真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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風間ファミリーから少し主人公を離すと中々絡ませるキャラが少なくなる気がしてます。
いままあ、主要メンバーたちから離れるんだから仕方ないんだけど、ましてや幼馴染キャラは全員年上で絡ませずらい…難しいですね




悠介と噂話

朝、悠介は途中で合流した忠勝と川神学園に向かっていた。

 

「昨日の見回りは無事に終わったのか?」

 

「ああ。

お前たちのおかげでな。

今後は竜の野郎も、おかしな奴らが現れたら教えてくれるそうだ」

 

「ハハ。

まあ、竜のことだ。

また、俺らで殴り込み行こうぜっていう誘いだろうな」

 

「やっぱりそうだよ…全く」

 

二人は昨日のことをふまえながら歩いていく。そんな二人の後ろから与一が二人に追いつく。

 

「よう」

 

「珍しいな。

義経たちと一緒じゃないのか?」

 

「まあな。

お前たちと一緒に登校するって言ったら、義経の奴が大層喜んでな」

 

「逃げてきたのか」

 

「うるせぇ」

 

「ほどほどにしろよ。

最悪の場合、俺たちも巻き込まれそうだ」

 

交わされるのはどこにである男子高校生の会話。そこには武神を倒した男も、英雄のクローンも、家業の後継者もいない。その空気が、三人には心地いい。

三人はそのまま無駄話をしつつ学園に向かった。

 

 

「なあ、なんか見られていないか?」

 

「だよな」

 

「悠介、今度は何をやらかした」

 

「いや、何もしてねえが?

つか、俺が原因かよ」

 

「いや。でも明らかにお前を見ているよな」

 

その異変は学園の校門にたどり着いたあたりで起きた。周りの生徒たちが悠介たちを見ながらヒソヒソと何かを話している。

問答無用に自分が原因だと断定された悠介は不満を口にするが、与一の反論に口を閉ざす。

与一の言う通り、周りの生徒たちは明らかに悠介を見て何かをしゃべっている。また一部の男子たちからは燃えるような嫉妬の視線を感じる。

しかし悠介には本当に覚えがない。自分が燕の家に居候している話は、燕本人に頼み込む形で沈静化してもらったはずだ。

 

「…まあ、気にしてもしょうがねぇ。

そのうちなくなるだろ」

 

「まあ、お前がいいならいいが」

 

「まあ、がんばれ」

 

悠介はそういいながら、話を切り上げる。どこか考えないようにしている悠介の姿に、二人は何とも言えなくなり曖昧に言葉を濁す。

そうしてSクラスで与一と別れた二人はFクラスの扉を開ける。

 

「「くたばりやがれ「あ?」――――――ッ!!」」

 

扉を開けた瞬間、悠介の目の前には血涙を流しながら突撃しているガクト、ヨンパチら男たち。

一瞬呆けた悠介だったが、即座に身体が反応し迫りくる男たちを沈めて見せる。

 

「で、今度はなんだ?」

 

悠介は未だに血涙を流し続ける男たちを見下ろしながら、呆れながら襲撃の理由を問う。しかしガクト達からの答えは返ってこない。

この騒動は間違いなく、先ほどの異変とも関係している。どうするべきかと悠介が頭を悩ませていると、大和と一子から事情を聴いた忠勝が近づいてくる。

 

「おい、悠介」

 

「あん?何かわかったの?つか、なんだその顔」

 

忠勝が事態を聞いてくれたことを悟った悠介が嬉しそうな顔をするが、忠勝の見せる何とも言えない表所をしているのを見て嫌な予感をヒシヒシと感じる。

 

「落ち着いて聞けよ。

お前は今、葉桜先輩と付き合っていることになっている」

 

「はあ?」

 

告げられた内容の脈略のなさに、悠介は呆けた声を出すしかなかった。

 

 

その噂を聞いた瞬間、沸き上がったのは怒りだ。しかし冷静な部分(りせい)は、彼がそんなことをしているわけがないし、暇もなかったはずだと否定する。

 

――――どうするべきか…

 

90%以上の確率でガセネタだろう。しかし残りの数%で本当かもしれない。加えて、火のないところに煙は立たない。噂になるだけの何かがあの二人にある可能性がある。

今後(・・)の考えたとき、この根も葉もない噂がきっかけとなり、意識するかもしれない。そうなれば、間違いなく、強力なライバルの一角となりえる。

そのため、把握は必須。しかし同時に問題もある。

 

――――まだ、私が自主的に動いていると彼に思ってほしくないんだよね

 

本格的に彼に思いを伝えるタイミングではない。今は仕込みの準備段階、計画を組み立ってている最中だ。

そこで自分が積極的に噂を探りに来ているというのは少し厄介だ。

 

――――あくまでも彼に告白してもらうのがベスト。そのためには、こっちが積極的に恋愛面で手を出すのは、避けたいんだよね。付き合った後での主導権を握れなくなる可能性がある。

 

だが無視することもできない。どうするべきかと頭を悩ませていると、「ほう――」と明らかに怒気がこもった声が聞こえる。

声がしたほうを振り向けば、怒髪冠を衝くが如く、空間がゆがみ髪が逆立っている一人の友人の姿。

それを見て!が頭に灯る。

まずは、震えている弓子と南條を助け、彼女を作戦に組み込まねばと。

 

「モモちゃん、モモちゃん」

 

恋する武士娘松永燕は動き始めた。

 

 

「あ~、ゲン。

わりぃ。聞き間違えたみたいだ。

もう一度言ってくれ」

 

「はあ。お前と葉桜先輩が付き合っていることになっているらしい。

言っておくが、幻聴でもいい間違いでもないからな。

まあ、気持ちは分らんでもないが」

 

現実を受け入れきれない悠介に、忠勝が同情と共にもう一度原因を告げてやる。しばしの沈黙の後、漸く内容を受け入れた悠介はー。

 

「なんで?」

 

大きな?を浮かべる。

 

「一応聞くが、葉桜先輩とはそういう関係じゃないんだよな」

 

「おお。当たり前だ。

そもそも葉桜先輩とは、図書室で数度話した程度で、大した付き合いはねえよ」

 

「だとすれば、やっぱりガセネタか」

 

「めんどくせえな。

何処から吹き出しやがったんだ」

 

いい迷惑だと悠介がめんどくさそうな顔をする。そんな悠介の姿に忠勝もこの噂が根拠のないものだと理解する。

明らかに気だるげな空気になっている二人に待ったをかけたのは、信頼する軍師から噂を聞いていた一子だった。

 

「そうとも言い切れないみたいなのよ」

 

「あん?一子。

どういうことだ」

 

「なんでも実際に葉桜先輩から聞いたって人がいるらしいのよ」

 

「あ?

つまり、この噂の出所の原因は葉桜先輩本人ってことか?」

 

「なるほど。

噂の当事者の一人が言ったとなりゃ、信憑性は高いな。

…おい、直江。

今、一子が言っていたのは本当か?」

 

一子から伝えられた新たな情報に悠介はますます困惑し、忠勝は納得を見せる。

そしてより詳しくその情報を知ろうと大和に声をかける。

忠勝に声をかけられた大和はモロやスグルと共にこちらに近づいてくる。

 

「ああ。

実際にこの噂は、葉桜先輩に振られた生徒が発端らしい」

 

「だからみんな、この噂は本当なんだって思っているらしいよ」

 

「実際に学校の掲示板も上がっているぞ、ほらよ」

 

そういいながらスグルは、原因となっている学校の掲示板を悠介たちに見せる。

見せられた掲示板を見れば、そこには確かに葉桜先輩と相楽悠介は付き合ってるらしい。そのせいで告白が失敗したと書かれている。

 

「これはめんどくさい事になりそうだ」

 

掲示板を見た悠介は今回の噂が一筋縄ではいかないことを悟る。そのうえでどうするべきかと頭を回転させる。

 

「とりあえず、葉桜先輩に直接話を聞くのが早いか」

 

「だが、お前が行けば噂は益々信憑性を増して手が付けられなくなるぞ」

 

「そうなんだよな」

 

どうすべきかと悩んでいると悠介の携帯にメールが届く。届いたメールを見た悠介は、うげぇという表情をしながらもしかし確かな光明を得たという顔をする。

 

「お、悠介。

どうした?」

 

「何とも表現しがたい顔をしているぞ」

 

「いや、なに。

燕が動いてくれたみたいでな、放課後に葉桜先輩と会えるみたいだわ」

 

そういいながら悠介はたった今、燕から届いたメールを見せる。

そこには

 

『モモちゃんが、私というライバルがいながら色恋に現を抜かすとは何事だと暴れちゃって手が付けられないの。

何とかしたいので、今日の放課後、清楚ちゃんと学校の園芸場所で約束取り付けたから来るように!』

 

と書かれていた。

 

「とりあえず、一歩前進だ」

 

そう言いながら悠介は内容の前半部分に頬を引きつらせた。

 

 

天神館。

 

「貴様たち、一体何者だ?

此処を天神館と知ってのろうぜきか?」

 

「我々は梁山泊の一人、林冲。貴様が石田三郎だな。

貴様に話がある」

 

「なに?」

 

その暗雲は確実に川神の地へと迫っている。




もう二話ぐらいで本格的に話が進む予定です。
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