ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

26 / 70
第四話・オルトロスボーン
26.巨壁絶壁


 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 俺がクラン『C.C』に入団してからまだ10日しか経過していないとか…いや、嘘過ぎて吐きそうなのだが。

 

 入団の目的は当然ストレス。

 俺の大嫌いな対人関係から発生する類いの不快感。

 それが俺に必要な因子であると判断したからだ。

 

 だけどな? その上でな?

 なるべく程よいストレスが望ましかったんだよ。

 何事にも適温とか適度とか、そんな言葉がありまして。

 

 クラン入団の前提として大人数で集まってエナドリ片手に朝から晩まで踊り狂うような集団は除外した。

 パリピこわい、ついていけない。

 

 そもそも他人だよ?

 友達ならともかく、他人とそんな仲良く出来ねぇよ。

 メチャクチャ気を遣うし、気遣いを前提としても俺の対人能力は死んでるし、いや第一なんで俺が他人ごときに気を遣って精神を磨耗させなくてはならんのだ(ストレス欠乏症)と。

 

 …わかってんだよ。

 ストレスが必要だからクランに入る。

 だけど怖いし面倒だし本当は本当に心から嫌なんだ。

 ずっとペレさんとワチャワチャして、アタマ空っぽにして遊んでたい。ストレス嫌い、人間怖い。仕事が辛い、初対面の人間との会話が面倒臭くて想像しただけで死にたくなる。

 だって他人に興味なんか無いもの。

 

 

 

 そんな後ろ向きな理由でクランの規模は最小を選んだ。

 団員数は1~2名。

 

 当初は団員2のクランに加入して3人体制をつくり、もともとから所属している仲の良い2人とボッチを極める1人(俺)という構図を作るのが最適だと思ったんだ。

 

 イメージ的には団長と副長がリアルの雑談して遊んでる間、俺は黙々とクランミッションを片付けて行くような感じ。

 もっと具体的なイメージで言うと馬車かな。

 

 俺→馬

 メンバー→御者 

 

 わかるやろん?

 地味にじんわりとストレスを蓄積しながら、黙々と馬車を引く。感謝なんかされない、馬が生きるためには人間に庇護され、労力として生かされるのが最適な処世術なのたから…!!

 

 そんな計画を土台に、まずはレンに相談した。

 

 レンはナチュラルに鬼畜なので既に翌日からの俺のギチギチスケジュールを完成させていたのだが、事情を説明すると快く(嫌そうに)スケジュールを破棄してくれた。

 

 俺はうれしかった。

 

 愚かなり妹。妹風情が兄のスケジュールを管理しようなどと、片腹痛いわッ!!

 

 とても嬉しくてニコニコだった。

 たぶん、それが最初のストライク。

 

 「ん…おッ!?」

 

 レンに『弱小』『低評価』を基準に選別してもらったクランリスト。偶然にも目についたのは【地雷座長】の四文字。

 思い出すのは敗北の悔しさよりも、座長の地雷座長へ対する愛の深さ。誰かを想いリスペクトする気持ちへの共感。

 

 はい、これでツーストライク。

 

 「んーでも俺が求めてんのは適度なストレスだし…」

 

 あんなに良い機体をビルドした人が悪人なわけない。

 

 「ん~けど、評価完全にバッドだよ? 972…あ、973件に増えた。それにこのクラン情報の文章、ちょっとバヤヤンなんじゃないかな? レンちゃんはオススメしない」

 

 それが最後のストライク。

 

 上がって下がって…丁度いい案配になってると錯覚したんだよね。

 最悪合わなければ辞めれば良いんだしーーーという、認識の甘さを後々後悔する羽目になったのだが…。

 

 

 ◆

 

 

 「不細工」

 

 罵倒と同時に飛来したペイント弾、それが俺のロボをピンク色に染めた。

 

 「成長無し、不細工、成長無し…まったく、畜生にすら、劣る、まったく、モビ太か、ドスケベが、死ね、淫獣」

 

 言いたい放題だ。

 好き勝手言われて、好きなだけ射たれて。

 俺のロボはスプラトーンになった。

 

 下地の金色は【ブルー】【イエロー】【パープル】に【ピンク】と多種多様なドギツイ原色に何度も何度も上書きで塗りたくられている。

 俺は地面でも壁でもない。

 ここはスプラトーンの世界じゃない。

 

 「雑魚が、文句か? 口だけの、畜生、風情」

 

 四連射。

 ただでさえ精度に劣る2丁拳銃で、一射ごとに色(弾倉)を変えながら一息で射撃するその速度。

 そして舌を巻く精度。

 両手両足の爪先、その中心を完全に捉えた銃撃に、俺は文字通り手も足も出せずに硬直した。

 

 「最初から、再開。無駄だが、それ以外、無い」 

 

 『動作、不細工、汚物、死ね』

 

 この四単語から始まった俺たちの関係。

 これがクラン『C.C』の日常だった。

 

 ーーーブン。

 

 唐突に通信回線が開いた。

 

 画面の向こうには黄色と黒のツートンカラー。

 トラロープ模様の目隠れ美女。

 

 ぷりっと潤んださくら色の唇と、ライダースーツの真ん中に主張する純白の谷間。細首との対比により、超絶に起伏したマシュマロの領域。

 アクセントのように右胸の上乳に打ち込まれた一粒のホクロの黒が、その谷間の白さをより際立たせて。

 

 …どれだけ嫌でも無理だ。

 お前は重力に逆らえるのか?

 俺は飛べない。

 鳥にはなれない。

 男の本能が、魂が…ッ!!

 嫌でも谷間に吸引されてーーー!?

 

 『ーーーザァァァァコ♡ーーー』

 

 奴の唇が空気を揺らさずに呟いた。

 ペロリ…と扇情的に唇を舐めるその仕草。

 

 「ーーーしッーーー!!」

 

 死ねと思う。

 …俺は、巨乳で、イケなくなった。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 今日も訓練。

 座長が言う不細工の意味がわからん。

 俺のロボは歩くにしても飛ぶにしても「煩い(うるさい)」らしい。

 この時点で感性が違う。

 

 ロボだぜ?

 ズッチャンズッチャンと足音を響かせてこその、ロボだぜ?

 足音がなんだと言うのかと。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 曇り

 

 

 ペレさんが恋しい。

 『C.C(ストレス貯蔵庫)』での活動中はペレさんとの交信を完全に遮断しているのだが、度重なる悪意の罵倒に俺のハートは崩壊寸前だ。

 

 強化版の滅トール討伐と言う戦果があるだけに何とも言えないのがまた、ツラい。

 早く稼げるようになりたい。

 ここから、一秒でも早く、逃げ出したい。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 曇り

 

 

 アリーナで勝った。

 いや、ヒトアシで。

 

 …え?

 マジで?

 

 今思えば滅トールと最後に戦った時もやたらと調子が良かったんだが、アレは戦闘モードのお陰じゃなかった…て事か?

 

 ボス戦仕様の滅トをクリアした後『だいす』がバージョンアップしてからは一銭も稼げてないんだ。

 

 久々の貴重な100円。

 

 嬉しい。

 うれし過ぎる。

 

 しばらく悩んだのだが、バイクに妹を乗せて2人でコンビニまで走った。

 金髪碧眼、ロリ体型をプラスと取るかマイナスと取るかは受け手の感性により変動するが、それを含めても我が妹は美少女に分類されるだろう。

 思えば一緒にお出かけするのは今回が初めてで。

 

 その記念すべき日にレンが選んだのはーーー女児服…だったか? 詳しくないんだがミニモニムーンのキャラがプリントされたパジャマだった。

 

 暗闇で光るあのシリーズ。

 じゃっかん…いやかなり、キツぃ。

 

 最近のお気に入りのシリーズパジャマ。

 原色カラーのカラフルな髪の女の子がワキャワキャしてて、まるっこい太文字で【ミニモニムーン】てタイトルを書いてある感じの、キャラとカラーが目に眩しいアレ。

 下もセットのピンク柄…バイク寒くない? 平気だった…あ、左様ですか。

 

 以前ペレさんとの会話で書いた通り、ミニモニムーンは日曜日の夕方6時にテレビ夕日系列で放送されている女児向けアニメシリーズで、このパジャマはミニモちゃんのCMで5才前後の女の子がよく着てる女児用の服なんだけどね。お気に入りなの。

 どこに特注してんのかは知らん。

 

 レンちゃん、14才、お気に入りの服はミニモニ。

 

 なん着持ってるのかわからん。

 昨日と同じ服にしかみえないのだが、毎日違うイラストらしい。

 たぶん、これはアレだ。

 ガノタにガン◯○(初代)とアックス-LSの違いがわからんと言って軽蔑されるギャルの逆パターンになるアレだ。

 

 そっとしておく。

 ミニモニを愛する。

 その気持ちをそっとしておくのだ。

 

 店員さんの視線を無視してチロルチョロを2個購入。

 一瞬で溶けてしまう甘いお菓子を店の前に座って食べた。

 

 「ん…コレこんな甘かったか?」

 

 口に広がる甘さがノドに絡み付く。

 

 「レンちゃんは好きかな…ねぇにーにー、ミニモちゃんもチョコ好きなんだよ? 知ってた?」

 

 「知らん」

 

 「ふふっ。にーにーはレンちゃんのおかげでまた一つ賢くなった。ねーねー…えらい? レンちゃん、えらい??」

 

 「んー、偉い偉い」

 

 「…ふんすっ!!」

 

 その服でドヤ顔。

 お外で。

 我が妹ながら変な奴だよ。

 

 …思えばこれまで、兄妹としての思い出が少な過ぎた。

 少し情けない気もするが、こんな思い出でも無いよりは良いだろう。

 





 【アックス-LS】

 正式名称はガン◯○(リング)アックスLS-1。
 型式番号PX-78LS-1

 OVA『解放軍記ガン◯○0080ポケットの島の戦争』に登場するMS。同作のキーキャラクターでありながら主役ではないという、特殊な立ち位置にある機体である。

 カオスメーター戦争で解放軍が北米のオーガバトル基地にて開発した、ユニットリーダー専用ガン◯○タイプMS(つまり、初のオーガバトル・ガン◯○(略称オーガン○○(リング))となる)。
コードネームはアックス(AXE)。帝国軍からは「蛮族」を意味する「原始的」(プリミティブ)のコードで呼ばれる。


 アーケードゲーム『領域の絆』での評価。

 初代ガン◯○に次ぐユニットリーダー専用機として投入。
 帝国軍の試作型強襲用MS【闘士拳獣・葵】とは比較にもならない高火力・高射程のエネルギーライフル、中~近距離で猛威を奮う両前腕の装甲カバーに内蔵された90mmガトリング砲。

 そして機体名称の元となる圧倒的高火力の【大戦斧】があらゆる障壁を粉砕する。

 機動力、運動性、堅牢な装甲、そして火力。

 ピーキーに振り切れた【闘士拳獣・葵】とは対極的で、場を選ぶこと無くコマンダーの命令を遂行する殺戮兵器として恐れられた。

 その性能の高さからアライメント(ユニット別に判定される善悪の性質判定)は常に最悪。
 ※このゲームでは敵を倒す以外に各地の拠点を解放、または奪取する事も重要なのだが、アライメントマイナス状態のユニットが拠点解放行為を行ったり、自軍側の拠点で補給を受けるだけでも軍へ対する民衆の評価値(カオスメーター)が減少してしまう。

 その仕様のためアックス使いはゲーム開始から終わりまで拠点へは一切近付かず、敵の撃破のみを任務としてプレイする事となり、これが後に数有る戦略の一つ【死神部隊】の原型となった。

 当然ながら帝国軍からの非難は凄まじく、次のアップデートでは帝国側にのみ戦略兵器が解放されたのだが、これはまた別の話になる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。