たいと願う自分と、彼女たちのためを思って離れるべきと決めかねている自分、何者なのか知り得たいと望む自分の感情がぐちゃぐちゃになり始めていた。
少なくとも今は、愛する彼女に申し訳ない事をしたと言う気持ちで一杯だった。
「……ジョヴァンナのこと、本当にありがとう」
「…………大したことはしてませんよ」
「お前があの時怒ってくれなかったら、きっと私は彼女を殺していたんだ」
「でも、やらなかった…それはあなたに良心が残ってたから、今も彼女が生きているんです。あなたが、掴み取ったんです」
長いハグが終わり、離れた彼女は、柔らかく笑っていた。
「……本当にお前は、謙遜が過ぎるな」
「でないと三下の俺が調子に乗りそうで」
「何が三下のお前だ。三下でもなんでもお前はお前だろう」
「……ですかね」
「まったく、世話が焼けちゃう二人だねえ…ね、クロ?」
「ほんまに、これで破局とか寝覚め悪いで」
「でも、本当に良かった…」
2人を見守る彼女たちも自然と笑顔になっていた。
「そういえば…アタシたちも、再会の挨拶しとかないとねぇ?」
「……いいぞ、存分に相手してやれ」
「んじゃ、遠慮なく〜…久しぶりだねヒューズ!」
勢いよくエクシアが抱きつき少し痛そうにヒューストンが受け止めた。
「さっきの騒ぎでやり損ねてしもたけど、ようやくこれでペンギン急便復活やな!」
「うん!やっとみんな揃ったね!」
少し騒がしくなりつつある病室は、この地に似つかわしくないほど明るいものだった。
眠っているジョヴァンナが少し笑顔になっている気がした。
タイトルつけるセンスがないので初投稿です…
まだまだ続くこの小説にお付き合いください…