ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
◯月◯日 晴れ
幸福度数ってのがある。
正確には地球幸福度指数という名称らしいのだが、単純に言えばその国に属する人間トータルの幸せ具合を数字にしたモノだとか。
金銭的に恵まれた社会であれば幸福かというと、そうではない。
自由さえあれば幸せかというと、そうでもない。
色々と面倒臭い人間の『幸せ』を数字に換算すれば当たり前に誤差が出る。
それでも、その概念には賛同できる。
幸福度数があれば。
願う者がより幸福を求めるのなら。
何が悪くて、どこを改善するべきなのかが明確になる。
…さて。
俺としては第3の人生が(強制的に)スタートした昨今。
色々と変わったことがある。
まず下世話な話から書くわ。
汚い話だが、人間の80%は汚いのだから仕方ない。
汚い人間の汚い話。
『妹』&『ロリ』系でイケなくなった。
汚い…な。
スマンとは思う。
だが男にとって性の嗜好性が変わるーーー激変したってのは、黙り決め込むには無理のある案件でな?
レンと新居(中古物件だがキレイだし、俺からすれば値札も十分にトチ狂ってるから新居で間違いない)に移り住む前は平気…というか、正直に申し上げて好みの部類だったんだ。
いや、リアルに手を出すほど歪んでなくて、単純にそう言う妄想の世界を楽しんでたし、普通に巨乳も好き。
詳しく言えばそれなりに特殊な癖もあるのだが、オッサンの性癖とか誰得だから省略する。
レンは年の離れた実の妹なのだが、実際に同じ屋根の下で家族としての時間を共有するのは初めてだった。
だからこれまで『妹』という存在はほとんど架空のモノで、現実味がなかったからこそ性のコンテンツとして消費出来てたのだが、一緒に住むようになった結果として、俺に『兄』の自覚が芽生えたのだと思う。
ーーーで。
思うのだが現実の妹は扱いに困るんだよ。
「お腹すいた」
そうですか。
「ゴミ捨てて来て」
お前のゴミだよ?
「お風呂がぬるい」
温度調節ボタン、見えないの?
「眠れないから今日の『だいす』話して」
お兄ちゃんはね? キミのママじゃないんだよ?
ーーーーーー万事が万事でこの調子なんだよ。
…え?
赤ちゃん?
赤ちゃんなの??
14才の女の子って、みんな『こんな』なの?
無視したり、怒ったり(心を鬼にして怒った、なぜ俺は育児をしているのだろうか?)自立させようとしても悉く失敗。
まるで何かしら行動原理をプログラムされた機械でも相手にしているかのような手応えの無さ。
俺の母は14年間何をやってたんだ?
ここまで酷い産廃人間、工場にもいねぇ…あ、居たけどあの血便ジジイは人間じゃなくて動物のカテゴリーだったし。
14才だぜ? 中2病真っ盛りだぜ?
人間として終わってるジジイ糞とは違う、キラキラの未来とピチピチの肉体がある自己顕示欲の塊みたいな年頃だろ?
なんで、こんな、赤ちゃんなの??
妹の問題はまだまだある。
今述べた【赤ちゃん】問題と双璧をなす案件が【浪費家】問題だ。
馬鹿デカイ豪邸(庶民の俺からすれば平屋建て=豪邸です)を勝手に買って返済に悶えるクソボケ借金を背負わせてくれた妹ちゃん。わかりきっていたことなのだが、洒落にならないレベルで金遣いが荒い。
「レンッ! お前今日も暇してるんだろ!? ここに掃除機あるから、今日俺が帰ってくるまでに家の掃除しときなさい!」
そう吐き捨てて帰宅すると、家の中は埃一つ見つけるのにも苦労するほど徹底的に掃除されててな?
「がんばった」
ふんす!
と聞こえそうなくらいのドヤ顔だったし、コイツが有能なのは知ってたから素直に「スゴい!」「よくやった!!」と褒め称えたんだ。
だが、問題はその後。
「料理も、たくさん、作った!」
ふんすふんす!!
見れば食卓の上にはリッチなレストランで見るような食器(家を出るときまでこんな食器は存在しなかった)と、そこに盛り付けられた豪勢なお食事の数々。
「まだ、あるッ!」
ふんす×3。
案内されたのはキッチンの一角。
「たくさん、あるッ!!」
ふんす×4。
見たこともないような、だが相手が無知でも無関係に理解させる存在感を出す最新式っぽい大型冷蔵庫が鎮座しておりまして。
中には調理済みの食糧がミッチリ詰まってて、丁寧に付箋で【月曜日】とか【火曜日】とか書いてあるのよ。
「おたすけクモちゃん家事代行サービス…?」
付箋に書いてある社名を読んで。
(この会社は、なんでファンシーなイメージのある『クマ』ではなく『クモ』を選んだのだろうか…?)
最初に浮かんだのはそんな疑問だったのだがーーー!?
唐突に弾けたね。
頭の中で種が爆発炎上して、その炎に押されるように走った。
・洗面所。
新品の、先程の冷蔵庫同様に明らかに見た目で判別可能なレベルの高品質ドラム式洗濯機。
「乾燥も、できまする!」
もう俺には妹の「ふんす」なんか聞こえない。
・妹の部屋。
容赦なく扉を押し開く。
「乙女の寝室を無断で覗くだなんて、にーにーはとってもエチオピアっ♡」
何故か楽しそうにニヤつく妹の部屋は予想外に普通だった。
もっと…なんだろうか、取り返しのつかない品ーーー例えば超巨大特注水槽でアロワナが泳いでたり、ホワイトライオンの赤ちゃんが3匹くらい居たりーーーそんなヤバさを想定していたのだが、本当に普通。
ベッドがあって、タンスがあって。
小物が少ないせいで殺風景な感じはするが、それでもごく普通の女子の部屋って感じだった。
「にーにー、あのね?」
クイっと袖を引かれた。
見下ろすとレンの碧眼が俺を優しく見つめていた。
「レンちゃんは、にーにーが凄い人類だって知ってる。だからにーにーがもっともっと凄くなれるようにお手伝いしたい」
全力の笑顔。
裏なんて1㎜も無い純心。
「う…ぐぐぐ!」
絆されそうになったけど堪えた。
「お金なら大丈夫だよ! にーにーは凄いもん! すぐに稼げるよ!!」
完全に人任せな上に、悪意が無い。
こわい。
俺の妹がヤバい。
ヤバいのに可愛く感じてる俺が一段とヤバい。
なんかこの感じ知ってると思ったらアレだ、キング盆Bガールだ。モロテツの疫病神の一種。勝手に借金増やしてゲームのマンネリを防ぐための舞台装置。
ん…?
なにか、一瞬意識が飛んだような…?
前にも似たような事があった…ような??
ーーーそう。
確か、そんな事を考えながら自室に移動したんだ。
返品するとか、契約解除とか、色々と考えるべき事が山積みで油断してたんだ。
『ガチャリ』
ドアノブを回し、ドアを開けた瞬間。
火薬の炸裂音に反応し、脳の中に構築された戦闘プログラムが緊急稼働したーーー具体的には後ろに付いてきていた妹を抱えて廊下の角に飛び退いた。
「あるゃ!?」
巻き舌が酷い。
妹は日本人なのに若干日本語が苦手なんだ。
驚く妹を余所に現状確認。
「あの…ゴメン、にーに」
サプライズ、だったらしい。
クラッカーから飛び出したきらびやかな紙吹雪。
抱えられた妹が申し訳なさそうに舌を出した。
「ビックリしたやろが!」
その時はあんまり派手に反応した事の照れ隠しで強く怒ったのだが…あのさ、俺の反応速度おかしくない? さっき一瞬クラッカーの紙テープが広がるより早く動かなかった??
ーーーあれ?
改造されてる??
ちょっと宇宙人さん?
ゲームならまだしも現実を侵食しないでくださいね?
こわいから。
そんな事を考えながら自室のドアを開けた。
「ーーーーーーやった」
やってくれやがったな。おいマジかクソガキお前簀巻きにしてオーストラリアのババァの家の前に棄てるぞこのゴミカスぅぅぅぅぅううう!!やった~! 嬉しくって鼻血出たもん! うれぴんこっ! ぴっぴこピヨピヨ☆ミ
「喜んでもらえて良かった! レンちゃん少し心配だったの! もし怒られたらどうしようって、でもやっぱりレンちゃんはにーにーの事わかってる! いっしんどーたいだね!!」
嬉しそうな妹。
目の前にある大型筐体。
筐体には『にはんぢんコボットだいすち』の文字。
「今日からいっぱい戦えるよ! カイシャ? には2ヶ月前に辞表出した事にしといたから、安心してね!」
あとコレッ!
笑顔で差し出されたルーズリーフ。
表には【がんばれにーにー♡借金完済計画書☆ミ】と書いてあるソレ。
何故か震え出した指を懸命に操り、めくった1ページ目には現時点での借金のトータル、そして一日あたりの達成目標金ーーー1億…ん?
「え、いち? う? うぇ?」
一度ルーズリーフを閉じた。
深呼吸してもう一度開き、左のページを凝視する。
借金合計『158.650.999えん』
いち、じゅう、ひゃく、、、、いちおく?
「ん…え? 一億って書いてない?」
「書いてないよぉ! ちゃんと見てっ! 一億五千八百万ちょいでしょ! もぉにーにーってばしっかりしてよ! 明日からは忙しいんだから、今からボケててどうすんですか!」
明日…あした?
ルーズリーフの右側ページには明日の日付。
午前5時から翌日の午前2時までの間びっしりと埋め尽くされたスケジュールが、ががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががが。
ーーー妹に、軟禁されました。
…質問、してもよろしいでしょうか。
あなた様の私見で良いのです。
俺の幸福度は客観的に見て…何%になると思います?
誰か、オシエテ…。
「いや、いやいやほら! 筐体なんてどうやってこんな部屋に入れた…いや、それよりホラ! こんなデカブツ家に置いても…ダメだろッ!?」
「んへ? なして??」
「なしてって…それは、えっと、あれだ、せっ整備? そ、そう整備! こんなもん家にあったって部品が一つ壊れたらアウトだし、バグとか…メンテとか!? でっ出来んやろ!?」
「チックタックトック! 甘いぜにーにー! このペ…じゃなくて、レンちゃんに死角無し! こんなこともあろうかと飛び級したジオンズム大学で上位時空工学と現地応用化学を専攻して博士号を取得済みなのでおる!! ふんすっ!!」
「大学? …俺の実家にそんな金あったか?」
「ふゃ!? あ、あぁあ! それは、ほら、えっと…宝くじ?」
「宝くじ?」
「しょ、しょう! 宝くじ当てて、そんでインベーダー取引で大儲けしたお金を使ったのです」
「ーーーはぁ!? 俺なんも聞いてないんだが?」
「ま、ママが内緒にしろって言ったの!! ママがっ!!」
「んの野郎…オカンほんと、そう言うとこあるよな」
「あるある!」
「…いや、うん。でもさ? 一億? この筐体一億すんの?」
「ニコニコ現金分割買い取り!」
「一億とか利益出るの?」
「限定多次元稼働機構があるもん、にーにー行きつけのスーパーにある旧式筐体と違って、今の最新型は携帯端末でキャッシュレスが普通だし、1日で軽く万単位の人類が参戦してるし、利益率で言ったら現行品なんて鼻くそ以下なんだよ?」
「女の子が鼻くそとか言わんの」
「はい。でね? お店は売って欲しいんだけど、ソガの許可が下りないからなかなか増えないの。個人宅に設置されるのはにーにーで3人目なんだよ! ふんす!!」
「ふんすは可愛いから許す」
「はい」
「けどなぁ…」
「なに? 何が不満なのや?」
「いや…ゲーセン行きたいんだよ」
「ぽん? だって『だいす』ここにあるし…? どうせにーにー『だいす』しかしないじゃん」
「いや…ね? 空気? ゲーセン特有のあのごちゃごちゃした空気とか? あとは金を払ってゲームしてる感覚とか?」
「…ぽん??」
「やっぱゲーセンは違うんだよ、なんかこぉゲーセン行きてぇなって思うのだが…わかる?」
「ぜんぜん、わかんない。にーにー、明日から早いよ? 今日はもぉ早くおねんねしたら?」
「…うん」