ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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27.殺意の華

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 今日も訓練。

 

 歩き方はギリギリ、なんとかアイツが文句を言えないレベルにまで仕上げたーーーと思ったら、いきなり銃を手渡された。

 

 突撃銃…確かアサルトライフルだったか。

 

 「見ろ」

 

 単語一文字。

 

 同じ形状の、けれどド派手な虎柄の(俺のは普通に黒)アサルトライフルを地雷座長の愛機クレイジー・マインが直立姿勢で構え、すぐに構えを解いた。

 (ちなみに訓練時のマイン(クレイジー・マイン)はヒトアシで参加している。ムシアシより明らかにこっちのが強いのだが…)

 

 「ん」

 

 アゴをしゃくる。

 もぉね?

 仕草の一つ一つに仕込んでくるよね、地雷をね。

 

 「ん」の一言だよ?

 

 こんだけ不快な時間を一緒に過ごした仲だ。

 同じ動作を取れって意味は伝わるぜ? 伝わるけれどもだ。

 他人への配慮、ゼロなん??

 ーーーゼロなんだよなぁ。座長だもの。

 

 そもそも俺は近接型だし、アサルトライフルなんか使わないんだが、まぁ黙殺だよね。これ以上ごねたらまた弾と罵倒が飛んでくる。

 

 仕方なく見よう見まねで構えたのだが、照準が合わない。

 

 「プ…くっ」

 

 ーーーんだぁクソアマがぁ…!!

 

 「単眼ヘッドで…阿呆か、雑魚が、過ぎる」

 

 そらそう。

 後で気付いたのだがアサルトライフルなどの現実世界に則した武器は、現実の人が扱うための形状をしている。

 

 俺のロボは人間より重心が高いし、何よりも単眼。

 だが、ここは元・帝国軍人(領域の絆)として譲れない一線ーーーなのだが、コイツはそこを馬鹿にしやがった。

 

 「不細工は、機体も、不細工」

 

 わざわざ通信回線をONにして罵詈雑言を生み出すド汚ねぇ穴を開き、犬のように舌を見せながら見せ付けるようにスラスターを展開。

 慣性の法則をガン無視した高速左右ステップをしやがった。

 

 普通にムカついたのだが、後でペレさんが調べた所アレはシャゲダン(シアル専用ゲッヒーニダンス)と呼ばれるVSシリーズ(解放軍記ガン◯○・解放軍VS帝国軍DX)発祥の挑発行為だったと知りストレスを倍増させた。

 

 「ーーー起きろ、アシガル…!!」

 

 アップデート前には不可能だった。

 

 【起動】

 【半人≠半神circuit不浄連結】

 

 【システム・戦闘モード・解放】

 

 戦闘モードの、任意解放!!

 

 【・・・・!!!】

 

 ペレさんに強要されて装着した【c7中核天狼装甲『くびわ』】の下側で、OBF(オルボーンフレーム)が低く唸る。

 

 なんか…不機嫌?

 

 昔噛み癖のある犬に、親父が犬用マズルを着けた事があったのだが、その時の犬と雰囲気がそっくりなんだわ。

 

 「お前…もしかしてーーー」

 

 ハンドターミナルから伝わる情念。

 

 「ーーーお前も、ムカついてんのか?」

 

 理不尽な体育会系の圧力。

 マイノリティを小馬鹿にした態度。

 鬱勃起すら封印されたリビドーのshrieking(慟哭)!!

 

 「わかって、くれるのか…ッ!!」

 

 ペレさんでは届かない、男の苦しみ。

 おぉ…我が愛機、アシガルよ!!

 なんと美しき、男の機械(マシン)

 

 「ヤろう! アシガルッ!」

 

 【・・・・!!!】

 

 寡黙な愛機が小さく唸り。

 俺は意識を研ぎ澄ます。

 

 『並列思考入力、それすら、不能? 塵芥め、死ね』

 

 俺のロボの動作から座長が見抜いた一言。

 

 アリーナでの戦闘、そしてヨツアシの桃色ポチ子を操縦した経験から『だいす』でのロボット操作には並列思考入力(意識を複数に分割して並列的に複数の部位の操作を実行する能力)が重要であり、その上でヒトアシ形態時にはその力を使用できないという、手に余る欠点がある事は把握していた。

 

 『インポーター? フフッ、汚物の蛇口、一生、垂れ流し、哀れな、童貞、死ね♡』

 

 何度も、何度も。

 似たような罵倒を繰り返された。

 

 たぶん、コイツは人間じゃねぇ。

 

 悪魔だ。

 おっぱい(淫魔)の皮を被った悪魔(邪神)

 

 だから、俺はーーー殺神鬼になった。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 「セット!」

 

 号令に忠実に機体を操る。

 単眼による構造上の不備は側頭部へサブカメラを増設する事で解消した。

 

 「アウト・セット・サーチ!」

 

 矢継早の指令にも慌てない。

 

 アウトは構えの解除。

 だが、銃は大きく離さない。

 ごく近距離で、即座にセット可能な位置に確保する。

 この初歩を怠ると即時のセットが遅れてしまう。

 

 セットではスコープを覗くのだが、この際に重要となるのは首の可動域。

 ストック(肩当て)をしっかりと押し付け、上体を安定させる事を前提として、カメのように首を伸ばしてスコープに寄せる。

 普段行わない動作に気を取られず、銃の重さを左腕でしっかりと受け止めて安定させる事も非常に重要である。

 

 サーチは銃をスコープ側へ倒し、即座に状況を把握する。

 一点を見るのではなく、鷹の目のように広く素早く的確に。

 

 「セット、後方3!」

 

 射撃姿勢を維持したまま後方へーーー「不細工ッ!!」

 容赦なく弾が飛ぶ。

 

 座長の射撃は精密だ。

 当初は意味がわからなかったのだが、今はわかる。

 

 射たれた箇所の制御が甘い。

 だから上体が揺れて、射撃姿勢が崩れる。

 

 「アシガル…」

 

 ーーーあぁ…殺したい。

 ヘドロのような殺意を機体に込める。

 

 【ーーー】

 

 同調する殺意を感じながら、ロボと歩調を合わせて動く。

 

 (一歩ずつだ。この一歩の積み重ねで、いつか、このクソを、絶対に殺す、そうだろ?)

 

 ヒトアシ形態のアシガルでは並列思考入力は出来ない。

 

 『不細工』で『不能』で『汚物の蛇口』と蔑まれて。

 

 ーーーは?

 

 並列思考なんかいらねんだよ。

 俺のロボは最強なんだ。

 死ねよ、殺すぞ、殺そう、殺すしかない。

 絶対に、このクソを、バラバラに引き裂いて喰い殺す。

 

 そのように決めてから理解した。

 並列思考はゴミ。

 

 殺意だ。

 純粋な『殺害』の意思を正しく心に宿していれば、機体は絶対に応えてくれると。

 

 …悔しいが、今はまだ届かない。

 

 それでもいつの日か、必ず。

 





 不浄連結。

 …殺意で、不能を、補うコア。

 殺意で、不足を、継ぎ足す骨格。

 面白い。

 我は、今、とても、とても、愉快だ。

 操作は単純。

 機体は撃烈。

 戦闘モードの任意解放?

 略奪者を屠る、それが為に許された、権能を、任意で?

 上位が、黙認、している?

 …バカな。

 バカなバカなバカなバカなバカな!!

 …狂いがある。

 とても、面白く、狂っている。

 我を生み出した、その、何処かが。

 嗚呼。

 狂え。

 狂い咲け。

 雄々しく育ち、大輪となれ。

 ーーー我は、今。

 ーーーとても、愉快だ。
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