ウマ娘に転生したけどやべえのと同期なんですが…   作:sannsann

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有マ記念

 

ついに有馬記念の時がやってきた…。

やれるだけのことはやってきたつもりだ。

それに、遅かれ早かれ奴には勝たないといけなかった。

それなら、まだましな今だろう。

シニアに入ると、奴はさらに強くなるだろう。

その前に、まだ勝てると思える今やるしかない。

本当に手がつけられなくなってからでは遅いのだ。

一度きりで良い、そのあとは一生勝負なんてしないからそれで勝ち逃げだ。

それに今日勝ったあと、もし来年奴が凱旋門賞をとったとしたら…それに勝った私はもっとすごいってなるだろう。

ふ、ふふふ…そうだよ、いい加減覚悟を決めろ私。

 

 

『奴に勝つ』それは最強を目指す以上、避けようとしても避けれない、必ず通らなければならない道。

いいや、最強どうこうってのは結果的についてくる付随的なやつなのかもしれない。

 

最強だとか何とか言ってるけど…。

私は、勝ちたいんだ、奴に。

一度でもいいから。

 

ずっと思い焦がれてきた。

奴に勝つ瞬間を。

奴より先にゴールする瞬間を。

奴に、勝ったぞ、って言える時を。

奴に向かってピースサインをする瞬間を。

 

悔しくて、泣きそうになって、心折れそうになって、何度も何度も諦めそうになって、けどその度に、これは奴に勝つための糧だって言い聞かせてきた。

いつか味わう勝利のための、スパイスだって。

空腹は最高のスパイス、勝利という極上の料理を、食べるための、そこに至るまでのスパイスだって。

もしそれでも負けてしまったら、私の心は壊れてしまうかも知れない。

それくらい、追い込んできたつもりだ、ていうか追い込まれてきたとも言うけど…。

もし負けたら、まじでもう今度こそ駄目かもしれない。

なんなら幼児退行してしまうかも。

奴ならそれでもヨシヨシしてくれそうだけど……奴にオギャるのもありかもしれん…いや何言ってるんだ私。

いやけど最近の奴の体、成長が著しいんだよね…。

だめだ、また脱線した…さあ準備はいいか私。

 

今日が私のはじまりの、終わり。

奴という極上の果実を食す時。

そう、収穫の時がきたのだ。

け、決して私が美味しく頂かれるわけにはいかない。

 

奴という太陽に想い焦がれ、近づき過ぎたがために、翼を焼かれて落ちた私達。

他の皆はそれで心が折れてしまった。

もう飛ぶことが怖いと。

もう奴に近づきたくないと。

その度に奴が寂しそうな顔になるのが嫌だった。

 

奴にはずっと笑っていて欲しかった。

どうしたら奴がずっと笑っていられるかを考えた。

答えは簡単だった。

ずっと奴の傍にいればいいんだ。

奴は待っている。

自分に近づくことができる者を。

 

だから、しばらくしたら私はすぐに何度も奴に向かって飛び続けた。

何度落ちようと、翼を焼かれようと、時にはひどい着地(敗北)をしたこともあった。

それでも何度も、何度も何度も何度も、奴に向かって飛び(挑戦し)続けた。

今日こそは、飛ぶ。

奴よりも、速く、高く、飛んでやる。

そして逆に言ってやるんだ、今度はこっちに追いついてみろって。

 

 

きっと奴は、とびっきりの笑顔になってくれるはずだ。

 

 

 

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「え?何でほっぺが腫れているのかって?」

 

トレーナーにばれないといいなと思っていたら、即バレた、まあそうだよね。

 

「奴に勝つため…その代償です」

 

盤外戦術は成功したと言えよう。

ビンタで済むなら安いもんよ。

もう最高だ。

しばらく手は洗わんぞ。

とりあえず言えることは、一つ。

しばらく見ないうちに奴も肉体的に成長したんだな、と。

うう、身長は私の方が大きいのに…。

 

そんな感じでトレーナーさんとだべっていたら、あっという間に時間がきた。

URAスタッフの誘導に従い、バ場に向かう。

 

勝ってくるよ、トレーナー。

勝って、最強の名を取りに行く。

 

 

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『……さあ、堂々の一番人気はこのウマ娘!3枠6番!………』

 

調子、良さそうだなぁ…。

毛艶もいいし、筋肉のハリもいい。

あ、けど私と目があうと顔をプイッとそむけて顔を赤くしたな、いいぞいいぞ。

 

思えば初めて1番人気を奪われたのではないか。

まあいい、この後勝てば関係ない。

それに私も2番人気、そして私達の倍率が2倍台、3倍台に対して、3番人気の先輩が6倍台、4番人気に至っては二桁超え…十分だ。

 

『さあ、二強の一角、ここまで無敗、トリプルティアラに続いて先日は女王のティアラもとりました!

 5枠10番………アサオンクライッッ!!』

 

『ついに、この日がやってきたと言う感じでしょうか。

 私自身、もうこのような巡り合わせは二度と出会えるかどうか…』

 

『どちらの無敗が最強かと呼ばれる議論にようやく終止符が打たれるのか、それともその2人をなぎ倒して、新たな最強が生まれるのか、非常に楽しみですッ!

 シニア級の娘達も、素晴らしい戦績の娘達ばかり、誰が勝っても不思議ではありません』

 

そうだよね…無敗の私達に勝てば、そいつが最強ってなるよね…。

そしてこの有馬に選ばれた娘達は皆が皆そういったメンタルをもっている。

気をつけるのは奴だけじゃあ、ない。

 

 

『続きましては5枠11番……』

 

 

 

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あれだけ不安だった気持ちも、今は不思議と落ち着いている。

ルーティンってのはやっぱりすごいなぁ。

何度も何度も練習した。

夢に出るレベルまで。

無意識に体が勝手に動くレベルになって、はじめて習慣化できたといえるんだ。

ゲートに近づくだけで、そうなるようにしてきた。

ゲートを前にするだけで、どんどんと意識が研ぎ澄まされていくのがわかる。

自分の呼吸に意識が向く。

脈拍ですら、感じ取れる。

風できしむゲートの金属音すらもはっきりと聞こえる。

歩むたびに沈み込む芝の感触が事細かにわかる。

世界に自分以外が存在しないかのように感じる。

 

ゲートの中に入る。

さらに音が消える

本当はしているはずなのに、不思議だ。

そして、なんか色々と考えているように思えて、けれどしっかりと集中できていることもわかる。

 

思えば…この日この時のために、頑張ってきたんじゃないかな。

最強になりたくて、最強と呼ばれたくて……そして、奴に勝ちたくて。

 

リトル時代と違って、奴から逃げていたのは事実だろう。

戦うことを拒否していたのも事実だろう。

 

けど、それは今この時のため。

そう、それは奴に勝つため。

敵前逃亡じゃない、その後の反攻のために戦略的に撤退していただけ。

 

 

行くぞ、私の、一世一代の、大勝負をッ!!!

 

 

『各ウマ娘ゲートイン完了…さあ、年末最後の大レースを、グランプリを制するのは、そして最強となるのは誰か……今…………スタートしましたッ!』

 

 

人生で一番いいスタートをきれたのではないか。

スタートの勢いを殺さず、そのまま加速を続ける!

予想どおり、自分の1つ内枠の9番の娘が私よりさらに加速していった。

さらには大外の方からももう一人。

私はその娘達に負けないように加速を続ける。

足に力を入れてグングンと加速する。

調子はいい、いつも以上に力の伝導がスムーズに感じる。

斜行しないように、慎重かつ大胆に内ラチ沿いへと向かう。

3番手、良い位置だ。

このまま行くッ!

 

『場内が、場内がどよめいていますッ!』

 

競バ場に悲鳴じみた大歓声があがる。

走っている私にすらわかるほどだ。

 

『なんとなんと!アサオンクライが前目につけたまま下がらない!』

 

『さすがの大舞台、ライバルとの対決でかかってしまったのでしょうか』

 

前を走るウマ娘も、後ろを走るウマ娘も動揺しているのがわかる。

そうだろうね、私は基本差し〜追い込みしかしてこなかったからね。

今まで封印していた先行策という切り札、ここできらせてもらう。

いつもの走法じゃないのなら、それだけで慣れていないから不利と思われるかもしれない。

けれど私は、この走法をずっと練習してきた。

私が全く勝利を重ねていない未勝利ウマ娘ならば、走法を変えたところで誰も驚かないだろう。

けれど私は、無敗のトリプルティアラ、さらにエリ女でも先輩方を相手に勝ってきた。

自分で言うのもなんだけど、絶対マークはされる対象なのだ。

そして私はいつも差し〜追い込みしかしてこなかった。

今回も、皆そうすると思い込んで、いや想定してレースプランニングをしてきただろう。

人気=強いというわけではないが、指標にはなる。

私が2番人気ということはそれだけ注目されているということだ。

そんな中、私が今までしたことがない先行策をすればどうなるか。

するとわかっている者以外は、動揺するだろう。

もしかしてかかったのではないか?いやいやこれも戦法だ、いやあとで後ろに下げるのかも知れない、もしくは実はペースが超スローなだけで自分の位置が後ろすぎるのでは、等、考えればきりがないほどだ。

 

レース外ですら、動揺を隠せないほどの反応を見せているのだ、レースをしている、走ることにも意識を集中しないといけない娘達の心境は、凄まじいほどに荒れ狂っているだろう。

例外としては、そんなものには何の反応も見せない先頭民族くらいだろう。

先行の私より先の位置にいて、後ろを気にしないし、眼の前の景色を見ることしか頭にないだろうからね。

けど、そんな人はこのレースに出ていない。

 

逃げの娘もいる、けどその娘達の後ろにいるけれど、手に取るように動揺がわかる。

わかるよ、自分のペースが遅すぎるのかって疑心暗鬼になってるよね。

 

そして先頭脳の人以外は、たとえどれだけ自分に絶対の自信を持っていても、多少の動揺はする。

だって、生物というのは視界に入った以上どうあっても意識せざるを得ないんだから。

 

そして、そんな精神的動揺というデバフの効果はレースにおいて凄まじい効果を得る。

さらに、奴にはレース前にも動揺させておいた…落ち着いたと思ったらさらに追撃…まあ奴が動揺しているかどうかはわからんけど。

二段構えは戦闘の基本なんだよぉ!

 

 

『さあ、レースはよどみなく進みますッ

 2番人気のアサオンクライはまさかの先行策!

 一つさげて4番手ですが依然、前のほうッ!』

 

さあ、いよいよ第3コーナー…。

脚はまだ溜める、いつもより脚色は悪いが、それは仕方ない。

大事なのは、奴との距離差。

最終直線は短い、いかにして、そこまでに奴とのリードを稼げるかにかかっている。

けど、まだだ、今じゃない。

第4コーナーにさしかかるッ…運命の分岐点ッ!

 

何度も何度もシミュレーションしてきた。

確かに今回、奴との勝負は突発的だったかもしれない。

だからといって、奴とのレースのシミュレーションを、してこなかったわけじゃない。

何度も何度もやってきた。

むしろ、やらなかった日は無い。

実際に体から汗が吹き出すほど、濃密で緻密な想像をしてきた。

そして何度も何度も何度も何度も、負けた。

何度やっても、何度想像しても、どうあっても、負けてしまう。

 

私はなにも考えなしに、ただ単に精神的デバフを撒き散らすためだけに、先行策を選んだわけじゃない。

何度も何度も実際に闘って、何度も何度もシミュレーションで負けて。

負けて負けて負け続けて。

好きだった差しや追い込みの走り方すらも放棄して、あらゆる走り方でもシミュレーションして、ようやく辿り着いたのが、先行策だった。

ただそれだけだ。

結果的に精神的デバフを撒き散らしただけ。

全ては、奴に勝つため。

それが答えだ。

 

 

 

 

最終コーナーにさしかかる。

 

ここッッ!!!!

 

今この時に全てをかけるつもりで、スパートをかける。

遠心力を全て地面に叩きつけるつもりで踏ん張る。

前には3人。

2人はもう垂れ気味。

一気に交わす。

私よりさらに先にスパートを掛けていたもう一人。

けど速度はそこまでじゃない。

一気に距離を詰める。

一瞬だけ後ろをチラ見する。

後ろ、奴とはまだ距離がある、リードがある、このまま押し切る!!!

 

最後の一人もかわす、けど安心はできない。

むしろこれからが本番だ。

 

その時、背筋がゾクッとした。

来たのだろう、奴が。

 

必死に脚を回す。

 

 

残り200。

肺が破けそう、胸が破裂しそうなくらい激しく鼓動をうつ。

だがそれがどうした、こんなのへっちゃらだ。

 

 

残り180。

まだ先頭、当たり前だ、どんだけ距離を稼いだと思っている。

脚が重い、太腿の筋肉が千切れそう。

だけどまだまだいける。

こんなもの、何度も何度も経験してきた。

 

 

残り150。

凄まじい足音が後ろから聞こえる。

きてる。

奴が。

 

 

残り100。

呼吸を止める、あとは無呼吸。

後のことは考えない。

無呼吸とかバカと思われるかも知れない。

選手生命も縮める。

下手したら、心肺に重大な負担がかかって命に危険がでるのかもしれない。

確かに最後を無呼吸で走るウマ娘はいる。

けどラスト100メートルはバ鹿げてる。

せいぜい残り50メートルが限度だ。

当たり前だ、レース中のそこに至るまでにどれだけ心肺を酷使してきていると思っているんだ。

だけど、だけどそれでも、奴に勝つんだ。

もしかしたら、呼吸に限界がきて、残り20メートルや10メートルで息を吸ってしまうかも知れない。

そうなればお終いだ。

一気に減速する。

ターボ師匠以上に逆噴射間違いなしだろう。

だけど、奴に勝つには、それを耐えるしかない。

だったら、やるだけだ。

 

 

残り80。

ゴールがどこまでも遠い、目の前に見えるのに時間がゆっくりに感じる。

足が鉛みたい。

進んでいるはずなのに、進んでいないように感じる。

練習の時の比じゃないほどのしんどさだ。

はは、あたりまえか。

 

 

残り50。

こんなにも、こんなにも頑張っているのに、奴の気配を後ろに感じる。

後ろを見なくても、わかる。

奴の気配が、どんどん近づいてくる。

 

 

残り30。

あと何歩だ、わからない。

すぐ後ろで奴の息遣いや叫び声が聞こえる。

 

負けたくない、負けたくない、負けたくない。

負けるくらいならッ!!!!

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ!!」

 

 

スパート状態の脚を更に蹴り出して地面へ叩きつける。

 

2歩過ぎた。

 

 

限界だ。

奴も、データや想像以上に、シミュレーションの時以上に伸びてきている。

本当なら、ここまで苦戦はしなかったはずだ。

1バ身は確実に離せてゴールできていたはずなのに。

 

 

もう意識がはっきりしない。

酸素が足りない。

 

また、負けちゃうのか。

違う、まだだ、まだ限界じゃない。

何度だって越えてきたじゃないか。

何度だって立ち上がってきたじゃないか。

 

奴にとっては、今日の勝利も何千回の勝利のうちの1つなんだろう。

 

だけど、私にとっては、何千回のうちの、やっとの1回の、初めての、勝利なんだ。

 

私がレース以外で唯一奴に勝っていたこと………それは、何度負けても、何度壁にブチ当たっても、何度心が折れても、それでも、それでも立ち上がってきた、限界を越えてきた数!

 

それだけは、それだけは奴に負けていない!

 

 

限界歩数なんて知るか!

やっと勝てそうなんだ!

やっと勝てるかもしれないんだ!!!

ここで負けるくらいなら、勝つためならッ!

 

だったらゴールするまで、限界を越えて

 

「ーーーアアアッ!!」

 

踏み出し続けるッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

私は人生で初めて…。

 

奴より早くゴール板を駆け抜けることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アサオンクライ!アサオンクライですッ!

 史上初の無敗同士の対決は、アサオンクライに軍配があがりましたッ!!!』

 

 

芝生の上に大の字で寝っ転がって、やかましい実況の声と観客の大歓声をきく。

動けない、立ち上がれない、ていうか脚がメチャクチャ痛い。胸も痛い。肺がやばい。

酸素、酸素が足りない。

酸素吸入器ほしい。

 

 

「ッどっフェッッッ!?!?」

 

 

さらに追い打ちをかけるように奴が腹にダイブしてきた。

そのまま私のお腹にグリグリと頭をこすりつける。

 

「……な、なんだ…よ」

 

呼吸をするのもしんどい。苦しい。

声がかすれる。

 

「…………負けた…」

 

「…………うん……勝っ…た……」

 

 

ああ、やっと勝てたんだ…。

そうだ、勝ったんだ。

ずっとずっと、思い焦がれていたこいつに、勝ったんだ。

 

「…ウッ……ヒック…ヒッグ………ウア"ア"ア"ア"ア"ア"…」

 

泣いた、恥も外見も関係ない。

ただひたすらに、泣いた。

 

うれしさもあったのだろう、けど、それだけじゃない。

今まで感じた全部の苦しさ、悔しさ、そういった感情が、全部ごっちゃになって、溢れ出た感じ。

 

・

・

・

 

どれくらい、そうしていたのだろう。

気づけば、私は周りを他のウマ娘やら、担架を持った職員さんやら、報道陣に囲まれていた。

うわ、やっちゃった…周り見てなかった。

そういえばレースの後だった。

 

ていうか待って、テレビカメラもいるじゃん。

え、え、まってまた私の泣き顔全国放映されてるの!?

 

ていうかこいつ、いつの間にか私を膝枕してやがる!?

通りで寝心地いいわけだよ!!

ていうか私もいつ太ももに頭乗っけた!?無意識!?無意識なの!?

や、やめろ、頭を撫でるな!!

ていうか、カメラ!カメラ!おいフラッシュたくな!!

 

 

「ご、ごめん、もう大丈夫」

 

「ふふ、すっきりした?

 あーあ、しんのさいきょー…とられちゃったなぁ」

 

「なんだ、覚えてたんだ」

 

「忘れるわけないよ…ずっと大事にしてたんだよ」

 

そっか、覚えててくれたんだ、私の幼いながら語った夢を。

 

「へへへ、これで合わせて6冠ってやつ?」

 

「次は…負けないから」

 

「……………うん」

 

うん…次はもうないかな…ごめん、勝ち逃げなんだこれ…。

そんなこといったら物理的にとどめをさされそうなので言わないが。

 

「さ、ポーズを決めよ、さいきょーさん」

 

ひとしきり泣いて、さらにそのあと奴とお話したおかけで、気づけば息も整っていた。

奴に支えられながらヨロヨロと立つ。

勝ったほうがするポーズ、2人で考えたもんな。

 

『さあ、今アサオンクライが立ち上がりました。

 故障の心配がありましたがどうやら大丈夫なようです。

 競い合うだけじゃない、支え合うライバル…素晴らしいですね』

 

『2人で一緒に追いかけてきた夢、でしたか。

 まさに青春ですねぇ』

 

 

観客席の方に向く。

 

 

私は腰に手を当てて、反対の手をすっと天に掲げる。

 

 

観客の歓声も不思議とやんでいる。

 

 

みんな固唾を飲んで見ようとしている。

 

 

桜花・皐月で1本指。

 

 

オークス・ダービーで2本指。

 

 

秋華・菊花で3本指。

 

 

じゃあ、有馬は?

 

4本?それとも合計の6本?

 

 

いいや、違うね。

 

 

 

 

 

 

私は指を1本立てて天へと突き上げる。

 

 

 

「…私が………私が一番(最強)だッ!!!」

 

 

 

その瞬間、競バ場が揺れた。

 

 

 

『並み居るシニア級すら粉砕し、そして無敗三冠と無敗トリプルティアラの対決を制したのはッ!

 

  アサオンクライッ!!!』

 

 

 

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