愛と呪いは小説より奇なり   作:ランハナカマキリ

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久しぶりの投稿ですが、またifの物語です。本編とは別世界の話です。

・アイは生まれ変わりませんが、虎杖アイは星野アイにほぼ似たような人物として登場します。
・時系列は本編と同じです。
・アクアは呪術師になりませんが、呪霊は見えます。ルビーは見えません。

それじゃあ、どうぞ。


新ネタ
霹靂


 

世の中にはどうしようもないものがある。

 

1つは健康、産まれたときから病弱で一年に何度も入院した。だけど親には恵まれた。

 

2つ目は顔、顔の形は父親そっくりと母が言っていた。

 

3つ目は才能の無さ、俺には兄のような演技の才がなかった。

 

「お前演技の才能ないけど音楽の才能はあるな」

 

「そうなの?こどもべやおじさん」

 

「おい誰だお前にそんな言葉教えたの」

 

「お兄ちゃんとお姉ちゃん」

 

「あんの早熟兄妹が・・・・よし、ここはこうしてこうしろよ」

 

「はーい」

 

初めて自分で書いたBGM。

 

こどおじ━━じゃなくて監督の教え通りに■ouTubeに上げたら何万回も再生できた。

 

でも、こんなのは現実逃避でしかなかった。自分の周りには、他の人に見えない怪物たちがいた。母にも兄姉にも見えなくて、僕の妄想に思われた。悔しかった。そう思うたび、妙な夢を見た。

 

〜〜〜

昔々、九州の高千穂に1人の男がいた。総髪の男の体からは紫色の電気が湧き出していたが、男の目に生気はなかった。

 

「・・・・ケホッ」

 

『久しいね。雷電』

 

「・・・・お前また幼女になったか。趣味が悪い」

 

『酷いな〜』

 

「ゲホッ・・・・羂索を取り逃した。奴は俺の父親の体を奪った上に、今度は俺の娘の体を奪った。奴を屠りたかった。この命を捨てても」

 

怒り任せに力を込め、強く手を握ると彼の腕が蒸発した。体内の呪力が肉体を電気分解したのだ。これが代償、圧倒的な力と引き換えに自身の死をもたらす。術式を発動させ一撃を喰らわせた瞬間、奴は逃げ出していた。

 

『あと数分で肉体が消えるでしょ。貴方の術式と呪力特性、肉体が電気分解されるまであと僅かってとこかな』

 

残った腕と脚が消えた。

 

「頼みが、ある。俺の魂は消滅してもいい、だがこの肉体に刻まれた呪力と術式と、俺が編み出した技術・・・・」

 

血が蒸発し血管が破裂した。

 

「いつの世か、ゲホッ!!これらに適した、恵まれた者に与えてほしい、俺と同じ目に遭わぬように・・・・」

 

内臓が破裂し血を吐いた

 

「ゲホッ!!ゲホッ!!・・・・俺の生涯に意味を与えてくれ」

 

『・・・・・・・・いいよ、友達だから━━雷電?』

 

雷電は、湿った風と共に消えていた。

 

おしまい。

〜〜〜

 

「・・・・・・・はぁ、また夢か」

 

憂鬱な溜め息を吐きながら、リビングにいる母の元に向かう。自分と同じ髪色の母は不思議そうに尋ねてきた。

 

「うん?どうしたの〜?弧箔吼(こはく)?」

 

「・・・・何でもないよ?」

 

舞台の幕が上がり、ifの話の役者が演じ始める。

 

『2つの空っぽの肉体。1つは家族に愛されなかった女の子の魂を、2つ目は殺された彼女の主治医の魂を。そしてちゃんと魂が入っていたこの子には雷電の願いを・・・・さぁ、どんな未来を演じてくれるかな?』

 

愛に呪い呪われた、ifの話を。

 

『あ、でも星野アイがあの子の術式奪っちゃったんだよな〜しかも呪力ないから宝の持ち腐れって感じ・・・・』

 

『んじゃ星野アイ死んだら術式があの子に渡るようにしよっと。そういう天与呪縛にしとけばいいか。全く、魂の調整も術式の継承もめんどくさいのにな〜』

 

 

□■□

 

コハクには何が起こっているのか分からなかった。

 

何故母は血を流している。

 

何故この男は俺に刃物を突き立てている。

 

傷ついた母を守ろうと男の前に立ちはだかったコハクに、男の虚しい怒りが向けられた。男が振るったナイフ、その一振りを片腕で受ける。赤い血がスパッと跳ねるが、コハクは無我夢中で空いている男の手に齧り付いた。

 

「いっっ━━死ねクソガキ!!」

 

ザクッと、男の包丁がコハクの右目に突き刺さった。

 

「ぁぁぁ!!?ぅうぅ!?」

 

あまりの激痛に倒れ込んだコハク。彼の腹に男の蹴りが入り、コハクは宙を舞って靴棚にぶつかる。衝撃でコハクは動けなくなった。

 

 

 

 

 

「アクア、ルビー、コハク・・・・愛してる」

 

騒ぎを聞きつけたアクアマリンには、男の影に隠れ気絶していたコハクが見えていなかった。そして倒れ込んだ母しか見なかった。母が事切れた後に、振り返ると靴棚の方にいた小さい弟の姿はなく、代わりに閉められた筈の玄関が開いていた。

 

ズシャァァァン!!!

 

遠くで雷が鳴った気がした。

 

ーーーーーーーーーー

 

『天与呪縛・・・・彼の術式は本来母親が受け継いだものだった・・・・けど母親は呪力には恵まれなかった。あの子は術式はなかったけど、呪いの王以上の呪力には恵まれた』

 

『・・・・だけど星野アイが死ぬことで、彼女の術式は彼に継承された』

 

『星野アイが死ぬことで、呪いの世界に足を踏み入れたあの子。ふふふっ、さてどうなるかな?』

 

ーーーーーーーーーー

 

男は、リョースケは川に架けられた橋の下で蹲って震えていた。

 

初めて人を殺した。殺した時は怒りに支配されていたが、今は恐怖と後悔に支配されていた。自分に聞かされた話の内容と、現実が食い違っていた。

 

「ちくしょう!!何が忘れてるだ!ちゃんと、ちゃんと覚えてたじゃねぇかよ!!!」

 

「おい」

 

右に振り向くと、そこには自分が傷つけた少年がいた。

 

「て、テメェ・・・・何しにきやがったんだよ!?あっち行け!!」

 

「━━━死ね」

 

その瞬間、小さい少年の手から()の電流が迸る。リョースケの肩に命中したソレは、まるで人形の腕を外すかのように彼の腕を焼き切った。

 

「あ"ぁ"!!!た、助け━━━」

 

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 

少年は怒りに任せて目の前の男を殴った。

 

殴る、殴られる、躱す、殴る、殴る、蹴られる、躱す、殴る、蹴る、骨を折る、脱臼させる、股を潰す、眼をつぶす、顎を砕く。

 

気づけば返り血と自分の血がごちゃ混ぜになって、流血が止まって血が固まった右目の傷が痛くなった。男は虫の息となって地面に倒れていた。歯は全て砕け、顔のあちらこちらから焼け焦げた肉の匂いが漂っていた。

 

コハクは血に塗れた状態でトボトボと歩き出した。

 

母は死んだ。

 

右目はもう見えない。

 

なのに何故だろう・・・・

 

普通なら嘆き悲しむべきなのに・・・・

 

復讐を果たせたことを喜ぶべきなのに・・・・

 

それが正しいはずなのに・・・・

 

「・・・・・・・つまんな」

 

怒りに身を任せた復讐は、至極つまらなかった。

 

人の運命は残酷で、唐突に好転する。

 

今になって思えば彼の運命が好転しだしたのはあの時だったかもしれない。

 

「ナイスファイト!ボーイ!!」

 

橋の上、バイクの横に立つ金髪の美女。

 

「・・・・誰あんた」

 

「どんな女がタイプかな?」

 

師に出会い、残酷を打ち砕く力を得たあの時から。

 

 

■□■

 

京都府立呪術高専

 

異質な呪力を放つ星の目、片目を黒髪で隠し、後髪を団子にした少年。それよりも目の前の仮面をつけ、季節外れのマフラーを巻き、仮面の下にある2つの異なる瞳を持った男がこう投げかける。

 

「ようこそ呪術高専へ・・・・改めて言うが、ここに来たら元の世界には戻れない。お前はそれでも後悔はないか?」

 

「後悔?そんなもの、とっくにねーよ。守りたいものも、倒すものも、俺は俺で勝手に決める」

 

「一応聞くけど、なぜ命を賭けられる?」

 

「"愛"は、自分の命張った姿でこそ美しい」

 

「俺の母は今際の際で自分の身を張って俺ら3人を守った。周りを嘘で固めて世間の何もかも騙し続けた。だからあの姿が俺の"推し"、俺の"愛"はあの姿にある」

 

「だから俺は命を張りたい。それが誰かを愛する前提条件。愛のない喧嘩なんぞ虚しいだけだからな」

 

少年の体から迸る青い雷光。

 

それを見つめて、『家入黎人』はニヤリと笑った。

 

「・・・・・九十九さんの言った通りだな。やっぱイカれてた」

 

2023年4月、星野コハク、呪術高専入学。

 

〜オマケ〜

 

「そういやルビーちゃん3つ子なんやって?アクアさんと一緒にこの学校に?」

 

「いや・・・・コハクなら京都の宗教系の学校に━━━「それって京都天元派流仏教高等専門学校?」不知火フリル!!?」

 

「いや、私の妹もそっち行ったし」

 

「えっ!?じゃあ妹さんこの学校に行く理由って教えてくれた?」

 

「あーーー説明してくれたけどナイショ」

 





じゅじゅ予告

鹿紫雲「一回羂索に今までに死にかけたことはないのかって聞いてな。そしたら『君と同じ術式持った男に殺されかけた。君って彼に似てるね(笑)』って言いやがった。俺はソイツの複製じゃねーっうの。次回、『会合』いつになるかは知らねーけどな」
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