ウマ娘に転生したけどやべえのと同期なんですが…   作:sannsann

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対決前夜

 

 

明日はいよいよ年末最後の大レース…有記念。

その日はちょうどクリスマスということもあってなんかもうすごい。

何がすごいってプッシュがすごい。

テレビでは連日私達の特集とか対決予想が流れているし。

電車やバスにも広告がでている。

『最強は、どっちだ』

キャッチフレーズはこれ。

うん、ありがたいんだけどさ…勝ったら胸を張って最強って言えるんだろうけどさ…。

正直胃が痛いです…。

 

あれから、もうなりふり構っていられないということで、私自身やトレーナーの伝手などあらゆる物を頼り、利用し、活用して、少しでも成長できればと頑張った。

そんななか、名門に対する、寒門と呼ばれる一般家庭やあまりパッとしない家出身のウマ娘達からの応援が多かった。

ウマ娘だけじゃない、名門派閥以外のトレーナー達からの応援もだ。

なんならサポートの補助とか差し入れとかたくさんもらった。

奴に勝ってくれという思いが詰まったドロドロとした瞳を向けられた。

逆に奴は名門の人たちからの応援が多かった印象。

 

いつしかトレセン学園に、私推し派vs奴推し派みたいな、変な空気が広がっていた。

別に険悪になったわけではない、けどなんか暗黙のルール的な感じでこう、何て言うんだろうね、冷戦でもなく…うーん、例えで言うなら、ヤキウのそれぞれ別の応援チームのユニフォームを着たファン同士が対決球場の近くですれ違っても乱闘しない、みたいな空気?

若しくは推しのアイドルをどっちがかわいいか論争しあってるみたいな。

 

別に名門の人たちも寒門を見下しているわけじゃないし、喧嘩しているわけじゃない。

名門の人たちに自信やプライドはあっても、寒門の人たちのことは一人のライバルとして、敬意を持って接しているのがわかるし。

 

けど今回は本当に特別なんだろうね。

取るべくして取った、三冠ウマ娘の奴。

いっつもギリギリで、泥臭く何とか勝ち取ったトリプルティアラの私。

エリートVS雑草魂みたいなところかな。

 

 

そんな感じで、「うちの子が勝つし」「は?うちの子だし」みたいな、こう…後方保護者面した人たちがしょうもないマウントとりあっているというか、親バカ同士が自分の子供自慢でマウントとりあっているというか…まあそういう独特の空気がトレセン学園を包みこんでいた。

 

シリアス感?

ないよ。

シリアル感ならあるよ。

 

あ、もちろん、国民的アイドルな超大食いウマ娘とかウマ娘ちゃん大好き同志とかはそんな空気とは無縁である。

片やそんな空気無視して学園のシリアルを在庫ごと食していたし、片やどっちが勝つか言い争うウマ娘ちゃん達を見て、推しを推しが推しのことで言い合っててそれも推せる!とかちょっと言語がゲシュタルト崩壊してた。

 

まあ、当事者の私達は普通に仲良くダベって過ごしてたんだけどね。

今日もレース前最後のおでかけってことで、一緒にハチミー飲みに行ったし。

柔め薄め多めが好き。どこぞのテイオー様のはちょっと喉越しが…。

その後はクリスマスイブということで、2人で軽くケーキを食べた。

明日はお互いにがんばろうねって。

ガッツリしたのは明日のレース後に食べようねって。

 

 

 

 

夜になって寮室に戻って寝る前のこと、同室のアドマイヤちゃんからも「勝ってね」って言われた。

泣きながら…私は無理だったからって。

そうだよね…アドマイヤちゃんって、奴がいなければクラシックの冠を1つや2つはとれていたかもしれないよね…ある意味一番の被害者。

”一時的に”ティアラへ行って対決を避けた私とは違う、奴に真っ向から挑んだ偉大なる勇者。

そんな娘にも、託されたのだ。

 

そういった託された様々な重い思いは最初はプレッシャーにしかならなかった…けど、だんだんとそれが力になっていくのがわかった。

負けて心が折れた娘も、怪我で挫折した娘も、寒門というだけで名門から馬鹿にされたという娘も、単に私のファンだという純粋に勝ってほしいという願いをもった娘も、皆思いは一緒。

 

 

奴に勝ってくれ。

 

 

そんな熱い思いが、掴んだ手を通して、見つめ合った瞳を通して、抱きしめあった胸から聞こえる鼓動を通して、私に流れ込んでくるのがわかる。

 

 

 

 

奴に出会って、10年以上経つ。

未だ勝ったことはない。

何十、何百、何千と競争をしたけれど、いつも奴がゴール板を先に通過していた。

だけどそれがどうした。

私は、奴と戦って、奴にたくさん負けて、ただの一度だって心が折れたことは無い。

ほ、ほんとだし。

夢っていうのは、諦め、挫折、敗北や絶望にブチ当たっても、鼻で笑いながらクソ喰らえって言い続けないと叶わないんだ。

 

私はまだ、走っている。 

私が奴と約束したレース(最強を決める戦い)は、まだ終わってない。

他の子が、奴と走って心が折れて走ることを諦める(リタイアする)のをたくさん見てきた。

けど、私は諦めていない。

私は走り続けている。

 

アニメでも、とあるファンの男たち(MとM)が言っていたじゃないか。

 

  『まだ負けてない!』 『これは勝ちの途中!』

 

ってさ。

 

 

 

さあ、ゴールはもう、目の前だ。………たぶん。

 

 








「そういえばアドマイヤちゃん、cm起用されたってまじ?」

「そうなんだー、クラシックで結局勝てなくて、お気に入りのクッションでふて寝してたら、その動画がバズってさ、企業から案件もらっちゃった♪」

「ウマ娘もダメにするクッション…だっけ、いいなぁ」

「毎年食べきれないくらいの人参を十数年もらえる契約だったよー☆」

「!?!?」
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