その星に手をのばして   作:志文

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お久しぶりです。

今回はちゃんと書けた気がします。

お手柔らかにお願いします。




妊娠⁉

 

『妊娠しちゃった☆』

その連絡を受けた俺は、真っ先にアイの家に行った。ここに来るまでの記憶はないが、そんなことを気にしている余裕はどこにもない。

久々に会ったアイは、俺を見て、嬉しげに顔を綻ばせる。それを見た俺は落ち着きを取り戻し、彼女を見つめる。相変わらず可愛いなあ。。

「久しぶり!」

「久しぶり、会いたかったよ」

「私も!」

お互い仕事で忙しく、学校もろくに行けていないため、彼女と会える時間はなかなか取れなかった。その寂しさを埋めるように、俺たちは抱きしめあった。貴重な時間をかみしめ、どちらともなく体を離し、俺は靴を脱いでそろえる。

「話、聞いてもいいかな?」

「うん、とりあえず中入ろっか」

「うん」

部屋に入り、二人で並んで座る。アイは幸せそうに、体を俺に寄せてくる。

「妊娠したってほんと?」

「うん!検査薬は陽性だったよ?」

「体は大丈夫か?しんどくない?なんか買ってこようか?」

「も〜、心配しすぎだよ。ちょっとしんどい時もあるけど、今は大丈夫だよ」

「そっか、良かった。何かあったらすぐ教えてくれよ?社長にはもう話した?」

「まだだよー、一番に琥珀に伝えたかったんだ!でもさ、——琥珀は、下ろして欲しい?」

小さく首を傾げながらこちらを見上げるアイの瞳には不安が浮かんでいた。

「こんなに早く父親になるとは思ってなかったけど、早いか遅いかの違いだよ。俺たち二人の間にできた愛の結晶だ。嬉しくないはずないだろ?アイの年齢だとかなり体に負担が大きくて大変かもしれないけど、俺は、産んでくれたら嬉しいよ。もちろん健康優先だけど、宿ってくれた子供をアイと二人でしっかり育てていきたい。まだ学生だけど俺たちはちゃんと収入もあるし、アイが動けない間も俺がしっかり稼いでくるから、何も心配しないでくれよな?」

俺は思っていることを打ち明けた。妊娠して一番大変なのはアイだろう。不安にさせたくなくて、しっかり断言する。

「嬉しい!下ろしたいか聞きはしたけど、私は絶対に産みたかったから、本当に嬉しいよ!まだお母さんになるって実感はないけど、きっとだんだんわかるようになっていくんだろうなあ……」

肩に乗せられた頭を撫でていると、感慨深そうな声が漏れた。

父親になる。まだ車の免許すらとれない年齢でそうなるとは、去年の俺は絶対に思っていなかっただろう。彼女との距離がこんなに縮まるとも思っていなかっただろう。

しかし、現実はここにある。夢で見た彼女の危険はひとまず去り、子供が出来た。これからまた大変になるだろうが、俺たち二人に不安はない。

「一緒に幸せになろうな」

「うん!」

 

 

 

 

 

「とりあえず、社長に連絡しようか……病院も探さないとだし、俺の親にも伝えるよ」

「そうだね!じゃあ社長には私から電話入れるね?」

「ああ、俺は廊下で母さんに連絡してくるよ。アイ」

「うん、分かった。あー……怒られるだろうなあ、怖い怖い」

お互いの声が電話に入ってしまわないように俺は廊下に出てアイから距離を取り、母親に連絡する。

緊張しながら、着信ボタンを押すと、すぐに母は出てくれた。

「もしもし、母さん?今大丈夫?」

「はいはい、急にどうしたの?今は家で父さんと琥珀の出た映画見てるのよー?」

「そっか、急にごめん。本当に突然なんだけど、俺、子供が出来た」

『ああ、そう。おめでと—— ってはあ!?子供⁉』

「うん。アイが検査薬使ったら陽性だったみたい」

「冗談めかして早く孫が欲しいとは言ったけど、こんなに早いとはね……産む気なのよね?」

確信を持った問いかけに驚く。

「うん。なんで分かったんだ?」

「そりゃああんたもアイちゃんも長いこと見てきたんだもの、わかるわよ。あの子が家族に飢えてたのもわかってたから、二人の間に子供ができるのも早いだろうと思ってたけどね。そっか……それにしても、この年でおばあちゃんかあ~」

受け入れてはいるものの衝撃を受けている様子のかあさん。これからたくさん迷惑をかけることに申し訳ない気持ちになる。

「そっか」

「とりあえず早いうちに二人で家に来なさい。今日ならお父さんも家にいるし、この後連れて来たら?」

「社長とも話さないといけないから、いけそうなら連れていくよ、じゃあまた」

そう言って電話を切ろうとすると、「お父さん、あ、もうおじいちゃんになるのね」「まじか⁉まじなのか⁉あいつがそんなことになるとはなあ………おい母さん、とりあえず名前考えよう!」という両親の声が聞こえてきた。

「ありがとう」

それだけ伝えて連絡を終え、アイのもとに戻ろうと足を動かした。

 

 

 

「戻ったよ、社長はどんな感じ?」

ソファにちょこんと座る彼女はすでに電話を終えているようだった。

「あ、おかえり……社長、すぐにこっち来るって言ってたよ?」

「そっか、めちゃくちゃ怒られるだろうな」

「かもね?電話でもすんごい声だったよ」

そんな風に話しているとすぐにインターホンが鳴る。のぞき穴を確認すると、社長だったため、鍵を開けて出迎える。

「やっぱりお前か!」

怒鳴る社長を落ち着かせながら部屋に座らせ、会話を続ける。随分急いできたのか息を切らした様子の社長は顔を真っ赤にしていた。

「で、本当に妊娠してるのか?」

「うん!ばっちり陽性でした!」

「ああああああああ!なにがばっちり陽性だ!こんなことバレたらうちの事務所もお前らもおしまいだ!一六歳で妊娠だぞ⁉体にも負担がかかるし、危険も大きいんだ、何より、アイドル活動もどうするんだ⁉」

真っ赤になったり真っ青になったり表情が忙しい社長。その様子から、会社のことだけでなくアイのことを真剣に考えていることが分かる。なんだかんだこの二人が親子になりつつあることに対して感慨深いなあと考えていると、社長の雷がこちらに飛んできた。

「お前も何考えてんだ!付き合ってるのは聞いてたが、妊娠するなんて聞いてないぞ!どうするつもりなんだ!」

「すいません。こうなってしまったのは予想外ですが、俺たちもちゃんと考えてるつもりです。バレたら社長や社員さんたちにも影響が出るかもしれないのも、申し訳なく思ってます。でも……」

そこまで俺が言うと、アイが被せて言った。

「私は産むよ。アイドルもやめずに、母親にもなる。リスクがあるのも分かってるけど、絶対産むつもり。休止することになるだろうし、みんなにも迷惑かけちゃうけど、これだけは絶対に譲らないよ」

瞳を強く輝かせるアイを見て、社長は諦めたようにため息をつく。

「はあ……分かったよ。俺の負けだ。協力してやる。でも言いたいことは山ほどあるんだからな!まず!親になるってのはな!人の命を……」

社長の雷はまだまだ止まりそうにない。

 

 

 

それから一時間ほど社長の怒りを浴びて、事の重大さを再認識したところで、話が進む。

「はあ……とりあえず宮崎の病院に行くぞ、そこには伝手がある。そっちなら田舎でアイのことを知ってる人も少ないだろうし、ここより確実にバレるリスクも小さくなるからな」

「はーい」

「分かりました、でもその前に二人で俺の両親のところに行ってきてもいいですか?父さんも今家にいるらしくて、できるならこの機会に連れてこいって言われてるんです」

話が落ち着き、ひと段落したところで先ほど母親としていた電話の内容について切り出す。

「ああ。流石に病院へも今日連れていくみたいなことはできないし、お前らが今やってる仕事の問題もある。今すぐに連れてはいけないからな、行ってこい」

「せっかく最近仲良くやれてるのに、グループのみんなには私のせいで迷惑かけちゃって申し訳ないなあ」

「だったらこんな大問題起こすな!まだまだ言いたいことがあるんだぞ!」

「ごめんなさーい」

悪びれる様子のないアイに、社長の雷がもう一度落ちそうなところで、、アイの手を取り連れ出して、俺の家に向かう。

「はは、じゃあ社長、また後で!」

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「お邪魔します!」

勝手知ったる我が家へ到着すると、両親二人が笑顔で出迎えてくれた。

「おかえり、アイちゃんもいらっしゃい」

「おかえり、久しぶりだね、アイちゃん」

「お久しぶりです!」

幼馴染で昔からよく家に来ていたため、アイは忙しい我が父とも面識はあり、娘が欲しかった母に娘のように溺愛されている。両親はすこし緊張した様子の俺たちを見て微笑んでいた。

挨拶を済ませ、四人でリビングに座る。自分で入れたお茶を口に含み、緊張をごまかし、口を開く。

「さっき電話でも言ったけど、父さん、母さん。俺たち、子供ができたんだ。俺たち二人とも産みたいと思ってる」

「二人とも、本気なんだな?」

「「はい」」

俺たちは同時に頷く。

「この年で妊娠が、とか今後どうする気だ、とか色々言いたいことはあるが……アイちゃん、体は大丈夫か?」

「はい、今のところ大丈夫です」

「そうか、知っているとは思うが出産は命がけだ。命の危険もある。それでも産むんだね?」

「はい、絶対に産みたいと思ってます」

父さんはそれを聞いて数秒黙り込んだ後、また口を開く。

「琥珀。アイちゃん。親になるってのは二人が思ってるより大変だ。子供の世話は本当に難しいし、その子の命の責任を持つことになる。中途半端な気持ちで親になることは絶対にダメだ。そのことは分かってるか?」

父さんは真剣な顔で尋ねてくる。

「……はい!何があってもこの子達を幸せにします!二人で一生懸命育てて、お父さんとお母さんみたいな家族になります!」

「俺も分かってるよ。まだ親になるって実感は薄いけど、アイと一緒に責任もってちゃんと育てていくつもりだ。何があっても放り出さない覚悟はできてる」

 

俺たちの意志を伝えると、両親は見つめあい、やがて安心したような表情で何かを理解しあい、こちらに向き直る。

「分かったよ。そこまでの覚悟があるなら応援しよう。俺たちもしっかりサポートする」

「アイちゃん、何でも相談してね?妊娠って本当に体に大きな負担がかかるのに、まだその年なんだもの。体には気を付けるのよ?」

両親は俺たちを認めてくれた。その事実にほっとしたアイは感極まった様子で俺の腕に抱きついてくる。

「良かった……もし追い出されたりしたらどうしようって思ってたよ」

「娘同然のアイちゃんに、そんなことするわけないでしょ?」

「お義母さん!」

アイが母さんに抱きつきにいった。母さんもそれを受け入れ、仲よく抱きしめあう姿は本物の母娘のようだ。

「にしても、この年でおじいちゃんになるとはなあ。嬉しい気持ちと複雑な気持ちで変な感じだ」

「そうねえ、私ももうすぐおばあちゃんって呼ばれるのかしら?」

本題を話し終えた後、俺たち四人は和やかな時間を過ごした。

 

 

 

 

  

「やっぱり紗枝の言ってた通りになったな」

「ええ、アイちゃんは家族を欲してたもの。琥珀と付き合うことになって、遠くないうちに子供ができるんだろうなあって思ってたけど、流石に私もこんなに早いとは思ってなかったわ。私たちもだいぶ早かったし、血筋なのかしら……?」

「俺たちも否定できる立場じゃないからなあ……するつもりもなかったけど。とりあえず、しっかりサポートしていこうか」

「もちろんよ、それにしてもあの子たちももう親になる年なのねえ……感慨深いわあ」

「まだ40にもなってないんだけどなあ……はは」

 

 

 

 




おかんとおとんも芸能界にいたので妊娠はけっこう騒ぎになりました。
世間にも普通にバレました。割とたたかれましたが、おとんは逆にそれを利用してさらに羽ばたき、おかんは子育てに集中するために芸能活動から撤退しました。
おかんはずっと二人を見てきたので、いろいろ察しておとんに相談してました。二人ともめちゃくちゃ金持ってるから、アイが無事に出産できるかということだけが唯一の不安。虐待の際もアイを引き取ろうと思ってたが、世話になりすぎてることからアイから遠慮されていたのでここで存分に甘やかすつもり。

つまりお前らは幸せにしかなれないんだよ!

次回、超絶あまあま展開予定。これを書くためにこの物語を書いたといったら過言。

水曜日中に書くつもりですがどうなるかはわかりません。お手柔らかにお願いします。
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