ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
◯月◯日 晴れ (2ページ目)
スペランナーって、知ってる?
前のページでアリーナ開戦直後に【Game Over】画面に移行したこの俺の…宇宙人絶滅を祈願したこの俺からの唐突な確認項目。心にグッと来るモノがあるやろ?
ーーーさて、スペランナー。
スペランナーである。
ヒトオシさんのスベランナートークは大好きなのですが、それはそれ。
今回はゲーマーなら1度は耳にした事があるであろう凶悪タイトル『スペランナー』の復習から入ります。
Atari 8ビット・コンピュータ用横スクロールアクションゲーム。
8ビットの時点でお察しの超絶レトロゲームであり、主人公のランナーを操作して財宝を見つけ出す。ただそれだけのゲームなのだが、特筆すべきはその難易度。
『少し高い場所から』
『飛び降りたら』
【死ぬ】
横スクロールで、探索をメインとしたシステムでありながら、段差の高低を見誤れば即座に死亡するという、リアリティーの無駄遣い。
他にも様々な難関ギミックを用意してプレイヤーのクリアを阻む心折設計は発売から約半世紀という年月を経てもなお、伝説として語り継がれる珠玉の逸品…とまで言うと嘘になるが、伝説的なゲームであると断言する程度は許されるだろう。
ーーーさて。
そんな枕から始まる今回の『
賢明な読者諸君は最早お察しであろう。
ぼくのぉ、ぽち子はぁ、すぺらんなーだったの(^q^)
ずっと気付けなかったし、ペレさんもフリーズした。
何度も検証してたどり着いた答えは残酷だった。
前のページでチラッと書いたのだが、こないだ迄の俺のタイムスケジュールは過酷だった。
朝5時に起きて7時までヒトアシ形態で【Round1・2】を周回した後、朝食後は途中休憩を入れながらも基本的には永久にヨツアシのポチ子形態でアリーナを消化し続けてたんだよ。
ブロンズランクの戦場は箱庭。
高低差がほとんど無い地形での戦闘だったのが1つ目の誤爆。
そしてスペランナーとしてのポチ子の性能が2つ目の誤爆だった。
…座標って、わかるやろ?
画用紙の真ん中がゼロ点。
左右がX軸、上下がY軸、奥行き方向の広がりはZ軸とかになるアレ。
なんか使い方によって変わるらしいけど今回はその辺りはどうでも良いから置いといてさ。
え~と、俺のアリーナでの実働時間が1日平均で…え?
アレ?
待てよ? 7時から始まって…1.2.3・・・17?
え?
あれ??
あっーーーふ~ん?
17時間働いてたんだ、おれ。
…嘘やん?
ここまでの流れ全部止めちゃってゴメンなんだけど、え?
5時に起きる。
7時までヒトアシする。
7時から翌日の2時まで戦う。
間にある休憩時間は合計で2時間。
1日は24時間。
睡眠時間は3時間。
俺の戦争は19時間。
…え? なんで俺、今息できてるんだ。
意識朦朧でやらされ作業しながらの19時間ならまだ理解できる。けど俺はずっと集中してた。一秒たりとて気を抜かず、常に全力で対戦に集中し続けてた。
なんで…生きてるんだ? 工場で同じレベルの超集中を持続したことはあるけど、8時間もやれば頭痛と嘔吐感で死にかけてたやろ? なんで、俺、今平然と息してる…???
俺は、いったいーーー
毎日『だいす』が楽しくて寝る間もなかったんだよね! 幸せすぎて怖いぜ☆ミ おっとそれよりも今はスペランナーの話だったな! しっけいしっけい(^o^ゞ
アリーナの平均戦闘時間が1戦3分だから1時間で20戦…流石に夢の中みたく無敗のキングなんて事はなかったけど、勝率は83%前後だった。ブロンズはピンキリの能力差が酷いんだわ。
ともかく、20×実働の19で380戦。
出勤日数wが13日間で約5.000戦。
5.000回も戦ってただの1度もポチ子はスペらなかった。
これが誤爆を引き起こした要因の一つなんだよ。
ほれ、激しく動いてメチャクチャ飛び跳ねたり、超高速で飛翔して、その後地面に激突したり。
ポチ子はヒトアシ形態と違って火力が低い代わりに操作性や機動力が抜群(他所様の機体と比べれば並みよりちょい上程度だが、俺からしたらこの上なく優秀な機体性能)なんだわ。
だからさ? 5.000回も戦ってれば当たり前にそんな曲芸じみた機動をするんだよ。
なのに、ポチ子はスペらなかったんだ。
ーーー検証の結果。
ポチ子がスペる条件は座標のY軸に直結している事が判明した。原点のゼロを基点として次に着地した場所の高度がゼロ点より30mより下がっていた場合、ポチ子はスペランナーしてしまうんだ。
そこに運動エネルギーや重量の多寡は1ミリも介在しない。
つまり開始地点からの高低差が30m以上あれば、どれだけスラスターを酷使して減速してても、地面にちょんと片足を付けただけで魔法のように機体が四散して大破炎上の意味不明映像を生み出してしまうんだ。
(俺の対戦相手…困っただろうな。なんてったって開戦直後に自分は何もしていないにも関わらずいきなり勝利者扱いされるんだもの)
…あ。
もちろんヒトアシ形態でのスペ検査もしたぜ?
そっちはセーフだった。
速度が速すぎたらフレームが曲がったけど、それだけ。
ポチ子形態の時のような理不尽は無かった。
ペレさんは嬉しかったのかホッとしたのかは知らんけど、かなりガチで号泣してた。
レンも「よかった」を連呼してて、逆に悲しくなったよね。
ともかくこれでアリーナは振り出しに戻った。
「今日はゆっくりしてて!」
と言われたので病院に行って、帰りにゲーセンで『だいす』して来たのだが、やはり作業としてやらされる『だいす』とは全然違ってて楽しかったなぁ。
明日からどうなるのか不明だけど、頑張るしかないよな。
そんな事を思ったのだが。
俺って一昨日までずっと『だいす』してたんだよな? この日記っていつ書いたんだ? そんな時間なかった筈なのに日記にはちゃんと日々の記録が残ってるんだが…。
え、こわい。
オルボーン整備区画の一角に用意された専用空間。
『レクイエム』と呼ばれるそこで、彼らの業務が始まる。
「鎮魂作業は安全第一!! 現地から直送のセンドンだ、そこらじゅうにフレームの欠片が散ってる! 防護服は気休め以下! いつも言ってるが何度でも言うぞ!!」
白い防護服に身を包んだ整備班一同。その背後に転送されたのは見る影もなく損壊したオルボーン『K-アシガル-250』だ。
ヨツアシへ換装した際の別名『桃色ポチ子』はその愛くるしさからも整備班受けしていたのたが…。
オルボーンは。
半神として作られた骨格は。
とりわけ大破して四散したフレームは弱いのだ。
半神制御パルスの制御下にあってなお、空間に蠢く遊魄因子との結合を果たし偽獣として即時転生するほど、存在としての壁が脆い。
ましてや『K-アシガル-250』は発狂因子を内在したジャンク品を強引に稼働させているような状態。通常のフレームとは比較にもならない程、存在がーーー魂の障壁が、脆い。
紫炎、黒炎、青に緑と、様々な色の炎を…結合して燃え上がる魂魄を纏いながら、千切れて損壊したそれぞれのフレームの破片が異形を成して転生される。
「ケッタイ・サイフォン・服・ボウシ・ゴーグル・耳栓・マスク! 唱和! 指差し確認!!」
ーーーケッタイ・サイフォン・服・ボウシ・ゴーグル・耳栓・マスク! バディヨシッ! 異常無し!!
復唱される声には覇気が宿る。
一般的な中小規模の工場で行われる『やらされ』確認とは段違い。彼らは今、現場ヌコに勝るとも劣らない勇士であった。
「異常事態には!」
ーーー止める! 呼ぶ! 待つ!!
「そうだ! まずは足止め! 緊急信号の危険度順に処理して行く! アタシは絶対にお前らを見捨てない!! 信じて耐えろ! お前らなら出来るッ!! 行ぃぃぃげぇオラァァァァァァァァァ!!」
薄汚れた作業着を着こなす大柄な体躯の巨乳美女。
ストレートの長い白髪をなびかせる褐色の肌。
ナツナ=ミナツの号令が一発!
ーーーWooooooooooo!!!
猛る戦士となった整備班一同が突き進んだ。
PaPaPaPaPaPa!!
突撃銃が火を放ち、異形の怪異の荒ぶるを鎮める。
ーーーそれから5時間。
小休止を挟みながらも作業は正常に推移した。
労災無し、安定した定時退社はほぼ確定。
整備班の過半数は既に次行程の作業場にてパーツの洗浄と再生に取りかかっている。
その後は安定処理後に各種外装の既存連結ポインターを打ち込んで、本日の業務は完了…と、なる予定だったのだがーーー。
【グ・ォ・ォ・オ・オ・オ・オ・ン!!】
「頭部外装…チッ!」
【※狂乱の中核外装】
【発狂因子解放】
【狂深度『メーカー委託』級】
「これぁーーー」
ーーー無理だ。
総員の撤退指示。
それを放つ直前、安全区域に転がしていたコアキューブの扉が蹴破られた。
【グーーーォ!?】
流星のように飛翔する扉が【※狂乱の中核外装】の右目へと突き刺さる。
【ーーーーー!!】
鋼鉄が切り裂かれるような甲高い悲鳴。
それを成し得たのはーーー!
蹴り出した姿勢で硬直する黒鋼の脚部。
「コアドール! まさかヨシム…いや、素体か!?」
起動した人形。
それは
黒い鋼を幾重にも編んで作られた人体模型。
ゆったりとした動作でコアキューブより降り立ち、威風堂々と風を切る。
唯一明確に人と違える単眼が明滅し空気を揺らした。
『ぷりてぃっく・むーんぱぅわ・めいくあっぷ!!』
「えーーー?」
硬直する整備班、そして【※狂乱の中核外装】を放置して黒い素体を光が包む。
☆に♪に♡にキラキラ。
黒い鋼鉄の人形が風に踊る。
のけぞり気味に身体を伸ばし、左右の指先は天使の羽を意識してピンと伸ばしてぶれさせない。
キラリん☆ミ
光の帯が巻き付くと、次の瞬間にはヒラヒラのセーラー服を纏う金髪碧眼の美少女が降臨していたのだッッッ!!
「ミニ!」
紺色のレオタードで痩躯を包み。
「モニ!」
その上には純白のセーラー服。
「ムーン!」
スカートはキュートなピンク色♡
「ミニモニムーン参上! 星に代わっておしおきよ!」
左手の指は中指と薬指を折り曲げ、その他をピンと真っ直ぐに。
右手は左手を土台にしながら敵へと伸ばし、指鉄砲でビシリと決めるッ!!
「決まった…」
肉体を得て良かった。
心からそう思える運命の出逢い。
敬愛するミニモちゃんになりきる事で、今のレンちゃんの戦力ゲージは限界の2文字を突破していた。
「ナツナちゃん! ここは任せて!」
「!?」
まさかの名指しにナツナ=ミナツがたじろぐ。
「いや、ちがッ!!」
知らない人ですよ!?
そんな趣味ないし、アタシはいたって真面目な整備主任!
言葉にするのも怖くて喋れない。
だが部下の視線は容赦なくナツナ=ミナツの背中を突き刺した。
「とっ、兎に角総員退避!! 殿はアタシが受け持つ!」
次元隔壁の人力展開。現在展開中の自動的な隔壁一枚では不足であると判断したのだ。
ナツナ=ミナツのスキルにより二重起動した閉鎖空間の内側で、レンちゃんはペロリと唇を舐めた。
「ポチ子ちゃん、ゴメンだけど尺が足らないの、一撃で終わりにさせてもらうね?」
右手でドンと1つ心臓を叩き、召喚するは魔法の杖。
「作画破壊兵器ーーー」
原作者を恐怖のズンドコへ叩き落とした悪魔の鉄槌。
その名は。
「ーーービスケット・クラッシャーNAS!」
魔法の杖が12年間の願いを打ち砕く。
「イッヌ…私は貴様を、許さない…!!」
伝説の一撃が、今ーーー!