7日ほど前
「ぐっーー」
「注意が、刀に行きすぎだよ。」
訓練場にさす夕陽の中、乙骨と明星は手合わせをしていた。木刀を両手で掴んでいた明星の脇腹に乙骨の拳が入る。
「明星くんは虎杖くん達とそんなに遜色ないんだよ。あとは、
「考え方・・・術式の伸ばし方ってことですか?」
「まぁ、半分合ってるよ。けど半分間違いかな。明星くんの術式は君が思ってるより強いよ?でも現状の君は、
「・・・栗林たちのことですか?」
「いや、アイさんのことだよ。」
恐らく自分は、唖然とした、という顔をしているだろう。
「でも彼女は一級で入学してたじゃないですか。守ってもらう必要なんてーー「あるよ。」
乙骨の顔が寸前まで迫り、ドキリとする。普段はナヨナヨとした優しい眼差しなのだが、凛として奥が見えない眼に釘付けになる。
「君が思ってるよりも、彼女の精神は不安定なんだよね。転生した上に呪術師になるなんて、普通の人間だったら考えられないよ。実際、彼女は前世の自分の子供に会うのを恐れている。『自分が嫌われてるんじゃないか。』『自分のせいで危険な目に遭うんじゃないか。』彼女は
「だから、君が彼女を
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・・・走馬灯か。
この出血量から推定するに、
死ぬまであと2、3分ってとこだな。
すみません、アイさん。
貴女との約束果たせそうにないです。
『はじめまして!虎杖アイです!!』
初めて会った時から、彼女の目や仕草から目を離せなかった。
『あ"ーーん、必修科目全然わかんない!!』
バカっぽくて抜けたところも面白かった。
『何で、明星くん私が嘘ついてるって分かるの?』
嘘をつくとき、彼女の中に怯えがあった。
彼女から怯えを無くしたかった。
彼女を守りたい。
母が目の前で死んでしまった16年前、それから僕はもう愛する人を失いたくないと心に決めた。
何故今も彼女のことを考えているのか。
何故彼女から目を離せないのか。
何故彼女を守りたいと思ったのか。
あぁ、単純明快な答えだ。僕は、彼女のことが・・・
・・・好きなんだ。
だから、何としても生き延びる。
この想いを、呪いに変えろ。
「まだーーーー死ねるかよ・・・」
『・・・・ぁ?』
明星は両手で印を作る。
それは与願印の構えに左手を乗せた印相。
それは、呪術の極地。
そこに到達した者は、他人とは違う世界に立つ。
「領域ーー展開ッ!!」
「
黄金の正方形、黄金比を模ったそれでみるみるうちに構築されていく結界。明星を中心に構築されていく金色の蓮の花、そしてそれを下から支えるのは黄金の千手観音の手。
「ーーー帰るんだ!!アイの笑顔を見るために!!!」
呪霊は唖然とした。自分の呪力が目の前の少年の呪力となっていく。そして体がみるみる黄金に変わっていく。不味い、このままでは祓われてしまう。
『損、損、損ーーーー斬。」
瞬きする合間に距離を詰め少年の首に刀を振るう。一度まで半分まで斬った。後半分も斬れ・・・なかった。
「ずっと考えてたよ。その漢字の並び順、恐らくだが文字を唱えるとそのぶん居合の速度が速くなるんだろ。あ、が1番遅くてそれ以降は1段ずつ速くなっていく。」
動けない。手足が完全に黄金になった。胴体ももう半分まで黄金になっている。
「この領域、おまえの生得領域を外殻として構築したんだ。まだ未完成だし、相手にもよるかもしれないが、おまえの姿が完全に黄金になるまであと3秒ってところだ。」
「・・・ま、もう聞いていないか。」
生得領域が消滅し、明星の領域が消えると周囲は暗くなった。
「傷は・・・もう止血したから問題はない、か・・・疲れた。」
明星はそのまま倒れ込みながら、意識の束を手放した。
◻️◼️◻️◼️◻️◼️
「へぇ?特級を祓ったんだ。ますます命の価値が重くなったね。」
フードを被った人影が倒れた明星に近づいてくる。
「御三家の血が流れ、領域も会得した。まさに
・・・なぁ?『
『そうだな。殺すのかい?ソイツ。』
「あぁ、もう瀕死だしね。死んでもらーーー」
ドゴォォォン!!!!
あたりに湧き立つ白煙、その中を突っ切った影が男の腕を斬り飛ばした。
「おいお前、私の
禪院真希
天与呪縛によってその身から全ての呪力を失い、その代わりに天与の肉体を手に入れた、現代の天与の暴君。
『・・・勝ち目はなさそうだ。逃げるぞ。』
「ん?あぁ〜お前
「・・・すぐになると思いますが、また会いましょう。」
男の背に蝙蝠の翼が生え、目にも止まらぬ早さで飛び去った。真希はその姿をじっと見つめていたが、すぐに明星の元に駆け寄った。
「とうとう呪術師と会うことになるとはね。」
『おいおい俺は戦うとは言ってないからな?
「あぁ、将来有望な呪術師の卵を殺す。どんな罪悪感が得られるかな?」