ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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 感謝を。



33.銀ノ未練

 

 ◆

 

 あの夢は何だったのか。

 

 深夜1時半。

 いつものように『だいす』へ没頭していた頭が、フと切り替わるように昨夜の記憶を思い出した。

 

 いつもの宇宙人関連ーーーにしては、なんだろうか。

 今まで出会ってきた異常とは毛色が違う。

 

 超人能力を強制的に引き出して脳を爆発させようとしたり、強制快楽でオッサンのアへ顔を作成したり、記憶を消されたり勝手に家を買われたり(これは妹の暴走か)色々な事件があったが、それらとは何か違う感じがする。

 

 「ーーーはん」

 

 何が違うのか、具体的に文字にするのは難しいのだが。

 

 「おまはん!」

 

 ペレさんの声のボリュームに驚いて身体が跳ねた。

 

 「どっ! どした?」

 

 「ぽーんとしておるよ? だいぞんぶ?」

 

 気付けば眼前には【You-Win】の文字。

 アリーナでの連勝記録がまた1つ増えていた。

 

 「あーーーいや。もうすぐ破銀だろ? ちょっと緊張してたらしい」

 

 適当に誤魔化すと、ペレさんは深くは追求しない。

 距離感スゴいんだわ。

 

 「きゅうはネンネな? ポイトィーンは純文学!」

 

 確かに、アリーナで破銀を受けるための資格は十分、今は一回の戦闘時間がヨツアシの比じゃ無いから馬鹿みたいにポイントを稼げる。

 

 ペレさんの好意に甘えてヘッドギアのロックを外す。

 ーーーそして。

 

 


 


 

 

 『やあ、こんにちは、もしくはこんばんは、僕の最後の希望の君よ』

 

 昨夜と同じ、成長したレンの姿をしたナニカと出会った。

 

 『ナニカだなんて悲しいなぁ。僕にもちゃんとした名前があるのに』

 

 本物のレンと違い、コイツはとても表情が豊かだ。

 演劇の役者のように『気持ちを見せる』顔の作り方を心得ている。

 昨日とまったく同じ姿勢。

 俺の膝の上で大胆に身体を魅せる、奇妙な女。

 

 『ま、いいや。それより今日は何して遊ぶ? とりあえず胸でも揉むかい?』

 

 ワンピース越しに、掬い上げるように下から手をあてて、俺に見せ付けながら溢れるような乳房を歪めて笑う。

 

 『揉んでも吸っても噛みついても良いよ? この身体は君のオモチャなんだから、ほら、我慢しないで』

 

 あまりにも馬鹿げた展開に頭がまるで動かない。

 呆けた俺の手を取り、胸に押しあてた。

 

 『揉んでみなよ』

 

 促されるまま、指に力が入って。

 

 『ーーーねえ、君』

 

 一粒の雫が、指を濡らした。

 それは透明な水。

 サラサラで、口に含めばきっとしょっぱい。

 

 『ごめんね』

 

 ナニカが泣いていた。

 能面のような表情。

 

 それなのに、その表面を伝って落ちた透明な涙は、何故か熱くて。

 

 『これは君の夢なんだよ。だからーーーだからこそ、君の欲する人は現れはしない…君の不貞を咎められる人物には、ここでは絶対に会えないんだよ』

 

 理解が、出来ない。

 それなのに、俺は。

 

 『今日はここまで。また、明日』

 

 そして、ナニカが指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 拍子抜けするほどアッサリと破銀が終わった。

 これで今日から俺も『シルバーランク』…か。

 

 対戦相手もなぁ。

 なんか赤くて浮いてるのは覚えてるんだが、逆に言うとそれしか覚えてないんだわ。

 

 いや、今回はステージとスポーン地点が悪かったと言うか、良かったと言うか。

 

 スポーンしたのは森の中でな?

 

 訓練基地の北に広がる森林に似てたんだが、けっこうしっかりした樹木が乱立しててさ、葉っぱモシャモシャの大木がズドンズドンと乱立してたんだわ。

 葉っぱの高さは俺のロボを二段重ねした辺りから繁ってるし、木と木の間隔も広めで余裕を持って歩けるから、薄暗い木のトンネルを散歩してる感覚で…なんだっけ、森林浴? アレをしてるような雰囲気で、実にのんびりステージだったんだけどさ。

 

 対戦相手が遠くにスポーンしてて、高速でこっちに直進して来てるのがレーダーでわかったから。

 

 (ーーーあ、飛行タイプですね)

 

 と理解者しちまってね?

 

 つい魔が差して10秒間だけ、敵のレーダーを無効化する新機能を「ポチっとなー」してしまったんだよ。

 

 …うん。

 ステージが広く複雑化しただけであそこまで噛み合うとは思ってなかったが…ね?

 

 

 

 高速で飛んでるマトちゃんが困ってる間に木の間を駆け抜けて後ろに回り込む。

    ↓

 「電空サッポン!!」

    ↓

 見・敵・即・殺。

 

 

 

 この一撃で終わってしまいまして。

 

 うん。

 これぁヤバイかも知らん。

 卑怯な気もすんだけど、弱肉強食だから。

 俺も生活かかってるから。

 

 よし。

 寝るまでにまだ時間はあるし、どこまで稼げるか試してみるか!!

 

 


 


 

 

 『やあ、こんにちは、もしくはこんばんは、僕の最後の希望の君。人形の曲芸大会で優勝したのかな?』

 

 優勝…ではない。

 ランクが上がっただけだ。

 

 『そうかい、ごめんよ。僕には細かい部分がよくわからないんだ』

 

 視覚を狂わせる事が目的か、それとも俺の記憶にある座長を再現したのか。

 淫靡に大きく口を開け、ペロリと垂らしたベロで俺の唇を舐め上げながら『ミレン』が言った。

 

 …ミレン、はコイツの名前だ。

 前回、名乗らない癖に名がないと不便だと噛みついてきた(物理)ので、未来のミにレンの名をくっ付けてミレンとした。

 

 何故か大喜びで笑いながらその日の夢は終わったのだが。

 

 ーーー『ミレン、なるほど相応しい。君の前では僕はミレンだ! 面白いね、やはりこの世界の君達は面白いよ!!』ーーー

 

 何がどう相応しかったのやら。

 

 『それよりも最近はどうだい?』

 

 脳に直接入ってくるミレンの口調はフレンドリーで、気安い友人と話しているようにすら感じられる。

 

 その一方で、ミレンの舌は生暖かな虫のように蠢き、俺の耳朶をぴちゃぴちゃとねぶり、濡らす。

 間に空気を挟まずに、粘液を通して直接頭蓋に響く音。

 生物の熱と、匂いと、終わりの無い快感。

 

 快楽が根底にある世界。

 

 『なんだか苛々しているね? 君は自分で思っているよりずっと、君のお人形を大切にしている。だから苛々するんだ』

 

 まったく、理解が追い付かない。

 この時間にも、空間にも、ミレンにも。

 

 『今日はここまで、また、明日』

 

 いつも通り、ミレンが指を鳴らした。

 

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