三下とテラの日常   作:45口径

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すみません、後でやろうと後回しにして結構な時間が経った初投稿です…
アンケートも確認して書き進めます故お待ちを…


三下と偽りの文明

「……ラヴィニアさん、私です」

 

『ヒューストンさん…何かご用ですか?」

 

「細かいことでいい、あの劇場であったことを教えてくれ」

 

『貴方も現場に居たものかと思いましたが…』

 

「あんたの話を聞きたい。あの場に居たってことは会ったんだろ、ベルナルドに」

 

『……えぇ』

 

「その時のことを」

 

明朝、現場で目撃していたラヴィニアに連絡を取り互いに情報交換をした。

あの時劇場で彼女自身の身に起きたことを簡潔に説明をした。

ルビオが建設部長への就任、ラヴィニアがその補佐的な役割になったこと。

就任したルビオが演説をするため娘を預かることになったことを話した。

 

『……他に何か、聞きたいことはありますか?』

 

「……あんたは、もういいのか?」

 

『……私にできることなんて、もう…』

 

「…そうかい」

 

『…貴方たちが無事にこの都市を出れることを願っております』

 

「ありがとう……それにしても妙だな、あんたがその場で殺されなかったってことだが…」

 

『…きっと、都合のいい駒として生かされているのでしょう。もう、どうだっていいんです』

 

「それにしてもだ。わざわざあんたを立てる必要はない、もっと言うことを聞いてくれる適任なやつはそこらにいるはずだ」

 

『まだ何かするとでも…?』

 

「可能性はある。とにかく感謝する、それじゃ」

 

『えぇ…お達者で』

 

通話を切り疑念が生まれる。

ルビオとベルナルド、ヒューストン自身ロジックに基づいた推理や考察など得意ではない。

しかし、経験から不可解な疑念が彼を気張らせる。

 

「……煙草を買ってきます」

 

「……言い訳はいい、正直に言え」

 

少し誤魔化して出発しようとしたがどうやら何をする気なのかがテキサスにはお見通しのようだった。

 

「…ルビオ、ひいてはヘルナルドの監視へ。最後の最後で何か起きるもんじゃないかと気がかりでね」

 

「…………わかった、死ぬなよ」

 

「お嬢も。考えすぎかもしれませんが、恐らくロッサティの連中がくるでしょう。十分に気をつけてください」

 

「……あぁ、わかった」

 

「あれ、ヒューズ。どっか行くの?」

 

「えぇ、少し気になることがあってですね…お嬢と病院組のこと、お願いします」

 

「オッケー、ちゃんと帰ってきてよ?」

 

エクシアと拳を軽く突き合わせ出発した。

それを見送るとソファーに座ったままぼうっとしているテキサスに声をかけた。

反応は鈍く何かあったに違いないと確信させる。

 

「テキサス」

 

「……………ん、どうした?」

 

「……ヒューズのこと、どうするつもり?」

 

「どうするだなんて…ただ連れ帰る。みんなと一緒にな」

 

「…それ、本気で言ってる?」

 

テキサスは間を少し開け大きくため息をついた。

このままヒューズを連れ帰っても恐らく2年前の再来になるかも知れないと言う心配だった。

 

テキサスは彼と一番長い付き合いだが彼の過去の話はほぼ知らないのだ。

話ぶりからザーロの事以外にこの地にやり残したことがあるのだろうと言う予見程度だ。

 

この地を去るとも言っていたがここに残るかも知れないと言う可能性。

もし残ると言うならそれを尊重するつもりであるが、本心ではどうしても彼女が大人になりきれない部分であった。

 

一緒にいたい、あの幸せで楽しい時間を共に生きてほしい。

そして今こそ彼に幸せになって欲しかった。

出来れば、彼女は近くでそれを見届けたいと言う願い、我儘。

 

「……あいつ次第だ。私は連れて帰りたいが…ここに残ると言った時、もし私がバカなことをした時は…止めてくれ」

 

「……わかった。でもキミ自身も迷ってるんじゃないかな、龍門に帰ることも、ジョヴァンナさんのことも、他にもね」

 

電源を入れたラジオから音声が入り始める。

どうやら就任演説が始まったようだった。

 

 

 

 

 

 

ラヴィニアの話から演説会場の周辺に向かうと警備が多く簡単には入れそうになかった。

 

近くにあった飲食店に入ると店内は賑わっているのは恐らく演説が始まる影響だろう。

席が開くのを待つフリをして何かあった時のために演説会場への侵入経路を模索しているとラジオが流れ始める。

どうやら時間通り演説が始まった。

 

『親愛なる市民の皆様、こんにちは』

 

ラジオから流れる演説は挨拶から始まり、自己紹介のようなもの、カラチのことを話し始める。

しかしー順調かと思われた演説が進むにつれ妙な流れになってきた。

 

カラチの勇敢だった言動、しかし結局は善人など存在せず悪人しかここにはいない事、己の本心の怒り、一連の事件は最初から混乱を狙っていたファミリーの陰謀、ミズ・シチリアに対抗することが目的と突き止めたこと。

 

『そしてまだ伝えねばならないこともあるのです。この都市の発展には、ファミリーの人間ではありましたがカラチや私と同じような志を持った友人、言わば先駆者にあたる人物、マリー・ローグライトがもたらそうと尽力したのです』

 

ラジオから流れてきた名前に、彼は大きな動揺をした。

そして考える前に彼は動き出していた

 

『マリー・ローグライト……今は亡きテキサス家に仕えていましたが、彼女は当時においては考えが受け入れられず、あまつさえ暗殺されてしまったのです。かつてのテキサスファミリーが己が利益を得るために暗殺されたのです。その息子も闇に葬られました。私はそれを━━━』

 

ラジオから演説以外に何かを破壊するような音が流れ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキサスはラジオから鳴らされた爆発音を最後にスピーカーからノイズしか流れなくなり放送は途絶えた。

 

テキサスは迷いがあった。それは自身が理解している。

 

龍門での行いはかつてマフィアだった頃と本質的に変わっていないことも理解しているしいつか、この地としがらみと向き合わねばならないことも十分に理解し、予見していた。

 

かつて祖父に問いかけたこと、道義を重んじようとも普通の人間の暮らしを犠牲に成り立っていること。

 

この地に戻る時ジョヴァンナのような旧友に再会をすることも予見していた。

 

その予見と彼がいない日々の寂しさと心細さにに涙を流しながら眠れない夜を過ごしたこともあった。

 

しかし彼女が予想だにしなかった出来事が起きた。

彼の目覚めと再会。この地でこの国を本気で変えたいと願う人間に出会ったことだ。

 

レオントゥッツオ、ラヴィニア、ルビオ、カラチ、そしてマリー・ローグライト

 

出会いもあり、面識もない他人でもある彼らは戦い傷つけられ命を落とした者もいる。

ましてや自分の名が大きく関わった者もいるのだ。

 

それなのに、また逃げる気でいるのか?

 

言い訳をするなら彼が連れ出してくれたからだろう。

しかし、今は違う。

 

龍門やロドスでの出会いで彼女は変わった。

この地にで人々が置かれた境遇への怒りを芽生えさせていた。

 

そして今、この地を変えたいと願う善人がただ声を上げるために自害とも取れる行為を取らなければならないほど追い詰められているのだ。

 

また勝手なことをしたと彼は怒るかも知れない。

それでも構わない、これまで感じたことのない程純粋な怒りを、彼女は抑えられなかった。

 

きっとわかってくれる。

 

ヒューストンもこれを聞いているなら、同じく立ち上がってくれるだろう。

 

これ以上、死ぬべきでない者たちを死なせないために、彼女は立ち上がる。

 

突如部屋へとマフィアの構成員が踏み込んできた。

 

「いたぞ、ぐあっ!」

 

一緒にいたエクシアが反射で銃撃した。

怒りに身を震わせるテキサスを見て「先に見てくるからね」と先に通りへと出た。

 

テキサスは剣を持ち上げる。

自分は善人などではない、しかしできることはあるはずだ。

通りから響く銃声と剣戟の音を合図に外へと飛び出した。

 

「やぁ、テキサス。誤解しないで欲しいんだけど、僕が連れてきたワケじゃないからね?」

 

「キミって、暇なの?」

 

「答えがほしいだけ、さっ!」

 

3人は迫り来る敵を倒し続けてながらも問答を続ける。

 

「……エクシア、ラジオは聞いていたな」

 

「うん、聞いてたよ」

 

「彼のために、何かしてやりたい」

 

「同感だね」

 

「本気なの? テキサス……ここに残るつもりってこと?」

 

「ラップランド……このところ全力で私が龍門へと帰る手伝いをしてくれたことには感謝している。だが、もう決めたことだ」

 

「だけど。キミに何ができると思う?たった数人の理想で、過去の君を帰るだけの価値があったの?」

 

「……私は、もう変わっていたんだ。それで十分なんだ。それより、お前こそいつまで縛られているつもりなんだ?」

 

「…………お説教かい? それを言うなら、君こそもっと本質的に縛られているものがあるんじゃないかな?」

 

「経験者からのアドバイスだと思ってくれ……それに、ヒューズのことならもうすぐ向き合うさ。エクシア、行くぞ」

 

「オッケー!」

 

テキサスとエクシアが包囲を突破し、足音と叫び声は次第に遠のき静寂が訪れつつあった。

 

「…………キミはボクをいつも驚かせてくれるね…フフッ、アッハハ、アッハハハッ……ヒューズ、キミはどうするんだい?」

 

群れから逸れた白い狼の空虚な笑い声だけが木霊する。

彼女たちを見送り彼女はかつて自身の家であった屋敷へと足を進めた。

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