真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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すみません。
今回は書きたいことを書いたら1万字をオーバーしました。
分けることも考えましたが、一気に読んでほしいなと思ってまとめてます
その為、少し読むのが大変かもしれませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです

そして、本編のみで遂に100話を達成しました!
偏に、読者の皆様が読んで応援してくれたお陰です!!
今後も、真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~をよろしくお願いいたします


悠介と宣戦

悠介たちが多くの川神院の修行僧たちの治療を行っている最中、現れた紋白は惨状に悲鳴を上げる。

「これは、川神院が襲撃を受けたのか!!」

 

紋白の悲鳴に近い言葉に周りの視線が集まる。九鬼家の襲撃という状況の中で現れた九鬼紋白という存在に誰もが一瞬、警戒を強める。

その中でいの一番に動いたのは悠介だった。

 

「お前がそういうってことは、今回の件はお前は無関係ってことでいいか?」

問いかけると確認を含んだ悠介の問いに紋白は自身の先ほどまでの事態と含めて、何を問われているのかを正確に理解した。

ゆえに告げるべき言葉は決まっている。

 

「その通りである!!

しかし、此度の件は我らの失態!!

無礼を承知で頼む!!

力を貸してくれ!!」

 

己の無力さ、己の失態、それら全てを棚に上げ紋白は頭を下げる。主の行動にあずみたちが紋様と叫ぶ。

しかし紋白はそれを手で制し、ただひたすら頭を下げる。紋白の行動に、大和たちが答えようと動くが、それを燕と百代が制止する。

突然の百代たちの動作に驚きを隠せない大和たちだが、彼女たちは本能的に理解しているのだ。

何故、紋白が悠介に頭を下げたのか。その訳を…。

 

「はぁ~。頭上げろ。

言いたいことはないわけじゃないが、お前が真剣なのは伝わった。

それに今回の件はもう、お前らだけの問題じゃないからな」

 

「それはッ!!」

 

悠介は自分の言葉に紋白が何かを言う前にそれを手で止め、真っすぐに視線を合わせる。

 

「わかりやすく言うぜ?

お前だけが気持ちを落ち着きつかせるための謝罪なんざ、俺は聞きたくねえ」

 

「ッ――――!!」

 

「迷いも、後悔も、恥もあるだろう。

九鬼家(おまえら)が王たらんとしているのは知っている。

だから、今謝罪しているだろ?

建前、言い分、今後、お前が今考えるべき様々なことへの布石だろう。

だがな、俺たちからすればそんなものは死ぬほどどうでもいい。

俺たちには関係がなし、知らねえ。

最初に言ったとおりだ。

身内が傷つけられた。――――充分なんだよ。俺たちが戦う理由にはな」

…小難しい駆け引きも必要なく、自分たちの本心を告げられるのは彼しかいないと分かっているのだ。

悠介の言葉に紋白が呑まれる。あずみたちも主のへの無礼を働いた悠介に釘を刺そうとしたが、声音に呑まれて動けなかった。

 

「逆にこっちから聞くぜ。

お前が、俺たちに協力する理由はなんだ?」

 

今度は逆に悠介が紋白へと問う。問われた紋白は答えに詰まる。なんて答える。きっと目の前の男は自分がどんな答えを出そうとも協力はしてくれるだろう。だが、確信がある。今、相楽悠介は間違いなく、九鬼紋白という存在を計っている。

先ほど述べられた通り、今回の事件は九鬼家の失態。そのため今後を考えたとき、事件解決を図るうえで、自分が上にあるべきなのは必須。

そしてふと気が付く。これはあの時と同じなのかもしれない。自分たちが初めて話したあの日。自分は武神の討伐を依頼し、目の前の男はそれを利用した。

一杯食わされた。紛れもなく自分の敗北。見誤ったのは、目の前の男の覚悟であり執念。

そして今、立場が逆転している。

もしも自分の答えが納得のいくものでなかったら、きっと自分は戦力外として蚊帳の外に立ってしまう。それだけは避けねばならない。

必死に頭を働かせる。九鬼の名を守るため。それも紛れもない本心だ。だが、目の前のこの男を納得させることが出来るかと言われれば、なぜか無理だと確信してしまう。

堂々巡りで答えが出ない。

何も言えない紋白に、悠介が見限りをつける様に大きく息を吐く。紋白はそれがリミットだと察して、何か言わねばと焦り、とにかく口を開いた。

だから、それは紛れもない本心だ。

 

「母上を助けたい!」

 

「あ?」

 

一度口に出してしまえばもう止まらない。紋白は最早半分やけくそ気味に言葉を紡ぐ。

 

「我を逃がすために母上が捕らわれしまった。

我は、まず何をおいても母上を助け出したい!!」

 

言い切った。そして我に返る。自分が何を言ってしまったのかを理解する。

まずいと慌てて言い訳をしようとするが、それよりも早く悠介が口を開く。

 

「いいじゃねえか。

変に取り繕った言葉よりも納得がいく」

 

「え?」

 

「そういうわけだ。

文句ねえよな、お前ら」

 

唖然とする紋白たちを放っておいて悠介は今まで見守っていた燕たちに問いかける。悠介の問いかけに燕たちは待っていましたと言わんばかりに声を上げる。

 

「勿論!!

あ、私は悠介君と違ってバッチリ報酬いただきますね?」

 

「ああ、言われるまでもない。

現状では、私たちが一番戦う理由があるからな。

九鬼が動かなくとも私たちが動くさ。

なあ、妹よ」

 

「ええ、お姉さま!!

川神院の一員としてやられっぱなしじゃいられないわ!!」

 

「無論だ!

義を志すものとして、これ以上の狼藉は見過ごせん!!」

「まあ、悠介が言った通りケンカを売られた以上、買わない手はないわな」

 

「私も。友達に危険が及ぶ以上戦います」

 

「…まずは情報をまとめよう」

 

各々が自分たちが戦うべき理由を述べる。唖然とする紋白に悠介は苦笑しながら告げる。

 

「確かに大人になれば納得させるだけの建前やメリットを告げる必要があるがな。

ガキである俺達には、シンプルな理由でいいんだよ。

…それに、本心を隠し続けてると何処かで見間違うからな。

どちらを告げるべきなのか、それを判断できるようになれよ」

 

クソガキ。と告げながら悠介はその場を離れる。自分への名称なり言いたいことがあったが、紋白は何も言えず、ただ去っていく惡一文字に向かって頭を下げた。

 

◆

 

紋白から離れた悠介は一人で治療されている者たちがいるエリアに入る。さっと辺りを見渡した悠介は迷うと来なく歩を進め、目的の人物の元へ近づく。

 

「何時まで狸寝入りしているつもりだクソジジイ」

 

「なんじゃ、気づいておったか」

 

「当たり前だ」

 

悠介の言葉に今まで傷を癒すために眠っていたと思われた鉄心がパチリと目を開ける。

 

「随分、無残に負けているじゃねえか」

 

「…言い訳はせんよ。

あれはワシの負けじゃ」

 

「…そうかよ。

それで誰に負けだんだ?」

 

「…何も(・・)言わんのか?」

 

「言いたいことはあったが、その顔を見たら言う気失せたし…必要ねえ(・・・・)だろ」

 

「全く不甲斐ないのぉ」

 

「そういうのはいいから、早く教えろ」

 

「ホホ。

紋白ちゃんへの言葉と言い、お前さんは偶に人生が二度目ではないかと思ってしまうわい」

 

「流行りのあれか?

それだけジョークが言えれば充分だな。

全員の前で説明してもらうぜ」

 

「いいじゃろう。

先手を取ら手ておる以上、それが一番じゃな」

 

そういって立ち上がった鉄心は悠介と共に百代たちの元へと歩き出した。

 

◆

 

悠介と鉄心が百代たちの元へ戻ると新たに一人が合流している。その想定外の自分の登場に悠介と鉄心は驚きを隠せない。

 

「鍋島さん!

なんでここに」

 

「お主、なんでここにおるんじゃ?」

 

「おお、師匠に悠介!!」

 

そこにいたのは、悠介の師の一人であり、川神院の卒院生でもある鍋島正。

 

「師よ、随分な光景だな。

まさかあの川神院が落ちるとは夢にも思わなかったぜ」

 

「…不甲斐なくて言葉もないわい」

 

「…そうか」

 

「それでなんで鍋島さんが此処に?」

 

思うことを含めた会話をする二人。そこには割って入ることが出来ない空気があったが、そこへ悠介が割っている。

悠介の言葉に鍋島はそうだったと、自分がここに来た理由を伝えようと口を開こうとした瞬間。

 

「不要だ、鍋島。

ここから先はオレが説明しよう」

 

再び、ヒュームが姿を現した。

 

◆

 

ヒュームの登場に、その場にいた実力者たちは瞬間彼がどちら側かと迷う。しかしそれも一瞬だった。その答えは鉄心によって告げられた。

 

「お主、よくワシの前に姿を見せられたのぉ」

 

最早、顕現の一歩手前の状態の鉄心の圧に誰もが動けずにいる。

 

「ふ。

仮にもオレは勝者だ。今日に限り、貴様はオレに手を出さないが道理ではないか?」

 

「……」

 

臨戦態勢の鉄心にヒュームは武術家の道理を説く。ヒュームの言葉に鉄心はギリギリ踏みとどまっている。

その圧が如実に告げている。いいだろう。その言葉に乗るが、今この場で不義を働けば容赦はしないと。

それを理解したヒュームが大きく息を吐き告げる。

 

「安心しろ。

今回の俺はただのメッセンジャーだ」

 

「メッセンジャー?」

 

ヒュームの言葉に誰もが疑問を浮かべる。その空気の中、ヒュームは持ってきた機材を悠介たちの前に用意する。

 

「テレビ?」

 

ヒュームが用意したそれを見て誰かがそう呟いた。

 

「詳しくはこれを見た方が早い。

よく見ていろ」

 

ヒュームの言葉に多少の不満はあれど、状況が分かるとその場に集まった全員が画面に注視した。

 

◆

 

画面に映ったのはある一角の空き地。数秒、代り映えしない映像が流れていたが、突如として地面が隆起し、地割れと共に巨大な城が現れる。

そしてモニターには大きく川神城(かわかみじょう)とテロップが出される。

 

「城が出てきた」

 

「なんだこれ?」

 

「あ~。あの地下空間はこの城を作ってたのか」

 

余りにも想定外の光景に誰もが唖然として言葉がうまく出ない。

そんな彼らを放っておいて次なる変化が現れる。

突如として画面が切り替わる。そこは、先ほどの光景と合わせて城の一室を映し出す。

そこに映り込んでいるのは――――。

 

「マープル!!」

 

裏切者であるマープルが悠然と佇んでいる。黒幕ともいえる存在を知り紋白が忌々しそうに名前を述べる。

 

『ハロー。

川神の若人たち、聞こえているかい。

この放送はあらゆる電波放送をジャックして全国に同時放送しているよ』

 

気質の良い笑顔を見せるマープル。しかし告げられている内容は中々のものだ。誰もが沈黙を保っている。

 

『さて、無駄な前置きはここまでにして本題に入ろうかね。

これを見ているみんなの疑問は一つ。

どうして私が電波ジャックまで行ってこんな放送を行っているのか』

 

『その目的を告げる前に、逆に一つ私から問いたいね。

今の日本の現状についてどう思う?』

 

大きくため息を吐きながら告げられた問いに誰もが疑問を浮かべる中、マープルは更に言葉を続け始める。

 

『私は嘆かわしいよ。

今の日本を見てごらん。

活気のない現状、未来を語らない若者、考えを放棄してただ無気力に流されている。

しかし文句だけは一人前に言うときた。

これが未来を担う現状と思うと私は不甲斐ないやら悲しいやらで夜も眠れないよ』

 

マープルが告げたのは日本現状。次世代を担う若者の無気力さを嘆いている。言いたいことはそれだろう。だが、まだマープルの目的が見えてこない。

 

『そんな時、私はふと閃いたのさ。

若者たちが頼りないなら、頼りになる存在に任せればいいとね』

「え?どういうこと?

たっちゃんはわかった?」

 

「いや、分からねえがろくでもない話な気がするぜ」

 

「大和、お前はどうだ?」

 

「ごめん、姉さん。

流石に情報が少なすぎる」

 

マープルの意図が読めずに誰もが疑問を口にする。しかし誰もがいい気分はしない。理由は単純だ。語るマープルの声音には隠しきれない嘲りが含まれている。

 

『察しの良い奴なら気が付いているだろう。

まあ最も誰も気が付かなかったとしても私は驚かないよ。呆れはするがね。

そう答えは簡単だった。

クローン技術だ』

 

「まさか!!」

マープルが告げた答えに頭脳の良いメンバーが信じられないというように顔を歪める。

 

『例えばさ。今回の電波ジャックも悲しいかな。

世界の九鬼と呼ばれる優秀な人材でさえも止めることが出来なかった。

本当に嘆かわしいね』

 

「あの婆!!」

 

「ファック!好き放題言いやがって!!」

 

「流石に好ましくありません」

 

マープルの言葉にあずみたちが怒りを隠せない。どこまでも自分たちを下に見て嘲けられ怒りを覚えないわけがない。

 

『だが、よく考えてごらん。

もしもこの世にあの有名な軍師 竹中半兵衛がいたとしよう。

きっと私の策なんかバッシっと見破ったと思わないかい?』

 

マープルは何処か陶酔するように断言して言葉を続ける。

 

『つまり、私の話は簡単だ。

これからの国の運営は私たちじゃなくて、クローンたちに任せる。

総理大臣を含めた国の主要機関の全てをさ。

想像してごらんよ、もしもあの織田信長が今の国を率いたとしよう。

きっと今よりもずっと良い国になると思わないかい?

これが私の提案する本当の武士道プランさ』

 

マープルが告げた衝撃の内容に誰も言葉を発さない。余りの内容に頭が付いてきていない。

しかしそんなこと関係なくマープルが言葉を続ける。

 

『そして紹介しようじゃないか。

此処にいるのがこれからの日本の王、項羽さ』

 

マープルがその名を告げると同時、画面が動く。そこに映っているメンバーに悠介たちは驚愕を隠せない。

 

「義経!!」

 

「弁慶も!!」

 

「与一…」

 

「なあ、燕。

あそこにいるのって―――」

 

「うん。

清楚ちゃんだよね」

 

映し出されたのは紛れもなく自分たちの大事な友人たちの姿。義経は何処か申し訳ないような顔を、弁慶は内心を読ませない無表情、与一は不満をありありと現している。

そんな中で誰もが視線を集めたのは清楚だった。

自分たちが知る文科系の美少女としての姿はなく、そこにいるのは畏怖堂々としたどちらかと言えば、川神百代を連想させる立ち振る舞い。

普段の彼女を知る分、彼ら彼女たちの驚愕は大きい。

 

『さて、項羽。

何か伝えることはあるかい?』

 

『フハハハ!!

そうだな、マープル。

紹介に預かった、俺が項羽!

川神学園では葉桜清楚と名乗っていた!!

 

この日本(くに)王である!!』

 

マープルの紹介に清楚は高笑いと共に自己紹介を告げる。映像を見ていた川神学園の生徒たちは、信じられないと悲鳴を上げる者、その正体に納得する者、正体を知り逆に闘争本能を高ぶらせる者に分けられる。

その中、悠介だけは無言で清楚を見つめている。

 

『俺が王となって行う政はただ一つ!!

日本(くに)を強国にすること!!

その為に必要なこともまた一つ!!

優れた人材の雇用だ!!

優れたものが、それ以外の者たちを率いる!!

さすればこの国は何人も負けぬ国になる!!』

 

畏怖堂々と告げられた清楚の目的。それを聞いた燕は…。

 

「う~ん、言いたいことは分かるんだけど…何て言うか…」

 

言葉を濁して、何とも言えない表情をしている。それは周りも同じで、何とも言えない表情で言葉を濁している。

そんな中、今まで沈黙していた悠介が口を開いた。

 

「中身の伴ってないないガキの絵空事だな」

 

「悠介君、バッサリ言い過ぎだよ」

 

「だが、事実だろ?」

 

「25歳まで正体を隠そうとする理由はそれか…」

 

空気の読めない悠介の発言に燕が突っ込みを入れるが、悠介は逆に何かもんだでもあるかというように燕に問う。

問われた燕も返すべき答えがないため、曖昧に笑ってごまかしている。

そんな清楚の暴論というべき言葉にマープルもこれ以上はまずいと思ったのか口を挟む。

 

『それじゃあ、まずは王の力を見せて貰おうかね。

項羽、城の隣に廃工場がある。

城の景観に合わない。

潰せるかい』

 

『ハハ!当然』

 

マープルの衝撃の提案に清楚は獰猛な笑みを浮かべ城の隣にいある廃工場へと舞い降りる。

そこから映り込んだのは衝撃の光景。素手のみで行われる清楚による工場の解体ショー。普段の清楚を知るからこそ、余りにも常識外れの光景に誰もが言葉を失う。

そして僅か10分足らずで巨大な廃工場の解体ショーが終了した。

 

『ハハハッ!

いい汗をかいた!!

見たか、これが覇王の力である!!』

 

『まあ、そういうことだよ。

ほら、義経。

お前たちからも何か言ってやんな』

 

マープルの言葉を受けた義経が一歩前に出る。義経は数秒、何か堪える様に下を向いていたが意を決したように前を向く。

 

『…義経はマープルに育ててもらった。

…だから、マープルが手伝ってほしいと義経に願ったなら、義経は…力になりたいと思う。

…それが英雄だと思うから。

…すまない』

 

迷いながらも告げられた義経の言葉に一子たちが何とも言えない悲しそうに義経の名を呼ぶ。みんな分かっているのだ。義経が望んでいないことも、責任感の強い彼女が断れないことも。

 

『…まあ、私は主の意見に従うよ』

 

「…弁慶ちゃん」

 

『…ふん』

 

「…与一」

 

義経の言葉に続くように弁慶が、与一が口を開く。各々がその言葉に声音に思うことを感じる中でマープルは更に進める。

 

『最も中には、私の意見にふざけるなと思う奴らもいるだろうね。

そこでだ。今どきの若者たちへ、私からのプレゼントだよ』

 

マープルは不敵に笑い、今度は清楚たちとは反対側を指す。するとそこには――――

 

『うぬ…。

この我を晒し物にするとは…』

 

「兄上!!」

 

「英雄様!!」

 

『いや、マジで映さないで恥ずかしいから』

 

「親父!!」

 

「宇佐美先生!!」

 

「あちゃ~。私たちと別れてすぐに捕まったんだね」

 

『紋白様!! 委員長!!

来ちゃいけねえ!!

これは罠だ!!』

 

『今回は弁解の仕様のない失態ですね』

 

『う~~』

 

「にょわ!!

ハゲだけではなく、まさか葵君たちまでもか!!」

 

『写すんじゃねえよ、バッキャロー!!』

 

『ウググ。

屈辱的だね』

 

『みんな、ごめん』

 

「店長まで!!」

 

「うげ。

母ちゃんもかよ」

 

「モロ!!」

 

―――人質として捕らわれている川神の人々の姿。

 

「何時のまに!!」

 

「なに。

お前たちが梁山泊を捕まえるために包囲網を引いてくれたお陰でな。

かえって隙が付きやすかったぞ」

 

クリスの疑問にヒュームが何処か馬鹿にするように告げる。その言葉が自分たちの行動の全てが掌の上だったと暗に告げている。

特に大和は作戦の立案をした身として悔しさから拳を握る。

 

『さて、使い古された言葉だが合えて言うよ。

私の案に逆らうなら、人質たちがどうなっても知らないよ。

ほら、諦める理由もくれてやったんだ。

最近の若者らしく楽な方に流れな』

 

マープルはこの映像を見ているであろう彼ら彼女らを見下いしながら告げる。そして更にあくどい笑みを浮かべて告げる。

 

『あ、そうそう。

頼りになる川神院はしばらく動けないよ。

既に襲撃は完了している。

当然、此処に英雄様がいる以上九鬼家も動けない。ここにはいないが、揚羽様も私たちの手中にある。

普段から頼りになる大人に今回は頼れないよ』

 

「…なるほどのぉ。

ワシらを襲撃したのはそういう理由か」

 

「さらに言うならば、ドイツ軍からの援軍も不可能だ。

スケジュール上絶対に動けない日取りを選んだからな。

何気に一番の不安要素だったからな」

 

「ぬう。

何処までも計算ずくということか」

 

加えてマープルとヒュームの二人は、今回の件において大人の協力は望めないと告げる。どこまでも計画通りという言葉にクリスは唇をかむ。

 

『それに悪い話じゃないさ。

その証拠にほら、私の考えに賛同している奴らも数多くいるからね』

 

そい言いながらマープルは背後の襖を開ける。そこには複数の人影。その姿を見た瞬間、多くの人間が驚きを露わにする。

 

「ルー師範代!!」

 

「石田!?」

 

そこに映り込んだのは、川神院師範代のルー・イーと天神館の西方十勇士たち。その姿に一子が悠介が驚愕を隠せない。その中で鍋島だけが「バカ野郎が…」と小さく呟いた。

 

『皆さん!

ワタシは、梁山泊に敗レ、その強さとマープルの考え方二、共感しましタ。

だから、此れからハ、梁山泊と九鬼の為に力をふるいまス』

 

真面目な声音で告げるルーの言葉に戸惑う一同だったが…。

 

「偽物だな」

 

それを悠介が両断する。

 

「ルーさんがジジイを裏切るなんて天地がひっくり返ろうがありえねぇ」

 

「悠介の言う通りだ。

ルーの野郎は、川神鉄心に心酔しているからな。

裏切るなんてのはありえね」

 

「じゃあ、やっぱり今映っている師範代は偽物?」

 

断言する悠介の根拠を説明する鍋島。二人の言葉を聞いた一子が戸惑い気に問う。

一子の問いに悠介は少し考える素振りをしてから答えた。

 

「…いや、今この場にルーさんの姿が見えないことを考えると――――」

 

「催眠術か何かで操られているって考えるのが妥当だね」

 

悠介の言葉を引き継ぎ燕が答える。その顔は厄介な状況だと告げている。

そして自身の懐刀を奪われた形となった鉄心は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。

 

『そら、お前さんたちは何も言わなくていいのかい?』

 

『不要だ。

興味がない』

 

『そうかい』

 

「…あんたが此処にいる理由だよな。

何があった?」

 

そしてもう一人、西方十勇士を代表して石田にマープルが声をかけるが、石田は興味がないと何も語らない。

その姿に悠介は、鍋島が此処にいる理由を悟り問いかける。

悠介の問いに鍋島は…。

 

「その通りだ。

俺は石田たちの件でここに来た。

勿論話すつもりだが、今じゃねえ」

 

状況が落ち着かない状況で話すのでは意味がないとして状況が落ち着き次第に話すと告げる。

鍋島の言葉に悠介は不満がないのか、それ以上は何も言わずに画面を見ている。

 

『さて、長々と喋ったが今後について話そうかね。

私も何もすぐに全国にプランを施行するなんて無茶は言わないよ。

徐々に規模を拡大していくつもりだよ。

そうだね…大体3年後には全国が武士道プランの恩恵を受ける形を考えている。

そして、その栄えある武士道プランの最初の場所が、最初の挨拶で分かっていると思うけど川神市という訳さ。

川神市には有能な若者が多くいるとお言う報告を受けているからね』

 

マープルが語る内容に聞いた面々は自分たちが評価されていることに喜ぶべきなのか、それともそれでも勝てると思われていることに怒るべきなのか、どう反応していいのかわからない。

そうした中でもマープルは言葉を続けていく。

 

『さてそれじゃあ、川神の若者たち!!

期限を決めようか。

武士道プランに賛同する者たちは…そうだね、今日の夜までに此処川神城まで来てもらおうか。

そして―――』

 

そこまで語って、マープルの瞳が鋭くなり、声音が重くなる。

 

『私たちの考えに賛同できない者たちへ。

不安分子を残しておくほど私は甘くなよ。

明日の朝から進撃を始めよう。

武士の血筋の土地に倣って、力で屈服させようじゃないか』

 

マープルから告げられたのは宣戦布告。その重みに誰も体を強張らせる。

 

『それじゃあ、まずは答えを聞こうかね。

実は今、川神院にいるメンバーと通信が繋がる準備があってね。

此処川神でも名うてのメンバーが揃っているんだ。

彼らの意見を聞いてみようか』

 

マープルがそう言うと悠介たちの傍で控えていたヒュームが通信機を差し出してくる。

 

「既に通信は繋がっている。

マープルの否、我々の考えに賛同するか、抗うか答えて貰おうか」

 

ヒュームから差し出された通信機を前に誰が答えるかと一瞬の硬直が起きる。その中でいの一番に動き出したのは紋白だった。

 

「皆!

我が代表して返答しようと思うが、良いか」

 

決意と覚悟あること言葉に誰もが文句を言わない。

 

「そうか。

そして返答だが、答えは決まっているがよいな」

 

明言はしない。それでもその意思は伝わってくる。その意思は彼ら彼女らは答えない。その表情が既に答えを出している。

彼ら彼女らの声なき返答に満足した紋白がヒュームから通信機を受け取ろうとした瞬間…。

 

「ちょっといいかな、紋白ちゃん」

 

「…どうした、燕よ。

まさかと思うが――――」

 

燕が待ったをかける。出鼻をくじかれた紋白は最悪を想定した声で燕に問いかける。紋白の意図を察した燕は慌てて手を振りながら否定する。

 

「違うよ。

私もここにいる皆と同じ気持ち」

 

「ならば、何の――――」

 

「その返答、悠介君にさせてあげてほしいなと思って」

 

「はあ?」

 

燕から告げられた提案に紋白よりも先に、名指しされた悠介が声を上げる。

 

「燕、何のつもりだ」

 

「う~ん。

簡単に言えば意趣返し?」

 

悠介の問いに燕はニヤリと笑みを浮かべながら答える。燕の返答に誰もが頭に疑問を浮かべる中、燕が理由を話す。

 

「今回の件、私たちは後手に回り続けている。

ただ、宣戦布告してもきっと向こうからすれば想定の範囲内でしかない。

せめて、宣戦布告で出鼻を挫きたいなと思って」

 

「…それを相楽悠介はできると?」

 

燕からの告げられた理由は負けず嫌いの武士娘らしいものであり、志気において自分たちを上げることを目的としている。

理由を聞いたうえで紋白は、それが出来るのかと問う。

紋白の問いに燕は間髪入れずに返答する。

 

「できる」

 

迷わない。疑わない。できると信じている。そう感じさせる燕の返答。それを聞いた紋白は少し迷うそぶりを見せたが、自分を一杯食わせた存在、あの武神を破った常識破りの塊。

その可能性に描けるのは悪くない。

 

「わかった。

相楽悠介よ!

我らを代表して、返答を頼みたい」

 

「燕、めんどくせえ役目押しつけやがって」

 

「いいじゃん!

それに言いたいことあったんでしょ?」

 

「はぁ…。

どうなっても文句は言うなよ」

 

「構わぬ!!」

 

悠介の言葉に紋白はお前にかけたと告げる。数人は不満はあれど、この空気を換えるだけの言葉を持たない。

ゆえに、通信機を受け取るのは悠介に決まった。

 

◆

 

ヒュームから通信機を受け取った悠介は迷うことなく口を開いた。

 

「あー、あー、聞こえるか」

 

『少し時間がかかったみたいだけど繋がったみたいだね。

紋白様が出てくると思ったんだけどね。

一体誰だい?』

 

「相楽悠介だ」

 

『ほお!

まさか、あの武神を倒した人材が答えてくれるとはね。

立案者として嬉しいね』

 

名乗りを上げた悠介にマープルは喜びを上げる。そんなマープルの言葉に悠介は「そうかよ」と短く答えて言葉をつづける。

 

「最初に言っておくと、お前らの考え方には一部理解(・・・)できる(・・・)」

 

「「「「なっ!!」」」」

 

『へえ、意外だね』

 

悠介から告げらた衝撃の言葉に周りは驚愕し、マープルも驚きと共に瞳を細める。

悠介の暴挙に慌てて、大和が、紋白が、動こうとするがそれを、燕が、鍋島が、鉄心が止める。

 

「燕さん!!」

 

「なぜ止めるのだ!!

急いで止めねば!!」

 

「気持ちは分かるけど落ち着いて」

 

「心配しなくても、お前ら思うことは起きねえよ」

 

「最悪の場合はワシらが責任を負う。

もうしばらく様子を見てくれんか」

 

「でも!!」

 

「落ち着け大和」

 

止められる中でも大和は軍師として最悪を考えて動こうとするが、それを百代が制止する。

大和は姉貴分に危険性を問おうとするが、百代はそれを分かった上えで待てと告げる。

 

「どうして!!」

 

大和の叫びが問われる中、悠介は周りに目もくれずに話を続ける。それは信頼故かは彼にしかわからない。

 

「そうか?

実際、武士道プランが施行されてから、学園の学力やらが上がっているのは事実だ。

その規模を大きくして、先人の知恵を力を借りるってのはありだろ?

言っている通り、今の時代に合っていると思うぜ」

 

『ハハ!!

いいじゃないか!!

そこまで評価しているなら、勿論、私たちに協力してくれるんだろね?』

 

悠介の言葉に気分を良くしたのか、マープルは冷たい笑顔(・・・・・)で歓迎を告げて問う。

問われた悠介は笑みを浮かべている。

 

「そうだな……ある条件(・・・・)を吞んでくれるなら手伝ってやってもいい」

 

その言葉が悠介から発せられた瞬間、誰もが驚愕と共に声を荒らげ、悠介を止めようとするが、それを鉄心と鍋島が強制的に押しとどめる。

 

『条件ね…いいよ、言ってみな。

生意気だが、それぐらいは持ってなくちゃ困るからね』

 

「簡単だ。

自分たちじゃ、次世代(あなたたち)を育てるのが無理だから、不甲斐ない指導者(わらしたち)に代わって偉大な先人たちの力を使わせてくださいって、俺たちに頭下げて宣言しな」

 

『…なんだって?』

 

その言葉に今までの空気が一変する。

 

「あ?

俺おかしなこと言ってるか。

様はそういうことだろ。

若い世代の無気力さやらなんやら言ってるが、ようはそういう時代を作ったあんたらの不適際だろ。

若者は時代を作れるが、(・・・・・・・・・・)時代にはなれねえ(・・・・・・・)

そういう時代を作った大人を育成したのは、あんたらだろ、婆さん」

 

『私の話を聞いていたのかい?

私は若者たちの不出来さを嘆いているのさ。

どんな状況であろうと、環境すら変える英傑と言える才能ある者たちが出てこない。

これほど悲しいことは何だろう。

そこに育成は関係ないよ』

 

「聞いたうえでそう言っているんだよ。

婆(ババア)!確かにそこには本人の資質があるだろうが、それ以上にその才能を発揮させるには気持ち、心の部分だろ。

発揮したい思えない時代を作ったのは大人たちで、その大人たちを育てたのは老人(てめえら)だろ。

ほら、何も間違ってねえだろ」

 

マープルの言葉を悠介は真正面から否定する。先ほどまであった混乱はすでにない。むしろ、悠介の言葉に誰もが聞き入っている。

 

『…よくある若者の責任転換ってやつだね』

 

「そっちから見ればそういう意見になるわな。

それでも一つだけ断言できることがある」

 

『なんだい…』

 

「お前らは育てることを……導くことを諦めている」

 

『なんだって…』

 

「才能は便利な言葉だよな。

やる方も、教える方も、薬であり、毒だろうぜ。

でもな――――」

 

一度言葉を切った悠介は何かを思い出すように、一度目を閉じた。

 

「才能もねえ(・・・・・)、やる気だけ(・・・・・)のバカなガキ(・・・・)を、愚直に育ててくれた人たちがいる。

才能なんて言い訳をしなかった。

だから、頭を下げろよ。

そうしてら、不甲斐ないお前らに協力してやるよ」

 

悠介は伝えたいことは伝え終えたと通信機をヒュームへと返そうとする。その気配を察しのだろうマープルが今までと違う表情で声音で口を開く。

 

『黙って聞いていれば好き勝手言うじゃないか。

坊や。お前さんは現実が見えていないね。

頼りになる大人はいない。戦力さも不利。後を考えるなら、もっと利口に立ち回るべきだ。

それともあれかい?

私たちに勝てる根拠でもあるのかい?』

 

「あ?根拠何てねえけど。

現状勝機があるから戦うというものじゃねえだろ。

勝たなきゃいけねえ(・・・・・・・・・)から戦う(・・)んだろ」

 

『現実が見えていない子供典型例だね。

根拠のない自信、やる気、それだけで世界と渡っていけると思わないことだね』

 

それは長く世界を渡ってきた古豪の兵(つわもの)の経験を含んだ重い言葉。その圧に音声だけで、百代たちを委縮させる。

その中で悠介は委縮されてなお――――。

 

「ハッハハ!!」

 

笑う。

 

『何がおかしいんだい』

 

「だってよ、普通逆だろ。

語るに落ちたな、ババア。

若者から、根拠のない自信を、やる気を奪ったら、何になる。

その二つこそ、若者の特権だろうがよ!!

覚悟してろ。

明日、お前が意味のないといったその二つで、てめらを完膚なきまでに潰してやるよ、老害」

 

『それはこっちのセリフだよ。

覚悟しな、クソガキ。

明日、お前さんに世界の厳しさってやつを教えてあげるよ』

 

互いの宣戦は終わる。

これより、川神を舞台に動乱が始まる。




口説くなった気がしますが、悠介が伝えたかった伝わりましたかね?
次はもう少しコンパクトにまとめられるように頑張ります

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