愛と呪いは小説より奇なり   作:ランハナカマキリ

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この裏話に出てくる家入黎人は『愛と呪いは紙一重』に出てくる主人公と同一人物です。

話は明星が領域を会得してから2日後から始まります。


裏一話

都内、街外れの墓場。墓石がずらりと並んだその場所には人影があった。

 

「お父さん、お母さん・・・みんな元気にしてるよ。」

 

今この世にいない、亡くなった父と母に向けて、彼は墓参りの花を墓石に捧げる。

 

「・・・明星の奴に彼女ができたんだとよ。なんか寂しくなるな。」

 

模様が描かれた黒い仮面で顔の上半分を隠し、高専講師の服装に身を包む長身。そして森羅万象を表す赤の証印が施された漆黒の羽織。首に巻いた赤黒のマフラー。そして、腰まで伸びた黒髪を後ろでまとめている。

 

「じゃあね。次は美夜と明星も連れてくる。」

 

 

彼の名は『家入黎人』

日本にたった4人しかいない特級術師の1人だ。実力はNo.4と自称しているが、3年前のある一件で、No.3の座に登り詰めた。乙骨憂太に次ぐ天才である。

 

黎人は2日前まで珍しい呪具や呪物の回収のために中国にいた。日本に帰ってきたのは数ヶ月ぶりだ。彼は19歳と、まだ未成年だが京都の呪術高専1年の担任をしている。理由は特級が西にもいた方がいいと、同じく特級の九十九に言われたからだ。

 

その彼が何故東京にいるのか?

 

理由は生と死の境目にいる弟の顔を見に来たからだ。弟の彼女とやらには一度会っている。中国任務中に会いに来た彼女。黒と紫の混じった髪と星を宿した瞳。何で弟が惚れたのかは少しわかった。(ちなみに黎人はアイドルのアイと弟嫁のアイが同一人物だということに気づいていない。)

 

明星は、一級と特級呪霊との連戦、喉を掻っ切られた重傷、そして領域展開の会得。家入硝子(母さん)の反転術式が無ければ死んでいたという。だから出張先の中国から急いで帰ってきたのだ。

 

それから高羽史彦(たかばふみひこ)の応援のおかげで肉体の回復が異常なまでに進んだとのことだ。

 

〜回想〜

 

ガラッ!!

 

『ーーーッ!明星!!・・・』

 

『ガンバレルーーーヤァァァァ!!!!』

 

『・・・・』

 

パタン!

 

何でアイツは逮捕されないんだろう。

 

◻️◼️◻️◼️◻️◼️

 

黎人は途中、1人の少年と出会った。

 

「ん?」

 

さらさらの金髪に瞳に星が浮かんだ青い左目。

 

(星野愛久愛海(アクアマリン)だったか?汀が今、護衛の任務で参入している高校の1年。確か吉野が期待できる役者だって言ってたな・・・いや、それより。)

 

黎人は彼に顔を近づけ、何かを仮面で隠れた目で覗き込むようにさらに顔を近づけた。

 

「すみません。ちょっと、やめてください。」

 

「お前、()()()()()()。呪い、()()()()()()()。」

 

「・・・は?呪い?」

 

「これ、見える?」

 

掲げた右手、その右手には蠅頭が握られていた。人の顔に指が大量に生えた気持ち悪いもの。正直手に持つのもいやだ。

 

「何の、ことですか?」

 

「・・・へぇ?嘘が下手だな。」

 

万象操術(コスモ・コントロール)握空(カオス)

 

空間が裂け、そのエネルギーが呪霊を砕いた。アクアの目に明らかな動揺が生じた。黎人は確信した。彼は、"こっち側"だ。

 

「俺は家入黎人、呪術高専に属する呪術師の1人なんだ。お前、呪術師にならないーーーって無理か。お前役者だろ?同期がお前のファンでさ。」

 

「呪術ーーーじゃあ、さっきの奴は?」

 

「呪霊だ。人の恥辱や憎しみから生まれる負の感情が具現化したものだ。偶に人が死んだ後に怨霊や亡霊になったりすることがあるけど、基本的に非術師から呪霊は生み出される・・・そして俺がさっき使ったのは術式。人それぞれに刻まれた術、ゲームとかのキャラの固有技みたいなイメージでいい。」

 

「・・・その、術式は俺にもあるんですか?」

 

「あるよ・・・俺は特殊な"眼"を待っててな。お前の術式は、その目の星が光ることで周囲の呪霊や負の感情を止めたり打ち消したりできる。人の動きとか術式も止める、打ち消すこともできると思う。」

 

アクアの目が黒く光った。これは、喜びか?てっきり戸惑うと思ってたんだが・・・いや、もしかすると。

 

「黎人さん。俺にも、呪術を教えてくれませんか?」

 

もしかすると・・・じゃないな。こりゃやばいな。

 

「・・・教えない。」

 

「は?何でですか!」

 

「お前・・・呪術を()()に使う気だろ?「ーーっ!!?」悪いけど、そんなことしたら呪詛師認定される。最悪の場合、お前死刑な。」

 

彼が何を背負っているのかは分からないが、彼が背負いそして進もうとしている道は間違いなく彼自身を破滅させる。黎人は、力を持つ術師として若人を導く大人としての言葉をかけた。

 

「・・・・・何で、何で邪魔するんですか。せっかく、力があるって・・・アイの仇を取れるのに。」

 

「・・・お前の、お母さんか。」

 

近くにあった墓石を見る、『星野家』と書かれたそれには花束が手向けられていた。

 

・・・似ている。

 

復讐という間違った大義名分と怒りと殺意に染まった冷たい眼。そしてそれを叶えるためなら何を犠牲にしても構わないという危険さ。

 

彼は、俺だ。

 

「お前の気持ちは、分からんでもない。」

 

今の言葉が癪に触ったのか、飛び跳ねるようにアクアが黎人の胸ぐらを掴んだ。

 

「アンタに、アンタに何が分かるんだーー「首を守れ。」

 

黎人がアクアの手首を掴み、ブンっと近くの木に投げる。アクアは背中から木の幹にあたり、頭に顔を歪め、地面に落ちる。

 

「「いっーー」・・・俺は3歳の頃、父親を殺された。」

 

「ーーーえ?」

 

「そして俺が4歳の頃、妹が2歳、弟が産まれたばかりの頃に母親を血縁上の祖父に殺された。」

 

今でも忘れない日はない。

 

父は最期に自分達を逃すため、自らを犠牲にした。

 

血まみれの母が自分達を抱きしめながら死んでいった光景は、今でも夢に見る。

 

「俺は母親が死んだその日、怒りに身を任せてそいつを殺した・・・焼け焦げた遺体、溢れ出した散血と臓物、そして血に染まった自分の手。達成感が体を包み込むことはなく、心はより深く沈み込んだ。今もまだ、夢の中であの血みどろの雨の路地裏を歩いてる。」

 

「相手を殺しても母は帰ってこない。

 

 腐った親類縁者を殺しても父は生き返らない。

 

 怨みは呪いとなって俺たちの周りを廻り続ける。お前の母親も、お前が血みどろの道を進むことを望まないんじゃないか?」

 

「それでも・・・アイは『愛してる』って言って死んだ。あの日のことが今でも夢に見る。アイをあんな目にあわせた父親が憎い。それでも、復讐を諦めろってのか?」

 

多分、いや絶対に。

 

彼の母親は彼を愛していたんだろう。死んだ母の愛を、息子である彼は呪いとして復讐に心血を注いでる。

 

「・・・これは俺の元担任の受け入りだけどね。

 

 

()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

アクアは黙り込んだ。

 

黎人はしゃがんで彼の言葉を待つ。

 

「・・・それでもだ。

 

それでも、俺は"愛したい"。父親をーーいや、このしがらみから自由になりたい。」

 

彼の眼から黒い星は消え、代わりに純白の星が蒼い海に宿っていた。これが彼の本音から出た言葉。

 

「・・・星野アクア、()()()。」

 

「え・・・」

 

「追い詰めて悪かったな・・・しがらみから、因果から抜け出したいという気持ちは充分伝わった。鰻奢るよ。」

 

黎人は笑いながらアクアに手を差し出す。

 

「お前を呪術師として歓迎する。」

 

 

呪いの歯車は、新しい藍色のギアを組み合わせ、廻り始めた。

行き着く先が地獄か更なる地獄か。

 

それとも笑える地獄なのか。

 

 

まだ誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(それにしても、アクアの親のアイって人と明星の嫁似てるな。ドッペルゲンガーっていうのかね。)

 

ちなみに黎人はまだ、アイが産まれ変わって弟の嫁になっているのに気づいていない。

 

じゅじゅさんぽ。

 

①、鰻屋。

 

某東京高級鰻屋

 

「どうした?腹減ってないのか。」

 

「・・・いや、なんか鰻の蒲焼きが俺の想定の10倍高いんですけど。」

 

「だいじょぶ、呪術師って給料いいからさ。」

 

〜食事中〜

 

「お会計、〇〇〇〇〇円になりまーす。」

 

「チーーーン」

 

「んじゃ、カードで。」

 

(はっ?ブラックカード!?)

 

帰宅

 

「お兄ちゃんお帰ーーークンクンッ、お兄ちゃんひょっとして鰻食べた?」

 

「え、あ、うん。」

 

「へぇ、いーな??可愛い妹をほっぽいて食べる鰻はさぞ美味しかったんでしょうねぇ!!」

 

「・・・・」

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