真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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新章が始まってから漸くの悠介の戦闘描写です
努力をもって強さの壁を越えた悠介の強さの鱗片を描ければと思っています

楽しんでいただければ、幸いです


悠介と梁山泊

間に合ったのは運が良かった。たまたま悠介は、忠勝から見回りの手伝いを頼まれていたこと、そして忠勝が提案したルートがたまたまマルギッテたちが襲撃された地点を通っていた点、そして悠介自身が胸騒ぎを覚え急ぎ足だったこと。

多くの偶然が重なり、悠介はぎりぎり間に合った。

いや―。

 

「…ゲン、与一。

三人を頼む」

 

「…ああ、分かった」

 

「おう」

 

―それでも悠介は間に合わなかった。

後ろで気を失っているマルギッテと亜巳を、後ろから駆け寄ってきた忠勝と与一に任せ、悠介は漸く、襲撃者たちと相対す。

攻撃を防がれた史進は、悠介が後ろを気にしている間に距離を取って、こちらの動きを見ている。

 

「史進!楊志!

気を抜くな」

 

「流石に分かってる」

 

「ああ、スゲェ圧だ。

流石は武神を倒した漢」

 

傍目には隙だらけの背中。彼女たちならば追撃も逃亡も簡単に取れるはずなのに動けない。

理由は語るまでもない。それらの行動を止めるだけの圧が悠介の背中ら発せられているからに他ならない。

 

「一応確認するが、お前らが梁山泊で間違いないよな」

 

だらっと腕を伸ばしながらも拳を握った悠介が鋭い目線で林冲たちへと問う。その目線が告げる嘘偽りは許さないと。

 

「確かに、私たちは梁山泊で相違ない」

 

重い圧の中、林冲が汗を流しながら悠介の問いに答える。

 

「そうかい。

なら聞くぞ?

何が目的だ?

名を上げることが目的なら、姿を見せず名前だけ残すのは変だよな。

挑発にしてもやり方が半端すぎるし、挑発する相手が見えねえ。

何が目的で、何をもって、お前らはここで暴れてやがる」

 

「――――答える義務はない」

 

「…そうだな。

まあいいか。その手の話は俺もさして興味がある訳じゃねえ。

騒動が日常のこの町じゃさして珍しい事じゃねぇし。

最後の質問だ。

なぜ、正式な形で挑まない」

 

悠介から問われた二度目の問いに、林冲たちはその意図が読めずに首をかしげる。

 

「どういう意味だ」

 

「いや、シンプルに疑問だ

相対してみれば、お前らが強いことはよくわかった。

なんでそれだけの強さを持っていながら、闇討ち紛いななことをしているのかが分からねえ

正当な手順で戦っても問題なねえだろ」

 

そうそれが悠介の疑問。実力のない者が名を上げるための苦肉の策だと最初は考えていたが、相対してそれはないと判断した。

ならばなぜ、闇討ち紛いなことをしているのか。それさえしなければ、川神学園でも悪い形で噂にならなかっただろう。

その問いには林冲たちの行いに対しての憎しみも怒りもない。純粋にそれだけの実力を持ちながら何故という問い。

そんな悠介の真意を理解した林冲はー。

 

「それにも答える義理はない」

 

「…そうか。

なら、問答は終わりだな!!」

 

「「「ッ―――!!!」」」

 

瞬間、悠介から放たれる明確な闘志。

言葉の通り、話し合いは終わり戦いが始まった。

 

 

宣戦の言葉なく始まった闘争。この時点で梁山泊の三人には逃走の手段は破棄した。

理由は単純ー。

 

「ふん!」

 

迫る脅威を前に史進が全力で武器である棒を叩きつける。

その一撃はマルギッテにさえ深手を合わせた一撃。それは狂いもなく迫ってくる悠介の顔面を捉えた。

渾身の手ごたえ、如何に武神を倒した漢とは言えダメージは免れないと史進が笑みを浮かべるが瞬間、ガシィと史進の顔を悠介の手が掴む。

 

「むぐっ」

 

悠介は加速した勢いをそのままに史進を地面に叩きつけようと、史進を片腕で持ち上げる。自分の身に何が起こるのかを察した史進が拘束を外そうと藻掻くが、悠介の腕はビクともしない。

このままでは史進が危ないと楊志が、史進を拘束としている右側から背を低く史進を壁として悠介へと迫る。

 

「ふっ!!」

 

鋭く十字を刻む斬撃が悠介の無防備なわき腹に刻まれる。確かな手ごたえに楊志は笑みを浮かべる。しかし、その笑みは史進同様に直後に硬直する。

直後、楊志の視界に映り込んだのは自身の攻撃など全く意に返さず、自分に向かって史進を叩きつけようとする姿。

先ほどの史進同様に、自分の攻撃を一切意に介さない動きに楊志もまた驚愕で膠着する。

自分が攻撃した場所は、鍛えることの難しいわき腹(ぶぶん)。どんな相手であろうと無反応はありえない。手ごたえもあった筈なのにそれなのに悠介は全く堪えた様子も見せない。

そしてその一種の硬直が致命的となる。

史進と楊志が悠介によって地面に叩きつけられる刹那、未来(さき)を視た最速の豹が動く。

 

「はあっ!!」

 

「ッ―――!」

 

繰り出されるは高速の槍。獲物を狩る豹が如く、獲物の喉元へ噛みつかんとする一撃を前に初めて悠介が反応する。

半身になって槍の切っ先を躱し、その反動を利用して史進を林冲へと放り投げ、楊志に向かって蹴りを放つ。

林冲は追撃よりも史進を庇い、林冲の横やりによって何とか意識を動かした楊志は悠介の蹴りを何とか青龍刀でガードするが勢いを殺すことが出来ずに吹き飛ばされる。

 

ー逃走を行うためには前提として悠介からその隙を作らないことには不可能だと悟ったのだ。

だが、僅か10秒にも満たない攻防で彼女たちは悟る。その隙を生み出すことの難易度を。

 

林冲は史進を受け止めたことで身動きが取れない。楊志も蹴りの衝撃が抜けずに動き出しが鈍い。

その隙を悠介は逃さない。

 

――――先に潰すなら、槍使い!!

 

攻防で三人の強さを肌で判断した悠介は、的確に一番の使い手である林冲を沈めるために動く。

身体を捻り、地面を強く蹴って、史進を受け止めて動けないでいる林冲へと駆ける。

 

「ッ!!

林冲――――ッ!!」

 

自分から離れていく悠介の姿に、その目的を察した楊志が林冲へ吠える。

仲間の声で、自分に迫る危機を察した林冲だったがー。

 

――――逃げられない

 

自分の上で痛みに動けない史進(なかま)に今の自分の状況を冷静に判断してしまった林冲は、冷静に自分の負けを悟ってしまう。

自分一人ではその結末を覆せない。

そう、自分一人なら…。

 

「烈火球―――!!」

 

「ッ!?」

 

悠介が林冲にあと数歩というところで迫った瞬間、突如として燃える炎の球が悠介に悠介に直撃する。

炎に包まれた悠介に、忠勝と与一が焦ったように声を上げる。

 

「武松!!助かった」

 

「林冲。間に合ってよかった」

 

林冲のもとへと駆けよって来たのは、林冲たちと同じ中華系統の服装を身にまとった赤髪の体術使い武松(ぶしょう)

頼りになる援軍に林冲も喜びの声をあげ、武松も間に合ったことに安堵する。しかしまだ闘争は終わっていない。

 

「武松!林冲!!」

 

「「ッ――――!!」」

 

「チぃ!!」

 

再び届いた楊志の叫びに、二人はほぼ無意識のうちに史進と共にその場から退避した瞬間、ゴン!と炎の中から振るわれた裏拳が通り過ぎた。

 

「まさか…」

 

「そんな武松の炎が直撃した筈なのに」

 

「マジか…」

 

「嘘だろ…」

 

その光景に梁山泊の四人は文字通り言葉を失う。そこには炎の直撃を受け、衣服のいたるところを焦がしてなお、無傷の悠介の姿。

タフさは武神との決闘を見て知っていたが、ここまでとは思えない。

目の前の存在の理不尽さに四人にいやな汗が流れる。

対して奇襲を躱された悠介も舌打ちをこぼしながら、思考をさらに加速させる。

 

――――やっぱり、あの感覚(・・・・)は本物か。

まあ、それはいい。それよりもだ。

三人組と聞いていたが、他にも仲間がいたのか…。

しかも四人ともかなりの使い手だ。仲間が他にもいる可能性だってある。

だとすれば、時間をかけるのはこっちが不利。

なら、一撃で決めるしかねえな。

 

瞬間、悠介の中で思考が定まる。その特異な握りを見た瞬間、四人に今まで以上に緊張が走る。

それは一撃をもって武神を沈めた奥義。

 

「行くぞ」

 

二重の極みが再び握られる。

 

 

その握りが構えられた瞬間、明確に場の空気が変わった。それは重さを感じないはずの大気に、確かな重み(じゅうあつ)を感じている。

呼吸をする事さえ、労力を感じてしまうのは錯覚かそれとも…。

明確な危機。しかし同時にそれはチャンスでもあった。

 

――――みんな…

 

――――分かっている。

 

――――ああ、私たちが何とかチャンスを作る

 

――――難しいがやってみよう

 

先を考え、彼女たちはここで賭けに出ることを決める。僅かな視線で互いの意思の疎通を行う。

その隙を悠介は逃さない。シィ!と鋭く息を吐き、四人に向かって鋭く踏み距離を詰めてくる。

 

「はあっ!!」

 

迫りくる悠介に対して、林冲はカウンター気味に鋭く槍を放つ。その林冲の突きに合わせ、残る三人が四方に散会する。

三人の動きを視界に収めながらも悠介は、目の前に迫る最大の槍の切っ先(きょうい)に注視する。

重心が前に乗った瞬間に放たれた突き。ゆえに回避は不可能。避けられない一撃を前に悠介は。

 

「だらぁ!!」

 

「なっ!?」

 

左拳をぶつけて槍を受け止めて見せる。余りの想定外の行動に林冲も驚きを隠せない。驚きからくる身体の硬直を逃さない。

左拳から血を流しながらも、それを意に返さず悠介は更に深く踏み込み。そこは悠介の間合い。

 

「させるかよ!」

 

「はっ!」

 

「林冲!!」

 

左右から史進の棒、武松の炎拳が悠介の身に叩き込まれる。挟み込む一撃、逸らすことのできない衝撃。

二人の攻撃が与える相乗効果の一撃に流石の悠介も動きが止まる。その隙に楊志が林冲を連れ、悠介の間合いから離脱する。

ドン!大きな踏み込み音が響く。

 

「なっ!」

 

「ッ!!」

 

ギチギチと身体が軋む音と共に悠介は、棒と炎拳からの拘束から無理やり脱し、離れようとする林冲たちへと迫る。

 

「逃がすか!!」

 

「楊志!!」

 

「うん!」

 

再び、豹と惡が激突する。しかし、それをただ見ているわけもいかない者たちがいる。九文龍の()が、天傷の炎が迫る。

四人の連携の前に、悠介はこのままでは、この攻防が何度も行われるだけだと悟る。

この連携を崩すためには…。

 

――――先に手足を潰す。

 

狙うは本人ではなく、武器破壊。そしてその相手は…。

 

「ッ。史進!!」

 

「なあッ!!」

 

未来(さき)を視た林冲が危機を知らせるとほぼ同時、悠介は身体を捻り方向を180度回転させ、後方から迫る史進に向けて突進する。

一切速度を落とさない動作。それを可能にする身体操作技術と体幹に敵ながら、林冲は感服の念を抱かずにはいられない。

しかし、同時に自分の悪手を悟る。待ち受ける形を取ってしまったため、足が完全に止まってしまっている。

駆けだしたとしても、二人の会敵に間に合わない。

後悔を抱きながら、林冲はその足に力を籠め地を蹴った。

 

自分が狙われていることを林冲の声で悟った史進は、驚きを感じながらも持ち前の好戦的な性格から笑みを浮かべ迎撃に動く。

 

「わっちを舐めるなよ!!」

 

「合わせる」

 

回転させ、勢いをつけた棒による一撃。更にそこへ武松の援護も合わさる。しかし、林冲は視た。

刹那の刹那。二人の技も連携もその全てを粉砕し、二つの魔星(ほし)を地に落とす、万物必壊(まんぶつひっかい)の拳を。

 

「二重の―――」

 

その拳が放たれる瞬間、悠介の体が硬直する。全身に糸の様に纏わりつくような鋭い殺気。反射的に悠介の動きが止まる。

 

――――新手!!?

 

――――好機!「史進」

 

「おうよ!!」

 

「チぃ!!」

 

地面に叩きつけられた炎が棒から放たれた風と威力を纏い、地を這って悠介に迫る。迫る脅威を前にしても悠介は問題ないとそのまま突っ込もうとするが、再びゾクッ!と言いようの知れない悪寒を感じる。

 

――――まずい!!

 

悪寒を回避するために打たされているそれを理解しながらも悠介は、その悪寒を払うように地面に向けて二重を放つ。

辺りに響くは、荘厳な打撃音。悠介の拳打の威力を証明するように、打撃面は塵と化し、破片が衝撃で宙を舞う。更にワンテンポ遅れてそれは襲来する。

宙を舞う破片が、塵へと変わる。それは総てを塵と化す破壊の拳撃の余波。

しかし、その余波だけでも敵を打倒するには十分。

その衝撃の余波が、史進と武松に迫る刹那、何かに捕らえられたように僅かに速度が遅くなる。その僅かな間に林冲の一手が間に合う。

 

「はぁあああああっ!!」

 

――――煙幕と刺突!!「チぃ!!」

 

煙幕と共に連続の突きが襲い掛かかる。攻撃の打ち終わり、しかも煙幕による視界不良と背後からの速度ある連撃とあり、流石に悠介も攻撃を避けることが出来ずに食らう。

数秒後、煙が晴れたのち、悠介の視界から梁山泊の四人は姿を消していた。

 

「…逃がしたか」

 

暫く辺りを見渡した悠介は、敵が逃れたことを悟り、悔しそうに顔を歪める。

戦いが終わったことを察した、忠勝と与一が悠介に元に駆け寄ってくる。

 

「悠介!!

無事か」

 

「ああ、問題ねえよ。

寧ろ、すまねえ。

あいつらを逃がした」

 

「それはいい。

兎に角、あの三人を運ぶのが先決だろ」

 

「与一の言う通りだ。

行くぞ」

 

「ああ、そうだな。

急ごう」

 

忠勝と与一の言葉を受けた悠介は、二人の後を追ってマルギッテたちを抱えて川神学園へと向かう。

川神学園に向かう最中、悠介はあることを考えていた。

 

―――あの新手まさかな…

 

悠介の中で何かが繋がり始めた。

 

 

無事に悠介から逃走できた林冲たちは四人は安全な場所で体を休めている。

 

「はぁ、はぁ…はぁ、ここまでくれば大丈夫だ」

 

「ふぅー。無事に逃げられたな」

 

「ヤバすぎるだろあれ。

なんだよ、頑丈さは!!

手ごたえがあったのに、わっちの攻撃が全く効いていないとか…化け物過ぎるだろ」

 

「死ぬかと思った――――でも」

 

各々が悠介から感じた圧から解放され、体力を回復させている。その中で楊志は、やり切った笑みを浮かべている。

その笑みを見た林冲たちは嬉しそうな顔を見せる。

 

「楊志!!やったのか!!」

 

「やったな!!」

 

「苦労した甲斐があったもんだぜ」

 

「フフフ――――二重の極みは完璧に視た」

 

そう。青い獣は、仲間を助けることもせず、ただあの絶技を視ていた。それこそが、梁山泊の四人が悠介と戦っていた大きな理由。

彼女たちは見事賭けに勝ったのだ。

 

「…おじさんもありがとうね」

 

林冲の下半身に飛び込む瞬間、楊志が小さく呟いた。

 

梁山泊の四人が体力を回復させその場を離れると、物陰から一人の老執事が姿を見せた。

 

「ふふ。

いえいえ。感謝されることはなにも。

簡単なことでございます」

 

 

 

その連絡を受け、竜兵は慌てて保健室に駆け込んだ。

 

「亜巳姉!!天!!」

 

「来たか」

 

「兄貴!!二人は!!」

 

「落ち着け、竜。

心配しなくてもそこまで傷は深くねぇ。

暫くは動けねえだろうが、意識はじきに戻るだろうだとよ。

今は、ゲンと与一が見てくれてる」

 

慌てていた竜兵だが、直ぐそばにいた悠介の言葉を聞いて冷静さを取り戻す。

 

「そうか、よかったぜ」

 

「それより悪いな。

下手人、仕留め損ねた」

 

「はっ!

それは願ったり叶ったりだ!!

俺たち(・・・)の手でケジメが付けられる!!

兄貴!!二人のこと、任せたぜ!!」

 

それだけ告げると竜兵はその場を後にする。慌ただしい竜兵に悠介は苦笑いをこぼしながらもらしいなと笑う。

 

「おい、悠介。

いまのでかい声は…」

 

「ご名答。

竜の奴だ。

あの二人のことは任せたとさ」

 

「敵討ちか?」

 

「正解」

 

「らしい奴だ」

 

「全くだ」

 

悠介は遮られたカーテンから顔を出した忠勝と与一に先ほどのやり取りを告げる。

それを聞いた二人は、あいつらしいなと悠介と同じ反応を見せる。

 

「ひとまず。

敵の姿が分かったのは大きいな」

 

「ああ。

ジジイたちに伝えれば捜索網が出来る」

 

「そうなれば見つかるのも時間の問題という訳だ」

 

「そうだ。

その後は倒して、ケジメをつけさせれば終わりだ」

 

三人は今後について話し合う。すると与一の携帯にコール音が鳴り響く。

与一は二人に了承を得てから携帯を見ると顔をしかめる。

 

「あん、どうしたんだ?」

 

「悪い。

九鬼からの呼び出しだ。

一旦、極東支部(いえ)に戻らねぇと」

 

「そうか。

もしかたら九鬼が何か掴んだのかも知れねえな」

 

「なら、ここは俺たちに任せて戻りな」

 

「すまねぇ」

 

そういって与一は二人に謝罪をして九鬼へと戻るためにその場を後にする。

 

「悠介。

何か気になることでもあるのか?」

 

先ほどから何処か何かを考える様に黙っている悠介に忠勝が問うが、肝心の悠介は、何かすっきりしないんだよとぼやく。

その言葉がさらに気になった忠勝だが、続けて部屋に入ってきたクリスによって、その問答はそこで終わった。

 

そしてその時を境に、事が起きるまで与一は二人の前に姿を見せることはなかった。

 

 

悠介たちと別れた与一も悠介に違和感を抱いていた。

 

「悠介の奴…一体どうしたんだ?」

 

首をかしげる与一に聞きなれた声が届く。

 

「与一君!!

九鬼に向かっているんだよね?

一緒に行こう」

 

「先輩。

ええ、問題ないですよ」

 

「それにしても緊急招集ってやっぱり、今回の件の事かな?」

 

「十中八九そうでしょうね。

それにしても、呼び出す数字はもう少し何とかならなかったのかと思いますよ」

 

「どうして?」

 

「だって、66ってあと一つ6が多ければ悪魔の数字ですよ」

 

「…確かに不気味だね」

 

そんな他愛もない会話をしながら二人は極東本部へと歩を進めた。




次回から一気に物語が動きます
風間ファミリーたちや九鬼家とのとかかわりの薄い悠介だとこんな感じで、外野にいる感じがすごいですが、次からいよいよ渦中に入っていきます
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