真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

68 / 98
いよいよ、石田との決闘が開幕です
小物感満載の石田になっちゃった様な気がしますが・・・・・たぶん大丈夫、だって過去だもん!!

楽しんでもらえたら、嬉しいです


《過去》悠介と西方十勇士 その10

決闘が決まった二人だが、すぐに開幕と言う訳ではない。以外にも石田が日時を指定してきた。申請などの手続きもあるだろうからと、悠介はそれを承認。勝負は二日後の土曜日という形でその場は収まった。

そして現在、悠介は帰路に着いている。

 

「さて、島の野郎や十勇士(あいつら)があそこまで忠誠を誓う石田が、どこまでの奴か楽しみだ」

 

僅かに痛みを告げる体を悠介の足取りは乱れない。そうやって帰っていく悠介の耳に――――

 

「なんだ?」

 

聴覚が捉えたのは、僅かな悲鳴。その声を聞き悠介の足は自然と声のする方へと向かう。別に正義の味方になりたいわけではない。ただ無視して後悔するよりも行って後悔したいと思っただけの話。

足が向いた先は、珍しい雑木林。草木をかき分け進んだ先で悠介は――――

 

「……あんたは」

 

「へ…?」

 

ある武人との出会いを果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪華絢爛。己の権威を示すようなその部屋に、部屋の輝かしさには似合わないような形相をした男が、携帯に向かって当たり散らしている。

 

「ふざけるなよ!!!何が私たちに任せておけだ!!お前の兵たちは、みなあのクソガキに負けたそうではないか!!」

 

まるで駄々っ子の様に文句ばかりを当たり散らすのは、この決闘の発端ともいえる教師。電話の相手は当然だが石田である。石田は屈辱的な言葉にただただ沈黙を守り耐えている。それでも止まらない。

 

「いいか、これ以上俺様の期待に答えられないどころか醜態をさらすのであれば、援助の件がなかった事になるだけじゃないぞ!!ここから先どこにも援助は受けられないと思え!!」

 

『……承知している』

 

「だったら、さっさと成果を見せろ!!この俺様をこれ以上待たせるな!!」

 

罵詈雑言を吐き続け、漸く気分がひと段落したのか教師は携帯を乱暴に切る。そうして携帯をソファの上に放り投げると、インターホンが来訪を告げる。

 

「チィ。一体誰だ。こんな時間に非常識にもほどがあるぞ」

 

文句を言いながら教師は玄関の扉を開ける。そこには――――

 

「よぉ、息災か」

 

「かかかか、館長!!!??」

 

自身が所属する学園のトップである鍋島正がそこにいる。

 

「最近、ガキどもを使って面白い事してるよな」

 

「あ…あ…」

 

ただその場に立ち話しているだけ。しかしその言葉に込められた圧は、容易に教師の体を心圧迫してゆく。

今までも行き過ぎた行為は何度かあったが、注意にとどまってきた。こうして正面から相対するのは初めての事だ。

 

「遅くなっちまった事は、まあ悪いと思ってるぜ。今回は、本来なら真っ先に俺がゲンコツをくれてやらなきゃいけねぇ案件だ」

 

そう告げる鍋島の表情は、冷静を装っているが隠しきれない怒りに彩られ、語気も強くなっている。そこまで来て教師は己の最後を悟ったが――――

 

「だがまあ、どうであれガキどもが始めた戦いを俺達大人の勝手な都合で幕引きとあっちゃあ、いけねぇ。だから、オメェの処罰は、次の相楽と石田の勝負の後、それも相楽が勝利した時のみとする」

 

「はぁ…?」

 

その言葉に呆けた声を出してしまう。

 

「それだけじゃねぇぞ。片方だけじゃフェアじゃねぇからな、もしも悠介が負けた時は、この学長の座をオメェにくれてやる」

 

「なっ…!!!」

 

今度こそその言葉に驚愕する。それはずっと彼が欲していた椅子なのだから。

 

「話はそれだけだ。まあ今は、ガキどもの戦いを楽しもうじゃねぇか。俺らの戦いはそのあと(・・・・)だ」

 

それだけ告げると鍋島はその場を後にする。しばし呆けていた教師だが、徐々にその意味を理解し狂った様に笑みを浮かべる。

自身の駒(・・・・)である石田は一年最強だ。それは既に誰もが知る事実。妄想に浸食した教師は気が付かない。なぜ、部下たちを使わせればすむ筈なのに、鍋島自身が動くのか。自分を傷つけただけ(・・)の無謀で現実を理解しないクソとしか思っていない。だからこそ、その人間関係を知らない。

だからこそ、その慢心は―――――

 

 

 

 

 

 

用事を終わらせた鍋島は、夜空の元一人ぶらぶらと歩いている。

 

「さてと、俺も根回しを終わらせねぇとな」

 

めんどくさそうにため息を吐きながら、鍋島は携帯を取り出す。位が高くなってからというもの、こういった事務的な仕事が多くなった。不得意と言う訳ではないが、やはり体を動かしている方が好きだと思う。

何より、その位の縛りが気に入らないが―――――

 

悠介(おまえ)が賭けてんだ、俺が賭けねぇのはおかしいな」

 

若い芽を育てれるというのは、存外に楽しい。そしてその成長は特に。少なくともその縛りを我慢できる程度には。

手は打った、あとは結果を待つのみ。

 

「さて、悠介よ。お前は十勇士(あいつら)を変えた。なら、石田を変えられるか?」

 

最後の決戦を思い浮かべ、鍋島は楽しそうに笑みを浮かべる。それはどこか結末を悟ったような表情だ。その表情を鍋島がするのは、信頼故かそれとも武人としての経験則かはわからない。それでも鍋島正という漢には、既にこの戦いの決着が見えていた。

 

 

 

携帯を切り、石田はきつく唇を噛む。そこには屈辱に対する怒りが抑えきれずに彩られている。こんなはずではなかった。そう何度も思ったが、結局は力量を見間違った十勇士の過ちにして己の過ち。

だが――――

 

「既に布石は打たれている(・・・・・・・・・)。この俺の勝ちは絶対だ」

 

己の勝利を確信し笑みを浮かべる。その胸の内は、自分の経歴を汚した悠介をどう料理するかそれだけになっていた。

 

 

――――様々な思惑が交差し、あっという間に二日間は過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校から渡された決闘の案内を見ながら悠介は、天神館が有する闘技場を見る。

 

「どこ行ってもスゲェな川神の門下生は」

 

二日を掛け作られた特別闘技場。なんでも鍋島が特別に許可した時のみ、部下たちと共に作り上げる場所らしい。手抜き工事とも思えぬ匠の技が所々に光っているらしい。鍋島曰く「秀吉の伝説の三日城をヒントに生み出した」らしい。

呆れを見せながらも、悠介は指定された通路へと入ってゆく。

暗い通路を超えた先には、満員の生徒たち。そして中央のフィールドに立つ石田の姿。

 

「待たせたか」

 

「ふん。構わん。まだ時刻には達していない」

 

中央を境に相対する二人。ふと、視線をずらせば十勇士たちが客席で真剣な瞳で石田を見ている。そのまなざしが、否応なしに悠介の期待を上げてゆく。

そしてそんな姿を客席から見ている燕は、クスっと笑みを浮かべる。が、次の瞬間には心配そうな表情を見せる。また、闘技場には発端たる少年の姿も。

 

――――無茶はしないでって…言っても聞かないよね。頑張って

 

そして闘技場でもっとも見晴らしの良い場所には、鍋島と教師の姿。鍋島は楽しそうな表情を教師もまた自信満々な表情を見せている。

 

「館長。あの約束をお忘れなく」

 

「ああ、わかってるよ。…たっく」

 

鍋島の言葉に教師は不気味な笑みを浮かべ、一方の鍋島は気分を害されたといった表情を見せる。

 

――――もう少しで私の栄光が…

 

――――さてっと、また(・・)見せてくれよ、悠介

 

鍋島の視線は中央のフィールドに立つ悠介と石田に注がれてる。

そして悠介が通ってきた通路の影。ちょうどフィールドを見渡せるが、向こう側からは死角となっている場所。そこに一つの人影が、どこか不安そうに悠介を見つめていた。

 

 

鍋島の傍に控えていた部下の一人が太鼓を鳴らす準備をする。それを視界の端に収めながら、二人は武器である拳を刀を構える。

 

「さあ、処罰の時間だ!!相楽よ、この俺の出世街道の礎となるがいい」

 

「はっ。お前に俺が喰えたらな」

 

互いに言葉を言い終えた瞬間―――――勝負を告げる太鼓の音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太鼓の音が響くと同時に悠介は一気に石田に向かって駆け出す。

 

「オラァ!!!」

 

気迫と共に放たれる拳。その拳を前に石田はーーーー

 

「ふっ」

 

身体をずらして最低限の動きで身をかわして回避する。

 

「逃がすかっ!!」

 

攻撃をかわされた悠介は、踏み込んだ軸足を中心に回転し、裏拳を放つがーーーー

 

「甘い」

 

容易く流麗にかわす。

 

「チィ!!」

 

己の攻撃が当たらない事に舌打ちをこぼしながらも、悠介は連続で拳を打ち込んでゆく。

 

「どうした?一発も当たっていないぞ」

 

「うっせ。すぐに当ててやらぁ!!」

 

挑発するような石田の言葉に悠介は噛みついて返すが...

 

ーーーーどういことだ?石田(こいつ)からは、攻めの意思を感じねぇ

 

胸の内には、石田に対する疑問が沸き上がる。悠介は疑問も沸き上がる中でも打ち込む拳を止めない。

それでもーーーー

 

「テメェ...なんのつもりだ」

 

「ふん。なんの事だ?」

 

「言うつもりはないってか...舐めんなーーーーっ!!!」

 

全く攻めてこない石田に悠介の怒りは徐々に限界へと近づいていく。

 

「舐めるなか...........それはお前の方はではないか(・・・・・・・・・・)?」

 

「なに...っ?」

 

予想外の石田の返しに悠介の言葉が詰まる。放たれた意味を理解できないといった表情を見せる悠介に石田は――――

 

「今からそれを証明してみせよう」

 

構えていた刀を遂に意思を乗せ振るう。初めて攻勢に出た石田。その攻撃を前に悠介は左腕を盾に受け止める。

 

――――思ったより、重めぇ

 

左腕から感じる衝撃に悠介の足が僅かに止まる。その瞬間―――――

 

「隙あり!!」

 

「なに――――っ!?」

 

石田の拳が悠介の脇腹に突き刺さる。普段の悠介であれば意に介さないが、僅かに(・・・)悠介の表情に苦悶が見える。

 

――――こいつ…まさか

 

「気がついたか…相楽よ」

 

その一手で悠介は全てを察する。その悠介の表情を見た石田は、その考えが正しいといった表情を見せる。

悠介は舌打ちを零しつつ、刀をはじき一気に距離を詰めようと駆けだすが―――その一歩を石田の足が踏みつける。

 

「っ―――!!?」

 

「考えが見え見えだ」

 

動きを止めると同時、石田が上段から刀を振り下ろす。重力を乗せた一振りを…

 

――――奥義の防り・刃止めッ!!

 

「ほう…」

 

両手の甲を交差して刃を受けとめる悠介。自信ある一振りだったのか、石田は僅かに驚いた表情を見せる。だがそれも一瞬の事。受け止めた悠介を押しつぶさんと力を籠める。

 

「ぐぅ」

 

「ふっどうした。始まったばかりだというのに、息が上がっている……ぞ!!」

 

上から押しつぶさんとする圧に耐えんと踏ん張った瞬間、石田が悠介の腹を蹴りつける。不意の一撃に悠介は僅かに後退する。

 

「クソ!!」

 

「休ませぬぞ」

 

後退した悠介を追うように石田は、踏み込み多角的に刃を振る。乱れ舞う刃に悠介の動きは完全に後手に回っている。

そんな悠介の姿に―――――

 

「辛いであろう。なんせ、島やヨッシーとの勝負から僅か二日(・・・・)しか経っていない。そうそう簡単に抜けるダメージではあるまいよ」

 

「よく喋るじゃねぇか」

 

石田は笑みを浮かべ(・・・・・・)ながら告げる。石田の言う通り、先日の島とヨシツグの戦いのダメージは完全に抜けていない。それゆえに僅かな動きでも多大な疲労が、僅かなダメージで芯に響いてしまう。

 

「自身の状態の把握も武人にとっては大切なスキル!!それを怠り、ダメージが抜けていない状態でもこの俺に勝てると踏んだ、お前の未熟さよ」

 

笑みを浮かべつつ放たれる横凪の一閃。僅かに反応が遅れている悠介。腕を盾に構え受け止める動作を取った瞬間――――

 

「ウラァ!!」

 

「なにっ!!?」

 

踏み込み間合いを詰めることで、横薙ぎを拍子を外し腕で受け止める。

 

「うだうだうるせぇよ!!そんなもんは、わかったうえで挑んでるんだよ!!」

 

「ぐぅ」

 

言葉に込められる圧に僅かに石田が押される。その一瞬の隙を見逃さず、悠介は攻めに転じようと動くが―――――

 

「だが、やはりキレが甘いぞ」

 

――――チィ、思ったより響いてんな。思った通りに身体が動かねぇが…

 

石田の刀によって、弾き飛ばされる。体勢を整えた悠介は己のダメージの深さに舌打ちをこぼす。

 

「ふっははは!!どうした相楽よ?威勢がいいのは、口先だけではないか」

 

「………………」

 

完全に自身の思惑通りの筋書きに否応なしに笑みがこぼれる石田。

 

「確かにお前は強い!!この俺が認めた十勇士(つわもの)達を倒したが…十勇士(あいつら)は己の役目を見事果たした!!」

 

「なに…っ?」

 

零された言葉に悠介が反応する。その反応に石田は、笑みをさらに深め告げる。そして更に告げてゆく。

 

「ああ、この俺の壁となるである者達を俺の代わりに倒すのが役目!!だが、それが叶わなければ、傷を残し俺への危険度を減らす事こそが使命!!事実お前は万全には程遠い。それこそが、この俺が十勇士を集めた理由だ!!時には手足として、そして兵として、俺の為に動く!!こうして俺は着々と安全に強者を倒し(・・・・・・・・)、出世街道を歩むのだ!!!」

 

石田が放った何気ない言葉。短い石田の人生で確立した生き方。それは否定するこは決してしないのだが―――――

 

「あ”?」

 

ある一言を聞き理解した瞬間、悠介の中のナニカが激しく暴れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明らかに石田有利の展開に教師は高笑いを我慢することができない。

 

「ハハハ!!いいぞ、石田!!そのままそのクソガキを叩きつぶしてしまえ!!」

 

自分のプライドを傷つけた存在。それが傷つき劣勢になっているのだ、胸の靄がとてつもなくスッキリしている。

 

「館長!!あの約束決して忘れてませんよね」

 

沈黙を続ける鍋島の顔に己の顔を近づける教師。そのいやらしい笑みにも鍋島は反応しない。無言の反応に僅かに教師が疑問を持った瞬間――――

 

「喚くんじゃねぇよ」

 

「は?」

 

「勝負は此処からだ」

 

――――そうだろ?悠介。俺との修行の成果を見せて見ろ

 

断言する鍋島の言葉と眼差しに教師は何も言えずに口を閉ざしてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ悠介が武術を初めて間もない頃。悠介には感慨深い記憶がある。

 

『あ?強くなるにはどうしたらいいかだぁ』

 

『うん』

 

修業が終わってから悠介は僅かなもどかしさを覚えていたがために、その回答を釈迦堂に求めた。その悠介の問いに釈迦堂は――――

 

『たっく、んなもん簡単だ。勝てばいい!!自分よりも強えぇ奴を倒せば、確実に強くなるぜ』

 

ある種の真理と言える言葉を発するが、当時まだ幼い悠介には理解が出来なかったのか、?マークが頭に浮かぶ。そんな悠介に釈迦堂は、ボリボリと頭を掻きながら、空いた方の手を悠介の頭に乗せ告げる。

 

『挑めって事だ。自分よりも強いからと諦めずに挑め。お前も強くなればわかるが、上に行くためには、どこかででけぇ壁と闘わねぇといかねぇ。強くなるのに、簡単な方法も安全な策もねぇのさ』

 

優しく、珍しい釈迦堂の言葉に唖然とした事を覚えている。事実、そのあとらしくない行動に顔を赤らめていた。

その後悠介は、鉄心とルーにも同じ質問をした。そしたら不思議と二人の返答は―――――

 

『安全策に溺れず、挑戦し挑むことじゃな。武人にとって停滞とは弱体化に同じ。強くなりたいなら、怯えずに挑むのじゃ』

 

『強くなることとは、挑み挑戦することダヨ。決してその場に満足しせずに、高みに挑むんダヨ。安全な道を進むのも大切だが、武人である以上それだけではいけないんダヨ』

 

釈迦堂と似たものだった。その意味を当時は理解できなかったが、時を重ね実力を上げる事に徐々に理解し始めてきた。

だからこそ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまでのキレのない動きをしていたとは思えないほど、鋭い拳が突如として顔面に迫る。

 

「なっ!?」

 

考えもしなかった速度での攻撃に石田は体勢を大きく崩しながら躱す。体勢が大きく崩れた石田の腹に、悠介の回し蹴りが直撃する。

 

「ごはっ…!!?」

 

体勢が崩れた石田は、腹からの衝撃に空気がこぼれる。幾分か後退した石田は、驚きの表情で悠介を見る。

顔が下を向いており表情は伺えないが、纏う空気が明らかに変わっているのがわかる。僅かな戸惑い。その隙を逃さない様に、悠介が駆ける。連続で放たれる拳。

 

――――こ、こいつ…っ。さっきから動きのキレが…戻って

 

先ほどよりもキレのある動きに加え、そのキレは決して落ちていない(・・・・・・・・・)。そんな驚きの中、悠介の思考は―――――

 

『おい、悠介。お前、今度から修業が終わった後に、俺んとこに来い』

 

『あ?どういうことだよ』

修業終わり、息切れた状態の悠介に鍋島は不敵な笑みを浮かべながらある提案を告げる。

 

『決まってんだろ。修業を終えた状態で、俺と組み手だよ』

 

『??。なんで修業あとなんだよ』

鍋島の言葉に悠介は疑問を持つ。そんな問いに鍋島は、面白そうな真剣な表情を見せる。

 

『簡単だ。お前が上を目指すなら、その敵は決まってお前よりも格上だ。そしてその時決まってお前は逆境だ。常に万全で戦えるとも限らないからな。悠介お前は、これからその状況になれなきゃいねぇ。それとプラスで、その状態でもキレを残す(・・・・・)特訓だ』

鍋島の言葉に悠介は何も言えない。むしろその表情はその通りだと言っている様だ。

 

『悠介。お前はこれから逆境に挑め(・・・・・)

真っすぐに突き出される拳。それを前に悠介は――――

 

『おう!!!』

己の拳をぶつけることで答える。

 

その日から悠介は、午前中のうちに一日の修行を終わらせ(・・・・・・・・・・)たのち、鍋島と本気の手合わせを持続してきた。極限の状態の中でもある一定の動きのキレを身体に適応させてきた。それゆえに自然と体力もついてきた。

――――それが少なくとも西での悠介の記憶

 

 

 

 

 

 

 

 

悠介の連続の拳を躱し、石田は大きく間合いを取る。

 

「ふん。多少は驚かされたが、それが貴様の「うるせぇよ」っ!!!??」

 

反撃にでようとした瞬間、速く踏み込んだ悠介の手が石田の顔を掴む。指で視界が覆われた中で僅かに見えるのは、悠介の鋭い瞳。

 

「うるせぇよ。勝ち戦でしか、笑えねぇ奴の軽口にこれ以上付き合いきれねぇんだよ」

 

「!!」

 

大きく腕を振るい悠介は石田を投げ飛ばす。勢いを殺しながら石田は容易に着地する。

 

「これ以上俺の……俺たち(・・・)の道の前に立つなよ――――三下」

 

着地した石田に悠介は挑むように宣言する。期待していた。今までの決闘から、十勇士(かれら)の将たる人間がどんなものかと。しかしふたを開ければこれだ。怒りがわかない訳がない。今までの決闘のすべてを否定された気分だ。だからこそ、告げる。

瞬間、石田の怒りが限界を超える。

 

「この出世街道を歩む俺が、三下だと――――っ!!!??」

 

「少なくとも逆境で笑えねぇ奴(・・・・・・・・)なんざ、三下で十分だ」

 

「いいだろう。この俺の真の力を見せてやろう!!」

 

「あ?」

 

怒りの言葉と共に石田の体が雷光に包まれる。光が晴れた場所には、黒髪が金髪に変わり纏う雰囲気そのものを変えた石田の姿。

 

「見ろ!!これこそが俺の奥義・光龍覚醒(こうりゅうかくせい)だ!!寿命すら削る大技だが、今の俺を倒せるのは武神のみ。先ほどの言葉を悔いて敗北してもらうぞ」

 

圧倒的な自信を秘めた言葉。されど、悠介は――――

 

「御託はいい。さっさと来い」

 

関係ないと言わんばかりに拳を構えた。




如何でしたでしょうか?
いよいよ次回で過去編はラストとなります

良かったら、感想をお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。