愛と呪いは小説より奇なり   作:ランハナカマキリ

12 / 32
第六話

 

7日ほど前

 

「ぐっーー」

 

「注意が、刀に行きすぎだよ。」

 

訓練場にさす夕陽の中、乙骨と明星は手合わせをしていた。木刀を両手で掴んでいた明星の脇腹に乙骨の拳が入る。

 

「明星くんは虎杖くん達とそんなに遜色ないんだよ。あとは、()()()()()()()()()()だと思うよ。」

 

「考え方・・・術式の伸ばし方ってことですか?」

 

「まぁ、半分合ってるよ。けど半分間違いかな。明星くんの術式は君が思ってるより強いよ?でも現状の君は、()()という存在だけに固執しすぎてる。自分のためじゃなくて誰かのために強くなることも必要だよ。」

 

「・・・栗林たちのことですか?」

 

「いや、アイさんのことだよ。」

 

恐らく自分は、唖然とした、という顔をしているだろう。

 

「でも彼女は一級で入学してたじゃないですか。守ってもらう必要なんてーー「あるよ。」

 

乙骨の顔が寸前まで迫り、ドキリとする。普段はナヨナヨとした優しい眼差しなのだが、凛として奥が見えない眼に釘付けになる。

 

「君が思ってるよりも、彼女の精神は不安定なんだよね。転生した上に呪術師になるなんて、普通の人間だったら考えられないよ。実際、彼女は前世の自分の子供に会うのを恐れている。『自分が嫌われてるんじゃないか。』『自分のせいで危険な目に遭うんじゃないか。』彼女は()()()()()()()()()呪術師になったけど、()()()()()()()()()()()()。」

 

 

「だから、君が彼女を支える(呪う)んだよ。僕が里香ちゃんを愛した(呪った)ようにね。」

 

 

 

◼️◻️◼️◻️◼️◻️

 

 

・・・走馬灯か。

 

この出血量から推定するに、

 

死ぬまであと2、3分ってとこだな。

 

すみません、アイさん。

 

 

貴女との約束果たせそうにないです。

 

 

『はじめまして!虎杖アイです!!』

 

初めて会った時から、彼女の目や仕草から目を離せなかった。

 

『あ"ーーん、必修科目全然わかんない!!』

 

バカっぽくて抜けたところも面白かった。

 

『何で、明星くん私が嘘ついてるって分かるの?』

 

嘘をつくとき、彼女の中に怯えがあった。

 

彼女から怯えを無くしたかった。

 

彼女を守りたい。

 

 

 

母が目の前で死んでしまった16年前、それから僕はもう愛する人を失いたくないと心に決めた。

 

何故今も彼女のことを考えているのか。

何故彼女から目を離せないのか。

何故彼女を守りたいと思ったのか。

 

あぁ、単純明快な答えだ。僕は、彼女のことが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・好きなんだ。

 

だから、何としても生き延びる。

この想いを、呪いに変えろ。

 

「まだーーーー死ねるかよ・・・」

 

『・・・・ぁ?』

 

明星は両手で印を作る。

 

それは与願印の構えに左手を乗せた印相。

 

それは、呪術の極地。

そこに到達した者は、他人とは違う世界に立つ。

 

「領域ーー展開ッ!!」

 

 

 

煌金明星堂(おうごんみょうじょうどう)!!」

 

黄金の正方形、黄金比を模ったそれでみるみるうちに構築されていく結界。明星を中心に構築されていく金色の蓮の花、そしてそれを下から支えるのは黄金の千手観音の手。

 

「ーーー帰るんだ!!アイの笑顔を見るために!!!」

 

呪霊は唖然とした。自分の呪力が目の前の少年の呪力となっていく。そして体がみるみる黄金に変わっていく。不味い、このままでは祓われてしまう。

 

『損、損、損ーーーー斬。」

 

瞬きする合間に距離を詰め少年の首に刀を振るう。一度まで半分まで斬った。後半分も斬れ・・・なかった。

 

「ずっと考えてたよ。その漢字の並び順、恐らくだが文字を唱えるとそのぶん居合の速度が速くなるんだろ。あ、が1番遅くてそれ以降は1段ずつ速くなっていく。」

 

動けない。手足が完全に黄金になった。胴体ももう半分まで黄金になっている。

 

「この領域、おまえの生得領域を外殻として構築したんだ。まだ未完成だし、相手にもよるかもしれないが、おまえの姿が完全に黄金になるまであと3秒ってところだ。」

 

「・・・ま、もう聞いていないか。」

 

 

生得領域が消滅し、明星の領域が消えると周囲は暗くなった。

 

「傷は・・・もう止血したから問題はない、か・・・疲れた。」

 

明星はそのまま倒れ込みながら、意識の束を手放した。

 

◻️◼️◻️◼️◻️◼️

 

「へぇ?特級を祓ったんだ。ますます命の価値が重くなったね。」

 

フードを被った人影が倒れた明星に近づいてくる。

 

「御三家の血が流れ、領域も会得した。まさに()()()。その命の価値はものすごく重いんだろうね。

・・・なぁ?『()()』?」

 

『そうだな。殺すのかい?ソイツ。』

 

「あぁ、もう瀕死だしね。死んでもらーーー」

 

ドゴォォォン!!!!

 

あたりに湧き立つ白煙、その中を突っ切った影が男の腕を斬り飛ばした。

 

「おいお前、私の()()の教え子に何してんだ?」

 

禪院真希

 

天与呪縛によってその身から全ての呪力を失い、その代わりに天与の肉体を手に入れた、現代の天与の暴君。

 

『・・・勝ち目はなさそうだ。逃げるぞ。』

 

「ん?あぁ〜お前()()してんのか?なるほど、天使と同じだな。」

 

「・・・すぐになると思いますが、また会いましょう。」

 

男の背に蝙蝠の翼が生え、目にも止まらぬ早さで飛び去った。真希はその姿をじっと見つめていたが、すぐに明星の元に駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうとう呪術師と会うことになるとはね。」

 

『おいおい俺は戦うとは言ってないからな?()()()?』

 

「あぁ、将来有望な呪術師の卵を殺す。どんな罪悪感が得られるかな?」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。