愛と呪いは小説より奇なり   作:ランハナカマキリ

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裏四話

『来週、台風●号が日本列島に接近すると予想されるため、今のうちに窓の補強や外に出しているゴミ箱をーーー』

 

雨がポツポツと降る京都某所。黎人の術式で瞬間移動ができ、時間を気にしないで東京から京都に来ることができる。アクアは先輩の術師から呪具の指南を受けていた。渡された50センチほどの呪具を手に取り、鞘を外して照明の方にかざした。

 

「これ、ナイフ、ですか?」

 

「・・・・というよりは小刀だな。」

 

寺嶋 誠(てらじま まこと)2年生

 

準一級呪術師で、現在昇級監査中だ。寺嶋家は呪術名家の一つであり、水を操る『呪水術式』の使い手である。とはいえ寺嶋家は100年前に没落しているため、一般家庭の出だ。

 

「・・・もう少し握り方を変えろ・・・死ぬぞ。」

 

「ーーっ。」

 

死という言葉にアクアはギクリとする。復讐心に酔って今まで意識していなかったが、自分がやろうとしていたことは立派な犯罪だ。改めて、自分が入った世界は死が身近なところにある世界だと認識した。

 

「『もう少し握り方を変えろ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()死ぬぞ。』・・・って意味でしょ。」

 

闇宮 夜(やみみや よる)2年生

 

二級術師。彼女は『吸血呪法』の使い手であり、天与呪縛で昼間の活動ができないが、夜になると一級並みの出力を出すことができる。嫌いなものはニンニク入りの食べ物。

 

「・・・・スン」

 

「全く、口下手なんだから。肝心なところ略さないでよ?ほら謝りなさい!」

 

「・・・ごめん。」

 

「ごめんね?星野くん。ビビらせちゃって。」

 

「い、いえ。」

 

その日の夜は東京の窓の経営している定食屋で過ごした。汀がスマホをいじりながらトレンドの話題を口にする。

 

「にしても、昨日の『今ガチ』すっごい炎上してるね。」

 

「・・・やっぱ炎上してるんですね。黒川のやつ。」

 

アクアが出演している『今ガチで恋してる。』の中で登場していた『黒川あかね』がライバルの頬を叩いたのだ。恐らく演出上の行動で両者は和解しているらしいがネットという新たな呪いの場の住人たちは黒川あかねの陰口や悪口をツイートしている。

 

「まぁな。調べてみたんだが、恋愛リアリティーショーは自殺者も結構出してるらしい。いい年した大人どもが高校生にやってたかって悪口言うとはね、こっちの身にもなってくれないかな?」

 

「やっぱり呪術と関係はしてるんですか?」

 

「おう、してるしてる。最近の負の感情は、ネットを通じて拡散して多くの人に届けられるわけ。しかもねずみ算式に増えていくから、後始末するこっちの身にもなってほしいんだがな・・・やっぱここのホッケうま。」

 

ホッケ定食のホッケを口にする黎人が愚痴を吐く。

 

「お前も気をつけろよ?世の中どこに目がついてるか分かんないからな。」

 

汀が空のお茶碗を持って

 

「すいませんご飯おかわりお願いします!!」

 

「お前ホントよく食うな。太っても知らないぞ。」

 

「へーきへーき、僕は余分な脂肪を燃焼させて自分の呪力に変換できるからね。ちなみにフーちゃんに言ったら殺されかけたけど何でかな?」

 

「お前のせいだろ。」

 

「えー先生辛辣だなー。」

 

 

■◽️■◽️■◽️

 

大雨で視界が遮られる夜中。

 

アクアは1人走っていた。

 

黒川あかねがいなくなったという共演者からの知らせ。炎上し批判の的となっている彼女がいなくなった。

 

理由の候補は失踪、または自殺。

 

失踪はない。この雨のせいでだいたいの道路は交通規制されているため遠くには行けない。しかもあかねは運転免許証を持っていない。

 

なら消去法で自殺の線が濃厚。

 

歩道橋の手すりの上に立つ人の影が見え、アクアは雨の音に負けない声を張り上げた。

 

「おいあかね!!落ち着け!!」

 

「アクア、くん?こっち来ないで・・・」

 

彼女の足が手すりから落ちる・・・

 

「待てっ!!」

 

アクアは急いで階段を駆け上がり、術式を発動した。

 

藍星軌光(ブルー・トワイライト)停止(ストップ)!!』

 

彼の右眼の星が、白く光る。

 

身を投げたあかねの体が、縛り付けられたように空中に静止する。そしてアクアが彼女の腕を掴み後ろから抱きしめたところで金縛りが解ける。

 

「いや!離して!!いやぁぁぁ!!!」

 

「落ち着けっ!!俺はお前の敵じゃない!!!」

 

「何で、何で死なせてくれないの!!?」

 

 

 

「死ぬんだったら、俺の目の届かないとこで死んでくれよ!!!もう、誰かが死ぬのを見るのは、嫌なんだよ!!!」

 

◽️■◽️■◽️■

 

数日後、京都高専内のテレビの前。

 

「ーーー結構変わったね?あの『黒川あかね』って子。」

 

特級術師、九十九由基がソファに腰掛けながらそう言った。

 

「恐らく、彼女"イタコ"の末裔だね。」

 

「イタコ・・・ひょっとして魂を下ろしてるってことですか?」

 

黎人が九十九に質問する。

 

「いや、彼女の場合。対象のあらゆる情報を習得しそれらを自分のものとすることが前提条件で他人になれる。ただ下ろしてるだけじゃなくて、魂の外側のみを下ろしてるって感じだな。」

 

「つまり、魂に引っ張られることもないってこと?」

 

「そゆこと。」

 

「ともかく、星野くんとは相性いいと思うよ?知ってるかな?術式の相性の良さと恋情の良さは比例するって。」

 

「アオハルだな〜」

 

ちなみに黎人はまだ、アイが産まれ変わって弟の嫁になって以下略。





アクアは復讐に心が奪われていないため、結構心の底から本音が出やすくなってるだろうなーって思うのでセリフをこうしました。結構後悔はしてません。
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