三下とテラの日常   作:45口径

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お ま た せ

初登場です。本編通して最終回になります故最後までお付き合いくださいませ。


マザーウルフはかえらない

「……そんで、わざわざ連れ出した目的を聞こうじゃないか」

 

「あっ! やっといじわるやめてくれるの?」

 

出発してから3日、あの甲板から飛び降りた後ロドスはみるみると遠くなり走って追いつけるわけもなく装備もない、万全で無い状態で広大な大地へ放り出たのはかつて自分の主人を逃した時以来だろうか。

 

あの時は行き倒れが所を助けてもらったが今回はどうなるかわからない、当初の目的はロドス艦隊に追いつくことだが最悪各地にある地方事務所につけばいい、そう考えて幾日ほど移動を続けるが彼の悩みは目的地は途方ないことと疲労、最後の煙草を吸ってしまったことよりもっと大きな悩みがあった。

 

「シンシアちゃ〜ん、ご飯とってきたわよぉ!」

 

「ねえねえ、お話ししましょうよ〜」

 

「ママ寂しい〜!」

 

鬱陶しいこの同行者、というよりこの件の主犯がずっとうるさいことである。

何が目的ともわからず、只々甲斐甲斐しく世話を焼いてくるもそれをずっと無視して進み続けていたがふと焚き火で温まっている際に疲れからなのか、それともこんな仕打ちを受けてもなお健気に声をかけてくるが故に情で湧いてしまったのだろうか、とにかく声に出していた。

 

「ずばり!それは私がシンシアちゃんと長年できなかった2人きりの、親子の交流をするためです!」

 

「左様ですか」

 

「あ、ちなみにケルシーさんには伝えてるから探しに来ないわよ?」

 

「どうりで捜索隊が来ないわけだ…」

 

1日ならともかくすでに何回も日の出と日没を見ている上見つかりやすいように、捜索をするなら目に入る巨大な岩や枯れた木、放置された残骸の周りを確実に陣取っていたがそもそも来ていないのならこれまでの見つけてもらう努力が無駄だったと知ると落胆した。

 

「そうねえ、じゃあ何処から話そっか?」

 

「……話たいとこから話せばいい、聞き流す」

 

「それじゃあ、まだ私が人であった時……貴方の側にいた時からお話しするわね」

 

それは彼が産まれる前、それこそ彼を身籠る前からの話だった。

その男に出会い恋に落ち、体を重ねた。

そして彼の子を身籠るとその男は消えてしまったのだ。

 

それは望まぬ命だったのか、それとも何かの偶然で死んでしまったのかは未だにわからない。

それでも我が子を出産し育てて来たことに後悔はなかった。

 

あてのない彼女の行き着いたものはマフィアの幹部、そして道半ばで死んでしまったこと、それはテキサスファミリーによる暗殺だったこと。

 

マフィア時代における話は概ね調べたとおりであったが事細かく、整合性もあり信憑性があった。

 

「貴方の成長を側で見守れなかったのが、唯一の悔いからしね」

 

「……なんで、今の存在になったんだ?」

 

「言ってしまえば選べたわけじゃないわ。気がつくと私は何もなくなっていてあの荒野にいて、他の狼主とは違うって気づいてはぐれ狼になったって感じかしら」

 

放浪をする中、朧げな記憶はシラクーザの地を訪れた時、自分の中から溢れ出るようにそれは現れた。

 

この地の記憶、我が子のこと、そして母性。

 

無我夢中で探し回った。

そしてついに見つけた息子を見つけ出した時にしていたことはマフィア殺し回っていた時、テキサスの父親が暗殺され崩壊が始まっていた時期だった。

 

「とても、複雑な感情だった。この世界は……綺麗でもなければ美しい物語ではなくて、死は当たり前で、血のせいかそういうことからは逃れられない……本当にごめんね、守ってあげられなくて、変えられなくて…ごめんね」

 

「………続きを」

 

「そうね…あのお嬢さんを送り出して、生きてあの大地から出ていけたことに疑問を持ったことはある?」

 

「……最初は偶然とか奇跡とかって思ってた。またシラクーザに戻った時に疑問を感じた」

 

「お察しの通り、微力ながら支えていた……これで納得できたかしら?」

 

「……まぁ、そう言うことにしておく」

 

「ふふふ〜ん、もっと褒めてもいいのよ?」

 

「……続きを」

 

当時彼女は狼主としては力が未熟で発揮しきれず、精々追手を減らしておくことだった。

そして彼自身が脱出する際にモスティマに発見されたのは偶然ではない。

 

彼女の人としての頃のアーツは無意識に干渉しに意識を集めること。

それをもって通りかかったモスティマの意識をこちらに向けさせ発見されたと言う顛末だった。

 

「その時の人に好奇心があってよかったわ。お礼しないとね」

 

「……彷徨いてたら会えるかもな。それで、ずっと俺のそばにいたのか?」

 

「もちろん、って言いたい所だけどそうでもないわ。私はシラクーザから出れない制約があった」

 

「……条件は人間と契約交わすこと、そしてかつシラクーザの中で見つけなければならなかった」

 

「半分正解よ。シラクーザの中で見つける必要はない、私はこの存在になってからアーツの性質が変わったの」

 

彼女のアーツは変異し人間の無意識に干渉し感じ取る事ができるようになっていた。

人から人へ、そうしてついに彼へと辿り着いた時には彼は長い眠りについていた時だった。

 

「……貴方が人を信じないのはわかっていた。仮に伝えていたら貴方は悩んじゃうと思って、だからちょっと演技したのよ」

 

「…………あとはお互い知ってることだな」

 

「そうね、契約してくれたおかげでエンペラーさんに直接ご挨拶できたから…」

 

「どうりであんな早い対応が出来たわけだ」

 

今にして思えばおかしな話だった。

ケルシーやエンペラーをあの状態から説得できたのはおそらく彼女の口添えのようなものあってだろう。

つまり彼は彼女のお膳立てがあってシラクーザへと舞い戻れたようなものだった。

 

「でも説得失敗しても行くつもりだったでしょ?」

 

「当然だ」

 

「うふふふっ、羨ましいわねーあの娘!」

 

「そして最後、本来だったら人間じゃどうしようもない存在に傷をつけれたのは力を貸してくれたおかげだな」

 

「正解。アレをぶっ飛ばしてる時の貴方はとってもカッコよかったわ」

 

「……そうかい」

 

「照れてるの〜?かわいい〜!」

 

「……寝る」

 

「は〜い、お休みなさい」

 

眠気で消えていく意識の中で、子供の頃毎晩聴いていた彼女の子守唄が彼の中で旋律を奏でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた何度も日の出と日没を見届けた。

様々な都市を訪れたが彼はロドスの事務所には立ち寄らなかった。

あの夜から会話らしい会話はなく時折挟むがすぐに終わってしまう。

彼は身内以外に対しては無口になる傾向があったが故の出来事だったのだ。

 

そしてある土地を目指して、歩き続けた。

思えば長い時間が経っていたのかもしれない。

そして彼は決断した。

 

「……ここに来るなんて、意外ね」

 

「………通過点に過ぎないが、目的地でもあった」

 

そこはシラクーザの荒野だった。

彼は答えを考え続け、答えを出すために期限をきめたのだ。

それがシラクーザ、二度とその土を踏み締めてたまるものかと忌み嫌っていたこの土地に着いた時に彼女に伝えると決めたのだ。

 

「…………伝えたい事がある」

 

「……なぁに?」

 

「ずっと考えていたんだ、あんたは本当に俺の、母親なんじゃないかと」

 

「……答えは?」

 

後ろを着いてきていた彼女に聞く事なく告げ始める。

彼には迷いもあった、沈黙を貫こうかとも思ったがそれは破られた。

 

「…………あんたは母親じゃない。あんたは確かに……マリー・ローグライトの記憶を持っているのかもしれない。だが、それだけだ」

 

「………」

 

「仮に、本当にそれであったとしても…俺には母親なんてのはいない。俺は…俺はオルブライト・ヒューストン、過去なきもの、今を生きる者」

 

テキサスに仕え生涯かけて忠誠を誓った者。

そして最期に自らの主人に引き金を引き責務と忠誠を捨て自由になった者。

 

「消え失せろなんて言わない、この世に存在する以上は好きにすればいい。

ただ彼の母親であるなら、その気持ちがあるなら……今はもう、これからのことを俺の心の奥にある大切な思い出として見守ってくれ」

 

彼はそう選択したのだから。

彼は確かにあの時、自らの家族と共にその残滓を天に還したのだから。

 

 

━━━━さようなら。

 

 

彼が振り返ると、そこには誰もいなかった。

ただ吹き続ける風が何処となくその心境を代弁するように通り過ぎていった。

 

彼の者、この土地へ帰らず。

 

彼の者、母親には還らず。

 

彼の者、母の慈しみを知り得て、帰る場所へと向かう。

 

「…………さて、帰るか」

 

その地を去る時、その一人は少しだけ寂しそうな背をシラクーザへと向け立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……助かりましたよ、ミスター・バイソン」

 

「いえ、それにしてもお久しぶりです」

 

旅の途中、偶然荒野を横断していたフェンツ運輸に拾われ龍門へと辿りついた先にはかつて、あの喧騒を共にしたバイソンと再開した。

 

ヒューストンからすればかなり朧げな記憶の中にいたため少し他人行儀であったが共に闘った仲間として握手をした。

 

起きてからの出来事、シラクーザでの話や旅の話をかい摘んで話すときバイソンはとても興味深そうに聞いていた。

 

「ヒューストンさん、ペンギン急便へ戻るんですよね?お送りしますよ」

 

「……いえ、久々に龍門です。歩いて、見て回りたい」

 

「そうですか…そうだ、テキ姉のみんなによろしくお願いします!」

 

「……伝えておきますよ。それでは」

 

「ええ、また何処かで」

 

見送られながら歩き出し、遂に龍門へと辿り着いた。

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

 

 

 

そのつぶやきはこの街の喧騒に溶けて消えた。

 

 

 

 

 

━━━━━━貴方を愛しています。そしていつでも、いつまでも見守っています。

 

 

 

 




どうも、私です。
書き出したくせに投げ出すのはダメだろと思い急遽仕上げてきました。

何を話せばいいのやらと思いますが、初めての投稿から最後までお付き合いくださいまして本当にありがとうございます。
この駄作を読んでくれる皆んなが居なければ、きっと1話で終わっていました。
というか、1話でエタる予定だった。

今後ですが仮にテキサスが出るイベントが出ても更新することはありません故…理由はヒューストンの血筋故直接手出しせず見守るだけになりますので…

最後まで本当にありがとうございました。
これがきっかけでアークナイツ2次創作を始めるきっかけや暇つぶしに楽しめていただけることを祈ります。

それではみなさま、さようなら

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