ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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31.領域の絆

 

 ◯月◯日 晴れ (3ページ目)

 

 

 げちょーん、げちょーん。

 MSの懐かしい足音。

 

 ギョイィィィン!!

 バーニアのサウンドが心地良く。

 

 「絆よ…私は帰ってきた!!」

 

 叫んじゃうのは本能なのよ。

 

 ーーー決闘の舞台は懐かしのホワイト基地(ベース)

 廃墟と化した町の中心で、暗雲を貫く一対の白亜の巨塔。

 十数年の月日を越えても変わり無く、その塔はただ美しく存在し続けていた。

 

 領域指揮官であるコマンダーも、各種拠点もないシンプルな戦闘。それこそが『決闘』であり、これこそが闘争。

 

 状況は夜間戦闘、雷雨により視界は劣悪。

 

 「そろそろじゃない!?」

 

 膝の上には大きな荷物。

 

 「じっとしてろ」

 

 「だって、絶対! もうすぐだよ!?」

 

 邪魔はしないから一緒に居させて。

 そう頼んだのは誰だったか。

 

 レンが(年の割には)小さな身体を弾ませて、俺の感動に水を差した。

 

 「マジで揺らすな、死んだらお前の責任やぞ」

 

 「アイ! こぴー!!」

 

 明らかにテンションの高い妹に苦笑しながら、俺は役に立たないレーダーを眺めた。

 

 「身の伏スキー粒子は最高濃度…はー、これが決闘じゃなくて、機体がゲッヒーニJ(イェーガー)だったらなぁ。こんな最高のコンディション…もったいねぇーなぁ~!!」

 

 久々に射ちたい。

 どうせなら射ちたい。

 熱源センサーオンにして暗がりから一方的に狙い射ちたい。

 俺の絆時代を締め括る最後にして最愛のゲッヒェイでガンガン狙撃して、最後にはイラオラした味方から飛び蹴りされたい…!!

 

 歪んだ願望を垂れ流し、それでも俺の意識はキリキリと強く魂を締め付け、機体を操る手足へと広がっていた。

 

 「見えたよっ!」

 

 巨大なベースを挟んだ先にある廃墟の影。

 そこにバーニアの白光を見つけ、レンが叫ぶ。

 

 「コマンド・陣形R1T」

 

 今回の僚機は全機NPCだ。

 プレイヤーの指示の通りに動く人形。

 

 そして先程の指示はR1T(リーダー1トップ)

 俺を最前線に残し、4機のザムが後方へ下がる。

 

 「にーにー…だいじょぶ?」

 

 不安気なレンの頭をひと撫で。

 

 「正直、開戦前は俺も厳しいとは思ってたが」

 

 武器スロットを切り替え、鞭の設定を変更する。

 

 「ここまで状況が揃っちまうとなぁ」

 

 夜間、雷雨、レーダー不能。

 そして頼れるザム・インディー。

 

 座長さん、あれだけ啖呵切ったって事は相当にこのゲームをやり込んでんだろぅな?

 なんだったか? お前の兄貴は鼻糞雑魚だとか、帝国の機体はカスをカスタムした燃えるゴミ(やられ役)だとか?

 

 メスガキ風情が偉そうによくもまぁ吠えたもんだぜ。

 

 なら見せてやるよ。

 俺がどれだけこのゲームに心血を注いでいたのか。

 ーーー帝国軍を…ザムをナメるな!!

 

 「コマンド・迅速後退、各員リーダーの指揮範囲を離脱、射撃開始!」

 

 このゲームのパーティーはリーダーとサーバントで構成される。

 

 リーダーは指揮範囲を持ち、その範囲内に入ったサーバントを強化する…と言うよりは、リーダーの指揮範囲外に出てしまったサーバントの性能が大きく低下すると言う特徴がある。

 

 『与ダメージの半減』『被ダメージの倍増』

 

 その他にも細かな変化点があるのだが、大きく言えばこの2つ。

 ゲーマーでなくとも、この2点の要素が戦況にどれだけ大きな変化をもたらすかは、容易く予測できるだろう。

 

 だからリーダーはチームの後方か中心。

 それが定石であり、それ故に奇手が成立する。

 

 ーーー特に、レーダー不在のこの状況下では。

 

 スティックを操り、機体を遮蔽物の影に隠した。

 視線を変更し、ジャンプと同時に右斜め上の廃ビルへと鞭を伸ばす。

 

 俺はスナイパーだ。

 嫌われ者の狙撃野郎。

 

 だが最初からそうだった訳じゃない。

 ザムに乗り、銃を射ったり、格闘を仕掛けたりして。

 そして気づいた。

 

 『俺は、連続で格闘攻撃を出せない』と。

 

 リズムらしい。

 練習すれば『誰でも』出来るようになるらしい。

 

 けど、俺には出来なかった。

 ぜんっぜん才能が無かった。

 

 そんな初期の俺を助けてくれたのがザム・Iだった。

 隙の少なく、攻撃範囲の広い単発ムチ攻撃。

 それを救いにしてペチペチぺんぺんと叩いて回った。

 

 「火力出ねぇ癖にダウン増やすな! そこは格3で行けばワンキル出来ただろがッ!!」

 

 「また単独行動しやがって! ブッ◯すぞッ!!」

 

 「だから、ムチんな! ふざけてんのか!!」

 

 …戦友はいつも優しかった。

 諦めない俺のガッツを褒め称えてくれた。

 

 「これは遊びじゃねぇんだよ! 格3もまともに出来ねぇような雑魚はスッ込んでろ! つかインデの価値は格3プラス鞭の4連だろ? それも出来ねぇんなら大人しくザム使ってろや! コストの無駄なんだよカスが! その程度理解してから来いよアァン!?」

 

 「黙れやボケが調子乗り腐りやがって、さっきのは俺のムチがあったから乗りきれた局面やったやろが! 戦局も見えてねぇような雑魚がほざくな◯ねッ!!」

 

 「はぁ~ん? 今は局面の話じゃねぇ! お前の近接能力の話やろがい! 日本語、OK? 日本語わかりますぅ~??」

 

 「わかりますよ~? お前がウホウホ叫んでるのはわかってますよ~うっほほほ~う!! 猿は動物園に帰れッ!!」

 

 ソルジャー同志の、

 本気と本気の。

 

 魂のぶつかり合い…!!

 

 「やはり、貴方の実力と特質を考えるとチームでの運用は難しいですね。恐らくこれはどのコマンダーに付いても同じでしょう。よろしければ偵察ユニットへ転向してみては?」

 

 コマンダーからの厚い信任。

 

 「狙撃…また、よりによって、狙撃ユニット。貴方は私を試しているのですか?」

 

 「ーーーーーーーーーー」

 

 「………は? ーーーえ? バカなの?」

 

 コマちゃんの可愛い反応と、心震える、あのやり取り。

 

 

 

 

 ーーーあの日々が、すべての道が俺のちからとなる。

 伸びた鞭が道となり、俺の機体を高所へ導くように…!

 

 「なんで!?」

 

 「おもしれーやろ?」

 

 インディーの鞭には攻撃用の電磁鞭と、移動補助用のアンカー鞭の2種類があり、アンカータイプを使用する事でブースターを使わない高速上下移動が可能となる。

 

 何度でも言う。

 俺はスナイパーだ。

 

 あの頃とは時代が違う。

 これまでに何度もアプデを挟み、新しいステージが作られた事だろう。既存のステージも改編されたかもしれない。

 だが、ここはホワイト基地だ。

 再初期の決戦地であり、みんなの愛するホワイト基地なのだ。

 

 ステージ(ここ)は変わらない。

 ガノタの熱意が有る限り、そのような横紙破りは許されない…故に!! 狙撃ポイントとなる高台は、変わりはしない!!

 

 「そこだッ!!」

 

 俺の部隊へ迫る座長の側面へと、容赦の無い鞭の一撃が襲いかかった。

 

 

 ◆

 

 

 「ーーー後退した」

 

 「ゲリラ戦法かねぇ? 座長相手に通用すっか?」

 

 筐体の外。

 大型の戦況スクリーンに映し出された状況に、ホスト風の男が眉をひそめた。

 

 「どうかな? しかし選択としては適切だろう。ザム・Iで真正面から挑むよりは、よほど理に適う行動だ」

 

 室内にあっても目出し帽を脱がない大男が、太い腕をムチムチの胸筋の前で組む。

 

 「座長はジーク・R(ジーク・ランサー)だし、性能差からしても間違いねーやな」

 

 「問題は彼がどこまで座長の心理を手玉に取れるか」

 

 「あーね? 確かに操縦技術で座長をボコスってのも現実味がねーもんな?」

 

 地雷座長。

 彼女の実力はこの『絆』全体でも五指に入ると言われている。

 

 その彼女が招いた人物。

 彼がどこまでやれるかーーーと。

 

 「しかけた…!」

 

 ザム・Iの一撃がジーク・Rを強かに打つ。

 

 「上手いな、タイミング………は?」

 

 「え、マジ?」

 

 単発攻撃を受け、少なからず撥ね飛ばされてダウンしたジーク・R、その頭上でザム・Iが奇妙な行動をしてみせた。

 

 ジャンプ→キャンセル。

 ジャンプ→キャンセル。

 

 跳ねる前に取り消して大きくしゃがみ、また繰り返す。

 見ようによっては屈伸運動にも見える、その動作。

 

 「「スクワット」やんけ!?」

 

 古今東西、今やあらゆるゲームで共用される価値観。

 すなわちーーー『煽り』だ。

 

 『へいへーい? 座長ちゃんおねんねかなー? オチチが重くて倒れちゃったの? ザコ! え、まさかザム・Iの鞭でぺんぺんされて感じちゃったの? キショクない? キショクある? どっちでもいーけどさー? 座長、ゴミじゃね? 普段あんだけ偉そーなのに…あ、ごめんね? 本当は俺もシャゲダンしたかったんだけど、システム的に無理だったからスクワットしたの。わかる? コレ煽ってんだけど、わかる? 座長バカだから伝わるかどうか不安なんだよね~フンフンッ!!』

 

 聞こえない筈の煽り文句。

 それが座長に火を付けた。

 

 「コイツ、ブランク10年って言ってなかったか? どんだけ神経図太いねん」

 

 「ーーーいや、しかし面白いぞ」

 

 戦域の絆。

 このゲームはロボの操縦テクニックと同時に戦局を見極める視野や、仲間との連携、作戦行動へ対する洞察力が重要であり、それは即ち。

 

 「判断が、早い!!」

 

 判断力。

 的確に未来を予測し、より良い『位置』を確保する。

 判断が的確であればあるほどに、機体操縦へ関するテクニックは、その優先度を押し下げる。

 

 例えばじゃんけん。

 

 相手を知り、思考を読み、軽く小突いて誘導すれば。

 

 「ーーー手のひらの上だな」

 

 座長の機体操作テクニックは突出している。

 しかし『絆』はそれで補えるゲームデザインではないのだ。

 

 追えば逃げられ雲隠れ。

 警戒を強めた隙に僚機を狙われ。

 

 一方的に、圧倒的に。

 

 地雷座長と言う名のパイロットは、ただ一機のザム・Iに大敗を喫した。

 





 すまねぇ。
 今日の後書きは無しだ。
 職場が限界で、俺も限界だ。

 急性低音障害型感音難聴。

 漢字が多すぎて中国語みたいだが、ちゃんとした日本語だぜ? 耳がぼんぼんしてる。
 疲労とストレスがヤバイ。

 爆発してくれ。
 職場。
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