ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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11.女児女王

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 電空戦神グラフィリオン。

 

 

      【 完 全 攻 略 !! 】

 

 

 『だいす』ゴミ化の影響もあってこの1ヶ月ほどのめり込んだグラフィリオンなのだが、今日! 遂に!! 全ステージクリアを達成致しました!!

 

 うほ~!

 ウホッウホッ、ウッホ~!!

 

 ーーー脳ミソ狂うわクソがッ!!

 

 ペレさんの持ってきたグラフィリオンの難易度はクソ。

 許可なく俺にインストールされてたチート能力を駆使しても一瞬の気の緩みで敗北する雑魚戦。

 

 それを乗り越えてたどり着いたボス戦ではBGMが貧弱ですぐに音が途切れるやろ? キュサノオ君は音が流れてない時には移動も攻撃も、どんなコマンド入力も受け付けないっつー残念な機体特性を持ってるから、何度も何度も死に覚えてBGMが途切れる直前に回避運動を入力したり、直前の火炎放射で防壁を作ったりしてなぁ。

 

 そうしたトライ&エラーを積み重ねて被ダメを極限まで減らしましたとも。

 

 

 

 ほら、このゲームって回避こそ正義やん?

 開幕1発目で敵にカスダメ与えさえすれば、後は逃げの一手でOKってのがこのゲームの正しい勝ちかた。

 逃げる側は精神的にも操作的にも追う側より有利だし、敵の隙をついたカウンターも成立しやすい。

 安全圏を常に意識して自機に有利なポジションを維持し続ける。

 

 なんつーか、本質的にはオセロに近いかな?

 最初から派手に動き回って盤面を荒らすと負けて、逆に可能な限りひっくり返す駒を少なくするように意識してれば自然と勝ち筋が見えてくる感じが似てる。

 

 格闘ゲームってよりは陣取り合戦に近いゲームなんだが。

 だが…だぜ?

 

 

 

 ラスボス戦での体力判定勝ちは無効=Game Over扱いになってまして。

 鼻血出たよね。

 リアルに。

 

 

 

 シナプスを焼き切らす勢いで被弾を減らしつつラスボスのーーーあ、名前まだ書いてなかった。

 ラスボスは月夜之大蛇(ツクヨノオロチ)って名前の白い仮面を着けた巨大龍でな? 画面奥に固定された置物タイプのボスなんだが、ソイツの攻撃を掻い潜りながら削って削って、紙ヤスリでもここまで削ったこと無いぞってくらい削りまくって、何度も何度も体力判定で負けて。

 

 それでようやくヤツの体力を上回った状態でタイムアップを迎えてさ? やった! とった! 勝ったぞ!! と思った瞬間自機が火を吹いて炎上だよ。

 

 ブチギレと同時に完全に腹が据わったのがこの日でございますわ。

 

 「ポンコツのキュサノオで? あのゲームジャンルを間違えたようなクソ弾幕を掻い潜りながら? 時間制限内に? あのクソ耐久を完全攻略せよ…と? オワリちゃん狂ってるやんww 流石ゾイド狂人w シネメスガキビッチ」

 

 そこからまぁ重ねた重ねた。

 この1ヶ月はマジでグラフィリオンした以外の記憶が無い。

 

 負ける度にペレさんが記録してくれたデータを解析して、一緒に反省会して、改善して、改革して、変えた状況によって浮き上がる問題点を殺して。

 そうやって、遂に勝てる日が来たんだわ。

 

 

 

 タイムは残り20秒。

 

 敵の耐久はあと僅か。

 

 確定行動のクソ弾幕を抜ければ12~3秒残した状態で『九層飛び』を発動して確殺ーーーこれは!!

 

 

 

 「勝てるおる! おまはんの! ガチるおるっ!!」

 

 

 

 ペレさんの声援(フラグ)を聞いてさ。

 テンション上がってさ。

 今日こそトドメの一撃をーーーと思った瞬間唐突にムービーが入ってな?

 

 大破炎上する月夜之大蛇。

 その真っ白い仮面が真ん中から左右にパッカリ開いて、中からツクヨ君をグラフィリオンっぽくした電空戦神が出て来たんだよ。

その名もツキノオ。

 当時のグラフィックからすれば限界…いや、限界超えてないか? てくらいに綺麗なムービーでな?

 

 「おっ? おぉ!?」

 

 「いかずみサーカス!!」

 

 ペレさんと一緒に大興奮よ。

 

 Round2キタ!?

 大昔のゲームの癖に演出熱いやんけ! 流石はオワリちゃん!!

 

 とか思ったのもつかの間。

 

 【 R E A D Y 】

 

 この神聖5文字と共に画面の切り替わり。

 手前にキュサノオの背中。

 対面にツキノオ。

 

 「ーーーは?」

 

 タイムは先ほどまでの、月夜之大蛇戦で最後にみた数字と同じ20.65秒。

 敵の耐久値も、自機の耐久値も、さっきまでの状況を引き継いでて。

 

 ピピピ!

 

 お馴染みのロックオンアラートが鳴って状況開始した瞬間、ツキノオが後ろへとダッシュして、即座にダッシュ攻撃のモーションに入った。

 

 バックダッシュ攻撃。

 それもこの直線で。

 

 考えるよりも早く、グラフィリオンに最適化された指先が自動的に動いてキュサノオの射撃角度を微調整。

 必中確定のしゃがみ肩部レーザーがツキノオを貫くーーー瞬間。

ツキノオの攻撃モーションは投擲だった。

 手にしたボムをしゃがみ投げっぽい動作で空に置くように投げる。

 

 まぁ…インチキだわな?

 ダッシュ攻撃に『しゃがみ』動作が追加されるのは続編のバウンドチャリオッツシリーズからであって、グラフィリオンにそんな機能は無い。

 

 無いのだが、ヤツはそのインチキを実行して。

 あまつさえ貫通属性の肩ビームをボムの爆風で掻き消しやがったんだ。

 

 当然追う。

 残り時間はあと僅か。

 ここで逃したら未来はないーーーが。

 

 「うっ…!?」

 

 嘘だろ。

 その一言すら出んかったよね。

 

 「こけ…へ? こ、ここっこ!?」

 

 ペレさんがニワトリになるのも無理はない。

 

 「転倒、確定の…広範囲ボム?」

 

 後に何度も血反吐を吐く思いでデータを集めて検証した結果、ツキノオのボムはマジでどんな動作から投げても確定でキュサノオを転倒させる能力を持っており。

 

 「んなっ!?」

 

 起き上がる頃にもまだ煙が晴れない。

 転倒復帰後の無敵時間があるからまだ猶予はあるが、問題はボムの当たり判定が未だに継続していること。

 

 「判定長過ぎるやろ!?」

 

 どちらにせよ追わなけりゃ始まらない。

 煙幕を前ダッシュで突き抜けたキュサノオの足元に異物を関知して、即座にジャンプ入力した途端に2発目のボムが炸裂。

 その後、俺の着地を狙って放たれたソニックブレイド(空を飛ぶ斬撃)は回避不能の転倒攻撃でして…。

 

 

 

 経験者でなくても、わかるやろ?

 この漆黒の悪意。

 

 絶対に、何がなんでもプレイヤーのクリアを阻み、奈落のドン底に叩き落としてやるという。

 人間性を投げ捨てて足で踏んでうんこつけてカレーで煮込んだド畜生料理を笑顔で提供して金を巻き上げるような悪逆非道。

 

 グラフィリオンだぜ?

 逃げ手が絶対的に有利なグラフィリオンで、だぜ??

 

 ラスボスが逃げちゃうの?

 戦闘時間の3割はクソボム投げて?

 かすっただけで転倒確定のカッター投げて?

 時間制限いっぱいおっぱいしょっぱいで逃げ切っちゃうの?

 

 特に、あえて特筆するとして。

 

 性格の悪さを見せつけるのがダメージ量なんよ。

 くっそカスダメ。

 キュサノオでさえ何発受けても問題ない程度のカスダメとかガチでおちょくってる。

 

 んで、イラついて操作が荒くなった所に必殺の前ビ(前ダッシュからの強射撃)で殺しに来たアレには本当に参ったよね。

 くいしばり過ぎて歯が欠けたし、この筐体が完全防音じゃなかったら間違いなく警察呼ばれるレベルの絶叫が暴発したもんよ。

 

 俺一人だったら諦めてた。

 

 そらそうだろ?

 こん~なクソゲー見たこと無いぜ?

 テクニックの問題じゃないもんよ。

 操作なんてチート能力でほとんど完璧なんだし、その上でクリア不可能なんだからやる気になれるわけがない。

 

 

 だから、このクリアはペレさんのおかげだ。

 ペレさんはメスガキに勝った。

 つまりメスガキクイーンなんだぜ。

 





 【L.M.G】
 (Loading.Moon.Gate)

 『はいぢん選別機による特異体の検知を確認』

 『電空戦神グラフィリオン、最高難度、キュサノオ縛り、制限時間内でのツキノオ撃破ーーーオールクリア』

 『半人活性因子特級区分識別個体=キトカオワリ作成の特記項目精査ーーーオールクリア』

 『≪にはんじんコボットだいすち≫■■■システムへ接続、適合率ーーーアンクリア、不足値計測ーーー範囲修正…可』

 『コア管理AIへ接続・・・・・・修正項目共有、審議ーーー通過』



 【特級骨格解放試験開始】



 対象骨格・天蝕大狼=アマツハミオオカミ。

 提供規格・凄之玖王=スサノオ九式。


 ◇          ◇          ◇


 次元隔壁展開。
 全1.313階層稼働、確認。

 天蝕大狼…真影現想解放。

 凄之玖王…graphic.reversal......幻想反転・出力成功。

    ーーー電空戦神グラフィリオンーーー
         【Get Ready】
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